クフフフフ、と笑うディアブロをみやり、俺は溜息を吐く。
完全に調子に乗っています。本当にありがとうございました! という感じだった。
そんなディアブロの相手をする事になる太ったピエロフットマンという名前らしいには、ご愁傷様と言ってやりたい。三體牛鞭
ま、精神は崩壊して、この場で動く者を皆殺しにしたいという衝動だけで動いているようだし、そこまで心配してやる事も無いだろうけど。
心配してやる必要があるのは、目の前に倒れるレオンであった。
俺はレオンの傍まで歩み寄り、その胸に手を翳す。
レオンの部下達が目を見開いて驚愕していたが、指を口に当て黙れと合図し、黙らせた。
言い争っている場合では無いのだ。
俺は懐(と見せかけて『虚数空間』)に収納していた完全回復薬フルポーションを使って、レオンの胸の大穴を塞いだ。
けれど、そこで薬の効能は終了である。肉体の修復が完了しているのに、レオンの意識が戻る事は無い。
だが、慌てる必要は無い。
何しろ、この場所はミザリーの結界にて閉じた世界なのだから。
というか、レオンは幸運である。なんせ、俺が来なければ危なかっただろうから。
そもそも、何故俺達がここに居るのかと言うと
俺はヴェルダに死んだと思わせたまま、隠れつつ世界の動向を探っていた。
ディアブロがこっそりと忍ばせていたモスの分身体は、非常に便利であった。相変わらず、諜報活動は完璧だったのだ。
俺の監視魔法と、モスの諜報。
どこに隠れ潜んでいたとしても、状況を把握するのは容易であった。
まあ、隠れ潜む亜空間に情報を伝達するのに一工夫いったのだが、そこはシエルにお任せで問題解決である。
俺には理解出来ない魔法理論を駆使し、快適な空間を創り出してくれたのだ。
流石は先生。マジで万能である。
その空間内で各地の情報を集めつつ、ディアブロと寛いでいたのだが……
レオンの領地にて、ヴェルダの気配を察知したのだ。
《高確率で、本体では無いと思われます。ですが、何らかの尻尾が掴める可能性があるかと》
なるほど。
先生が言うのなら、そうなのだろう。
という訳で、こうして出向いてやって来たのだ。
まあ、各地の状況も無視出来る訳では無いのだが、ヴェルダを倒せば終了なのだから、優先順位は明白なのだ。
ギィの所は、クロエとギィの一騎討ちが激しさを増していたが動きは無かった。
ルミナスの所は結構ピンチのようだが、アダルマンにアルベルト、そしてシオンが居る。まだまだ大丈夫だろう。
ここでヴェルダを捉えて倒せれば一番良かったのだが、流石にそれは甘い考えだった。
ヴェルダはどうやら、カザリームに与えていた力を回収するのが目的だったようだ。
映像に実体を持たせる、つまりは情報の断片を本体と接続させて操る『多重存在』めいた能力を有するという事。
並列存在は、分身を同時に操る能力だが、個々にエネルギーを分ける必要がある。
その一歩手前の、思考する意思のみを重ねさせて情報のみ同時に回収する能力、と言えば良いだろうか。
明確に本体が必要な『並列存在』と、全てが本体に成り得る『多重存在』と。
どちらが厄介かは、使うものの能力次第であろう。
だが、能力の格としては、『多重存在』が最上位なのは間違いない。
俺も現在、シエル先生に解析させている所なので、自信を持って断言出来る。
話が逸れた。
俺達が到着したのは、ヴェルダが『多重存在』により、カザリームの力を回収してしまったタイミングだった。
一足違いである。
これに関しては仕方がない。何しろ、ヴェルダの存在に気付き転移した時には全てが終わっていたのだから。
認識と同時に、情報が伝達される。それが、『多重存在』の厄介な所なのだ。
時を止める能力なりで阻止しないと、その伝達速度に追いつくのは不可能である。
シエル先生曰く、情報伝達の速度は、実質光速以上であるとの事。
言葉通り、同時、なのだ。
なので、ヴェルダを取り逃がした事についてはどうしようもない。
どの道、断片化した情報体なのだから止めを刺す事も出来なかった訳だし、気にする事は無いだろう。
問題はその直後に起きた。
ベニマルとカザリームの戦いで空いたらしい結界の綻びを、ミザリーが修復してしまったのだ。
恐らく、ヴェルダの情報伝達を阻止しようと結界再構築を行ったのだろうが、悪魔の反応速度を以ってしてもそれは不可能。
寧ろこの状況で反応出来た事こそ、褒めるべきである。
俺達もその綻びを利用して潜入した訳だが、閉じ込められる形になってしまったという訳だ。
ヴェルダに発見されないように用心したまま撤退しようとした俺達にとって、結界を破って移動する訳にはいかないので仕方ない。そんな事をすれば、見つかってしまうだろうしね。
これは少し恥ずかしい事態なので、ディアブロと二人して気配を完全に隠したまま様子を伺う事にした、という訳であった。
で、そのまま様子を伺っていたのだが、直後にレオンが倒された。
このままでは死亡確認! となりそうだったので、俺が何とかしようと姿を現したのである。
それもミザリーの結界が完璧であり、外部から内部を視る事は不可能というシエルの判断があったからなのだが。
もしここで、ヴェルダにバレる危険性が少しでもあったのなら、俺はレオンを見捨てていた。
悪いが、重要なのはヴェルダを倒す事だ。そこは冷徹に割り切っている。
だが、レオンにとって幸運が重なり、この場は完全に隔離された状態だった。
俺は素早くミザリーの結界を補強した上で、姿を現したという訳である。狼一号
そんな訳で、レオンの治療を開始する。
視たところ、魂は無事だが、核コア部分が損傷を受けたようだ。
覚醒した勇者が得る、力の根幹部分。ここを損傷すると、力の制御が出来なくなるみたい。
シエル先生が冷静に診察し、俺に報告してくれる。
ふむふむ、さてどうしたものやら。
しかし、外部が騒がしいのも問題だった。
ベニマルはカザリーム戦で大きくエネルギーを損耗してしまったようで、あのデブ、フットマンを一撃で倒せないようだ。
流石に無駄に攻撃しても意味が無いと理解しているらしく、無駄な攻撃を仕掛ける気配は無い。
ソウエイとラプラスという魔人も、決定的な攻撃力に欠けている。
ミザリーは結界維持に全力を注ぐようだ。その判断は正しいだろう。
時間をかけてベニマルの魔素が元通りになるのを待つ作戦なのだろうが、それでは落ち着いて治療も出来ない。
ここはベニマルには悪いが、ディアブロの出番だと判断した。
「よし、仕方ない。やっておしまいなさい、ディアブロさん!」
そう俺が命令した途端、待ってましたとばかりにディアブロが動いた。
「クフフフフ。お任せ下さい、我が主よ!」
超嬉しそうに堂々と姿を現し、フットマンの頭を鷲づかみにして地面に叩きつける。
それを見た感想が、冒頭のものという訳だ。
驚愕する一同に、ドヤ顔のディアブロ。
そこから先は、一方的展開が予想された。
レオンの治癒に専念しつつ、チラッと様子を見てみると
「クフフフフ。どうしました? こんなものですか、貴方の力は?」
どこの悪役だよ! と言いたくなるような惨状が展開されている。
いや、俺の命令の仕方も悪役っぽかったから仕方ないのか? いやいや、そんな事は無いハズだ。
ディアブロの両手の爪がフットマンを切り刻み、その力の差を明確に示す。当然、切った先はどんどんと消滅させている。
再生が追いつかない勢いで切り刻むのだ。
たまに、極大の閃光と衝撃が走るのだが、この結界は大丈夫なのだろうか?
俺が補強しているとは言え、心配になる。
(おいおい、大丈夫か? ディアブロのヤツ、ヴェルダにバレないようにコッソリと行動してる事を忘れてないだろうな?)
《問題ないと判断します。その辺りは、ディアブロは既に対策済みです》
自信満々のシエルの回答。
成る程、いつの間にやら、ディアブロの『誘惑之王アザゼル』による『誘惑世界』が発動していたようだ。
流石はディアブロ、戦い方が卒なくエグイ。
ベニマルが仕出かしたような失敗をディアブロがする訳がない、か。
(まあ、大丈夫そうだな。ディアブロに任せておけば、問題ないか……)
《大丈夫でしょう。究極能力アルティメットスキル『邪龍之王アジ・ダハーカ』を奪い損なうような事はないかと思われます》
えっ!?
そこかよ!? そんな心配してねーよ!!
どうやら俺の知らぬ間に、敵の能力を奪うのが大前提となっていたようだ。
任せよう。
俺は呆れるのを通りこし、半ば投げやりにレオンの治癒を再開したのだった。
レオンの治癒をしていると、ベニマル達の会話が聞こえてきた。
「……あの、ワイ思うんでっけど……あの悪魔、無茶苦茶ちゃいますん?
何であないに出鱈目に力任せの戦い方で、疲れる気配がないんでっしゃろ?」
「ああ、うん。アイツはそういうヤツだから……」
「流石はディアブロ様……私もまだまだ、という事でしょうか」
「アレを基準に考えるな。俺達には出来ない戦い方だから、敢えて手の内を見せているだけだ。
真似しようとしても自爆するだけだぞ」巨根
ラプラスの疑問に、投げやりに答えるベニマル。
ミザリーは素直に賞賛し、ソウエイは冷静に分析し忠告している。
一時的に協力しているだけの者にそこまで解説してやる事もないだろうと思ったけど、ソウエイも動揺しているのかもしれない。
知った所で真似出来るものでもないし、実際どうでも良いだろう。
目の前の惨状に唖然として声も出なかったようだが、ようやく落ち着いてきたらしい。
危機一髪の状況だったハズなのに、今は喜劇を見ているような気持ちになっていたのだろう。
現実を受け入れるのも大変である。
「クフフフフ。おっと失礼。少し力を入れすぎましたか、腕を引き千切ってしまったようです」
悪魔が嗤いながら、弱い者苛めをするような感じに敵を甚振っている。
それは戦闘と呼ぶには一方的過ぎて、見ている者達が若干の気まずささえ覚えているようだ。
遊んでいるように見える程、ディアブロは圧倒的である。
だが、口調とは裏腹に、ディアブロは超高等技術を駆使して計算高く戦闘を進めているのだ。
部位破損させつつ、徐々にフットマンのエネルギーを消耗させていく。
両手に纏わせて爪の形状に維持しているのは、超高圧縮状態の『虚無崩壊』のエネルギーだ。
俺が貸出したエネルギーを集中させて利用しているのである。類まれなる戦闘センスがあってこそ、成せる技であった。
そもそも、戦闘形跡をみて判断当然だが、シエル先生がするに、ベニマルは俺から借り受けたエネルギーを一瞬にして全て放出させたようだ。
確かに、この凶悪な虚無崩壊エネルギーを制御して敵に喰らわせたならば、大概の相手には通用する。
抵抗を許さずに滅ぼす事が可能だろう。
けど、当然ながら代償も大きい。
自分の魔素もゴッソリと消費し、今のベニマルのように継続戦闘が困難となるのだ。
奥の手に用いるならともかく、気軽に使える技ではないのである。
その点、ディアブロの利用方法は堅実だ。
ここ二日程、亜空間にて暇つぶしに特訓した成果が出ているようである。
シエル先生が考案した、閉じた世界でのエネルギー循環の利用方法。
名付けて、"円環の秘法"、である。
格好良く言ってみたが、要するに、空間支配系能力によりエネルギーの拡散を防ぐ状態を作り出し、使ったエネルギーを再び吸収するようにした訳だ。
今回を例に取ると、ディアブロの『誘惑世界』の中でならば、使ったエネルギーの損耗は殆ど発生しない。
魔法のように理解困難な理屈だが、ディアブロはシエルの言葉を理解してのけた。
閉じた世界で、自分と敵対者と両方の質の異なるエネルギーが、あったとする。
これを相殺或いは、対消滅させる訳だが、厳密に言えば、相殺というよりも片方のみを閉じた世界から放出するのだ。
そして、自分のエネルギーはそのまま再吸収。
敵のエネルギーは創った世界の状態維持に利用する。
この循環により、一方的に敵を弱らせる事が可能となるという寸法だ。
正直、俺には理解出来なかったが、ディアブロはやってのけた。
今も、周囲には単純に力技で戦っているように見えるだろうが、実情は異なるという訳。
反応を見るに、これを理解出来ているのは、ベニマルとミザリーだけだろう。
いや、実際には理解には至っていないだろう。ただ、理屈上では有り得ない展開に、疑問を持ったという程度か。
ベニマルには後で教えてやった方が良いかも知れないが、理解出来るだろうか?
俺にはシエルがついているから、理解出来なくても問題ないんだけどね。
ま、気合で何とかしてくれとしか言いようがないのだ。
流石に閉じた世界とは言え、ベニマルが行ったような虚無崩壊の全力放出には耐えられないだろうから、ある程度の加減は必要だろうし。
理論を教えて即実行出来るのは、ディアブロくらいなものだろう。勃動力三體牛鞭
ディアブロの戦闘を眺めている間に、いつの間にかレオンの治癒が終わったようだ。
途中から、全てシエルにお任せ! になっていた。
俺のやる気なぞ、所詮はその程度。
これが美少女なら気合が違ったが、イケメンでも男はどうでも良い。
やる気、激減! だった。
だから途中で、
《完全に蘇生させるには、通常の覚醒状態から、勇者クロエのように万能状態へと聖気の流れを調節する必要がありますが、その為には》
(任せた!)
と、聞きもせずにシエルに任せたりもしたのだ。
適当に聞き流していたが、勇者の核みたいなものが破損したので、別のもので代用したい的な話だったと思う。
普通に蘇生させたら戦闘能力を喪失するらしいので、喪失しない遣り方でレオンの治療を行ったというだけの事。
何でそんな事をイチイチ聞くのやら。
シエル先生は相変わらず慎重だぜ! なんて、気軽に聞き流していた。
だが、蘇生完了したレオンを見て、我が目を疑う事になる。
あれ? 何だか、力が増しているような……シ、シエル先生、アンタ一体何をしでかしたんや!! と、思わず叫びそうになってしまった。
鑑定すると、半神半人デミゴッドとなっていた。
元から聖気を大量に身に蓄えていたレオンだったが、今は蓄えているのではなく聖気そのものとなっている。
要するに、精神生命体になったっぽい。
核がないから、気の流れを調整し、核無しでも大丈夫なように改造したのか。
なるほど……っじゃねーよ!
敵対してはいないものの、完全なる味方でもない野郎をパワーアップさせてどうする!
