2013年11月17日星期日

毒針

八階層を走破して、九階層に移動した。
  ベイルの迷宮八階層のボスは、すでに戦ったことのある相手だし、たいした問題ではない。
  メッキで防御を固めつつデュランダルで叩き斬り、楽勝だ。
  ベイルの迷宮九階層の魔物はスローラビットらしい。天天素
  セリーがクーラタルの探索者ギルドで調べてきた。
  スローラビットなら、クーラタル八階層でも戦っているし、動きも遅い。
  何の問題もない。
  こっちも楽勝だ。
 「そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました」
  ファイヤーボール六発でスローラビットLv9を沈めた後、つぶやく。
  六発か。
  Lv9からは、魔物を倒すのに魔法六発が必要になるようだ。
  階層が上がるごとに、やはり敵も確実に強くなっていく。
 「魔法を使う回数は一つ増えましたが、そう大きな違いはないでしょう。数回で倒せるなんてさすがご主人様です」
 「その分、魔物と打ち合う時間が長くなるが」
 「回避すれば何の問題もありません」
  倒すのに必要な魔法の回数が増えれば、戦闘時間が延びる。 
  戦闘が延び、魔物と近接している時間が長くなる。
  当然、攻撃を浴びることも増えるだろう。
  約一名を除いて。
  俺が前に出るのはデュランダルを持っているときだから問題はない。
  攻撃を喰らってもHP吸収ですぐに回復できる。
  問題は、セリーの方だ。
 「九階層は大変じゃないか?」
  しばらく戦闘をこなしてから、セリーに確認した。
  セリーは何度か魔物の攻撃を喰らっている。
  被弾の増加はやはり避けられない。
 「いえ、大丈夫です。八階層より特にきつくなった感じはありません」
 「魔物の攻撃を受けることが増えてないか」
 「すぐに手当てをしてもらっていますし、問題ありません。えっと。やはりご迷惑でしたでしょうか。がんばってロクサーヌさんのように回避できるようになりたいと思います」
 「いやいや。手当てをするのは別に面倒じゃない。セリーがきつくなければ、大丈夫だ」
  あわてて否定した。
  セリーは気丈にもがんばってくれるようだ。
  まあセリーがいいというのなら大丈夫だろう。
  九階層もなんとかなりそうか。

  翌朝、クーラタルの迷宮でも九階層に移動する。
  ボス戦は例によってデュランダルでぼこった。
 「クーラタルの迷宮九階層の魔物はニートアントです。毒を使った攻撃をしてくるのが大きな特徴です。水魔法がニートアントの弱点になります」
  八階層のボス部屋から九階層に飛ぶと、セリーが説明してくる。
  毒か。
  クーラタルの迷宮九階層は一筋縄ではいかないようだ。
 「ありがとう。水魔法を使えばいいんだな」
 「はい」
 「分かった。しかし毒を使ってくる魔物は初めてだな」
 「えっと。スパイスパイダーも、低確率ですが攻撃されると毒を受けることがあります。それと、グリーンキャタピラーのボスのホワイトキャタピラーは毒を浴びせるスキル攻撃を仕掛けてきます。糸で動きにくくした後に毒攻撃をしてくるのが定番です。強力な連携技で、これにやられる人も多いと聞きます」
  あれ。そうだったのか。
  確かに毒消し丸は必需品だと聞いた。
  それだけ毒攻撃をしてくる魔物が多いということだろう。
  毒を使ってくる魔物がいないと思っていたが、運がよかっただけか。
  スパイスパイダーは、大体のところロクサーヌが相手をしている。
  つまり攻撃はほとんど当たっていない。
  ホワイトキャタピラーのスキル攻撃は全部キャンセルした。三鞭粒
 「気づかなかったな」
 「低階層で毒を使ってくる魔物の代表格はなんといってもニートアントです。ニートアントの恐ろしいところは、通常攻撃でも毒を受けることがあるし、こちらに確実に毒を与えるスキル攻撃もしてくるところです」
  二段構えということか。
  そして、スキル攻撃は上の階層であればあるほど使ってくる。
 「毒を喰らうとどうなるんだ」
 「どんどんと衰弱していき、放っておけば最後には死にます」
 「毒消し丸で治せるよな」
 「はい」
 「後遺症とかはないか」
 「毒そのものは薬で消せます。ただし、ダメージは受けたままです。必要なら傷薬を使うか手当てをするのがいいでしょう」
  予後は良好のようだ。
 「分かった。毒消し丸はアイテムボックスにあるから、二人とも毒を受けたらすぐ取りに来い」
 「はい、ご主人様」
 「かしこまりました」
  リュックサックに入れるよりアイテムボックスから取った方が早いだろう。
  アイテムボックスはセリーにもあるが、詠唱が必要だ。
  俺なら詠唱なしですぐに取り出せる。
  俺が動けなくなった場合のことも想定はしておくべきか。
  ボス戦でもなければ今のところそこまでの心配はいらないだろうが。
 「セリーにも毒消し丸をいくつか渡しておく。万が一の時にはそれを使え」
  セリーにアイテムボックスを開けさせ、毒消し丸を渡した。
  探索者Lv10でなれる鍛冶師のアイテムボックス容量は、やはり十種類×十個のようだ。
  毒消し丸十個を入れさせる。
  ロクサーヌの案内で進み、ニートアントに対面した。
  でかいアリだ。
  形そのものは、普通のアリである。
  ただしでかい。
  異様なほどでかい。
  遠くで見てもでかい。
  見方によってはちょっと気持ち悪い。
  いや、気味が悪いというよりかは、おどろおどろしい。
  うん。
  でかいカブトムシだと思えば、そう気持ち悪いわけではない。
  あれはカブトムシの仲間だ、カブトムシ。
  黒光りするからといって、決してGを思い浮かべてはいけない。
  うわっ。
  思い浮かべてしまった。
  脚のギザギザの辺りが、似ていなくもない。
  違う。
  アリだ。
  ただのアリだ。
  Gではない。
  ウォーターボールと念じた。
  水の球が頭上にでき、洞窟内を進んでいく。
  ニートアントは、Gのようにそそくさと移動したり、飛んだりすることはなかった。
  ウォーターボールが命中して弾ける。
  よかった。
  やはりGではない。
  ゴキブリなら絶対に今の水球を回避していただろう。
  二発めのウォーターボールを撃ち込む。威哥王三鞭粒
  動き自体は他の魔物と変わらないようだ。
  やはりアリだ。
  働きアリじゃなくてニートアントだけどな。
  働いたら負けかなと思ってそうだ。
  近くで見ると全長一メートルくらいはあるだろうか。
  これだけでかいとやはりちょっと気持ち悪い。
  続いて三発め。
  働けよ。
  まあ魔物が働くとろくなことにはならないだろうが。
  ウォーターボールを正面から喰らい、ニートアントが倒れた。
  三発か。
  水魔法は弱点なので、威力が倍になるようだ。
  Lv9だから、通常なら六発かかるところなのだろう。
  三発なので、こちらと接触する前に倒せた。

