男性型自動人形オートマタの後を付いて、建物に入った仁たち。
「塵一つ落ちてないね」
サキが感心したように言う。
仁は周囲を見回し、造りなどを観察。礼子はあたりに気を配っていた。
「ここだ。入りたまえ」
廊下突き当たりの部屋に案内された一行。
自動人形オートマタによってドアが開けられた。SPANISCHE
FLIEGE
「……ようこそ、来訪者たち」
その部屋の奥には、痩せこけた老人が大きなベッドに横たわっていた。
「始めまして。俺は二堂仁。こちらはエルザ、サキ、ハンナ、グース、礼子です」
「そうか。私は……クローデン。ここ、バッタルフの管理者だ」
「管理者……というのは、町長のようなものでしょうか?」
聞き慣れない言葉に、仁はすかさず質問した。
「長……ではないな。この町の人間は私1人だから」
「えっ!」
「ええっ!」
クローデンの発言には、全員が驚きの声を上げざるを得なかった。
「な、なぜですか?」
仁からの質問。そう聞くしか、今の彼等にはなく、他の面々も同じ気持ちだったろう。
「なぜといっても……な。人口が減っていった揚げ句、としか言いようがない」
「……では、どうして人口が減ってしまったのでしょう?」
質問の仕方を変えてみるグース。
「……人が、気力を無くしたから、かな」
「どういうことなんですか?」
今度はサキからの質問。だが、クローデンは横に立つ自動人形オートマタに向かい、気怠そうに指示を出し、目を閉じた。
「……フェデリ、この町の歴史を簡単に話してやれ」
「はい、父上」
フェデリ……フェデリ479はゆっくりと語り始めた。
「この町が成立したのは今から1500年ほど前です。その頃はまだ町ではなく、村でした」
「1200年ほど前、一大転機が訪れたのです」
「それは、ゴーレムという安価な労働力でした」
「ゴ−レムは、大気中に含まれる自由魔力素エーテルにより動きます。1台作るには巨額の費用が掛かりましたが、一旦完成してしまえば、100年以上動き続けますので、結果的に経済的でした」
「1000年ほど前になると、各家庭は1体以上のゴーレムを所有するようになります」
その後の説明を要約すると、結局は安価な労働力を得たため、働かなくなった揚げ句に出生率も低下して、今に至る、ということらしい。
「……」
ゴーレム社会の行き着く姿、その一つを知り、言葉もない仁一行だったが、この町を訪れた目的を思い出した仁が口を開いた。
「『賢者マグス』について何か教えて下さい。それから『アドリアナ』という人物についても」
その名を聞いたクローデンは、閉じていた目を再び開いた。
「『賢者マグス』……我々を堕落させた悪魔。『アドリアナ』……我等が祖を裏切り、悪魔に身を売った愚か者」
その声音は、先程までと違って、怨嗟に満ちていた。
「貴様ら……悪魔について調べているとは、悪魔に繋がる者たちか。……出ていけ!」
「ちょっと待って下さいよ」
慌てた仁が止めるが、それで止まるクローデンではなかった。
先程、フェデリ、バリガルに『賢者マグス』と言ったときはこのような反応をしなかったというのに、クローデンは心を病んでいるのかもしれない、と仁は思った。
「フェデリ、バリガル、こいつらを追い……出せ」
「はい、父上」
「わかりました」
クローデンの命を受けた2体の自動人形オートマタは仁たちに向かってくる。
「さあ、出ていけ!」
「お帰り下さい!」
こうなってはもう何を言っても無駄だろうと、仁は諦めざるを得なかった。
「分かったよ、出ていくよ」
そう告げて、回れ右。入って来た廊下を逆に辿り、外へ。
「!」
「な、なんだ!?」
そこには、数十体のゴーレムが集まり、自動車を取り囲んでいたのである。
いや、取り囲んでいただけではない。殴りつけ、破壊しようとしていた。
「やめろ! 何をする」
思わず叫んだ仁だが、その声を聞き、ゴーレムの半数が仁を見つめた。
「父上の感情を察して、兄弟たちが暴れ出したようですね。こうなっては私にも止められません」
女性型自動人形オートマタのフェデリ479が感情の籠もらない声で告げた。
「我々が何をしたというんだ!」