……いや、聞き流したのは俺だ。
文句を言う事は出来なかった。
やれやれ、ま、敵対しなければ良い話だ。
それに、半ば強引に調整したので、力を使いこなせるようになるのは当分先だろう。
それまでには、ヴェルダを片付けてしまえばいい。
ま、何とかなるだろう。気にしない事にしよう。
そんな事を思っていると、レオンの意識が戻ったようだ。
薄く目を開き、俺を見る。そして、
「シズ、か……ッフ、俺に復讐に来たのか?」
何か、寝言を言いだしたぞ。
「貴様に滅ぼされるなら、受け入れよう。さあ、好きにするが良い」
そんな事をほざくレオン。
どうやら、俺とシズさんを間違っているようだ。
ちょっとイラッっとした。
なので、
「フォルァ!」
と、抱きかかえていたレオンを放り投げる。
そもそも、完全治癒したヤツがいつまでも甘えるなって話なのだ。
「ッ! リムル、か?」
「ああ、目が覚めたか? 感謝しろ、そして俺を敬え!」
「俺は……そうか、貴様が蘇生を」
俺は髪をかきあげて頷く。
こっそりと練習した、格好良く見える(ハズの)ポーズで。
「感謝する、魔王リムル」
「うむ。感謝しまくれ!」
俺に感謝するというくらいだ、当分は大丈夫だろう。
そんな感じにレオンが目を覚ました途端、レオンの配下達が、
「「「レオン様!! よくぞ、ご無事で!!!」」」
と、駆け寄っていっている。
大泣きしている者もいるが、無事な者は一人も居ない。
ここまで来るとついでだ。
俺は完全回復薬フルポーションを人数分取り出して、全員に叩きつけてやった。
「何を!?」
と驚く者達もいたが、一瞬で傷が消えて唖然となっている。紅蜘蛛
魔法よりも効果的だから、当然だろう。
傷が治った途端、
「「「魔王リムル様、此度の御恩、決して忘れません!!!」」」
レオンの部下が一斉に跪き、俺に頭を下げた。
まあ、そんな事はどうでもいいんだけどね。
ちょっと小っ恥ずかしいので、畏まるのは勘弁して貰いたい。
レオンが復活し、配下達が大騒ぎしたのだ、当然ながら俺が居る事がベニマル達にもバレた。
「「リムル様!」」
ベニマルとソウエイが駆け寄って来た。
「やはりご無事でしたか!」
「な、言ったろ? 心配する必要ねーって!」
「それは、ゼギオンが言ったからだろうが……」
「そんな事はない。俺は最初から信じていた!」
やはり、俺が消滅したと慌てたようだ。
直ぐにというか、全く慌てた様子がなかったそうだがゼギオンが加護に気付き、皆も落ち着いたとの事。
「お、おう。元気だったか? 実はヴェルダを油断させようと思ってな。
ついでに、反乱分子がいたら炙り出す作戦なのだ」
取り繕うように説明する。
だが、それで十分だったようだ。
「やはり、な」
「流石はリムル様。それでは我等はどのように動きましょう?」
ベニマルは納得し、ソウエイに至っては既に行動に移ろうとしている。
いやいや待て待て。
まだフットマンと戦っている人もいるんだ、忘れてやってはダメだろう。
俺が姿を見せた事で、完全に安心しきっているというか張り切っているというか。
「まあ待て、先にこの戦いを終わらせる。ディアブロ、そろそろいいか?」
皆にも見つかってしまったし、遠慮は要らないだろう。
さっさとフットマンを倒す事にした。
「クフフフフ。料理は粗方終了です、リムル様」
「よし」
俺は頷き、フットマンに歩み寄る。
「くそ、クソがぁ! 何なのだ、一体何なのだぁぁあああ!!
きさ、貴様等! この私に、フットマン様にぃぃいいい!!」
呂律も回らぬフットマンを、ディアブロが更に一発殴った。
「煩いぞ、黙りなさい」
そう言いながら。
下顎を吹き飛ばされ、フットマンは喋る事が出来なくなったようだ。
何だかグロい。さっさと終わらせる事にしよう。
「苦しみを与える事はしない。お前も、俺の中で安らぎを与えてやる」
宣言し、喰らう。
程良くディアブロが削ってくれたお陰で、一瞬でフットマンの捕食は完了した。
それこそ、最後の足掻きも出来ない程あっさりと。
シエルの予定通り、究極能力アルティメットスキル『邪龍之王アジ・ダハーカ』も獲得成功である。
「クフフフフ。流石はリムル様、お見事です!」
「いや、今回はディアブロが弱らせてくれていたからな。それと、ベニマルにソウエイもご苦労だった」
「「「はは!」」」
三人が跪き、俺の労いに応じる。
いちいち面倒だが、形式は大事なのだそうだ。
こうして、あっけなく危機は去ったのである。鹿茸腎宝
2015年4月8日星期三
2015年4月6日星期一
グランスライムの脅威!
浜辺に降り立った瞬間、ぐったりとミカヅキが倒れ込む。どうやら慣れない長距離飛行で疲労が溜まったようだ。これから何があるか分からないので、ミカヅキを回復させておこうと思い『全快』の文字を使って体力と気力を回復させた。陰茎増大丸
何だかテンションまで上がったみたいであり、浜辺を叫びながら走り回っている。気が済むまで放置しておこうと思い、さっそく『探索』の文字を使い近くの集落などを探す。
文字を発動させると、目の前に矢印が現れ進むべき道を教えてくれる。
「この先に街があるか……」
そう言って矢印の方向を見ると、先程空から見た山を指していた。
「山の中を指してるのか、それとも山を越えた先にあるのか……ま、じっくり行くか」
「クイ!」
ミカヅキは頷くと、背中に乗れと言わんばかりにお尻を向けてきた。日色はヒョイッと跳び乗り、ミカヅキはそのまま矢印の方向へ進んでいく。
砂浜から出ると、そこは広大に広がった草原がある。その先には先程の山が見える。
(今はまだ穏やかな感じだが、いつ何があるか分からないな)
情報では『魔族イビラ』の大陸は魔物の強さ生息数も、他の大陸と比べて上位に位置する。今は魔物が出てくる雰囲気は無いが、突然襲われるということもあるかもしれないと思い、日色は文字を書いていく。
《発動解放》で、五文字分を設置できるのでとりあえず『速』・『防』の文字をミカヅキに書く。同じ文字を自分にも書く。そして最後の一文字に『伸』と刀に書く。書いた文字はそれぞれ吸い込まれるようにして消えていく。これで設置完了だ。いつでも発動できる。
ただ二文字を書いてしまうと設置した文字の効果が消えるので、できる限り使わないように気を付ける必要がある。
「レベルが上がると、その制限もなくなるかもしれないが、今は気をつけないとな」
もしかしたら二文字を設置できるようになるかもしれないと思うとワクワクしてくる。これからもレベルを早く上げるためにも、魔物をとことん狩ってやろうと決めた。
ミカヅキの背中で揺られながら草原を走っていると、視界の端にのそのそと動いている存在に気がつく。
「止まれ!」
「クイ!」
突然主人に制止の声をかけられ慌ててブレーキをかける。絶對高潮
「クイ?」
「あそこを見てみろ」
指を差した先には恐らく魔物であろう存在があった。
それはスライムを十倍以上も大きくしたような魔物で、プニプニとした体を引きずって地面を動いていた。色は緑色だが、透明度も高く体を通して向こう側がうっすらと確認できる。そしてよく見ると体の中心には核のような赤い塊が見て取れた。
「あの赤い心臓みたいなものが弱点……か? というよりもいきなり最初から図鑑に載ってない魔物が相手か」
自身の知識には無い魔物だったので少し驚いていた。まさかユニーク魔物モンスターなのかとも思った。しかし少し離れた先にも同じような魔物を発見したので、基本的に単独行動をするユニーク魔物モンスターでは無い可能性が高いと判断した。
「やはり聞いていた通り、『魔族イビラ』の大陸の魔物は図鑑に載ってなかったようだな」
図鑑には『人間族ヒュマス』の大陸と『獣人族ガブラス』の大陸に生存している魔物は載っていたが、『魔族イビラ』の大陸に出てくる魔物は載っていなかった。
「早く街に行ってここの図鑑を見てみたいな」
そうしなければ魔物の種類も分からないし、情報は得ておく方が確実に良い。もちろん《文字魔法ワード・マジック》で調べることもできるが、いちいちそんなことをしていれば、MPの無駄使いにもなってしまう。
だからできれば図鑑で情報を得た方が効率が良いのだ。
「それはそうと、とりあえず『魔族イビラ』の大陸での初めての実戦、やってみるか」
ミカヅキの背から下りると、『刺刀・ツラヌキ』を抜く。
「お前は下がってろ」
「クイ!」
素早い動きでその場を離れるミカヅキ。こういったやり取りはもう慣れたものだった。
「とりあえずは調べてみるか……」Xing霸 性霸2000
いまだこちらに気がついていないのか、のっそりと動いている魔物を鋭い目つきで睨む。そして指先に魔力を集中し『覗』の文字を書いて、魔物の《ステータス》を確認する。
「名前はグランスライム……ランクSか。おいおい、ランクSがそこかしこにウヨウヨしてるのかよ」
信じられないと思いながら、周囲を見回し複数のグランスライムを視界に入れる。今までランクSと出会ったことはあるが、どれも単独で相対した。しかし今ここには複数のランクSの魔物がいる。さすがは『魔族イビラ』の大陸だと舌を巻くばかりだ。
(そのうちランクSSやランクSSSが出たりしてな)
この一か月、実は獣人の大陸ではランクSSの魔物と戦ったことはある。動きも強さもそれこそ桁違いであり、一歩間違うと死んでしまう状況の中《文字魔法ワード・マジック》を駆使して何とか倒すことに成功した。
間違いなくあの時は死線を潜り抜けたといった感じだった。
だがしばらくはランクSSとは戦いたくないと思った。地形や相性が良かったお蔭で運良く勝てたようなものだった。単独で戦うにはやはり早過ぎた。もっとレベルが上がってからではないと、次は死ぬかもしれないと教訓を得ることになった。
(あの時ほど、オッサンたちの存在のありがたさを感じたことは無かった)
態度には出さなくても、アノールドたちと一緒にいた時は、チームプレイで助かった場面が幾つもあった。きっとランクSSの魔物相手でも、アノールドたちがいれば、あれほど危険は無かっただろうと思ったのだった。九州神龍
だがこれからは一人である。しかも魔物の強さも桁が違う『魔族イビラ』の大陸。レベルが低ければ、一瞬にして殺されることもあるだろう。
(これは一刻も早くレベルを上げなきゃな)
間違いなくそのうちランクSS以上の魔物と戦うことになるだろうことは予感めいたものがあった。
「そのためにも、コイツらには糧かてになってもらうか」
殺気を出して睨むと、それに反応して目の前にいるグランスライムがピタッと動きを止め、ゆっくりとこちらに意識を向ける。すると突然物凄い速さでこちらに向かって跳び上がって来た。
「いきなりか!」
大きな図体ずうたいなのに、小動物のような動きをするので虚を突かれてしまう。焦りながらも日色は大きく横に跳び、すかさず跳び降りてきたグランスライムに斬りかかる。
ズバッ!
一文字に斬り裂かれ、ダメージありだと思い力強く微笑んでいると、それに構わず体当たりをしてくる。
「ちっ! 当たるか!」
だが避けたつもりだったが、今度は体の一部を弾丸のように飛ばしてくる。咄嗟に両腕でガードするが、思ったより衝撃は無い。プニプニしていてハッキリ言ってダメージは無い。
(一体何のために……?)
体の一部を飛ばしてきているのか分からず眉を寄せる。しかし次の瞬間その意味が分かった。procomil spray
ボウッ!