 毒針

  緑の煙が消えると、なにやら恐ろしい名称のものが残る。
  まがまがしい。
  セリーが無造作に拾い上げて持ってきた。
  大丈夫なのか?
 「はい」
 「えーっと。手で持っても問題ないのか」
 「人間や動物相手には食べさせないと毒にならないそうです」
  手で触れても大丈夫のようだ。
  思い切って、受け取った。
  黒くて円錐形をした五センチくらいのアイテムだ。
  先っぽのところが毒針になっているかとも思ったが、そうでもないらしい。
 「経口摂取しないと駄目なのか。蛇の逆だな」
 「そうなのですか?」
 「そうだ」
  蛇の毒はタンパク質でできているから、食べると消化されると聞いた。
  蛇が毒を使うのは獲物を狩るためだ。
  獲物を毒で倒した後、今度は毒に汚染された獲物を自分が食べることになる。
  自分の出した毒で自分がやられてしまったのでは目も当てられない。
 「そうなのですか。そんなことを知っているなんて、すごいです」
 「さすがご主人様です」
  無駄な現代知識で尊敬を買ってしまった。
  毒針も知らないことで評価を下げたからな。
  それを相殺する。
  セリーは口にも目にも出さなかったが、毒針も知らない田舎者だと少しは思ったことだろう。
  この世界の蛇は地球とは違う可能性もあるが。
  この世界の蛇が獲物を狩るために毒を使うのなら、地球と同じ理由で食べても大丈夫だろう。
  捕食者である蛇が身を守るために毒を持つなんてことはそうはあるまい。
 「毒針は魔物相手には有効です。投げつけたりすることで、うまく当たれば毒状態にできます。実力の拮抗したボスとの戦闘では、最初に毒針を使うことが基本戦略になります」
 「ボスも毒を受けるのか」
 「六人パーティー全員で二、三個も投げれば、毒を与えることができます」
 「確率低っ」
  六人で二、三個なら、全部で十二個から十八個だ。威哥王
  確実に毒を与えるには結構な数が必要になるらしい。
  一個や二個ではあまり毒にならないということだろう。
 「その他に特殊な使い方もします。迷宮の外に出ている魔物には、こちらから攻撃しない限り積極的には人を襲ってこないものも多くいます。この毒針は毒にする以外は何の効果もないアイテムなので、その魔物に投げつけても攻撃とは認識されません。毒状態になると攻撃したと判断されますが、毒にしてから倒すことで、短時間で倒すことができます」
  そんな裏技があるのか。
  いろいろたくましいというべきか。
 「あ。私も子どものころ、それで遊んだことがあります」
  ロクサーヌが声を上げた。
  ロクサーヌはやったことがあるらしい。
 「ロクサーヌがか」
 「えっと。結構元手がかかるのでは。私は貴族やなんかの子弟がするものだと聞きましたが」
  なるほど。
  毒針もただではない。
  コボルトソルトだって買い取ってくれるのだから、毒針もそれなりの値段はするだろう。
  それを何個も魔物に投げるのはもったいない。
 「近くにニートアントの湧く場所があったので、毒針はそこで集めました。どうせ毒針を持って帰っても危ないことをするなと怒られるだけなので、今度は森の奥に行き、強い魔物相手に毒針を使います」
  やり方としては、理にかなっているような。
  確かにやり方としては。
 「ニートアントは、普通に狩るんだよな」
 「そうです」
 「でもばれたら危険だと怒られると」
 「非力な子どもなので、倒すのに数時間はかかりますから」
  何か非常識な言葉が聞こえたような気がしたが、空耳に違いない。
  それとも、この世界の数時間は地球時間では数秒だったか。
 「えっと。ニートアントは毒にするスキル攻撃もしてくるので、非常に危険だと思いますが」
 「攻撃をかわしてしまえば問題はありません」
 「数時間も戦うのにですか」
 「はい」
  セリーよ。そこは突っ込んではいけないところだ。
 「それで、倒して得た毒針を他の魔物に使うと」
 「はい」
 「その魔物は普通に狩るだけじゃ駄目なのか?」
 「もちろん、私ではとても手が出せないような強い魔物を狙います。こちらの攻撃ではびくともしません。住んでいたところの近くでは、ノンレムゴーレムが比較的安全に近づけて強い魔物でした」
  普通に狩れるニートアントを倒して得た毒針を使って、普通では狩れないノンレムゴーレムを狙うということか。MaxMan