だがグースのその声も届かない。ゴーレムたちの半数は自動車を殴り続け、もう半数は仁たちに向かってきた。
「こいつらはたいした自我を持ってはいないようだな。動き方が原始的だ」
「じ、仁、そんな悠長に構えている場合じゃないぞ!」
グースの腰が引けている。
「ええと、フェデリ、それにバリガル、だっけ? ……ゴーレムを止めてくれないかな?」
落ち着きを取り戻した仁が2体の自動人形オートマタに頼む、が。
「無理だ。奴らは単純な頭脳しか持たない。それゆえに一度何かを始めると、それを果たすまで止まらない。自分の身は自分で守ってもらおう」
その説明の間にも、15体のゴーレムが近付いて来た。
「それが答えか……」
バリガルの言葉に対し、仁は残念至極、といった顔で呟いた。
「それじゃあ、勝手にやらせてもらう。……恨むなよ?」
仁は礼子の顔をちらと見る。それだけで礼子は、仁が何を言いたいか察し、地を蹴った。
「何っ!?」
バリガルの驚いたような声が響く。
こいつらも一応驚けるのか、と仁は変なところに感心しながら、目の前を見つめていた。
仁たちに襲いかかってきたゴーレムが1体また1体と吹き飛んでいく。もちろん礼子の仕業だ。
今の礼子にとって、原始的なゴーレムなど、1000体いたとしても脅威にはならない。蒼蝿水(FLY
D5原液)
「おいおい……」
グースは呆れたような声を上げた。その口はぽかんと開かれている。
何せ、少女型の自動人形オートマタである礼子が、体格差が数倍はあるゴーレムを文字通り蹂躙しているのだから。
礼子がその小さな拳を突き出せば、ゴーレムがばらばらになって散らばり、礼子がその華奢な足を振り上げれば、20メートルを超える高さまでゴーレムが吹き飛ぶ。
しかもそれが数秒のうちに行われたのだ。
仁たちを狙ってきた15体のゴーレムは6秒ほどで動作不能となった。
グースは最早物も言えないほどに呆れているが、エルザ、サキ、ハンナは苦笑しているだけ。
もちろん、礼子に楯突いたゴーレムたちの末路を思って、である。
仁たちに向かってきたゴーレムを片付けた礼子は、自動車を襲っているゴーレムの排除に掛かった。
もちろん、自動車には障壁バリアが張られており、ゴーレムの打撃程度では、何百年経っても破ることはできない。
それは仁たちを多う障壁バリアも同じであるが、危険がないからといって、礼子が怒らないということにはならない。
「お父さまの作品から離れなさい!」
無駄であることも理解できず、執拗に障壁バリアを殴り続けるゴーレムに苛立ちを隠せない礼子は、その1体の足を掴むと、力任せに投げ飛ばした。
力任せとはいっても、仁から普段許可されている20パーセントで、であるが、それでもゴーレムは通りの彼方へと飛んでいった。
建物にぶつけていないのは、せめてもの礼子の心遣いである。
ぽいぽいと、18体のゴーレムは全て100メートルほど先まで飛ばされ、そのまま動き出すことはなかったのである。
「あなたがたはどうしますか?」
礼子の働きぶりを信じられないように硬直して見ているだけのフェデリ479とバリガル243に向かって礼子が尋ねた。
「お父さまの邪魔をするなら、同じ目に合わせて上げますよ?」
だが、帰ってきた言葉はといえば、
「……化け物め」
という一言のみ。
「そうですか。それでは、しばらく動かないでいてもらいましょう」
礼子は、『魔法無効器マジックキャンセラー』を2体に向けて放つ。
魔法無効器マジックキャンセラーは、元々は魔素暴走エーテル・スタンピード対策のため作られた魔導具である。
魔力素マナを強制的に自由魔力素エーテルに戻してしまうことで、大抵の魔法を無力化することができる。
その波動を受け、2体は動作不能となり、その場に頽くずおれたのである。
更に礼子は『エーテルジャマー』も発動させる。つまり、自由魔力素エーテルから魔力素マナを作れなくしたわけだ。
これでしばらくの間、この2体が動き出すことはない。
「さて、仕方ない。この町を出て行こう」
まだ放心しているグースを自動車に引きずり込み、仁たちはバッタルフの町を後にした。
町を覆っていた障壁バリアは、魔法無効器マジックキャンセラーで解除できたのである。
放浪生活はじめました!