何と腕に当たり、纏わりついていたスライムの一部が燃え始めた。
「熱っ!?」
慌てて腕を振り回し燃えているスライムを落としにかかる。しかしなかなか落ちてくれない。
「くっそ!」
地面にしゃがみ込み、腕に土をかける。ジュゥ……っと今度こそ火が消えた。
「はあはあはあ……っのやろう……」
せっかくの赤いローブも焼けてボロボロになり、深くは無いが火傷も負ってしまった。『防』の文字を使っていれば良かったと後悔する。
「くそ……治すのもただじゃないんだぞ!」
そう思い瞬時に間を詰めて刀で斬り裂く。だが同じようにパカッと斬り裂いてダメージを与えたと思ったが、よく見ると切り口が合わさり元に戻って行く。そう言えば先程の傷もいつの間にか治っている。
「なるほどな、物理攻撃効かないってことか……」房事の神油
何だかテンションまで上がったみたいであり、浜辺を叫びながら走り回っている。気が済むまで放置しておこうと思い、さっそく『探索』の文字を使い近くの集落などを探す。
文字を発動させると、目の前に矢印が現れ進むべき道を教えてくれる。
「この先に街があるか……」
そう言って矢印の方向を見ると、先程空から見た山を指していた。
「山の中を指してるのか、それとも山を越えた先にあるのか……ま、じっくり行くか」
「クイ!」
ミカヅキは頷くと、背中に乗れと言わんばかりにお尻を向けてきた。日色はヒョイッと跳び乗り、ミカヅキはそのまま矢印の方向へ進んでいく。
砂浜から出ると、そこは広大に広がった草原がある。その先には先程の山が見える。
(今はまだ穏やかな感じだが、いつ何があるか分からないな)
情報では『魔族イビラ』の大陸は魔物の強さ生息数も、他の大陸と比べて上位に位置する。今は魔物が出てくる雰囲気は無いが、突然襲われるということもあるかもしれないと思い、日色は文字を書いていく。
《発動解放》で、五文字分を設置できるのでとりあえず『速』・『防』の文字をミカヅキに書く。同じ文字を自分にも書く。そして最後の一文字に『伸』と刀に書く。書いた文字はそれぞれ吸い込まれるようにして消えていく。これで設置完了だ。いつでも発動できる。
ただ二文字を書いてしまうと設置した文字の効果が消えるので、できる限り使わないように気を付ける必要がある。
「レベルが上がると、その制限もなくなるかもしれないが、今は気をつけないとな」
もしかしたら二文字を設置できるようになるかもしれないと思うとワクワクしてくる。これからもレベルを早く上げるためにも、魔物をとことん狩ってやろうと決めた。
ミカヅキの背中で揺られながら草原を走っていると、視界の端にのそのそと動いている存在に気がつく。
「止まれ!」
「クイ!」
突然主人に制止の声をかけられ慌ててブレーキをかける。絶對高潮
「クイ?」
「あそこを見てみろ」
指を差した先には恐らく魔物であろう存在があった。
それはスライムを十倍以上も大きくしたような魔物で、プニプニとした体を引きずって地面を動いていた。色は緑色だが、透明度も高く体を通して向こう側がうっすらと確認できる。そしてよく見ると体の中心には核のような赤い塊が見て取れた。
「あの赤い心臓みたいなものが弱点……か? というよりもいきなり最初から図鑑に載ってない魔物が相手か」
自身の知識には無い魔物だったので少し驚いていた。まさかユニーク魔物モンスターなのかとも思った。しかし少し離れた先にも同じような魔物を発見したので、基本的に単独行動をするユニーク魔物モンスターでは無い可能性が高いと判断した。
「やはり聞いていた通り、『魔族イビラ』の大陸の魔物は図鑑に載ってなかったようだな」
図鑑には『人間族ヒュマス』の大陸と『獣人族ガブラス』の大陸に生存している魔物は載っていたが、『魔族イビラ』の大陸に出てくる魔物は載っていなかった。
「早く街に行ってここの図鑑を見てみたいな」
そうしなければ魔物の種類も分からないし、情報は得ておく方が確実に良い。もちろん《文字魔法ワード・マジック》で調べることもできるが、いちいちそんなことをしていれば、MPの無駄使いにもなってしまう。
だからできれば図鑑で情報を得た方が効率が良いのだ。
「それはそうと、とりあえず『魔族イビラ』の大陸での初めての実戦、やってみるか」
ミカヅキの背から下りると、『刺刀・ツラヌキ』を抜く。
「お前は下がってろ」
「クイ!」
素早い動きでその場を離れるミカヅキ。こういったやり取りはもう慣れたものだった。
「とりあえずは調べてみるか……」Xing霸 性霸2000
いまだこちらに気がついていないのか、のっそりと動いている魔物を鋭い目つきで睨む。そして指先に魔力を集中し『覗』の文字を書いて、魔物の《ステータス》を確認する。
「名前はグランスライム……ランクSか。おいおい、ランクSがそこかしこにウヨウヨしてるのかよ」
信じられないと思いながら、周囲を見回し複数のグランスライムを視界に入れる。今までランクSと出会ったことはあるが、どれも単独で相対した。しかし今ここには複数のランクSの魔物がいる。さすがは『魔族イビラ』の大陸だと舌を巻くばかりだ。
(そのうちランクSSやランクSSSが出たりしてな)
この一か月、実は獣人の大陸ではランクSSの魔物と戦ったことはある。動きも強さもそれこそ桁違いであり、一歩間違うと死んでしまう状況の中《文字魔法ワード・マジック》を駆使して何とか倒すことに成功した。
間違いなくあの時は死線を潜り抜けたといった感じだった。
だがしばらくはランクSSとは戦いたくないと思った。地形や相性が良かったお蔭で運良く勝てたようなものだった。単独で戦うにはやはり早過ぎた。もっとレベルが上がってからではないと、次は死ぬかもしれないと教訓を得ることになった。
(あの時ほど、オッサンたちの存在のありがたさを感じたことは無かった)
態度には出さなくても、アノールドたちと一緒にいた時は、チームプレイで助かった場面が幾つもあった。きっとランクSSの魔物相手でも、アノールドたちがいれば、あれほど危険は無かっただろうと思ったのだった。九州神龍
だがこれからは一人である。しかも魔物の強さも桁が違う『魔族イビラ』の大陸。レベルが低ければ、一瞬にして殺されることもあるだろう。
(これは一刻も早くレベルを上げなきゃな)
間違いなくそのうちランクSS以上の魔物と戦うことになるだろうことは予感めいたものがあった。
「そのためにも、コイツらには糧かてになってもらうか」
殺気を出して睨むと、それに反応して目の前にいるグランスライムがピタッと動きを止め、ゆっくりとこちらに意識を向ける。すると突然物凄い速さでこちらに向かって跳び上がって来た。
「いきなりか!」
大きな図体ずうたいなのに、小動物のような動きをするので虚を突かれてしまう。焦りながらも日色は大きく横に跳び、すかさず跳び降りてきたグランスライムに斬りかかる。
ズバッ!
一文字に斬り裂かれ、ダメージありだと思い力強く微笑んでいると、それに構わず体当たりをしてくる。
「ちっ! 当たるか!」
だが避けたつもりだったが、今度は体の一部を弾丸のように飛ばしてくる。咄嗟に両腕でガードするが、思ったより衝撃は無い。プニプニしていてハッキリ言ってダメージは無い。
(一体何のために……?)
体の一部を飛ばしてきているのか分からず眉を寄せる。しかし次の瞬間その意味が分かった。procomil spray
ボウッ!
何と腕に当たり、纏わりついていたスライムの一部が燃え始めた。
「熱っ!?」
慌てて腕を振り回し燃えているスライムを落としにかかる。しかしなかなか落ちてくれない。
「くっそ!」
地面にしゃがみ込み、腕に土をかける。ジュゥ……っと今度こそ火が消えた。
「はあはあはあ……っのやろう……」
せっかくの赤いローブも焼けてボロボロになり、深くは無いが火傷も負ってしまった。『防』の文字を使っていれば良かったと後悔する。
「くそ……治すのもただじゃないんだぞ!」
そう思い瞬時に間を詰めて刀で斬り裂く。だが同じようにパカッと斬り裂いてダメージを与えたと思ったが、よく見ると切り口が合わさり元に戻って行く。そう言えば先程の傷もいつの間にか治っている。
「なるほどな、物理攻撃効かないってことか……」房事の神油
2015年4月4日星期六
牢屋での一話
「そうか、相手は飲んでくれたか…………良かった。一先ずは良かったと言えるな」
イヴェアムは獣人からの返事を聞いてホッとしていた。これで双方に必要以上の死が増えることはなくなった。無論勝負に負けてしまえば『魔族イビラ』たちがどうなるかは分からない。SEX DROPS
一応勝負には《契約の紙コントラクト・ロール》を使って約束事を決め、その中には敗者を無闇に殺すようなことはしないようにと契約させるつもりだが、それでも負けたら今までの生活が無くなる可能性は高い。
敗北した側は、勝者の懐に入る、すなわち配下同然のような形になるように提案するつもりではある。だがこの約束事も完璧ではない。命を捨てて裏切る可能性もあるのだ。
だがその不安をアクウィナスが除去する。
「彼らは一度決めたことを破りはしない。それが獣人の誇りだと思っているからな。だから今まで彼らが誰かを裏切った話など聞かないのだ。少なくとも、今の獣王が要求を飲めば、感情的にはどうであれそれに従うだろう。それにこちらが勝ったところで、陛下は彼らを抑えつけるつもりなど無いのだろう?」
「当然だ」
「なら不満もそう溜まるまい。後は時間をかけてこちらの真意を分かってくれるように接していけばいいだろう」
「そうか……ああ、そうだな」
「だがそのためにも、この勝負は必ず勝たなければならん」
「ああ、その通りだ。正々堂々、真正面から彼らを破って見せる!」
拳を強く握り締める彼女を見てアクウィナスはフッと頬を緩める。
「しかし、まさかこのような方法を選ぶとはな。マリオネなどは開いた口が塞がらないような表情をしていたぞ?」
「はは……実はな、この方法はその……ヒイロが……」
「ヒイロ?」
「あ、ああ」
彼女が今回獣人に対して要求した内容は、日色が考え出した案でもあった。彼女が日色と話していた時、ふと彼女がこの戦争でどうにか穏便に事を収めることができないかと漏らしたことがあった。
その時は鼻で笑われ馬鹿にされた。何を甘いことを言っているのだと一笑された。無論彼の言ったことが正しいと分かっているのだが、それでも納得ができずつい怒ってしまった。
しばらくむくれている彼女に対して、日色はこう言った。
『誰も傷つかない戦争なんてあるわけがない。傷ついてほしくないなら、戦争を起こさないようにするべきだ』
それは当然のことだ。彼女もそうさせないために努力したと言った。
『一度起きた戦争は確かに無傷じゃ止められないだろうな。だが相手次第では被害を限り無く少なくすることはできる。まあ、一種の夢物語というか、熱血漫画のような愚案だけどな……』
そう言って少し言い難そうに今回の方法を教えてくれた。
「ほう、こんな馬鹿げた提案はヒイロのものだったか」
得心がいったような表情を浮かべる。三体牛鞭
「だがよく決断したな」
「……仕方が無いだろう。このままでは本当にどちらかが滅びるまで戦い続けることになってしまう。それだけは絶対に駄目だ。ならば相手の土俵でその上を行けば、こちらの言葉を聞いてもらえると思ったのだ」
「……なるほど、相手が獣人ならではの方法ということか」
「ああ、この方法なら確かに無傷ではないが、最低限の被害で済むはずだ。それにこちらは相手と違って明らかに分の悪い提案をしているのだ。もしそれに敗れたとしたら、相手は何も言えまい」
「フッ、なかなかに強したたかだな。それもヒイロが?」
「う、うむ、まあな」
バツが悪そうにそっぽを向く。
「まあ確かに、これだけ有利というか、利点が多い状況を引き受けて負けたとなら、さすがの獣人も認めざるを得ないだろう。自らの敗北をな」
「ああ、ヒイロもそう言っていた!」
嬉しそうに笑みを浮かべるイヴェアムをジッと見つめるアクウィナス。その視線に気づいてハッとなり慌てて顔を背ける。頬は赤いままだが。
「……フッ」
何やら含みのある笑みを浮かべたアクウィナスを見て、
「な、何か言いたいことでもあるのか!」
「いや、お前はそうして、少しずつ自分を変えていけばいい」
その表情には、どことなく親が子を見守るような慈愛が含まれているように見えた。
「え……何を……」
するとアクウィナスは踵を返してどこかへ行こうとする。
「どこへ行くのだアクウィナス?」
「……少しな」
そう言ってその場を立ち去っていくアクウィナスの背中を見つめながら
「……何なのよ……?」
まだ熱を持った顔をコクンと傾けていた。
「ふにゃあ~、まだ体が痛いニャ……」
そう言いながら藁わらが敷き詰められた簡易ベッドの上をゴロゴロと寝返りをうつのは《三獣士》の一人であるクロウチだった。
日色との勝負に敗れ、今は捕虜として牢屋に放り込まれていた。男宝
「う~やっぱりまだ体も白いままニャ」
自分の手を見つめながら、黒かったはずの体毛が、今は雪のように真っ白になっていることに溜め息を吐く。
「あんな大物を一気に呼び出した《反動リバウンド》ニャねぇ……次の満月まではこのままかもニャ……」
しかもただ体毛が白くなっただけではなく、明らかに体長も変化していた。黒かった時は体つきも逞しく高身長な体つきだったが、今はまるで子供のような体躯に変化し、胸元も若干膨らんでいる。明らかに女の子だった。
「う~暇ニャ~」
ゴロゴロと体を動かしていたクロウチは急にピタッと動きを止める。そしてある人物のことを思い出す。
「……ヒイロ……かぁ」
自分と戦い、圧倒的な力を見せつけて敗北においやった本人を思い出す。
「赤ローブ……眼鏡……それにあのニオイ……」
戦っていた時、日色のニオイが鼻に入り、それがある違和感を感じさせていた。
「ニャんでタロウとおニャじニオイがするのニャ?」
それは同一人物だからなのだがとは誰も突っ込みは入れてくれない。前に日色と会った時は、彼は獣人の姿で本名を名乗らずタロウ・タナカと名乗っていた。だが赤ローブに眼鏡、態度、そしてニオイまでも酷似していたのだ。
だからこそ余計に混乱するのだ。日色が姿を変えることができると知っているのなら、すぐに答えに行きつくのだが、残念ながらクロウチは知らない。
「…………ああもう!」
またもゴロゴロと体を動かす。
「どうでもいいニャ! そんなことよりもう一度戦いたいニャ! ヒイロと会わせてほしいニャ~!」男根増長素
牢屋の中で甲高い声が響く。同じ牢屋に囚われている獣人たちは、「ああ、また癇癪かんしゃく起こしてるな」と呆れるような溜め息交じりの声が聞こえてくる。
牢屋番をしている者も、そんなことが何度もあったのか、軽く諦めている雰囲気で肩を竦めているだけだった。だが注意をしないわけにはいかない。
「こら、もう少し静かにしていろ」
少しだけ口調が優しいのは、クロウチの見た目が明らかに子供だからだろう。確かに敵だが、何もできない子供を一方的に憤怒の対象とするのは気が引けたようだ。
「う~ニャらヒイロ呼んできてニャ」
「それは無理だと前にも言ったろ? あの人はこの国の恩人にして、まさに英雄のような方だ。こんな場所にお連れするわけにはいかん」
「ニャ? ヒイロはそこまで人気なのかニャ?」
「まあな。あの戦いを直に見た奴らはみんなそう思ってるはずだ。それにあの人は一人で橋まで壊してくれたんだぞ? 俺たち『魔族イビラ』のためにそこまでしてくれた人を英雄と呼ばず何て呼ぶんだ?」
牢屋番の男は目を輝かせて、羨望の眼差しで遠くを見つめている。
「橋を!? 一人で!? す、すごいニャ……」
クロウチは橋にかなりの戦力が防衛に当たっていることを知っている。そんな中に一人で突っ込み、橋を壊した日色の強さにクロウチも目を光らせている。
男の言葉を全く疑わないクロウチもクロウチなのだが。彼の様子から本気で言っていると判断したのかもしれない。
「それに驚くことにあの人は『人間族ヒュマス』だったんだぞ?」
「……へ? 『人間族ヒュマス』ってどういうことニャ?」
「いやな、何でも変化の魔法が使えるらしくて、本来の姿は『人間族ヒュマス』らしいんだよ。いや~それにしても人間の中にもああいう人っているんだなぁ。【ヴィクトリアス】の人間とは大違いだ。あ、でもあの人も元は【ヴィクトリアス】出身……って言っていいのか?」
「……どういうことニャ?」
クロウチの顔が真剣な表情になり、探りを入れているということは、恍惚な表情に陥っている男は気づいていない。むしろ自分の言葉に酔っている感じだ。
「何でもよ、あの人は勇者と一緒に召喚された人らしいんだよ」
「…………」
「まあ、勇者じゃないみたいだけどな。本人はただ巻き込まれてこっちに来たって言ってたけどな……っておい聞いてるか?」男用99神油
クロウチが返事をしていないので気になって様子を確認したら、彼女は先程と違い静かに藁の上で横になっていた。そんな彼女を見てハッとなって冷静になる牢屋番。
「やっべえ。これって言って良かったことだっけ?」
つい熱くなってしまい敵に情報を流してしまったことに焦る。だが動かない彼女を見て、もしかしたら寝たのかもと思い、心の中でそのまま忘れてくれと願うように両手を合わし、そのまま仕事を継続した。
だが彼女が今の話を忘れるわけは無かった。何故なら今の話でヒイロとタロウが繋がったからだ。
(変化……そうニャ……やっぱり同一人物だったのニャ!)