2013年11月15日星期五

聖槍

ハルバーの迷宮二十三階層に入った。
  聖槍とひもろぎのイアリングをテストしてみる。
  いきなりシザーリザード相手は怖いような気もするが、聖槍は前にも試したことがある。
  問題はないだろう。韓国痩身1号
  試してみると、やはり今までより早く魔物を倒せた。
  しっかり強くなっている。
  聖槍そのものはひもろぎのロッドより弱かったから、ひもろぎのイアリングの知力二倍がちゃんと効いている。
  大丈夫だ。
  聖槍だといい点がもう一つあった。
  セリーがやっているように、槍なら二列めから攻撃が届く。
  ミリアかベスタの斜め後ろから魔物を攻撃することもできた。
  ロクサーヌの後ろは危険すぎるとして。
  聖槍を持てば魔法を使う合間合間に攻撃ができる。
  今はまだ突いたり叩いたりするだけだが、慣れていけば斬ったりなぎ払ったりすることもできるようになるだろう。
  MP吸収のスキルでもつければだいぶ楽になるな。
 「この先にいる魔物はマーブリームだけのようです」
 「お。そうか。さすがロクサーヌだ。次はちょっと実験してみるから、倒すのに多少時間がかかる」
  ロクサーヌがアドバイスをくれたので、聖槍をしまいダマスカスステッキを取り出した。
  ダマスカスステッキを試すのは、さすがにシザーリザード相手ではない方がいいだろう。
  魔物が現れる。
  マーブリーム二匹だ。
  サンドストームを二回念じた。
  念じた後で走り出そう、としたら、誰も動かない。
  何故だ。
  いや、そうか。
  マーブリームしかいないのだから、こっちから近づく必要はない。
  ロクサーヌがわざわざ進言してきたのはそのためか。
  ダマスカスステッキを手に入れたことは教えていないし、マーブリーム相手に試すとも言ってないからな。
  走り出さないように、敵はマーブリームだけだと教えたのか。
  動いたときに聖槍を放り投げるのが嫌でアイテムボックスにしまったのだが、この場で迎え撃つならしまうことはなかった。
  ミリアもベスタもよく走り出さなかったものだ。
  セリーはともかく。
  二人ともすましているが、きっと内心では驚いているに違いない。
  気づかなかったのが俺だけということはないはずだ。
  俺も何ごともなかったかのような顔で魔法を放っていく。
  魔法を撃ってから移動する魔法使いでよかった。
  下手をしたら一人だけ走り出して恥をかくところだった。
  マーブリームを倒す。
  ダマスカスステッキの強さは、ロッドよりも上でスタッフよりは下というところか。
  アクセサリーにつけた知力二倍はもちろん有効になっているはずだ。
  聖槍より弱いからメインで使うことはないが、予備としては十分だろう。
  武器を聖槍に戻して、探索を続ける。
  シザーリザード四匹にロートルトロール一匹が現れた。
  大所帯だ。
  今度は四人がすぐに駆け出す。
  ちゃんと分かっているのか。
  不可解だ。
  俺はその場でサンドストームを二度念じてから、追いかけた。
  ロートルトロールを先に倒すなら弱点は火属性だが、シザーリザードは火魔法に耐性があるので使えない。
  耐性がなかったとしても、ロートルトロールを優先して倒すべきかどうかは相変わらず判断が難しい。
  今の場合、ロートルトロールを一匹減らしてもあまり意味はない、かもしれない。
  二十二階層までの魔物に比べたらシザーリザードはかなり強くなっている。
  シザーリザードを倒すのを遅らせることはないだろう。韓国痩身一号
  ロクサーヌたちが魔物に対峙した。
  ロートルトロールを挟んでシザーリザード三匹が横に並び、迎え撃つ。
 「来ます」
  後ろに回ったシザーリザードの足元に魔法陣が浮かんだ。
  ロクサーヌの警告の後、周囲に火の粉が舞う。
  全体攻撃魔法だ。
  魔物の全体攻撃魔法もファイヤーストームと変わらないらしい。
  一瞬、体全体がカッと熱くなった。
  胸が締めつけられ、節々が痛む。
  足の指がもがれそうだ。
  肌がちりちりと焼け、痛覚神経が悲鳴を漏らした。
  三匹のシザーリザードが隙を逃さず攻めかかる。
  ロクサーヌが身体を揺らして避け、ミリアが大きく足を引き、ベスタが剣で弾いた。
  今のがよくかわせるもんだな。
  俺なら確実に喰らっていた。
  それでも、痛かったのは一瞬だ。
  すぐに熱さはやみ、痛みも引く。
  服やリュックサックに燃え移ることもないようだ。
  体だけが熱せられたのかもしれない。
  ロートルトロールが遅れて大きく腕を振った。
  ロクサーヌが何ごともなかったかのようにかわす。
  俺はお返しにサンドストームをぶち込んだ。
  セリーは、連発されないように槍をかまえて魔物をにらみつける。
  シザーリザードの全体攻撃魔法に致命的なまでの威力はないようだ。
  これなら一発二発で死ぬことはない。
  サンドストームを連発し、次を浴びる前に魔物を倒した。
 「これが全体攻撃魔法か」
  それでも、さすがに二桁は耐えられる自信がない。
  連発されると結構大変かもしれない。
 「単体の魔法より威力があるような気がしますが、気のせいでしょうか」
  ロクサーヌがシザーリザードの単体攻撃魔法を受けたときにはメッキをかけていた。
  いずれにせよ威力の正確な測定はできない。
  測るとしたら、何発浴びたら死ぬか、くらいだ。
  測りたくない。
 「分かりませんが、耐えられないほどではないですね。きついことはきついですがしょうがありません。何発かは耐えられそうですから問題ないでしょう」
  セリーは頼もしいことをおっしゃる。
 「はい、です」
 「革もあったのか」
  全員に順次手当てをかけていると、ミリアが革を持ってきた。
  革のブラヒム語は、すでに忘れているらしい。
 「そうですね。これくらいならたいしたことはないと思います。あ、手当てはもう必要ありません」
  ベスタにいたっては手当て一回で断ってくる。
  たくましすぎだろう。
  竜騎士だから堅いのだろうか。
 「危なそうじゃなくても、ダメージが残ってそうなら言え」
 「はい。大丈夫です。ありがとうございます」
  別に遠慮しているわけでもないようか。
  俺なら大丈夫と思ってから念のためにさらにもう一度自分に手当てしてしまうが。
  この差は何だろう。
  覚悟の違いだろうか。
  必要ないそうなので手当てを終え、探索を再開する。
  全体攻撃を喰らったとき、全員に手当てをかけるのは面倒だな。