「こんにちは鈴木です。キャラ名はサトゥーですが鈴木です」
こんな独り言をつぶやくほどに誰かと喋りたい!
なかなか夢から覚めないので、とりあえず人里を探す事にした。
幸い広域マップの端っこに街道っぽい線が見えたのでそこに向かっている。
あれから3日。昼夜を問わず歩いているが、まだ行程の半分ほどだ。
スタミナが徐々に減っているが、まだ2800/3100。一日100ずつ減っている感じだ。
ゲーム的には、あと28日は大丈夫な計算だが、夢でも十分死にそうだな。
激増したステータスのせいか夢のせいかはわからないが、疲れない。眠くはなるが、我慢できてしまう。
今は歩いているが、走っていてもスタミナの減少速度はほぼ変わらない。ジャンプで飛び跳ねながら移動すると走るよりはスタミナの減りが早いが、正直なところ誤差の範囲だ。
では、なぜ歩いているか。それはヒマだからだ。
意味がわからない?
そうだね。
はじめは一人カラオケの要領で歌いながら走っていた。
元々レパートリーは少ないほうだ。すぐに持ち歌が尽きて歌うのを止めてしまう。
まわりの景色も雄大だが、残念ながら変化が少ない。
そこで長大なログを読むことにした。
活字マニアというわけではないが、黙々と無目的に歩くのが苦痛でしかたなかったのでログを最初から順番に読み始めたわけだ。
そこで当然ながら走りながらだと読みにくい事に直面し、それ以降は徒歩に切り替えた。街道に出るのが目的だったが、ログを読み始めるうちにそんな目的は忘れていた。
ログは「術理魔法:全マップ探査を使用しました」から始まり、蜥蜴人リザードマンや竜人ドラゴニュートを倒した通知を経由して最後の竜神を殺した通知まで「~を倒しました」が続いていた。
その後に「マップ内のすべての敵を倒しました」で、最後に「源泉:竜の谷を支配しました」となっていた。源泉? ナニソレ? 謎ワードは後回しだな。
それ以後は戦利品の入手ログ、レベルアップログに続いている。
戦利品のログが全体の8割を占めている。ありきたりな金銀財宝に装備品。さらに竜の角や牙、鱗を初めとする素材類。この辺までは質と量を度外視すれば理解の範疇ではあるのだが、残りがおかしい。Motivat
竜をはじめリザードマンやドラゴニュートの屍骸がストレージに並んでいる。ネクロマンサーにでも成れというのか。
後は恐らく鱗族が使っていたであろう日用雑貨や食料品や燃料。こんなアイテム用意して無いんだけどな……。さらに「壊れた~」で始まる破損品が続くが、これゴミじゃね?