心の中で湧き上がってくる衝動に胸が躍る。そして先程よりも会いたいという思いがさらに増していく。
それにもっと興味深い話も聞けた。
(それに異世界の住人……面白いニャ! ヒイロはホントに面白いニャ!)
頬を紅潮させて笑みを浮かべる。
「ニャハハ…………ニャハハ…………ニャハハ…………」
しばらく牢屋には彼女の笑い声だけが響いていたという。ちなみに牢屋番はその笑い声が何となく不気味で声を掛けなかったらしい。蔵秘回春丹
イヴェアムは獣人からの返事を聞いてホッとしていた。これで双方に必要以上の死が増えることはなくなった。無論勝負に負けてしまえば『魔族イビラ』たちがどうなるかは分からない。SEX DROPS
一応勝負には《契約の紙コントラクト・ロール》を使って約束事を決め、その中には敗者を無闇に殺すようなことはしないようにと契約させるつもりだが、それでも負けたら今までの生活が無くなる可能性は高い。
敗北した側は、勝者の懐に入る、すなわち配下同然のような形になるように提案するつもりではある。だがこの約束事も完璧ではない。命を捨てて裏切る可能性もあるのだ。
だがその不安をアクウィナスが除去する。
「彼らは一度決めたことを破りはしない。それが獣人の誇りだと思っているからな。だから今まで彼らが誰かを裏切った話など聞かないのだ。少なくとも、今の獣王が要求を飲めば、感情的にはどうであれそれに従うだろう。それにこちらが勝ったところで、陛下は彼らを抑えつけるつもりなど無いのだろう?」
「当然だ」
「なら不満もそう溜まるまい。後は時間をかけてこちらの真意を分かってくれるように接していけばいいだろう」
「そうか……ああ、そうだな」
「だがそのためにも、この勝負は必ず勝たなければならん」
「ああ、その通りだ。正々堂々、真正面から彼らを破って見せる!」
拳を強く握り締める彼女を見てアクウィナスはフッと頬を緩める。
「しかし、まさかこのような方法を選ぶとはな。マリオネなどは開いた口が塞がらないような表情をしていたぞ?」
「はは……実はな、この方法はその……ヒイロが……」
「ヒイロ?」
「あ、ああ」
彼女が今回獣人に対して要求した内容は、日色が考え出した案でもあった。彼女が日色と話していた時、ふと彼女がこの戦争でどうにか穏便に事を収めることができないかと漏らしたことがあった。
その時は鼻で笑われ馬鹿にされた。何を甘いことを言っているのだと一笑された。無論彼の言ったことが正しいと分かっているのだが、それでも納得ができずつい怒ってしまった。
しばらくむくれている彼女に対して、日色はこう言った。
『誰も傷つかない戦争なんてあるわけがない。傷ついてほしくないなら、戦争を起こさないようにするべきだ』
それは当然のことだ。彼女もそうさせないために努力したと言った。
『一度起きた戦争は確かに無傷じゃ止められないだろうな。だが相手次第では被害を限り無く少なくすることはできる。まあ、一種の夢物語というか、熱血漫画のような愚案だけどな……』
そう言って少し言い難そうに今回の方法を教えてくれた。
「ほう、こんな馬鹿げた提案はヒイロのものだったか」
得心がいったような表情を浮かべる。三体牛鞭
「だがよく決断したな」
「……仕方が無いだろう。このままでは本当にどちらかが滅びるまで戦い続けることになってしまう。それだけは絶対に駄目だ。ならば相手の土俵でその上を行けば、こちらの言葉を聞いてもらえると思ったのだ」
「……なるほど、相手が獣人ならではの方法ということか」
「ああ、この方法なら確かに無傷ではないが、最低限の被害で済むはずだ。それにこちらは相手と違って明らかに分の悪い提案をしているのだ。もしそれに敗れたとしたら、相手は何も言えまい」
「フッ、なかなかに強したたかだな。それもヒイロが?」
「う、うむ、まあな」
バツが悪そうにそっぽを向く。
「まあ確かに、これだけ有利というか、利点が多い状況を引き受けて負けたとなら、さすがの獣人も認めざるを得ないだろう。自らの敗北をな」
「ああ、ヒイロもそう言っていた!」
嬉しそうに笑みを浮かべるイヴェアムをジッと見つめるアクウィナス。その視線に気づいてハッとなり慌てて顔を背ける。頬は赤いままだが。
「……フッ」
何やら含みのある笑みを浮かべたアクウィナスを見て、
「な、何か言いたいことでもあるのか!」
「いや、お前はそうして、少しずつ自分を変えていけばいい」
その表情には、どことなく親が子を見守るような慈愛が含まれているように見えた。
「え……何を……」
するとアクウィナスは踵を返してどこかへ行こうとする。
「どこへ行くのだアクウィナス?」
「……少しな」
そう言ってその場を立ち去っていくアクウィナスの背中を見つめながら
「……何なのよ……?」
まだ熱を持った顔をコクンと傾けていた。
「ふにゃあ~、まだ体が痛いニャ……」
そう言いながら藁わらが敷き詰められた簡易ベッドの上をゴロゴロと寝返りをうつのは《三獣士》の一人であるクロウチだった。
日色との勝負に敗れ、今は捕虜として牢屋に放り込まれていた。男宝
「う~やっぱりまだ体も白いままニャ」
自分の手を見つめながら、黒かったはずの体毛が、今は雪のように真っ白になっていることに溜め息を吐く。
「あんな大物を一気に呼び出した《反動リバウンド》ニャねぇ……次の満月まではこのままかもニャ……」
しかもただ体毛が白くなっただけではなく、明らかに体長も変化していた。黒かった時は体つきも逞しく高身長な体つきだったが、今はまるで子供のような体躯に変化し、胸元も若干膨らんでいる。明らかに女の子だった。
「う~暇ニャ~」
ゴロゴロと体を動かしていたクロウチは急にピタッと動きを止める。そしてある人物のことを思い出す。
「……ヒイロ……かぁ」
自分と戦い、圧倒的な力を見せつけて敗北においやった本人を思い出す。
「赤ローブ……眼鏡……それにあのニオイ……」
戦っていた時、日色のニオイが鼻に入り、それがある違和感を感じさせていた。
「ニャんでタロウとおニャじニオイがするのニャ?」
それは同一人物だからなのだがとは誰も突っ込みは入れてくれない。前に日色と会った時は、彼は獣人の姿で本名を名乗らずタロウ・タナカと名乗っていた。だが赤ローブに眼鏡、態度、そしてニオイまでも酷似していたのだ。
だからこそ余計に混乱するのだ。日色が姿を変えることができると知っているのなら、すぐに答えに行きつくのだが、残念ながらクロウチは知らない。
「…………ああもう!」
またもゴロゴロと体を動かす。
「どうでもいいニャ! そんなことよりもう一度戦いたいニャ! ヒイロと会わせてほしいニャ~!」男根増長素
牢屋の中で甲高い声が響く。同じ牢屋に囚われている獣人たちは、「ああ、また癇癪かんしゃく起こしてるな」と呆れるような溜め息交じりの声が聞こえてくる。
牢屋番をしている者も、そんなことが何度もあったのか、軽く諦めている雰囲気で肩を竦めているだけだった。だが注意をしないわけにはいかない。
「こら、もう少し静かにしていろ」
少しだけ口調が優しいのは、クロウチの見た目が明らかに子供だからだろう。確かに敵だが、何もできない子供を一方的に憤怒の対象とするのは気が引けたようだ。
「う~ニャらヒイロ呼んできてニャ」
「それは無理だと前にも言ったろ? あの人はこの国の恩人にして、まさに英雄のような方だ。こんな場所にお連れするわけにはいかん」
「ニャ? ヒイロはそこまで人気なのかニャ?」
「まあな。あの戦いを直に見た奴らはみんなそう思ってるはずだ。それにあの人は一人で橋まで壊してくれたんだぞ? 俺たち『魔族イビラ』のためにそこまでしてくれた人を英雄と呼ばず何て呼ぶんだ?」
牢屋番の男は目を輝かせて、羨望の眼差しで遠くを見つめている。
「橋を!? 一人で!? す、すごいニャ……」
クロウチは橋にかなりの戦力が防衛に当たっていることを知っている。そんな中に一人で突っ込み、橋を壊した日色の強さにクロウチも目を光らせている。
男の言葉を全く疑わないクロウチもクロウチなのだが。彼の様子から本気で言っていると判断したのかもしれない。
「それに驚くことにあの人は『人間族ヒュマス』だったんだぞ?」
「……へ? 『人間族ヒュマス』ってどういうことニャ?」
「いやな、何でも変化の魔法が使えるらしくて、本来の姿は『人間族ヒュマス』らしいんだよ。いや~それにしても人間の中にもああいう人っているんだなぁ。【ヴィクトリアス】の人間とは大違いだ。あ、でもあの人も元は【ヴィクトリアス】出身……って言っていいのか?」
「……どういうことニャ?」
クロウチの顔が真剣な表情になり、探りを入れているということは、恍惚な表情に陥っている男は気づいていない。むしろ自分の言葉に酔っている感じだ。
「何でもよ、あの人は勇者と一緒に召喚された人らしいんだよ」
「…………」
「まあ、勇者じゃないみたいだけどな。本人はただ巻き込まれてこっちに来たって言ってたけどな……っておい聞いてるか?」男用99神油
クロウチが返事をしていないので気になって様子を確認したら、彼女は先程と違い静かに藁の上で横になっていた。そんな彼女を見てハッとなって冷静になる牢屋番。
「やっべえ。これって言って良かったことだっけ?」
つい熱くなってしまい敵に情報を流してしまったことに焦る。だが動かない彼女を見て、もしかしたら寝たのかもと思い、心の中でそのまま忘れてくれと願うように両手を合わし、そのまま仕事を継続した。
だが彼女が今の話を忘れるわけは無かった。何故なら今の話でヒイロとタロウが繋がったからだ。
(変化……そうニャ……やっぱり同一人物だったのニャ!)
心の中で湧き上がってくる衝動に胸が躍る。そして先程よりも会いたいという思いがさらに増していく。
それにもっと興味深い話も聞けた。
(それに異世界の住人……面白いニャ! ヒイロはホントに面白いニャ!)
頬を紅潮させて笑みを浮かべる。
「ニャハハ…………ニャハハ…………ニャハハ…………」
しばらく牢屋には彼女の笑い声だけが響いていたという。ちなみに牢屋番はその笑い声が何となく不気味で声を掛けなかったらしい。蔵秘回春丹
2015年4月1日星期三
第二王女ファラ
日色が生命力コントロールをララシークから教わる約束を得た頃、人間界のある場所では一人の少女が眠りから目覚めていた。
「ようやく目が覚めたようじゃわい」VIVID XXL
少女は突然耳に入ってきた言葉を発した人物に驚き、目を見張ってしまう。何故なら見たこともない人物だったからだ。刹那的に体を引いて距離を取ろうとしたのも無理はない。
「そう怯えんでもよろしいわい。わしゃこう見えてもチンチン……いや紳士じゃからわい」
「その間違いはよしてほしいですの!」
つい少女は顔を染め上げながら目の前の老人が言った言葉に反応してしまっていた。しかし大きな声を出した反動で「うっ……」と目頭を押さえてしまう。
「これこれ、まだ大声など出してはいかんわい」
誰のせいだと少女は言いたいがグッと抑えて周囲の状況の把握に努める。ここはどこかの小屋であり、それほど広くは無いその場には簡易式のベッドが二つほどあり、その一つに少女は寝ていた。
どうやら今ここに居るのは、少女と頭が禿げ上がってはいるが優しそうな雰囲気を醸し出している男性の二人だけだった。
「それにしてもよく眠っとったわい。覚えておるかい? お主が城から連れ出されてあれから三日間寝込んでいたんじゃわい」
老人の説明により自身に何が起きたのかそこでハッキリと思い出した。そして自分を城から連れ出した人物のことも……。
「……貴方は、ジュドム様のお仲間なんですの?」
「ひゃひゃひゃ、あのジュドム坊やを様扱いなど無用じゃわい。筋肉お馬鹿とでも呼ぶがよろしいわい」
「き、筋肉お馬鹿……」
老人のあまりの言い草に少女は頬を引き攣らせている。そこへ扉が開き中へ入って来たのが、今噂をしていたジュドムだった。
「おお、目が覚めたか!」
ジュドムはニカッと白い歯を見せてきた。少女はその笑顔を見てホッと胸を撫で下ろし、先程まで感じていた緊張感と不安が少し和らいだ。CROWN 3000
「ジュドム様……」
「……いろいろ聞きたいことがあるだろうが、まずはこれを飲め」
そう言ってジュドムが小さな器に入っている透明なスープを手渡してきた。
「これは……?」
「薬草と果実を混ぜ合わせて作ったスープだ。薬草だけじゃないからまだ飲み易いはずだぞ」
少女は小さく頷くと恐る恐る口をつけてゆっくり味を確かめる。確かにジュドムが言ったように苦いだけのものではなかった。ほのかな果実臭と果実の甘みがブレンドされており飲み易かった。
「まだ起きたばっかで食べ物は無理だろうが、栄養はとらねえといけねえからな」
ジュドムは小屋の隅に置かれてある椅子を持って来て少女の近くへ腰を下ろした。
「さて、何から話せばいいか……まずファラ、生きていてくれてホントに良かった」
「ジュドム様……」
そう、その少女の名はファラ。ファラ・ヴァン・ストラウス・アルクレイアムであり、【ヴィクトリアス】の第二王女だ。
彼女は勇者を異世界から召喚するための魔法に失敗して二度と目覚めないかもしれない眠りの世界に取り込まれてしまっていた。
彼女が召喚魔法を使って、そのような状況に陥ってから大分経ったが、こうして生きていてくれて良かったとジュドムは言ったのだ。
そして彼女もまた自分が長い間眠っていたことを自覚していた。痩せ細った体、いまだに抜け切れない虚弱感、自覚するには十分な材料だった。
だがそれでも目を覚ますことができたことは素直に嬉しかったと思っているファラ。こうして心から自分の目覚めを喜んでくれる人がいることが喜ばしいのだ。