  戦闘中に手当てが必要なくらいダメージを受けたら、間に合わなくなる恐れもある。
  全体手当てができる神官の早期取得が望まれる。
  あるいはセリーのジョブを巫女にするか。御秀堂養顔痩身カプセル第2代
  セリーを巫女もいいが、鍛冶師のレベルを伸ばしていきたい感じもするんだよな。
  これからもいろいろ新しい装備品を作ってもらうことを考えると。
  ミリアは暗殺者だし、ベスタには竜騎士があっているだろう。
  となると、消去法で残るのはロクサーヌか。
  ロクサーヌならどんなジョブでもこなしてしまいそうではある。
  まあそれはもっと厳しくなってからでいいだろう。
  その日は、夕方まで探索を行い、風呂を入れて一日の活動を終えた。
  ロクサーヌやセリーたちには夕食の後片づけや鍛冶も残っているが。
  遊び人のスキルに初級水魔法をセットすれば風呂を入れるのも楽になったし、今日は少し温度も高かったようだ。
  風呂でさっぱりするのがいいだろう。
  汗も少しはかいたはずだ。
  迷宮の中はそれほど暑くはないとはいえ。
  寝汗とか。
  朝方はベスタにひっついているとひんやりした感じもあるとはいえ。
  とにかく、風呂に入って一日を終える。
  風呂に入った後、少し運動もしたが、終える。
  色魔をつければ疲れることもない。
  腰の運動など、あってないようなものだ。
  翌朝、地図を持ってクーラタルの二十二階層に入った。
  さすがに二十二階層までくると早朝に入る必要はないかもしれないが、混んでたりしたら嫌だし。
 「ミリアのジョブだが、石化の剣を生かすため、暗殺者にしようと思う」
  二十二階層の入り口で、全員に告げる。
  昨日ついにミリアのジョブが戦士Lv30に達した。
  暗殺者と騎士もちゃんと取得している。
  黙って変えるのも悪いような気がするので、宣言した。
  いっても暗殺者だしな。
  嫌がらないだろうか。
 「はい」
 「確かに、毒付与なんかがあるといいそうです」
 「はい、です」
  ジョブの名前は暗殺者だが、別に嫌われているわけでもないようか。
  取り越し苦労だったようだ。
  まあLv1になるという問題もある。
 「新しいジョブに就くので、慣れるまで少しの間、ミリアは後列に回した方がいいだろうか」
 「必要ないと思います」
 「ギルド神殿でジョブを変更した場合でもパーティーを組んでいるのなら奴隷にそんな配慮はしません。必要ないのでは」
 「だいじょうぶ、です」
  ロクサーヌ、セリー、ミリアが大丈夫だと言い張った。
  パーティーの中にいれば他のパーティーメンバーが持つジョブの効果がその人に及ぶ。
  Lv1になったからといって極端に弱体化はしないのだろう。
 「うーん。問題ないのか」
 「いつまで後列にいればいいか分かりませんし、二十三階層より上の階層の魔物には全体攻撃魔法があるので、後列だからといって安心はできません」
  セリーのいうことは、この世界では合理的なんだろう。
  俺には獲得経験値二十倍があるし、レベルを見て判断することもできるが。
  ミリアが後列にいるのは多分クーラタルの二十二階層にいる間くらいだ。
 「分かった。だが、しばらくはくれぐれも慎重にな」
 「はい、です」
 「ベスタは硬直のエストックを試してみたくないか?」
 「ええっと。そうですね、興味はあります」
 「なら、魔物の数が少ないときには、ミリアは武器をベスタと交換して後列に回ってくれ。二匹以下ならそれで問題ないだろう」御秀堂養顔痩身カプセル第3代
  妥協案を出す。
  ミリアのジョブを暗殺者にするのは魔物が二匹以下のときにすればいいだろう。
  パーティージョブ設定でそれはどうにでもなる。
  魔物が三匹以上のとき戦士Lv30のままにしていても分からないはずだ。
 「はい、です」
 「ありがとうございます」
 「では、途中魔物の少なそうなところがあったら積極的に回ってくれ」
  ロクサーヌに地図を渡し、案内してもらった。
  魔物が二匹以下のときには、ロクサーヌとベスタが相手をする。
  ミリアのジョブを暗殺者にして、後列に回らせた。
  二匹だから横から攻撃させてもいいが、安全のため下がらせる。
  ミリアの暗殺者のレベルは順調に上がっていった。
  後はベスタの石化待ちだ。
  ベスタが魔物を石化させたのは二十二階層をある程度進んだときだった。
 「できました」
 「やった、です」
  クラムシェルが石化している。
  ロクサーヌが相手をしているクラムシェルとともに土魔法で始末した。
 「これでベスタも硬直のエストックの威力を感じただろう」
 「はい。すごい武器だと思います」
 「次からはミリアが専用で使ってくれ。ジョブを変えたばかりだから、あまり無理はしないようにな」
 「はい、です」
  暗殺者はLv5まで進んでいる。
  前列で戦わせても大丈夫だろう。
 「ではボス部屋まで頼む。魔物の少ないところにはもう回らなくていい」
  指示を変更し、ロクサーヌの先導で進んだ。
  途中何度か戦ったが、ミリアの石化がいきなり増えたということはないようか。
  それはそれでいい。
  というか、むしろその方がいいのかもしれない。
  暗殺者のスキルには状態異常確率アップがある。
  暗殺者になっていきなり石化の確率が上がったら、そのスキルが効いたということだ。
  いきなりは上がらなかったとしても、状態異常確率アップのスキルが効いていないということでは、必ずしもない。
  暗殺者になってもいきなりは石化の確率が上がらないのなら、状態異常確率アップは暗殺者のレベル依存になっている可能性がある。
  ミリアはこのまま暗殺者で使っていくつもりだ。
  レベルもすぐに上がるだろう。
  状態異常確率アップはレベル依存であった方が、最終的には確率がアップするかもしれない。
  レベルが上がるのを楽しみにしておこう。
  オイスターシェルに対してはミリアの石化が発動した。
  暗殺者のおかげ、かどうか。
  博徒の状態異常耐性ダウンとの相性はいいのかもしれない。
  しかしオイスターシェルは元々貝殻なので石化してもよく分からんな。
  動かないだけで。
  料理人はつけずに、デュランダルをしまって魔法で片づける。
  狙いどおり、オイスターシェルは牡蠣を残さなかった。
  残されても一個だけでは困る。
  残したボレーはベスタに渡す。
  ベスタにボレーが必要なことを考えると、クーラタルの二十二階層はこれからもまだ世話になるな。
  人の多い夕方にどれくらいボス部屋が混雑するか、確かめておいてもよかったかもしれない御秀堂 養顔痩身カプセル