さすがに総数が万を超えると詳細を読むのが億劫になる。
一応WWの仕様でストレージウィンドウは基本種類別の分類やユーザー設定のタグをキーにして検索ができる。
どちらも共通インターフェースなのは作業工数を減らすためにどちらでも使えるようにオレが設計したからだ。少し自慢になるが最新OSのファイラー並みには便利にできている。任意にフォルダを追加したりは当然だが、袋などの収納系の品に入れたアイテムは袋をタップすると中のアイテムがその下層ツリーに展開され袋から出すことなく中身を直接取り出したり確認できたりする。もちろん袋内のアイテムをドラッグして袋の外に出したりも自在にできる。また通常表示に加えタブ追加で全アイテム一覧や検索ワード別表示を任意に登録して置いておける。これはスマホだと検索ワードを毎回入力するのが面倒だから追加した。
さて少し話がそれてしまった。プログラムや工夫の話は長くなっていけない。
ストレージウィンドウを2つ開いてアイテムを整理する事にする。まず種類別に整理用のフォルダを作って大まかに分類。後はその下層にさらにサブフォルダを作って整理していく。
そうそう設定画面で「同じ種類のアイテムは自動でスタックする」オプションを有効にしておく。
これを有効にしておかないと延べアイテム数が多くなりすぎる。
ちなみに重ね合わせて一まとめに扱う事をFFWやWWではスタックと呼んでいる。たいていのRPGに存在する用語なのでゲーム内でも説明は省略している。昔のボード版のウォーシミュレーションの駒を重ねるのが語源だったか。
それはともかく。
金銀財宝は大多数が貨幣だった。
一番多いのが「フルー帝国金貨」。なんと1012万枚。試しに1枚取り出してみると結構大きくて重い。サイフに入っていた日本円と比べると500円玉と百円玉5枚を合わせたくらいの重さだ。記憶が確かなら大体30グラムほどか。リアルでは普通の金貨は4~7gくらいだったから破格の大きさといえる。全部で303トン……馬鹿げた量だ。リアルだと年間2500トン採掘されてるらしいが。金ピカ好きのドラゴンらしいとも言える。
続いて多いのが「サガ帝国金貨」が4万枚。帝国が多いのかドラゴンに滅ぼされて新しい国が興ったのか興味深い。こちらも1枚取り出してみるが、500円玉より小ぶりだが同じくらいの重さなので7gといった所か。
そして3番目、紅貨3万枚。ファンタジーな貨幣来た! 取り出してみるとフルー金貨の半分くらいの重さでルビーのような質感の硬貨だ。時折半透明な貨幣の中を光の線が走るのがサイバーちっくな感じだ。すこし不思議。
残りの貨幣は全て1万枚以下で「フルー帝国」の銀貨、銅貨。「サガ帝国」「シガ王国」の銀貨、小銀貨、大銅貨、銅貨、賤貨。「ドラグ神国」の大銀貨、銀貨、銅貨、他にも「~王国」で始まる貨幣が色々あって、これが全部で7千枚ほど。一応国別にソートして範囲ドラッグで分類だけしておいた。
それにしてもWWにしろFFWにしろ貨幣は設定していないんだが……。WWではウォル、FFWではカーネという単位の数値だけのもので実体は用意していなかった。
夢だけに休憩中に見た番組でやってた貨幣あるあるクイズの影響が出ているのかもしれない。
貨幣の他には宝石や装飾品、美術品の類がある。シンプルな銀の指輪から拳大のエメラルドを飾った王冠や等身大の黄金像、儀礼用の短剣など価値の高そうなものが30万点ほどある。
ほとんどは値段が高いだけの普通の品だが、全体の5%ほどは魔法の品が混ざっている。
魔法の品は説明文が長い上に前提となる知識がいるために、適当に読み飛ばして分類だけしておいた。ネット用語を知らずにネットスラングに塗れた掲示板を読むようなものだと思ってもらうと分かりやすい。不思議とWWやFFWで実装した宝飾品は無かった。
いくつか説明文が理解でき、かつ気に入った品がある。水が一日に100リットルほど出せる『奈落の水瓶ウォータボトル』。