「ファラ、まずお前が召喚を失敗して眠りについてから一年以上が経っちまってる」
「……そうですの」魔鬼天使性欲粉
一年……言葉にすれば短いが、されど一年。自分の有り様を見て表情を暗くさせる。
「この一年で大分世界情勢が変わっちまった。それは城の雰囲気を少しでも感じたお前なら理解できるはずだ」
それは確かにその通りだった。血相を変えてファラの自室へ踏み込んできたジュドムは、弱った自分を抱えて逃げていた。
そして次々と追って来る血の気を失ったように真っ白な顔をした人々。城の異様な雰囲気もそうだが、よく見れば兵士が血を出して倒れていた場面も見た。
始めはジュドムが国を裏切ったのかと思い焦りはしたが、自分を抱えている手から温かい優しさを感じて、この人は自分を守ってくれているのだと理解できた。
そして今、何が起きたかは分からないが城に、いや国に危機が迫っているのではと推測できた。それでも運ばれている途中で意識を失い思考は止まってしまったが。
「もしかして、『魔族イビラ』か『獣人族ガブラス』が国を襲ってきたんですの?」
「……そうとも言えるし、そうじゃねえとも言える」
「……ど、どういうことなんですの?」
ジュドムは先代魔王であるアヴォロスに【ヴィクトリアス】を乗っ取られた経緯を話す。そして『魔族イビラ』と『獣人族ガブラス』の同盟についてもだ。
聞いている間、ファラは瞬き一つせず固まったように耳を傾けていた。
「は、話が大き過ぎて理解が追いつきませんですの」
「ハハ、だろうな。……けどな、一番きっつい話はまだあるんだわ」
「……え?」
「……いや、この話はお前の体調がもっと落ち着いてからした方がいいな」
ジュドムはそう言い立ち上がろうとしたが、
「ジュドム様、聞かせて下さいですの」
「ファラ……けどこの話はお前が思ってる以上に重いぞ?」
「構いませんわですの。わたくしは【ヴィクトリアス】第二王女ファラ・ヴァン・ストラウス・アルクレイアムですの。国事から目を背けるわけには参りませんですの。重い話なら尚更……」D8媚薬
それはとても強い目だった。頬はこけて、目の周りも少し窪みができて明らかに生気が弱っているというのに、瞳に込められた光りは眩しく輝いていた。
「……ハハ、相変わらず王女の中でお前だけだな、そんな頑固で真っ直ぐなのは」
「……もしかして馬鹿にされていますの?」
ムッと口を尖らせてファラは言うが、
「アハハハハ! 褒めてんだよ! お前ならどんな話でも受け止められると思ってな!」
「もう、ジュドム様のいけずですの」
頬を膨らませてそっぽを向く。
「悪い悪い、けど心して聞けよ」
「……はい」
ジュドムは勇者が第一王女リリスによって召喚された出来事から今までのことについて、かいつまんでファラが理解できるように話した。
勇者召喚、同盟会談、戦争、様々なことを人間は……いやルドルフ国王は行った。そしてそのルドルフが醜い化け物の姿にされて、恐らく今はアヴォロスのもとにいるだろうことも全て話した。
ファラは目を閉じながらその話を聞いていた。唇だけでなく全身を小刻みに震わせているが、何が彼女の体をそうさせているのかは正確なところはジュドムにも分からなかった。
話し終えると、ファラの額からはじんわりと汗が噴き出ていた。見るからに衝撃を受けている顔つきだった。
「……少し休むか?」
「い、いいえ……お話しして頂いて感謝致しますの」アリ王 蟻王 ANT KING
強張った表情をしているファラの顔を見て、ジュドムはそっと彼女の頭に手を当てる。
「…………強がんな。一気に話されたんだ。頭と心の整理がそう簡単につくわけがねえ」
「…………はい」
「国に起こっていること、そしてこれからのことはみんなで考えりゃいい。お前は一人じゃねえんだ。今はこうして俺や、俺の仲間たちがいる」
ジュドムは安心させるような笑顔を浮かべ、ファラもまた微笑を返す。だがファラはそこでふと思い出す。
「あ、そう言えばここへ連れて来られる前、綺麗な女性のお方にお助けして頂いた記憶がありますがあのお方は……」
ファラはそう言うが、ジュドムは苦笑を彼女に向けると頭をかく。
「ああ、あの女のことか。アイツなら自分のことはファラが目を覚ましてから教えるとか言ってたぞ。もしかして知り合いか?」
「い、いいえ、記憶にありませんですの」
「あの女、俺たちを亡者どもから救ってくれたのはいいが、突然一言言うと消えちまいやがった」
「一言?」
「ああ、彼女が目を覚ます時に来るってな。ホントに知らねえのか?」
本当に知らないのかキョトンとしているファラ。その時、ギィ……っと扉が開き、そこから一人の女性が姿を現した。
ジュドムはサッと立ち上がって警戒するが、相手を見て虚を突かれる。
「言った通り来たわよ」
その人物こそ、アヴォロスが刺客として放っていた亡者からジュドムたちを助けてくれた女性だった。唐伯虎
「ようやく目が覚めたようじゃわい」VIVID XXL
少女は突然耳に入ってきた言葉を発した人物に驚き、目を見張ってしまう。何故なら見たこともない人物だったからだ。刹那的に体を引いて距離を取ろうとしたのも無理はない。
「そう怯えんでもよろしいわい。わしゃこう見えてもチンチン……いや紳士じゃからわい」
「その間違いはよしてほしいですの!」
つい少女は顔を染め上げながら目の前の老人が言った言葉に反応してしまっていた。しかし大きな声を出した反動で「うっ……」と目頭を押さえてしまう。
「これこれ、まだ大声など出してはいかんわい」
誰のせいだと少女は言いたいがグッと抑えて周囲の状況の把握に努める。ここはどこかの小屋であり、それほど広くは無いその場には簡易式のベッドが二つほどあり、その一つに少女は寝ていた。
どうやら今ここに居るのは、少女と頭が禿げ上がってはいるが優しそうな雰囲気を醸し出している男性の二人だけだった。
「それにしてもよく眠っとったわい。覚えておるかい? お主が城から連れ出されてあれから三日間寝込んでいたんじゃわい」
老人の説明により自身に何が起きたのかそこでハッキリと思い出した。そして自分を城から連れ出した人物のことも……。
「……貴方は、ジュドム様のお仲間なんですの?」
「ひゃひゃひゃ、あのジュドム坊やを様扱いなど無用じゃわい。筋肉お馬鹿とでも呼ぶがよろしいわい」
「き、筋肉お馬鹿……」
老人のあまりの言い草に少女は頬を引き攣らせている。そこへ扉が開き中へ入って来たのが、今噂をしていたジュドムだった。
「おお、目が覚めたか!」
ジュドムはニカッと白い歯を見せてきた。少女はその笑顔を見てホッと胸を撫で下ろし、先程まで感じていた緊張感と不安が少し和らいだ。CROWN 3000
「ジュドム様……」
「……いろいろ聞きたいことがあるだろうが、まずはこれを飲め」
そう言ってジュドムが小さな器に入っている透明なスープを手渡してきた。
「これは……?」
「薬草と果実を混ぜ合わせて作ったスープだ。薬草だけじゃないからまだ飲み易いはずだぞ」
少女は小さく頷くと恐る恐る口をつけてゆっくり味を確かめる。確かにジュドムが言ったように苦いだけのものではなかった。ほのかな果実臭と果実の甘みがブレンドされており飲み易かった。
「まだ起きたばっかで食べ物は無理だろうが、栄養はとらねえといけねえからな」
ジュドムは小屋の隅に置かれてある椅子を持って来て少女の近くへ腰を下ろした。
「さて、何から話せばいいか……まずファラ、生きていてくれてホントに良かった」
「ジュドム様……」
そう、その少女の名はファラ。ファラ・ヴァン・ストラウス・アルクレイアムであり、【ヴィクトリアス】の第二王女だ。
彼女は勇者を異世界から召喚するための魔法に失敗して二度と目覚めないかもしれない眠りの世界に取り込まれてしまっていた。
彼女が召喚魔法を使って、そのような状況に陥ってから大分経ったが、こうして生きていてくれて良かったとジュドムは言ったのだ。
そして彼女もまた自分が長い間眠っていたことを自覚していた。痩せ細った体、いまだに抜け切れない虚弱感、自覚するには十分な材料だった。
だがそれでも目を覚ますことができたことは素直に嬉しかったと思っているファラ。こうして心から自分の目覚めを喜んでくれる人がいることが喜ばしいのだ。
「ファラ、まずお前が召喚を失敗して眠りについてから一年以上が経っちまってる」
「……そうですの」魔鬼天使性欲粉
一年……言葉にすれば短いが、されど一年。自分の有り様を見て表情を暗くさせる。
「この一年で大分世界情勢が変わっちまった。それは城の雰囲気を少しでも感じたお前なら理解できるはずだ」
それは確かにその通りだった。血相を変えてファラの自室へ踏み込んできたジュドムは、弱った自分を抱えて逃げていた。
そして次々と追って来る血の気を失ったように真っ白な顔をした人々。城の異様な雰囲気もそうだが、よく見れば兵士が血を出して倒れていた場面も見た。
始めはジュドムが国を裏切ったのかと思い焦りはしたが、自分を抱えている手から温かい優しさを感じて、この人は自分を守ってくれているのだと理解できた。
そして今、何が起きたかは分からないが城に、いや国に危機が迫っているのではと推測できた。それでも運ばれている途中で意識を失い思考は止まってしまったが。
「もしかして、『魔族イビラ』か『獣人族ガブラス』が国を襲ってきたんですの?」
「……そうとも言えるし、そうじゃねえとも言える」
「……ど、どういうことなんですの?」
ジュドムは先代魔王であるアヴォロスに【ヴィクトリアス】を乗っ取られた経緯を話す。そして『魔族イビラ』と『獣人族ガブラス』の同盟についてもだ。
聞いている間、ファラは瞬き一つせず固まったように耳を傾けていた。
「は、話が大き過ぎて理解が追いつきませんですの」
「ハハ、だろうな。……けどな、一番きっつい話はまだあるんだわ」
「……え?」
「……いや、この話はお前の体調がもっと落ち着いてからした方がいいな」
ジュドムはそう言い立ち上がろうとしたが、
「ジュドム様、聞かせて下さいですの」
「ファラ……けどこの話はお前が思ってる以上に重いぞ?」
「構いませんわですの。わたくしは【ヴィクトリアス】第二王女ファラ・ヴァン・ストラウス・アルクレイアムですの。国事から目を背けるわけには参りませんですの。重い話なら尚更……」D8媚薬
それはとても強い目だった。頬はこけて、目の周りも少し窪みができて明らかに生気が弱っているというのに、瞳に込められた光りは眩しく輝いていた。
「……ハハ、相変わらず王女の中でお前だけだな、そんな頑固で真っ直ぐなのは」
「……もしかして馬鹿にされていますの?」
ムッと口を尖らせてファラは言うが、
「アハハハハ! 褒めてんだよ! お前ならどんな話でも受け止められると思ってな!」
「もう、ジュドム様のいけずですの」
頬を膨らませてそっぽを向く。
「悪い悪い、けど心して聞けよ」
「……はい」
ジュドムは勇者が第一王女リリスによって召喚された出来事から今までのことについて、かいつまんでファラが理解できるように話した。
勇者召喚、同盟会談、戦争、様々なことを人間は……いやルドルフ国王は行った。そしてそのルドルフが醜い化け物の姿にされて、恐らく今はアヴォロスのもとにいるだろうことも全て話した。
ファラは目を閉じながらその話を聞いていた。唇だけでなく全身を小刻みに震わせているが、何が彼女の体をそうさせているのかは正確なところはジュドムにも分からなかった。
話し終えると、ファラの額からはじんわりと汗が噴き出ていた。見るからに衝撃を受けている顔つきだった。
「……少し休むか?」
「い、いいえ……お話しして頂いて感謝致しますの」アリ王 蟻王 ANT KING
強張った表情をしているファラの顔を見て、ジュドムはそっと彼女の頭に手を当てる。
「…………強がんな。一気に話されたんだ。頭と心の整理がそう簡単につくわけがねえ」
「…………はい」
「国に起こっていること、そしてこれからのことはみんなで考えりゃいい。お前は一人じゃねえんだ。今はこうして俺や、俺の仲間たちがいる」
ジュドムは安心させるような笑顔を浮かべ、ファラもまた微笑を返す。だがファラはそこでふと思い出す。
「あ、そう言えばここへ連れて来られる前、綺麗な女性のお方にお助けして頂いた記憶がありますがあのお方は……」
ファラはそう言うが、ジュドムは苦笑を彼女に向けると頭をかく。
「ああ、あの女のことか。アイツなら自分のことはファラが目を覚ましてから教えるとか言ってたぞ。もしかして知り合いか?」
「い、いいえ、記憶にありませんですの」
「あの女、俺たちを亡者どもから救ってくれたのはいいが、突然一言言うと消えちまいやがった」
「一言?」
「ああ、彼女が目を覚ます時に来るってな。ホントに知らねえのか?」
本当に知らないのかキョトンとしているファラ。その時、ギィ……っと扉が開き、そこから一人の女性が姿を現した。
ジュドムはサッと立ち上がって警戒するが、相手を見て虚を突かれる。
「言った通り来たわよ」
その人物こそ、アヴォロスが刺客として放っていた亡者からジュドムたちを助けてくれた女性だった。唐伯虎
2015年3月30日星期一
誘拐
バリドは突然現れたミミルの姿にアッとなり、すぐに傍に近づく。
「ミミル様! どうしてこのような場所に! ここは危険ですからシェルターにと申し上げたはずです!」紅蜘蛛(媚薬催情粉)
「う……そ、それは理解していますけど、ミミルにも何かできることがあると思いまして……」
顔を俯かせるミミルを見てララシークは軽く溜め息を吐く。確かに彼女の周りに居る者たちは自分の役目を全うしている。