2013年11月12日星期二

東と西で

「本当か?」
  ルーベンスはフランクリンからの報告に耳を疑い、思わず聞き返していた。
  まさかアウラニースがとっくの昔に復活していたとは。天天素
 「ええ、どうしますか?」
  フランクリンの質問にルーベンスは短くない時間考え込んでいたが、やがて答えた。
 「仕方あるまい。まずベルガンダを潰せ」
 「はい、その後はどこがいいですか?」
  母親が子供に何が食べたいのか問うような口調でフランクリンは尋ねた。
  答えるルーベンスの口調も何気ないものだった。
 「ベルガンダと隣接している国全てだ。攻め滅ぼせ」
 「了解」
  人類に危険極まりないやり取りを終え、ルーベンスはため息をついた。
  アウラニースは唯我独尊で天衣無縫だが、こんな展開は完全に想像外だった。
  正直なところマリウスと戦う為にアウラニースの力をアテにしていたのだが、協力してもらえない可能性そのものは予想していた。
  だからルーベンスはゲーリックとメルゲンを連れ、アルベルト達と別行動をしているのだ。
 「まさかアウラニース様が既に復活しているとは……」
 「我々に一言知らせがあってもよさそうなものですが」
  メルゲン、ゲーリックの順である。
  両者とも困惑を隠せないでいた。
 「そういう方なのだ、アウラニース様は。側近のソフィアやアイリスもいつも振り回されていたな」
  ルーベンスの言葉には呆れ以外にも懐かしさが混ざった。
  魔人ソフィアと魔人アイリスはアウラニースの側近の上級魔人であり、ルーベンスとも顔なじみだった。
  どちらも倒されたという話は聞かないから、もしかしたら彼女達が主人を復活させたのかもしれない。
  事前にルーベンスに知らせるなど、彼女らの選択肢にあったとは思えない。
  顔なじみと言っても見かければ言葉を交わす程度で、積極的に情報を交換したり行動を共にしたりするような仲ではなかった。
  そして封印を解いた事を教えるかはアウラニースのその時の気分次第である。
  それくらいの事は理解していた。
 「恐らく他の大陸にいらっしゃるのだろう。……この大陸が無事だからな」
  物騒な判断方法でルーベンスは結論を出す。
  アウラニースの恐ろしさ、強さは言葉ではとても表現出来ない。
  計画が狂ってしまったが、ルーベンスはその事を態度に出さず、指示を待つゲーリックとメルゲンに言葉をかけた。三鞭粒
 「予定通り、フランクリン達が動いてからフィラートへ入るぞ」
 「はっ」
  彼らはデカラビアを復活させる為にホルディアに向かっていて、今はランレオ国内にいた。
  旅人が国境を通過する際、素性確認をされるのだが三人は堂々と突破した。
  担当した兵士の目が節穴だと責めるのは気の毒だ。
  ゲーリックは家族や親友すら気づかぬくらいの変装がスキルで可能だし、ルーベンスとメルゲンはマジックアイテムで変装していたのだ。
  一流の魔法使いならばあるいは違和感を覚えたかもしれないが、それだけの人材が国境で素性確認などを担当しないのが人類国家というものである。
  マリウスにしろ他の者にしろ、まさか魔人が律儀に国境を通過するとは想像していなかった。
  もちろん魔人にとってこれは屈辱的なのだが、ルーベンスは別に人類の裏をかいたつもりはない。
  従来通りの方法でフィラートを通過した場合、マリウスやゾフィに察知される危険があると踏んだのだった。
  人間になる事が役目の一つであるゲーリックはともかくメルゲンはやや不満そうだったが、マリウスの危険性が理解出来ぬ程愚かではなかったらしく、何も言わなかった。
  マリウスがいる可能性は低いと知りながら、それでも安全の為にルーベンスはフランクリン達を囮代わり使ったのだ。
  仲間を大切にするルーベンスにとっては屈辱であった。