『奈落の水瓶ウォータボトル』を見つけた時は歓喜して取り出し、水を呷った。顔や髪を洗いたかったが流星雨を発端とした土埃がマダマダ浮遊しているので諦めた。
他には貨幣が1000枚まで入る『魔法の財布マジックウィジェット』、30種類のアイテムを30個までスタックして収納できる『魔法の鞄30サーティ・ホールディング・バッグ』の3種類をお気に入りに移しておいた。
無限に収納できるストレージがある以上、魔法の鞄に意味は無いわけだが視覚的に鞄より長い剣とかを出し入れするのが楽しくてお気に入りに入れてしまった。
2日目はこんな感じで、金銀財宝の整理で終わった。
そんなこんなで3日目。時計が0時を超えたので3日目だ。時計が毎日4時間近くズレるので本当に3日目か自信が無い。
野宿するにも、こんな荒野で寝たら逆に体力が削られそうなので眠らずに歩く。満月の月明かりがあるので視界には困らないのだ。
好きなモノは後で食べる主義なので武具や装備品のチェックは後に回す。北冬虫夏草
素材類や屍骸は種類別に分類だけしておく。ログに比べてリザードマンやドラゴニュートの屍骸が少ない。これは恐らく隕石の直撃を受けて死体も残らず潰れたせいかと思える。だが竜の屍骸が多い。倒したログの優に3倍はある。象の墓場の竜版みたいな所でもあったのかもしれない。
素材類は部位系の素材が殆どだが、鉄のインゴットや薬草、木材、石材なども色々あるようだ。都市1つ分の戦利品としてはかなり少ない気がするが殆どは隕石につぶされたのだろう。部位系では鱗がやたら多い。種類を問わず集めてみたら796万枚もあった。竜も脱皮するのか竜の抜け殻というのが1つある。
「でかっ、鱗1枚でこれなら本体はどれだけでかかったんだろう」
好奇心に負けて成竜の鱗を1枚だしてみたが、50センチほどもあった。ついでに下級竜の鱗も確認してみたが、こちらは手のひらサイズだ。
『壊れた』から始まる廃材系アイテムは特に分類せずに一まとめに廃材フォルダに突っ込んでおく。捨ててもいいが数がすごすぎて、ヘタにすてたらゴミの山に埋まりそうなので止めた。
最後に装備品。
3万点ほどある。鱗族の槍が特に多く、『鱗族の~』で始まる品が2万点。いずれも魔法の品ではなく普通の青銅や鉄の武器と盾だ。不思議と鎧系が少ない。
一番多かった鱗族の槍を取り出してみる。2メートル半ほどの木製の槍で先端は骨を削りだしたもので銛みたいな返しが付いている。槍を刺したときに抜けないから戦争用の槍では無いのかも知れない。
魔法の品には『竜皮の鎧』とか『竜鱗鎧』など支配種族から下賜された素材で作ったような装備が100点ほどある。このへんは鱗族の装備品だったものだろう。
残り1万点のうち約半数は『竜』への特効がついた大剣や槍、弓矢が占めていた。竜に挑んで敗北した者達の遺産だろう。
特殊効果の類は宝飾品の時もそうだが効果が良く分からないので後回しにした。
気に入ったものはいくつかあるが、特に「聖剣」や「神剣」に心魅かれた。
失われたはずの厨二心が刺激される。
なぜ「聖剣」の名前が「エクスカリバー」とか「デュランダル」とかなのか。
名前で検索すると「虎徹」とか「村正」とかのカタナもあった。
「テンション上がる~」
エクスカリバーを振り回して楽しむ。結構重量があるはずだが軽々と振れる。振ると光の軌跡が出て美しい。しかし武器として使うなら剣筋がバレて不利なんじゃないか? だが派手なのでゲームとかだと人気が出そうだ。
そうそう、神剣は固有名が無い。
剣を振り回して剣スキルが増えないか期待したが、それは無いようだ。剣で敵を倒すと出るのかもしれない。
めずらしい品は他にもある。大砲や無数の弩を載せた砲台、槍を打ち出す砲台など空を飛ぶ相手に対抗するための品がある。説明文を斜め読みしただけだが大砲も火薬式だけでなく魔法の力で打ち出すものもあるようだ。
あとは何といっても銃!