姉は国民たちの先頭に立って皆の不安を取り除いている。兄たちは戦線で敵と相対して国を守っている。そして彼女の親友であるミュアも、今は前線で必死に戦っているはずだ。
ミミルだけが確固たる仕事という仕事は割り当てられていない。しかし彼女にも役割が確かにあるのだ。それをララシークは伝える。
「ミミル様、あなたの役目はククリア様と同じ国民たちの恐怖を少しでも取り除くことです」
「え?」
「それは……歌です」
「歌……?」
「まあ、こんな時に何を言ってるんだと言われるかもしれませんが、あなたの歌には力があります。こんな状況でも、人々に勇気や癒しを与える力が」
「……ララシークさん」
「だから今すぐククリア様のところへ向かって、皆の前でお歌い下さい。あなたにしか、いや、あなただからこそできることがあるんです」
ララシークに言われ、ミミルの目に強い光が宿る。そしてミミルは大きく頷きを返すと、
「……分かりました! ミミルのやるべきことをします! その、すみませんでした……本来なら自分で気づくようなことなのでしょうが……その……すみません」
王女として、確かに自分のできることに気づくべきだったのかもしれないが、こうして自分の非を素直に認め改めようとするところが彼女の魅力でもある。
バリドもララシークも頬が緩み、彼女に頷きを返す。そしてバリドが兵士に向かって言う。
「護衛はしっかり頼んだぞ」
「はっ! お任せ下……さ……ぃ……っ!?」
突然ミミルの傍に控えている二人の兵士が膝を折る。突然のことに皆が吃驚する思いだが、D10 媚薬 催情剤
「きゃっ!?」
ミミルが小さく悲鳴を上げて、苦しそうに目を閉じている。そして何故か彼女の身体が宙に少しだけ浮く。
「「ミミル様!?」」
二人は何故そのようなことが起きているのか分からずつい彼女の名前を叫ぶ。するとミミルの周囲の空間が揺らぎ始め、そこから人型の何かが姿を現す。
「「っ!?」」
バリドたちの目の前には、二人の人物が現れ、黒衣を身に纏った一人はミミルを持ち上げて拘束している。そしてもう一人はその黒衣の者の方に手を置き目を閉じていた。
「な、何だコイツら!? どこから現れた!?」
バリドが叫ぶが、黒衣の人物が静かに口を開く。
「……【獣王国・パシオン】、第二王女ミミル・キング。確かにもらったぞ」
その言葉にバリドは目を血走らせジリッと近づこうとするが、黒衣が懐から取り出したナイフでミミルの喉元に当てる。
「なっ!? き、貴様ぁっ!」
「……お前はまだいい。そこの……《氷結童子(ひょうけつどうじ)》、妙な真似をするな。王女の命を刈り取るぞ?」
「……ちっ」
実はララシークは密かに《化装術》を発動させて相手を倒す算段だったのだが、それを見破られてしまい仕方無く力を抑える。そして水晶玉を見ると、そこにはいつの間にか大きな二つの青い点が自分たちの近くまでやって来ていたことに気づかなかったことに後悔を覚えた。花痴
それはミミルの登場により彼女に意識を向けてしまっていて、水晶玉から注意を離してしまったことに起因する。
「う……ぐ……っ」
ミミルが苦しそうに黒衣の腕の中でもがくが、鬱陶しいというように黒衣が彼女の首筋に手刀を落とす。
「あっ…………ヒイ……ロ……さ……ま……」
ミミルは愛しいものの名前を呼びながら意識を失った。
「貴様ぁぁぁぁっ!」
「何度も言わせるな。それ以上近づけば、この者の首を落とす」
「くっ……くそっ!」
「ランコニス、行くぞ」
「……は、はい」
ランコニスと呼ばれた少女が目を見開き返事をする。そして黒衣たちの足元に水溜まりが広がっていく。それを見たバリドが「転移魔法かっ!?」と焦燥感を表すが、手を出すこともできずにただただ身体を怒りで震わせているだけである。
そんな中、ララシークは一歩前に出て口を開く。
「お前、そこの全身黒づくめのお前、名前を教えろ」
「…………イシュカだ」
するとイシュカはミミルを抱えたまま水の中へと沈んでいった。三人が消えた瞬間、ララシークはすかさず水晶玉をチェックする、すると先程四つの大きな点が集まっていた場所には二つしかなく。少ししてからそこに三つの点が現れた。
「バリド! すぐに部隊を東の丘に向かわせろ! アタシも行く!」三體牛寶
「しょ、承知っ!」
バリドは空を飛びながらレッグルス、レニオン、プティスの部隊に向かって行った。ララシークは高台から東の方を注視すると、
「アッチだな」
鋭く細められた彼女の瞳。そして彼女が前に手をかざすと、そこから空間を割ってララシークの倍以上はある巨大な雪ウサギが出現する。
「ユキちゃん、空から向かうぞ」
ララシークはユキちゃんこと、『精霊』のユキオウザに乗り込んだ。
東の丘ではキルツとヒヨミがイシュカたちの帰りを待っていた。そして地面に水が広がりそこからミミルを抱えたイシュカとランコニスが姿を見せた。
「任務完了だ。今すぐコレを陛下に捧げよう」
イシュカの物言いにキルツはサングラスの奥で目を細めて舌打ちを打つ。その視線はミミルに向けられてあり、やり切れない思いを抱えていた。
「さっさとこちらへ来いキルツ。お前の功労、陛下に伝えてやろう」
「…………」
確かに今回、キルツが作り出した水人形の襲撃で、相手の注意を外側に引きつけることができ、本来の目的であるミミルという考えを相手に抱かせないことができた。
だがそれは実際キルツの思惑から外れていたのだ。ヒヨミが作り出した木々と違って、水人形は必要以上に破壊活動は行わず《王樹》に意識を向けさせていた。勃動力三体牛鞭
だからこちらの狙いは《王樹》にあるのだとキルツは敵対勢力に教えていたつもりだったが、いかんせん能力の制限もあり、上手く伝えたいことが伝わらなかった。
それ以上に、イシュカの仕事の迅速さを見誤っていた。キルツはどうにかミミルを解放してやりたいと思っていたが、今の自分はヒヨミに言われた通り傀儡に過ぎず、刃向うことはできない。
できることと言えば、ほんの少しのヒントを敵側に教えることと、こうして若干時間稼ぎすることだけだ。
耳を澄ませば獣人部隊がこちらへ向かってきていることは分かる。しかしイシュカの転移の方が早いだろう。
キルツは再びサングラス越しにぐったりとしているミミルを見ると、
(すまねえな……獣人の嬢ちゃん)
再度心の中で謝罪した。そしてイシュカの言うように足を動かして水の中に踏み入れたその刹那
ピシィィィィィィィィッ!
突如として辺り一面が凍結した。
そして上空から影が差し、四人が見上げるとそこには大きな雪ウサギが空を飛んでおり、そこから小さな影が飛び下りてきた。
スタッと地面に着地したそれは、不敵な笑みを浮かべながら言い放った。
「国の大切な宝ぁ、返してもらうぜ?」
白衣を身に纏った幼女、ララシーク・ファンナルの登場だった。蒼蝿水
「ミミル様! どうしてこのような場所に! ここは危険ですからシェルターにと申し上げたはずです!」紅蜘蛛(媚薬催情粉)
「う……そ、それは理解していますけど、ミミルにも何かできることがあると思いまして……」
顔を俯かせるミミルを見てララシークは軽く溜め息を吐く。確かに彼女の周りに居る者たちは自分の役目を全うしている。
姉は国民たちの先頭に立って皆の不安を取り除いている。兄たちは戦線で敵と相対して国を守っている。そして彼女の親友であるミュアも、今は前線で必死に戦っているはずだ。
ミミルだけが確固たる仕事という仕事は割り当てられていない。しかし彼女にも役割が確かにあるのだ。それをララシークは伝える。
「ミミル様、あなたの役目はククリア様と同じ国民たちの恐怖を少しでも取り除くことです」
「え?」
「それは……歌です」
「歌……?」
「まあ、こんな時に何を言ってるんだと言われるかもしれませんが、あなたの歌には力があります。こんな状況でも、人々に勇気や癒しを与える力が」
「……ララシークさん」
「だから今すぐククリア様のところへ向かって、皆の前でお歌い下さい。あなたにしか、いや、あなただからこそできることがあるんです」
ララシークに言われ、ミミルの目に強い光が宿る。そしてミミルは大きく頷きを返すと、
「……分かりました! ミミルのやるべきことをします! その、すみませんでした……本来なら自分で気づくようなことなのでしょうが……その……すみません」
王女として、確かに自分のできることに気づくべきだったのかもしれないが、こうして自分の非を素直に認め改めようとするところが彼女の魅力でもある。
バリドもララシークも頬が緩み、彼女に頷きを返す。そしてバリドが兵士に向かって言う。
「護衛はしっかり頼んだぞ」
「はっ! お任せ下……さ……ぃ……っ!?」
突然ミミルの傍に控えている二人の兵士が膝を折る。突然のことに皆が吃驚する思いだが、D10 媚薬 催情剤
「きゃっ!?」
ミミルが小さく悲鳴を上げて、苦しそうに目を閉じている。そして何故か彼女の身体が宙に少しだけ浮く。
「「ミミル様!?」」
二人は何故そのようなことが起きているのか分からずつい彼女の名前を叫ぶ。するとミミルの周囲の空間が揺らぎ始め、そこから人型の何かが姿を現す。
「「っ!?」」
バリドたちの目の前には、二人の人物が現れ、黒衣を身に纏った一人はミミルを持ち上げて拘束している。そしてもう一人はその黒衣の者の方に手を置き目を閉じていた。
「な、何だコイツら!? どこから現れた!?」
バリドが叫ぶが、黒衣の人物が静かに口を開く。
「……【獣王国・パシオン】、第二王女ミミル・キング。確かにもらったぞ」
その言葉にバリドは目を血走らせジリッと近づこうとするが、黒衣が懐から取り出したナイフでミミルの喉元に当てる。
「なっ!? き、貴様ぁっ!」
「……お前はまだいい。そこの……《氷結童子(ひょうけつどうじ)》、妙な真似をするな。王女の命を刈り取るぞ?」
「……ちっ」
実はララシークは密かに《化装術》を発動させて相手を倒す算段だったのだが、それを見破られてしまい仕方無く力を抑える。そして水晶玉を見ると、そこにはいつの間にか大きな二つの青い点が自分たちの近くまでやって来ていたことに気づかなかったことに後悔を覚えた。花痴
それはミミルの登場により彼女に意識を向けてしまっていて、水晶玉から注意を離してしまったことに起因する。
「う……ぐ……っ」
ミミルが苦しそうに黒衣の腕の中でもがくが、鬱陶しいというように黒衣が彼女の首筋に手刀を落とす。
「あっ…………ヒイ……ロ……さ……ま……」
ミミルは愛しいものの名前を呼びながら意識を失った。
「貴様ぁぁぁぁっ!」
「何度も言わせるな。それ以上近づけば、この者の首を落とす」
「くっ……くそっ!」
「ランコニス、行くぞ」
「……は、はい」
ランコニスと呼ばれた少女が目を見開き返事をする。そして黒衣たちの足元に水溜まりが広がっていく。それを見たバリドが「転移魔法かっ!?」と焦燥感を表すが、手を出すこともできずにただただ身体を怒りで震わせているだけである。
そんな中、ララシークは一歩前に出て口を開く。
「お前、そこの全身黒づくめのお前、名前を教えろ」
「…………イシュカだ」
するとイシュカはミミルを抱えたまま水の中へと沈んでいった。三人が消えた瞬間、ララシークはすかさず水晶玉をチェックする、すると先程四つの大きな点が集まっていた場所には二つしかなく。少ししてからそこに三つの点が現れた。
「バリド! すぐに部隊を東の丘に向かわせろ! アタシも行く!」三體牛寶
「しょ、承知っ!」
バリドは空を飛びながらレッグルス、レニオン、プティスの部隊に向かって行った。ララシークは高台から東の方を注視すると、
「アッチだな」
鋭く細められた彼女の瞳。そして彼女が前に手をかざすと、そこから空間を割ってララシークの倍以上はある巨大な雪ウサギが出現する。
「ユキちゃん、空から向かうぞ」
ララシークはユキちゃんこと、『精霊』のユキオウザに乗り込んだ。
東の丘ではキルツとヒヨミがイシュカたちの帰りを待っていた。そして地面に水が広がりそこからミミルを抱えたイシュカとランコニスが姿を見せた。
「任務完了だ。今すぐコレを陛下に捧げよう」
イシュカの物言いにキルツはサングラスの奥で目を細めて舌打ちを打つ。その視線はミミルに向けられてあり、やり切れない思いを抱えていた。
「さっさとこちらへ来いキルツ。お前の功労、陛下に伝えてやろう」
「…………」
確かに今回、キルツが作り出した水人形の襲撃で、相手の注意を外側に引きつけることができ、本来の目的であるミミルという考えを相手に抱かせないことができた。
だがそれは実際キルツの思惑から外れていたのだ。ヒヨミが作り出した木々と違って、水人形は必要以上に破壊活動は行わず《王樹》に意識を向けさせていた。勃動力三体牛鞭
だからこちらの狙いは《王樹》にあるのだとキルツは敵対勢力に教えていたつもりだったが、いかんせん能力の制限もあり、上手く伝えたいことが伝わらなかった。
それ以上に、イシュカの仕事の迅速さを見誤っていた。キルツはどうにかミミルを解放してやりたいと思っていたが、今の自分はヒヨミに言われた通り傀儡に過ぎず、刃向うことはできない。
できることと言えば、ほんの少しのヒントを敵側に教えることと、こうして若干時間稼ぎすることだけだ。
耳を澄ませば獣人部隊がこちらへ向かってきていることは分かる。しかしイシュカの転移の方が早いだろう。
キルツは再びサングラス越しにぐったりとしているミミルを見ると、
(すまねえな……獣人の嬢ちゃん)
再度心の中で謝罪した。そしてイシュカの言うように足を動かして水の中に踏み入れたその刹那
ピシィィィィィィィィッ!
