2015年3月30日星期一

誘拐

バリドは突然現れたミミルの姿にアッとなり、すぐに傍に近づく。


「ミミル様! どうしてこのような場所に! ここは危険ですからシェルターにと申し上げたはずです!」紅蜘蛛(媚薬催情粉)
「う……そ、それは理解していますけど、ミミルにも何かできることがあると思いまして……」


 顔を俯かせるミミルを見てララシークは軽く溜め息を吐く。確かに彼女の周りに居る者たちは自分の役目を全うしている。


 姉は国民たちの先頭に立って皆の不安を取り除いている。兄たちは戦線で敵と相対して国を守っている。そして彼女の親友であるミュアも、今は前線で必死に戦っているはずだ。


 ミミルだけが確固たる仕事という仕事は割り当てられていない。しかし彼女にも役割が確かにあるのだ。それをララシークは伝える。


「ミミル様、あなたの役目はククリア様と同じ国民たちの恐怖を少しでも取り除くことです」
「え?」
「それは……歌です」
「歌……?」
「まあ、こんな時に何を言ってるんだと言われるかもしれませんが、あなたの歌には力があります。こんな状況でも、人々に勇気や癒しを与える力が」
「……ララシークさん」
「だから今すぐククリア様のところへ向かって、皆の前でお歌い下さい。あなたにしか、いや、あなただからこそできることがあるんです」


 ララシークに言われ、ミミルの目に強い光が宿る。そしてミミルは大きく頷きを返すと、


「……分かりました! ミミルのやるべきことをします! その、すみませんでした……本来なら自分で気づくようなことなのでしょうが……その……すみません」


 王女として、確かに自分のできることに気づくべきだったのかもしれないが、こうして自分の非を素直に認め改めようとするところが彼女の魅力でもある。


 バリドもララシークも頬が緩み、彼女に頷きを返す。そしてバリドが兵士に向かって言う。


「護衛はしっかり頼んだぞ」
「はっ! お任せ下……さ……ぃ……っ!?」


 突然ミミルの傍に控えている二人の兵士が膝を折る。突然のことに皆が吃驚する思いだが、D10 媚薬 催情剤


「きゃっ!?」


 ミミルが小さく悲鳴を上げて、苦しそうに目を閉じている。そして何故か彼女の身体が宙に少しだけ浮く。


「「ミミル様!?」」


 二人は何故そのようなことが起きているのか分からずつい彼女の名前を叫ぶ。するとミミルの周囲の空間が揺らぎ始め、そこから人型の何かが姿を現す。


「「っ!?」」


 バリドたちの目の前には、二人の人物が現れ、黒衣を身に纏った一人はミミルを持ち上げて拘束している。そしてもう一人はその黒衣の者の方に手を置き目を閉じていた。


「な、何だコイツら!? どこから現れた!?」


 バリドが叫ぶが、黒衣の人物が静かに口を開く。


「……【獣王国・パシオン】、第二王女ミミル・キング。確かにもらったぞ」


 その言葉にバリドは目を血走らせジリッと近づこうとするが、黒衣が懐から取り出したナイフでミミルの喉元に当てる。


「なっ!? き、貴様ぁっ!」
「……お前はまだいい。そこの……《氷結童子(ひょうけつどうじ)》、妙な真似をするな。王女の命を刈り取るぞ?」
「……ちっ」


 実はララシークは密かに《化装術》を発動させて相手を倒す算段だったのだが、それを見破られてしまい仕方無く力を抑える。そして水晶玉を見ると、そこにはいつの間にか大きな二つの青い点が自分たちの近くまでやって来ていたことに気づかなかったことに後悔を覚えた。花痴