  ルーベンスとの通話を終えたフランクリンは、仲間達に向き直った。
  連絡を取るより先に一度合流していたのである。
 「まずはベルガンダを潰し、その後は隣接国家全部を攻撃だそうですよ」
  レーベラが口笛を吹き、ガスタークが手を叩いて喜びを表現した。
  これまでが嘘のような過激な命令であった。
 「ルーベンスさん、やけに好戦的だな。……まあいい加減我慢の限界だったし、いいんだけどよ」
  アルベルトはほんの一瞬だけ疑問を持ったが、すぐに打ち消した。
  彼はレーベラ並みに短気で好戦的なのだった。
  むしろ温和で冷静なフランクリンやパルが少数派である。
 「俺、忙しくなりますねぇ」
  ガスタークも闘志を燃やしていた。
  自分が作ったアンデッド兵達が人類国家を蹂躙するというのは、想像しただけでも愉快で仕方がなかった。
  パルだけは相変わらずの無表情を決め込んでいたが、突然ピクリと眉を動かした。
 「フランクリン様、アルベルト様」
  呼びかけの意味を二人の上級魔人は理解していた。
  遠くから大多数がこちらに接近してきている。
  十中八九、異変を察した人間達の兵であろう。
 「ええ、ちょうどいい時に来ましたね」
 「はっ、血祭りに上げてやるか」
  穏やかだった二人の魔人の気配が剣呑なものへと変わっていく。
 「一国を潰すなんざ、チンタラしてたら時間を食う。俺らもやるが文句ねえよな?」
  アルベルトが問いかけたのは主にレーベラとガスタークである。
  事実上の命令を拒否出来るはずもなく、二人は頷いた。威哥王三鞭粒
 「じゃあゾンビどもを下げとけ。俺とフランクリンで片づけるからよ」
  アルベルトは凶悪な笑みを浮かべた。
  巻き添えを食らいたくないパル、レーベラ、ガスタークは素直に城門の中へと退避する。
  遠くからベルガンダ正規軍が近づいてくる。
 「フランクリン、どっちが多く殺るか競争しねえか?」
  とんでもない提案をされたフランクリンは眉を片方だけ上げた。
 「構いませんが、ちゃんと細かく数えて下さいよ。いつも君はいい加減なんですから」
  お説教に近い意見にアルベルトは小さく舌打ちしながらも頷いた。
 「分かってんよ。ズルして勝ってもつまらねぇからよ」
  その点に関してフランクリンはアルベルトを信用していた。
  いい加減で大雑把で行き当たりばったりで短気であっても、仲間に対して不正行為をするような性格ではないのだ。
 「おい、褒めてんのか、それ?」
  アルベルトの疑問にフランクリンは穏やかに微笑んで答えた。
 「君は信頼するに足る戦友です。それで充分ではありませんか?」
 「……はぐらかされたような気がするけどまあいいや」
  フランクリンは口で勝てる相手ではない。
  アルベルトは早々に諦め、ベルガンダ軍の方を向いた。
 「攻撃は公平なように同時にやるぜ?」
 「ええ」
  ベルガンダ軍はようやく魔人に気づいたのか、一キロ程手前でようやく行軍速度を落としたが既に手遅れだった。
  アルベルトとフランクリンの攻撃の射程距離に入ってしまっていた。
  アルベルトは全身の魔力を練り込み、正拳突きのように右拳を突き出す。
  拳から放たれた衝撃波が空気を切り裂くような音を立て、ベルガンダ軍を襲う。
  ベルガンダ軍は何が起こったのか全く認識出来ずにいた。
  味方の兵士達が吹き飛ぶと同時に音が聞こえてきたのだった。
  アルベルトの得意技「ソニックショット」は原理としては人間の武術で言う「遠当て」と同じである。
  魔力を練ったものを飛ばし、触れずに敵を倒すのだ。
  ただ、威力や射程距離が人間のそれとは完全に別物であった。
  アルベルトの出身種族、グリフォンは魔力を衝撃波に変えるのが得意とする魔獣なのだ。
  一方のフランクリンは、普通に人間の魔法を使った。
 「ちょっと合成してみますか。【インフェルノ】【クレイアサルト】【プラズマストーム】」
  闇系魔法と炎系魔法の合成魔法「インフェルノ」、土系魔法と水系魔法の合成魔法「クレイアサルト」、炎系魔法と雷系魔法の合成魔法「プラズマストーム」はいずれも限りなく禁呪に近い一級魔法とされる。
  詠唱省略で放ったにも関わらず、絶大な破壊力を発揮している上にフランクリンは汗ひとつかかずに平然としていた。
  ベルガンダ軍兵士達は黒い炎で焼かれ、土石流に飲み込まれ、プラズマで蒸発した。
  フランクリンの出身種族、スフィンクスはモンスターとしては例外的に優れた知能と強大な魔力を活かした魔法攻撃を得意とする。
  魔人ともなれば、人間の一流魔法使いが束になってもまとめて蹴散らされる程だ。
  ましてや上級魔人となれば言うまでもない。
  帝都救援の為にやってきたベルガンダ軍二十万はあっけなく全滅した。
  ……これより数日後、歴史からベルガンダ帝国の名は消される事になる。
  この国が救われるには、本気の魔人は強すぎた。威哥王


  魔軍が東で猛威を振るい始めていた頃、西ではミスラ、バルシャーク、ヴェスターの三カ国連合軍が快進撃を見せていた。
  国境の砦は占拠しそこねたものの、周辺の都市は支配下に治めていきつつあり、本国では早くも戦勝気分が広がり始めている。
  バルシャーク王ジェシカとミスラの大統領フレデリックは自身の声望の為に、それを否定せずにいた。
  ホルディア側の抵抗が弱い事が意外すぎたが、国内改革による混乱が大きいのだろうという声が多数を占めている。
  ジェシカもフレデリックも大して疑いを持っていない。
  人間とは失敗を犯す生き物だし、アステリアのように全て自分一人で考えて決める体制の場合、取り返しのつかない失敗もやらかしたりするものだ。
  臣下達は失敗の可能性を想定してもきっと諌言出来なかったのだろう、と予想していた。
  ちなみにこの点に関しては全くの的外れというわけでもない。
  アステリアは諫言を行う者を粛清したりはしなかったが、受け入れて方針を改める事もなかったのである。
  ただ連合軍も順風満帆だったとは言いにくい。
  略奪が全く出来ず、売り飛ばす奴隷や金品の類も手に入らなかった為に計画を修正する必要が出てきたのだった。
  住民がいないのでは税収も農作物の収穫も見込めないし、戦争中とあっては商人や旅人の類も寄り付かない。
  収益を確保する為には本国から民を入植させる必要があるだろう。
  だが、ホルディアに致命的打撃を与えたわけでもないのにそこまでするのはさすがに躊躇した。
  ホルディアが逆襲に転じた場合、軍どころか民に被害が出る可能性があるし、それは一番避けなければならない。
  そういう理由で「さっさとホルディア軍に打撃を」となっている。
  そして援軍の派遣が決まったのだ。
  チャンドラーが舌打ちをし、ガレスが頭を抱えている理由である。
  ランドルは王のジョンソンが喜ばずに慎重な態度を変えていない為、他と比べればまだマシだった。
  ただ、国内では慎重論よりも積極論が勝り始めていて、そういう意味ではあまり宜しくはない。
  バルシャークとミスラだけが都市を占領しているのが嫌なのである。
  王が絶対的権限を持っているとは言え、失望されたり無能だと思われても平然とするにはジョンソンはプライドが高かった。
 「美味しい部分はきっちり抑えるよう、ランドルに命令を出せ」
  こうして多少の時間差があってランドルも他の二将の仲間入りをする事になった。
 「現場との温度差を作り出す作戦か?」
  チャンドラーはガレスとランドルに問いかけてみた。
  この三人は急速に仲よくなりつつあるな、と思いながら。
 「そしてその先は離間の策か? ありえんとは思うが、それだけの為に自国領を差し出す真似をするかな?」
  ランドルは豆のスープを飲んだ後、珍しく嫌味抜きで答える。
 「まあな。我々と本国の仲が悪くなっても、別の将が来るだけだ。もちろん、その将相手なら勝算は増えるという可能性はあるが……」
  ガレスも鶏肉の串焼きにかぶりつきながら首をかしげる。
  結局この日も結論は出せず、定期的に情報交換をする事と索敵を怠らない事を約束しあって解散した。
  彼らはまだこの時、東での異変を知らなかった。MaxMan
  つまり本国へ撤退する最大の好機を逸した事になる。