突如として辺り一面が凍結した。
そして上空から影が差し、四人が見上げるとそこには大きな雪ウサギが空を飛んでおり、そこから小さな影が飛び下りてきた。
スタッと地面に着地したそれは、不敵な笑みを浮かべながら言い放った。
「国の大切な宝ぁ、返してもらうぜ?」
白衣を身に纏った幼女、ララシーク・ファンナルの登場だった。蒼蝿水
2015年3月27日星期五
コンビネーション
カミュが地面に魔力を流し始めると、ヒヨミがその行為を見て呟く。
「……何かする気だな」
しかし傍観者といった態度を崩さず、ただ腕を組んで黙って見つめているだけだ。まるでカミュがこれから何をしようとしているか楽しみにしている雰囲気さえ漂わす。Motivator
「デザートストームッ!」
カミュが砂漠化した部分の砂がウネウネと動きだし、その上に立っている木のモンスターたちは身動きを拘束される。次第に砂が渦を巻き始め、その回転力が増していく。
そして竜巻を描きながら重いはずの木のモンスターたちは天へと風に運ばれ昇っていく。ただの砂嵐ではなく、その砂が刃物状に鋭くなっているので、巻き込まれたモンスターたちは風に遊ばれながら体中を切り刻まれてしまう。
そして竜巻から弾き飛ばされたモンスターたちは地面に激突し沈黙する。
モンスターたちがいなくなったお蔭で、ハッキリとヒヨミの姿を視界に捉えることができた。
「……いくよニッキ」
「了解ですぞ!」
カミュの声に反応したニッキがまず先に砂を巻き上げながらヒヨミとの距離を詰めていく。その背後にピタリとつき追従するカミュ。
「前回はお前たちの勝ちだが、今回は譲れんぞ?」
ヒヨミが地面に手をかざし膨大な魔力を注ぎ込んでいく。
「来い……《仙樹宝剣フェルバスター》」
地面に亀裂が走り、そこから剣の柄が突き出てくる。ヒヨミはそれを力任せに引っ張り上げる。
全長五メートル。刃の太さ三十センチ。ニスでも塗ったかのように艶光りを放っている黒い樹で創り上げられた大剣。今その剣がヒヨミの右手に装備された。
以前戦った時も、ヒヨミはこの剣を使い二人を圧倒していた。ニッキの《爆拳》でも傷一つつけられないほどの頑丈さを持った武器なのだ。SPANISCHE FLIEGE D5
普通ではその大きさや重さから扱うにも一苦労するが、鋼のような筋肉の塊を全身に纏うヒヨミは、いとも簡単にそれを振り回す。
「ニッキ、合図したら……いい?」
「オッケーですぞ!」
走りながらカミュはニッキに言うと、二人がその場から左右に分かれてヒヨミを挟む形になった。
そしてすかさずカミュが地面に手を触れると、まだ地面のままだった場所が砂漠化していきヒヨミの足元にも広がっていく。
「準備ができたらさっさと来い」
余裕綽々といった感じで発言するヒヨミに対し、カミュは睨みつけながら答える。
「なら思い知らせてあげる。……クローンサンド」
砂からカミュそっくりの物体が出現する。徐々にヒヨミの周囲を囲んでいく。
「なるほど、大した数だ」
ヒヨミはガシッと《仙樹宝剣フェルバスター》を肩に担ぐと視線だけを動かして複数のカミュを確認していく。
それぞれのカミュが双刀を構えてヒヨミへと突っ込んでいく。するとヒヨミの目が鋭く光り、ブオォンッとヒヨミの周囲に風切り音が響く。
考えられない速度で大剣を振り回した。その行動によって生み出された風圧は凄まじいもので、カミュたちを後方へと吹き飛ばしていく。だが中には上空からヒヨミ目掛けて突撃している者もいた。ヒヨミの意識もそちらに向き、同じように大剣を上空に向けて振る。
砂でできているカミュは一瞬で霧散して大地に降り注ぐ。しかしそこでヒヨミは足元の違和感に気づく。
「む?」
見れば足元の砂がヒヨミの身体を上っていく。K-Y
「ふむ、上空に意識を向かわせてから、足元の砂を動かして相手を拘束か……理にかなった攻撃だ」
動きを奪われながらもいまだに余裕を見せて分析しているヒヨミ。
「今だよニッキッ!」
カミュが叫ぶと、今まで沈黙を守ってきていたニッキがカッと目を見開き、
「待ってましたぞ! 《爆拳・参式》っ!」
地面にその右拳を突き立てると、その威力が大地を伝ってヒヨミのもとへと向かう。そして彼の足元が突如として爆発を起こした。
「まずは先制成功ですぞぉっ!」
ニッキは力強く拳を高く突き上げて、カミュも納得気にコクンと頷く。そして爆煙の中から、含み笑いが聞こえてくる。
「ククククク、やはりなかなかのコンビネーションだな」
そこにいるであろうヒヨミが大剣を振り回し、その風圧によって煙を晴らす。
「以前よりも、若干攻撃力も上がっている。まさに発展途上か……面白い」
ニッキの攻撃によって無傷ではないが、それでも大したダメージにはなっていないのが分かる。
「やっぱり《参式》ではその程度ですか……」sex drops 小情人
ニッキは自身の技があまり効いていないことに悔しくて歯噛みをしている。
「……やはり《四式》をやるしか……」
「けどそれはまだ完璧じゃねえだろ?」
いつのまにかカミュの肩からニッキの背後へと位置取っていたテン。
「で、ですがこのままではダメージを与えられないですぞ」
「……まだカミュだってアレがある。それに《四式》をするにも力を溜める間はお前は無防備になっちまうしな」
そこへカミュがやって来て、テンがニッキが《四式》を使おうとしていることを話す。
「……分かった。それじゃ俺が時間を稼ぐ」
「い、いいのですかな?」
「うん、それに俺もアレを使おうと思ってたから。だからニッキは少し離れたところで準備しといて?」
「……はいですぞ」
ニッキも覚悟を決めたようにしっかりした返事を返した。だが突然ヒヨミが突っ込んできた。ハッとなったカミュは咄嗟に前方に砂壁を作る。
「ニッキ、ここは俺に任せて!」
ニッキは頷くとその場から離れていく。だが次の瞬間、砂壁が力任せに弾かれ、中からヒヨミが飛び出してきて大剣をカミュに向けて振り回した。VVK
カミュは大きくしゃがみ込んで回避し、ヒヨミが振り切った隙をついて刀を鞘から抜いて喉元へと突き刺そうと懐へ入るが、突如下から先端が尖った木が出現する。
「っ!?」
気づいたカミュは何とか身体を捻り避けようとするが、左腕に掠ってしまい血が飛び散る。カミュは一旦攻撃を止め、その場から脱出する。
そしてある一定の距離を保ちヒヨミと相対する。彼の左腕の傷口からはドクドクと血が流れ出ている。
さすがはアヴォロスの直近。いくら懐へ入ろうが、今のような対応をされれば、なかなか攻撃を当てることすら難しい。
「だけど……この血はちょうど良かった」
カミュは左腕を振り、自身の鮮血を砂へと撒いた。
「ここからは第二ラウンド……俺の血は感染する」
次第に砂に染み込んだ赤が広がっていく。その光景を見てヒヨミは眉をひそめて警戒を高めている。
「俺のレッドアイドル……見せてあげる」
それはかつて、日色と戦った時にだけ見せた魔法だった。漢方蟻力神
「……何かする気だな」
しかし傍観者といった態度を崩さず、ただ腕を組んで黙って見つめているだけだ。まるでカミュがこれから何をしようとしているか楽しみにしている雰囲気さえ漂わす。Motivator
「デザートストームッ!」
カミュが砂漠化した部分の砂がウネウネと動きだし、その上に立っている木のモンスターたちは身動きを拘束される。次第に砂が渦を巻き始め、その回転力が増していく。
そして竜巻を描きながら重いはずの木のモンスターたちは天へと風に運ばれ昇っていく。ただの砂嵐ではなく、その砂が刃物状に鋭くなっているので、巻き込まれたモンスターたちは風に遊ばれながら体中を切り刻まれてしまう。
そして竜巻から弾き飛ばされたモンスターたちは地面に激突し沈黙する。
モンスターたちがいなくなったお蔭で、ハッキリとヒヨミの姿を視界に捉えることができた。
「……いくよニッキ」
「了解ですぞ!」
カミュの声に反応したニッキがまず先に砂を巻き上げながらヒヨミとの距離を詰めていく。その背後にピタリとつき追従するカミュ。
「前回はお前たちの勝ちだが、今回は譲れんぞ?」
ヒヨミが地面に手をかざし膨大な魔力を注ぎ込んでいく。
「来い……《仙樹宝剣フェルバスター》」
地面に亀裂が走り、そこから剣の柄が突き出てくる。ヒヨミはそれを力任せに引っ張り上げる。
全長五メートル。刃の太さ三十センチ。ニスでも塗ったかのように艶光りを放っている黒い樹で創り上げられた大剣。今その剣がヒヨミの右手に装備された。
以前戦った時も、ヒヨミはこの剣を使い二人を圧倒していた。ニッキの《爆拳》でも傷一つつけられないほどの頑丈さを持った武器なのだ。SPANISCHE FLIEGE D5
普通ではその大きさや重さから扱うにも一苦労するが、鋼のような筋肉の塊を全身に纏うヒヨミは、いとも簡単にそれを振り回す。
「ニッキ、合図したら……いい?」
「オッケーですぞ!」
走りながらカミュはニッキに言うと、二人がその場から左右に分かれてヒヨミを挟む形になった。
そしてすかさずカミュが地面に手を触れると、まだ地面のままだった場所が砂漠化していきヒヨミの足元にも広がっていく。
「準備ができたらさっさと来い」
余裕綽々といった感じで発言するヒヨミに対し、カミュは睨みつけながら答える。
「なら思い知らせてあげる。……クローンサンド」
砂からカミュそっくりの物体が出現する。徐々にヒヨミの周囲を囲んでいく。
「なるほど、大した数だ」
ヒヨミはガシッと《仙樹宝剣フェルバスター》を肩に担ぐと視線だけを動かして複数のカミュを確認していく。
それぞれのカミュが双刀を構えてヒヨミへと突っ込んでいく。するとヒヨミの目が鋭く光り、ブオォンッとヒヨミの周囲に風切り音が響く。
考えられない速度で大剣を振り回した。その行動によって生み出された風圧は凄まじいもので、カミュたちを後方へと吹き飛ばしていく。だが中には上空からヒヨミ目掛けて突撃している者もいた。ヒヨミの意識もそちらに向き、同じように大剣を上空に向けて振る。
砂でできているカミュは一瞬で霧散して大地に降り注ぐ。しかしそこでヒヨミは足元の違和感に気づく。
「む?」
見れば足元の砂がヒヨミの身体を上っていく。K-Y
「ふむ、上空に意識を向かわせてから、足元の砂を動かして相手を拘束か……理にかなった攻撃だ」
動きを奪われながらもいまだに余裕を見せて分析しているヒヨミ。
「今だよニッキッ!」
カミュが叫ぶと、今まで沈黙を守ってきていたニッキがカッと目を見開き、
「待ってましたぞ! 《爆拳・参式》っ!」
地面にその右拳を突き立てると、その威力が大地を伝ってヒヨミのもとへと向かう。そして彼の足元が突如として爆発を起こした。
「まずは先制成功ですぞぉっ!」
ニッキは力強く拳を高く突き上げて、カミュも納得気にコクンと頷く。そして爆煙の中から、含み笑いが聞こえてくる。
「ククククク、やはりなかなかのコンビネーションだな」
そこにいるであろうヒヨミが大剣を振り回し、その風圧によって煙を晴らす。
「以前よりも、若干攻撃力も上がっている。まさに発展途上か……面白い」
ニッキの攻撃によって無傷ではないが、それでも大したダメージにはなっていないのが分かる。
「やっぱり《参式》ではその程度ですか……」sex drops 小情人
ニッキは自身の技があまり効いていないことに悔しくて歯噛みをしている。
「……やはり《四式》をやるしか……」
「けどそれはまだ完璧じゃねえだろ?」
いつのまにかカミュの肩からニッキの背後へと位置取っていたテン。
「で、ですがこのままではダメージを与えられないですぞ」
「……まだカミュだってアレがある。それに《四式》をするにも力を溜める間はお前は無防備になっちまうしな」
そこへカミュがやって来て、テンがニッキが《四式》を使おうとしていることを話す。
「……分かった。それじゃ俺が時間を稼ぐ」
「い、いいのですかな?」
「うん、それに俺もアレを使おうと思ってたから。だからニッキは少し離れたところで準備しといて?」
「……はいですぞ」
ニッキも覚悟を決めたようにしっかりした返事を返した。だが突然ヒヨミが突っ込んできた。ハッとなったカミュは咄嗟に前方に砂壁を作る。
「ニッキ、ここは俺に任せて!」
ニッキは頷くとその場から離れていく。だが次の瞬間、砂壁が力任せに弾かれ、中からヒヨミが飛び出してきて大剣をカミュに向けて振り回した。VVK
カミュは大きくしゃがみ込んで回避し、ヒヨミが振り切った隙をついて刀を鞘から抜いて喉元へと突き刺そうと懐へ入るが、突如下から先端が尖った木が出現する。
「っ!?」
気づいたカミュは何とか身体を捻り避けようとするが、左腕に掠ってしまい血が飛び散る。カミュは一旦攻撃を止め、その場から脱出する。
そしてある一定の距離を保ちヒヨミと相対する。彼の左腕の傷口からはドクドクと血が流れ出ている。
さすがはアヴォロスの直近。いくら懐へ入ろうが、今のような対応をされれば、なかなか攻撃を当てることすら難しい。
「だけど……この血はちょうど良かった」
カミュは左腕を振り、自身の鮮血を砂へと撒いた。
「ここからは第二ラウンド……俺の血は感染する」
次第に砂に染み込んだ赤が広がっていく。その光景を見てヒヨミは眉をひそめて警戒を高めている。
「俺のレッドアイドル……見せてあげる」
それはかつて、日色と戦った時にだけ見せた魔法だった。漢方蟻力神
2015年3月26日星期四
歴史的瞬間
【獣王国・パシオン】へ帰ると、さっそくレッグルスとプティスは《黒樹の種》をレオウードのもとへ持っていった。日色はその前に用事があると言って、厨房へと急いだ。
もちろん《銀米草》がちゃんと届いているかの確認である。ニッキもミミルもついてくるというので一緒に向かった。SPANISCHE FLIEGE D5
「……あ、オッサン?」
厨房に入ると見知った顔を見つける。アノールド・オーシャンだ。
「おうヒイロじゃねえか! お前だろ、この大量の花を送ってきたの? 料理人たちがあまりの量でひっくり返ってたぞ?」
「一応送ると前もって言っておいたはずだ」
「にしてもこの量はなぁ」
厨房の三分の二ほどの空間を埋め尽くすほどの大風呂敷の群れ。この一つ一つに《銀米草》が詰め込んである。料理人たちは風呂敷を解いて大量のソレを整理するのにてんやわんや中らしい。
「オッサンは何故ここに――――ってアンタの後ろでチラチラ見えてるのは何だ?」
よく見ると、アノールドの陰に隠れてチラチラと日色を見ている少女がいる。いやまあ、誰かは分かってるのだが……。
「何やってるんだ、ミュア?」
「あぅっ!?」
顔を真っ赤に染め上げながら素早く全身をアノールドの後ろに隠すミュア・カストレイア。もう何度か会っているはずなのだが、まだこうして面と向かうと照れた素振りを見せる。
「や、やっぱ名前で呼ばれるのは緊張するよぉ……」
小声でそんなことを言っているが、日色の耳には届いていない。そんな彼女を見てミミルはクスッと笑みを零すと近づいていく。
「ミュアちゃん!」
「あ、ミミルちゃん、お、おかえり」
「はい、ただいまです! ほらミュアちゃん、そんなところに隠れていないで出てきましょう!」
「あ、引っ張らないでミミルちゃん! わ、わたしまだ心の準備が!」
「もう、いつもそれなのですから! ダメです!」K-Y
強引にミュアの腕を引っ張り表に出すミミル。
(まあ、オレも最初は何となく恥ずかしい感じだったが、コイツのこれは少し大げさ過ぎやしないか?)