先込め式の銃が100丁ほど、ライフルのような中折れ式のものが50丁ほど。極めつけは魔力を打ち出す銃が12丁。念のためにいうとFFWにもWWにも銃は無い。大砲はWWにあるが。
一番小さいと思われる魔法短銃を取り出す。
いわゆるデリンジャーくらいの大きさの装飾過多の銃だ。トリガーガードが付いている。
リアルの銃だと安全装置があるあたりに、0、1、3、10と目盛りが刻まれたスイッチがある。目盛りを0から1に変える。
片手で構えて近くの岩を狙って引き金を引く。
パシュッと軽い音が出るが射線は見えない。
的まとにした岩を確認すると10円玉くらいの穴が貫通していた。厚みが2m以上ある硬い岩なのに大したもんだ。消費MPは1。反動がほぼなかったし、レーザーガンみたいな感じだ。やはりファンタジーではなくエスエフなのか。
目盛りを10で撃つと岩が砕けた。オーガくらいの魔物でも一撃死しそうな威力だ。消費MPは10。
「効率良過ぎるだろう」
ゲームで課金アイテムとして実装したらヤバい事になりそうな性能だ。普通の魔法を使うヤツが居なくなりそうだ。levitra
それから移動しながら1時間ほど銃で遊んだ。
一通りアイテムを確認し終わった後で、先ほど気になっていたことを考える。
「源泉ってなんだろうな」
ぽつりと呟く。
ログの「源泉:竜の谷を支配しました」の事だ。
……さすがに源泉徴収は関係ないだろう。
このログ以外に「源泉:竜の谷」に関する表記はどこにも無い。
いつもなら「夢だし」と流すのだが、何か気になる。
気分転換に走りながら考えるが、何か思いつくどころか、いい感じに走るのに没頭してしまい、何かどうでも良くなってしまった。
我ながら支離滅裂だ。
やはり会話も無く、何日も過ごすのはダメだ。オレには向いてない。
いつの間にやら歩いても1日くらいで街道にたどり着けるくらいまで来ていた。
今のところマップに人里は表示されていない。北北西から西につながる街道だけが見えている。
ちなみに出発してから自分以外の存在がマップに表示された事はない。
あの天変地異ともいうべき隕石雨の轟音と地震を恐れて逃げたのだろうか。
いいかげん走るのを止めて徒歩にもどっている。
「風呂入りたいな~」
さすがに3日も入っていないと頭が痒い。
湯を沸かすのは無理だが水ならある。幸い土埃も収まってきているので、水浴びしたほうが汚れる状態にはならずに済みそうだ。
適当な岩を水で洗い、服や靴をストレージに収納してからその上に上って頭から水を被る。
「ちょっと寒いけど生き返る」
ほっと一息ついて戦利品のなかにあった清潔な布を取りだして水を拭っていく。
さっぱりしたので一眠りするべく、戦利品の中にあった天蓋付きのベッドを取り出して荒野に置く。
その日は3日ぶりに眠った。
翌朝、天蓋を見て洗濯物を干すのに使えそうと気が付いたので、桶を取り出して服を水洗いし、並べて干す。
そのまま半日ほど干し肉をかじりながらベッドでごろごろする。
街道を誰か通らないか期待したが昼過ぎになってもレーダーに変化はない。
「ラノベや漫画なら盗賊に襲われる王女様とかに出会いそうなものなんだけどな~」
テンプレって好きなんだけど。
「オレの夢ってサービス悪すぎ」
財宝やお手軽レベルアップを棚に上げて悪態をつく。
夢や物語ならフラグが立つはずだが特に何も起こらない。
乾いた服に着替えオレは街道に向かって歩き出した。K-Y
Jelly潤滑剤
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