2013年11月11日星期一

運ばれるお話

「わかった。じゃあ今日はよろしく頼むよ」
 「了解なのです! ここまで言わないとパーティー組んでくれないとか、九乃さんは本当に性根から歪んでますね~。わたしが叩き直してあげますから、覚悟するのです!」
 「……ボスを倒しにいくんだよな?」花痴
 「当たり前じゃないですか」
 「だよな」
なにやらフレイが物騒なことを言ってるんだが……ホントに大丈夫か?
 「ちなみに、俺が頑固に行かないっていったらどうするつもりだったんだ?」
 「悲しくなるつもりでした。九乃さんは乙女を悲しませるような人じゃなかったようで一安心です」
 「……うん、それは確かに俺も一安心だ」
 「じゃ、そういう訳なので、今日は引きこもりはNGですよ?」
 「わかってるって……」
 俺の初パーティー戦か。どうなることやら。
その後。
 二時限目の途中で俺は本格的にだるくなったので、保健室に行きましたとさ。
ベッドで昼寝したら全回復だぜ! 玲花が滅茶苦茶心配してたが、丈夫さが取り柄なんだって。むしろ俺がここまでになるとか、俺は昨日どんだけ脳を使ったんだって話だ。
まぁ、VR酔いは脳が慣れれば、同じ原因では再発しないからもう大丈夫だけども。何事も、慣れって大切だよね~。