さすがの日色も、キスをされて好きだと言われてそれが親愛からくるものだなどとは誤解しない。それまでは精々が兄を慕う妹のような想いだと思っていたが、ミュアの日色への想いが異性に対するソレなのだということはさすがに理解できている。
なので戦争が終わり目を覚まして初めてミュアに会った時は、日色も初めて会いたいような会いたくないような不可思議な想いと緊張感があったが、今ではそれも和らいでいる。
だが会う度にミュアはまだ新鮮な態度を見せてくるので、逆にこちらが恥ずかしくなってしまう感じだ。
「あ、あのあの、そのですね……ヒイロ……さん」
「何だ?」
「あ……っ!?」
前に出てきたミュアと目を合わせた瞬間にボフッと彼女の頭から湯気が立ち昇り、その衝撃のせいかよろめいたので日色はそっと彼女を受け止める。
「はにゃっ!?」
さらに紅潮する彼女の顔。これは熱湯風呂我慢大会でも参加したみたいにのぼせ上がった表情だ。どことなく涙目だし。
「あ、あうあう……ヒイロさんの顔……ふにゅ~……!」
グルグルと目を回してそのまま日色の腕の中で失神してしまった。
「お前……初心うぶ過ぎるだろ」
「ふふふ、ミュアちゃんですから。でも羨ましいです」
「は? 何がだ?」
「だってヒイロさまの初めてを奪ったんですから、ミュアちゃんは。一歩リードされちゃいました」
「…………」
彼女―――ミミルの気持ちももう分かっている。彼女もミュアと同じ想いを自分に抱いているということは。sex drops 小情人
「ミミルだって負けていられません! 覚悟していて下さいね、ヒイロさま!」
「むむむ! ボクだって師匠のこと大好きですぞ!」
ニッキも参加してくる。この子に関しては純粋に師を慕っている気持ちの方が強いだろう。だが本当に何故だろうか……。
(何故こうもオレは子供に好かれるんだ……?)
日色最大の謎である。
(まあ、嬉しいか嬉しくないかといえば、嬉しい方なんだが…………幼女だしな……)
こちらとしては恋愛対象としてみるのは抵抗があり過ぎる。また恋愛など今までしてきたことがない日色にとっては、とても難しいテーマなのだ。
ただ彼女たちに好きと言われると、心の奥が温かくなるのは心地好いとは思っている。
「くそぉ……ヒイロめ……ミュアの初めてを奪っただけじゃなく、ミミル様のも奪うつもりか……このロリコン野郎め……」
ブツブツとアノールドが爪を噛みながら妬ましいことを言っているみたいだが、
「ロリコンはアンタだろオッサン」
「何っ!? 俺の心を読んだのか!?」
「声に出てたぞバカ」
「くっ……ああもう忌々しいっ! 何でコイツばっかモテんだよぉ! 俺だって恋がしてぇぇぇぇっ!」
「厨房で叫ぶな変態。そんなことより暇なら料理しろ鬼畜」
「おいこらテメエ! 誰が変態で鬼畜だ! いっぺんぶん殴るぞホントまったくよぉ!」
とまあ、通例のやり取りをした後、気絶したミュアをアノールドに任せて日色はレオウードのもとへと向かうことにした。
彼がいたのは《玉座の間》であり、すでにレッグルスから粗方の説明を受けていたようだ。VVK
「おおヒイロ、待っておったぞ」
「ああ」
「ずいぶん珍妙な体験をしたようだな」
「まあな。ん? もしかしてタマゴジジイのことも聞いたのか?」
「ざっくりとはな。しかしまさか、あそこにそのような者がいたとはな。しかもアダムスとの交流がある人物とは……驚きだ」
「今そいつのことはいい。それで? 《黒樹の種》はどうするんだ?」
「おお、そのことだ。実はな、今から《始まりの樹・アラゴルン》があった場所へ皆で向かおうと言っていたところだったのだ」
「ほう」
「お前もついてきてくれ」
「別に構わんぞ」
レオウードは触れを出した。その内容は、これから新たな《アラゴルン》の誕生を見せるというようなもの。
城中の者だけでなく、国中の民たちが一挙に《アラゴルン》のもとへと集まってきた。レオウードは皆に見えるように《黒樹の種》を高々く持ち上げる。淡い光に包まれた種。
民たちがそれを見て感嘆の溜め息を漏らしている。
「皆の者! ここに我らの《アラゴルン》の復活を願ってこの《黒樹の種》を埋めたいと思う! 聞いてくれ! この種は我が息子―――レッグルスが我が英雄――――ヒイロとともにある場所へ行き手に入れてきてくれたものである!」
「「「「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」」」」
日色を英雄視している者たちや、レッグルスを慕っている者たちばかりなので、大いに喜びの声を上げている。
「これより、新たな《アラゴルン》誕生をその眼に焼き付けておくのだ!」
レオウードは種を胸の前まで持ってくると、身体をレッグルスへと向け腕を突き出す。
「え……父上?」
「これはお前が試練を乗り越えて勝ち取ったものだ。お前の手で埋めるのだ」
「…………分かりました」漢方蟻力神
レッグルスが種を受け取ると、ざわついていた観客たちも静まり返る。これから一世一代の歴史的瞬間を見逃さないように誰もが息を呑んでいる。
レッグルスがゆっくりと歩き、《アラゴルン》が存在した場所に立つ。
「……《黒樹・ベガ》よ。我らが創世の大樹よ。今この時をもって、再び我らの前にその姿を見せたまえ」
レッグルスが種を持った両手をそっと前方へと突き出す。種がフワリと自然に浮き、ひとりでにゆっくりと雪が落ちるような感じの速度で大地へと落下していく。
そのまま土の中へ吸い込まれるようにして消失した種。すると乾いた大地から次々と草花が生えていく。《アラゴルン》が死んだ時、周囲に生えていた緑も軒並み枯れ果ててしまていて、大地も乾いていた。
しかし今、種が吸い込まれた瞬間、大地は瑞々しい色合いを取り戻し、緑を復活させた。更にその中心――ピョコッ!
一際大きな芽が姿を見せた。その姿を見た者たちが―――――――
「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっっっ!」」」」
大気を割らんばかりの歓声を響かせる。その芽はまさしく大樹の新芽である。
「皆の者ぉっ! ここに新たな《アラゴルン》が誕生したっ! 今宵は宴だぁぁぁぁっ!」
レオウードの声に呼応して、全ての者があらん限りの声を発し喜色満面の態度を現す。やはり獣人にとって《アラゴルン》が特別なのだと改めて理解させられる。
ここに《始まりの樹》ならぬ《次世代の樹・アラゴルン》が復活した。
まさに、歴史が作られた瞬間であった。男宝
もちろん《銀米草》がちゃんと届いているかの確認である。ニッキもミミルもついてくるというので一緒に向かった。SPANISCHE FLIEGE D5
「……あ、オッサン?」
厨房に入ると見知った顔を見つける。アノールド・オーシャンだ。
「おうヒイロじゃねえか! お前だろ、この大量の花を送ってきたの? 料理人たちがあまりの量でひっくり返ってたぞ?」
「一応送ると前もって言っておいたはずだ」
「にしてもこの量はなぁ」
厨房の三分の二ほどの空間を埋め尽くすほどの大風呂敷の群れ。この一つ一つに《銀米草》が詰め込んである。料理人たちは風呂敷を解いて大量のソレを整理するのにてんやわんや中らしい。
「オッサンは何故ここに――――ってアンタの後ろでチラチラ見えてるのは何だ?」
よく見ると、アノールドの陰に隠れてチラチラと日色を見ている少女がいる。いやまあ、誰かは分かってるのだが……。
「何やってるんだ、ミュア?」
「あぅっ!?」
顔を真っ赤に染め上げながら素早く全身をアノールドの後ろに隠すミュア・カストレイア。もう何度か会っているはずなのだが、まだこうして面と向かうと照れた素振りを見せる。
「や、やっぱ名前で呼ばれるのは緊張するよぉ……」
小声でそんなことを言っているが、日色の耳には届いていない。そんな彼女を見てミミルはクスッと笑みを零すと近づいていく。
「ミュアちゃん!」
「あ、ミミルちゃん、お、おかえり」
「はい、ただいまです! ほらミュアちゃん、そんなところに隠れていないで出てきましょう!」
「あ、引っ張らないでミミルちゃん! わ、わたしまだ心の準備が!」
「もう、いつもそれなのですから! ダメです!」K-Y
強引にミュアの腕を引っ張り表に出すミミル。
(まあ、オレも最初は何となく恥ずかしい感じだったが、コイツのこれは少し大げさ過ぎやしないか?)
さすがの日色も、キスをされて好きだと言われてそれが親愛からくるものだなどとは誤解しない。それまでは精々が兄を慕う妹のような想いだと思っていたが、ミュアの日色への想いが異性に対するソレなのだということはさすがに理解できている。
なので戦争が終わり目を覚まして初めてミュアに会った時は、日色も初めて会いたいような会いたくないような不可思議な想いと緊張感があったが、今ではそれも和らいでいる。
だが会う度にミュアはまだ新鮮な態度を見せてくるので、逆にこちらが恥ずかしくなってしまう感じだ。
「あ、あのあの、そのですね……ヒイロ……さん」
「何だ?」
「あ……っ!?」
前に出てきたミュアと目を合わせた瞬間にボフッと彼女の頭から湯気が立ち昇り、その衝撃のせいかよろめいたので日色はそっと彼女を受け止める。
「はにゃっ!?」
さらに紅潮する彼女の顔。これは熱湯風呂我慢大会でも参加したみたいにのぼせ上がった表情だ。どことなく涙目だし。
「あ、あうあう……ヒイロさんの顔……ふにゅ~……!」
グルグルと目を回してそのまま日色の腕の中で失神してしまった。
「お前……初心うぶ過ぎるだろ」
「ふふふ、ミュアちゃんですから。でも羨ましいです」
「は? 何がだ?」
「だってヒイロさまの初めてを奪ったんですから、ミュアちゃんは。一歩リードされちゃいました」
「…………」
彼女―――ミミルの気持ちももう分かっている。彼女もミュアと同じ想いを自分に抱いているということは。sex drops 小情人
「ミミルだって負けていられません! 覚悟していて下さいね、ヒイロさま!」
「むむむ! ボクだって師匠のこと大好きですぞ!」
ニッキも参加してくる。この子に関しては純粋に師を慕っている気持ちの方が強いだろう。だが本当に何故だろうか……。
(何故こうもオレは子供に好かれるんだ……?)
日色最大の謎である。
(まあ、嬉しいか嬉しくないかといえば、嬉しい方なんだが…………幼女だしな……)
こちらとしては恋愛対象としてみるのは抵抗があり過ぎる。また恋愛など今までしてきたことがない日色にとっては、とても難しいテーマなのだ。
ただ彼女たちに好きと言われると、心の奥が温かくなるのは心地好いとは思っている。
「くそぉ……ヒイロめ……ミュアの初めてを奪っただけじゃなく、ミミル様のも奪うつもりか……このロリコン野郎め……」
ブツブツとアノールドが爪を噛みながら妬ましいことを言っているみたいだが、
「ロリコンはアンタだろオッサン」
「何っ!? 俺の心を読んだのか!?」
「声に出てたぞバカ」
「くっ……ああもう忌々しいっ! 何でコイツばっかモテんだよぉ! 俺だって恋がしてぇぇぇぇっ!」
「厨房で叫ぶな変態。そんなことより暇なら料理しろ鬼畜」
「おいこらテメエ! 誰が変態で鬼畜だ! いっぺんぶん殴るぞホントまったくよぉ!」
とまあ、通例のやり取りをした後、気絶したミュアをアノールドに任せて日色はレオウードのもとへと向かうことにした。
彼がいたのは《玉座の間》であり、すでにレッグルスから粗方の説明を受けていたようだ。VVK
「おおヒイロ、待っておったぞ」
「ああ」
「ずいぶん珍妙な体験をしたようだな」
「まあな。ん? もしかしてタマゴジジイのことも聞いたのか?」
「ざっくりとはな。しかしまさか、あそこにそのような者がいたとはな。しかもアダムスとの交流がある人物とは……驚きだ」
「今そいつのことはいい。それで? 《黒樹の種》はどうするんだ?」
「おお、そのことだ。実はな、今から《始まりの樹・アラゴルン》があった場所へ皆で向かおうと言っていたところだったのだ」
「ほう」
「お前もついてきてくれ」
「別に構わんぞ」
レオウードは触れを出した。その内容は、これから新たな《アラゴルン》の誕生を見せるというようなもの。
城中の者だけでなく、国中の民たちが一挙に《アラゴルン》のもとへと集まってきた。レオウードは皆に見えるように《黒樹の種》を高々く持ち上げる。淡い光に包まれた種。
民たちがそれを見て感嘆の溜め息を漏らしている。
「皆の者! ここに我らの《アラゴルン》の復活を願ってこの《黒樹の種》を埋めたいと思う! 聞いてくれ! この種は我が息子―――レッグルスが我が英雄――――ヒイロとともにある場所へ行き手に入れてきてくれたものである!」
「「「「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」」」」
日色を英雄視している者たちや、レッグルスを慕っている者たちばかりなので、大いに喜びの声を上げている。
「これより、新たな《アラゴルン》誕生をその眼に焼き付けておくのだ!」
レオウードは種を胸の前まで持ってくると、身体をレッグルスへと向け腕を突き出す。
「え……父上?」
「これはお前が試練を乗り越えて勝ち取ったものだ。お前の手で埋めるのだ」
「…………分かりました」漢方蟻力神
レッグルスが種を受け取ると、ざわついていた観客たちも静まり返る。これから一世一代の歴史的瞬間を見逃さないように誰もが息を呑んでいる。
レッグルスがゆっくりと歩き、《アラゴルン》が存在した場所に立つ。
「……《黒樹・ベガ》よ。我らが創世の大樹よ。今この時をもって、再び我らの前にその姿を見せたまえ」
レッグルスが種を持った両手をそっと前方へと突き出す。種がフワリと自然に浮き、ひとりでにゆっくりと雪が落ちるような感じの速度で大地へと落下していく。
そのまま土の中へ吸い込まれるようにして消失した種。すると乾いた大地から次々と草花が生えていく。《アラゴルン》が死んだ時、周囲に生えていた緑も軒並み枯れ果ててしまていて、大地も乾いていた。
しかし今、種が吸い込まれた瞬間、大地は瑞々しい色合いを取り戻し、緑を復活させた。更にその中心――ピョコッ!
一際大きな芽が姿を見せた。その姿を見た者たちが―――――――
「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっっっ!」」」」
大気を割らんばかりの歓声を響かせる。その芽はまさしく大樹の新芽である。
「皆の者ぉっ! ここに新たな《アラゴルン》が誕生したっ! 今宵は宴だぁぁぁぁっ!」
レオウードの声に呼応して、全ての者があらん限りの声を発し喜色満面の態度を現す。やはり獣人にとって《アラゴルン》が特別なのだと改めて理解させられる。
ここに《始まりの樹》ならぬ《次世代の樹・アラゴルン》が復活した。
まさに、歴史が作られた瞬間であった。男宝
订阅:
博文 (Atom)