 それはミミルの登場により彼女に意識を向けてしまっていて、水晶玉から注意を離してしまったことに起因する。


「う……ぐ……っ」


 ミミルが苦しそうに黒衣の腕の中でもがくが、鬱陶しいというように黒衣が彼女の首筋に手刀を落とす。


「あっ…………ヒイ……ロ……さ……ま……」


 ミミルは愛しいものの名前を呼びながら意識を失った。


「貴様ぁぁぁぁっ!」
「何度も言わせるな。それ以上近づけば、この者の首を落とす」
「くっ……くそっ!」
「ランコニス、行くぞ」
「……は、はい」


 ランコニスと呼ばれた少女が目を見開き返事をする。そして黒衣たちの足元に水溜まりが広がっていく。それを見たバリドが「転移魔法かっ!?」と焦燥感を表すが、手を出すこともできずにただただ身体を怒りで震わせているだけである。


 そんな中、ララシークは一歩前に出て口を開く。


「お前、そこの全身黒づくめのお前、名前を教えろ」
「…………イシュカだ」


 するとイシュカはミミルを抱えたまま水の中へと沈んでいった。三人が消えた瞬間、ララシークはすかさず水晶玉をチェックする、すると先程四つの大きな点が集まっていた場所には二つしかなく。少ししてからそこに三つの点が現れた。


「バリド! すぐに部隊を東の丘に向かわせろ! アタシも行く!」三體牛寶
「しょ、承知っ!」


 バリドは空を飛びながらレッグルス、レニオン、プティスの部隊に向かって行った。ララシークは高台から東の方を注視すると、


「アッチだな」


 鋭く細められた彼女の瞳。そして彼女が前に手をかざすと、そこから空間を割ってララシークの倍以上はある巨大な雪ウサギが出現する。


「ユキちゃん、空から向かうぞ」


 ララシークはユキちゃんこと、『精霊』のユキオウザに乗り込んだ。










 東の丘ではキルツとヒヨミがイシュカたちの帰りを待っていた。そして地面に水が広がりそこからミミルを抱えたイシュカとランコニスが姿を見せた。


「任務完了だ。今すぐコレを陛下に捧げよう」


 イシュカの物言いにキルツはサングラスの奥で目を細めて舌打ちを打つ。その視線はミミルに向けられてあり、やり切れない思いを抱えていた。


「さっさとこちらへ来いキルツ。お前の功労、陛下に伝えてやろう」
「…………」


 確かに今回、キルツが作り出した水人形の襲撃で、相手の注意を外側に引きつけることができ、本来の目的であるミミルという考えを相手に抱かせないことができた。


 だがそれは実際キルツの思惑から外れていたのだ。ヒヨミが作り出した木々と違って、水人形は必要以上に破壊活動は行わず《王樹》に意識を向けさせていた。勃動力三体牛鞭


 だからこちらの狙いは《王樹》にあるのだとキルツは敵対勢力に教えていたつもりだったが、いかんせん能力の制限もあり、上手く伝えたいことが伝わらなかった。


 それ以上に、イシュカの仕事の迅速さを見誤っていた。キルツはどうにかミミルを解放してやりたいと思っていたが、今の自分はヒヨミに言われた通り傀儡に過ぎず、刃向うことはできない。


 できることと言えば、ほんの少しのヒントを敵側に教えることと、こうして若干時間稼ぎすることだけだ。


 耳を澄ませば獣人部隊がこちらへ向かってきていることは分かる。しかしイシュカの転移の方が早いだろう。
 キルツは再びサングラス越しにぐったりとしているミミルを見ると、


(すまねえな……獣人の嬢ちゃん)


 再度心の中で謝罪した。そしてイシュカの言うように足を動かして水の中に踏み入れたその刹那


 ピシィィィィィィィィッ!


 突如として辺り一面が凍結した。


 そして上空から影が差し、四人が見上げるとそこには大きな雪ウサギが空を飛んでおり、そこから小さな影が飛び下りてきた。


 スタッと地面に着地したそれは、不敵な笑みを浮かべながら言い放った。


「国の大切な宝ぁ、返してもらうぜ?」


 白衣を身に纏った幼女、ララシーク・ファンナルの登場だった。蒼蝿水

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