  ―――

「はい、では只今より、いつまでたっても第二のボスを倒さないクノさんのために、ギルド総出でソルビアルモスを倒しに行きますよ~!」
 「「「「「おー」」」」」
 「ウウレ」の北門。
  そこに、「花鳥風月」の全メンバーが集まっていた。
  ここをまっすぐ進んでいくと、フィールド「恐れの花畑」に到着する。この間だいたい1キロだそうだ。
  どのエリアも、ボスのいるフィールドまでは1キロほどなんだな。第三のボスがいるフィールドまでの道のりもそうだったらしい。
  まぁ、それはいいや。
  で、その「恐れの花畑」の奥に、ボスであるソルビアルモスが出てくるということだな。
 「ではしゅぱーつ……の、前に。クノさん」
 「ん?」
 「あー、その、ごほん……ぶっちゃけクノさんは行軍の足手まといなんですよー」
 「ぐはっ」
  なにやら、棒読みでそんなことを言うフレイ。
  おいこら。
  何いきなり毒吐きやがるよ。棒読みだけど。
  仲間に頼りましょう、迷惑なんかじゃないです、とか言っときながらそりゃないんじゃない……? 棒読みだけど。
 「クノさん。私達は普通にAgiにもステータス振ってますから、ボスまでは終始早歩き……クノさんからするとちょっとしたランニングですが、体力持ちませんよね?」
 「……おっしゃる通りです」福源春
  その通り、俺がボスんトコまでいこうと思ったら、途中の戦闘も考慮するとスタミナ的に、てくてく歩いて行くしかない。フィールドの広さを考えると、道中のモンスターを全て無視しても30分はかかるんじゃないか? 戦闘していったら倍はかかるか?
  はぁ。ほら、こういうところで地味に迷惑がかかるのが俺って奴だ。だからパーティープレイは好きじゃない。
 「でも今日はなるべくちゃっちゃとボスまでたどり着きたいんですよ。私達はここのボスは既に倒しているので、時間がもったいないですから」
 「うん。なんでさっきからそんなに言葉がきついの?」
  追い打ち気味なフレイの言葉。
  なんかいつもと様子が違う。
  具体的には、なんか変な、引きつった笑みを浮かべながら俺を罵倒してくる。意味わからん。腰引けてるし。棒読みだし。
 「あの子、クノさんの歪んだ性根を叩き直すんだ、と言って張り切ってたけれど」
 「私式スパルタなのです、とも言っていたね」
 「なんだそりゃ」
  エリザとカリンが隣に来てこそっと教えてくれる。
  叩き直すっていうか、なんか違うよね。スパルタっていうか、SMだよね。いやそれも違うけど。
  手段にとらわれて目的を見失って更にその手段もずれてるという訳わかんないことになっちゃてる。
  完全に無理してるだろ。お前にはそんな厳しめの役割は似合わんよ……
 いや、言葉はいちいち正確なんだけど、それ以前の心構えとかがもう駄目だ。
 「ふー。こ、こんなもんですかね……という訳で、じゃーん! 私こんなもの買ってきました!」
  そういってフレイが、急に声の調子をがらっと変える。
  あれ? スパルタ(笑)は諦めたのか? や、そのほうがお互いのためだろうけど……一体何がしたかったんだよ……
 メニューをいじって実体化させたものは……なんだこれ?
  木箱にコの字の取ってと大きな車輪がついた、えっと……リアカー?
  小さめで、人一人乗れるかどうかという。
  まさか。
 「はい、何か気付いたような顔してますねぇ! その通りですよ! これにクノさんを乗っけて、私がボスの所まで走っちゃいます!」
 「まじですか?」
 「まじですっ」
  何かの反動のようにテンション高めのフレイ。いや、いつものフレイ。
  いやまぁ、確かに合理的だけども。フレイのステータスならこのくらい訳ないだろうけども。
  ……恥ずかしいじゃない?
  女の子の引くリアカーに乗せられてる俺……シュールすぎる。
  ってか、アイテムショップにはこんなものまで売ってんのかよ。
 「安心するといい。道中引っかけたモンスターは全て後続の私達が倒すから」
 「レベル的には格下なのだしね、楽勝よ。フレイとクノが先頭切って、私達が後を追う形になるかしら。」
 「クノさん……頑張ってくださいね?」
 「後ろは任せろー!」
 「ということですっ」
  満面の笑みを浮かべるフレイ。
  ああうん。もう、いいや。フレイがそれでいいって言うのなら、俺が文句をいう筋合いは無いかな。
  せめて騎獣があればなぁ……
 もしくは、用途に合わせて専用装備的な感じで防具を換装できれば、俺もエリザにAgi特化防具作ってもらってそれ装備するんだが、あいにくとフィールド内では「防具」の変更はできないんだよなぁ。「武器」と「アクセサリ」は出来るけど。勃動力三体牛鞭
  まぁ、できたとしてもそれはそれで、Str極振りとしては邪道な気がするからやらなかったかもだけど。
 「おっけ、わかった。じゃあ頼むぞフレイー」
 「任せてください!」
 「よっこらせ、と」
  フレイが持ち手を支える、小さなリアカーに乗り込む俺。
  スペースが狭いので体育座りだ。
 「ぷっ、くくくく」
 「おいこらエリザ。何笑ってんだ」
 「い、いえ、笑って無いわよ?」
 「口元にやけてる上に眼が泳いでるから」
 「……くっ。貴方がそんなシュールな格好してるのが悪いのよ!」
 「逆ギレ!?」
  エリザは随分と……なんというか、感情表現が豊かになってきた気がする。
  それだけ信頼されてるってことかな?
  や、まぁ。それでもデフォは無表情なんだけど。
 「ドナドナドナドナ……」
 「カリンも不吉なこと言ってんじゃないよ」
 「……はい、良くお似合いです」
 「……うん。流石クノくんだね」
 「ノエル! リッカ! やめて!? そんなに引かないで!?」
  良くお似合いですって何!? 何に対してのフォローだよそれ!
 「はい、では今度こそしゅっぱーつ!」
 「え、まじで? いやちょっとまぁぁぁあああ!?」
  慌ててリアカーにしがみ付いた直後。
  俺の身体に猛烈な加速がかかる! 
  ちょ、速い、速すぎるよフレイ! 落ちる落ちるっ。こんな序盤からぶっ飛ばしてて大丈夫か!? エリザ達をぶっちぎってるぞ!?
  って言う不平を伝えることもできずに。
  ……うへ、気持ち悪ぃ……眼がなんかくらくらする……耳がギュオオ! ってなってる。
 「いえぇぇえい! とばすぜー!」
  こういうところでもAgiだのVitだのが足りないツケが回ってくるというのか。
  俺は直接加速の風にさらされながら、振り落とされないようにされるのが精いっぱい……あ、Vitがないからしがみつく力が弱まってきた!
  そして、その時は無情にも早くにやってきて、
 「うわぁ」
  遂に完全に手が離れてしまった。
 「あわっわわわ」
  落ちるっ! まずい、この速さから落ちたらダメージも相当じゃないか!?
  移動途中に死に戻りとか、洒落になら……
 ……
 ……?
  アレ? なんともない。
  未だ風は吹きつけてくるものの、何故か俺の身体が振り落とされる様子はなかった。
  あらら?
  不思議すぎる……流石、ここら辺はゲームだなぁ、と感心だ。
  まぁ、考えればリアカーに乗せた荷物が途中で転落するのを防ぐ、というのは普通のこと……今更だけど俺荷物扱いか……!?
  ちょっと落ち込みながら、それでも転落の心配のなくなった俺は、特にやることもないので風景を見ながらぼーっ、とする。吹き付ける風は、慣れれば意外とそうでもなかった。
  後ろに小さくエリザ達が見える。
  俺達は寄ってくるモンスター(ソウトバグの上位互換、デイトバグや、巨大芋虫のキャレピン、蝶型のバルタギイなど)をぶっちぎって進んでいる。
  同じパーティー登録をしてあるエリザ達がそいつらの相手をするため、どうしても遅くなってしまうのだな。御苦労さまです。蒼蝿水
  とはいえ、レベル差のせいでエリザも言っていたように“楽勝”なんだろうが。
  ここのモンスターの平均レベルは大体27。対してうちは軒並み37を超えている(俺を除いて)。カリンに至っては40超え、ただいま43だ。
  俺と9も差があるぜ……泣けてくらぁ。
  【異形の偽腕】の訓練をするまえに、レベルをちょいと上げなきゃかな……
「おおおぉぉぉお! スパルタですー!」
  ……はぁ。
  フレイ、そりゃお前にとってだろ、どっちかというと。やっぱ、向いてないな。
  後、そんな大声ださないで欲しい……さっきからちらほらとすれ違うプレイヤーさん達にガン見されてるから。
  俺はいたたまれなくなって、体育座りの膝に顔をうずめ、眼を閉じるのだった。

  ―――

 ボス前のセーフティエリア。
  俺とフレイはそこで一息ついていた。
 「ふぅ、良い汗かきましたぁ」
 「VRだから汗はかかないはずだぞ?」
 「気分ですよ気分っ」
  他の皆もそろそろ追いついてくる頃かな?
  あ、そう言えば地味に俺、レベルアップしました。
  パーティー登録をしていると、パーティーで倒したモンスターの経験値は、パーティーメンバー全員にいきわたるんだよな。
  それでもともとレベルアップが近かったのか、俺は何にもしてないのに勝手にレベルアップ。
  こういうのなんていうんだっけ……寄生?
  ……がーん。
  とりあえず近場の樹に手をついてもたれて、心を落ち着ける。
  大丈夫だ、ボス戦で挽回できる! ……でもそもそもボス自体、皆にとっては倒す必要もないわけで。
  ……まぁ、うん。深く考えたら負けだな。
  折角頼ろうって決めたんだし、少しぐらい迷惑かけても……うんそう、少しくらい……
 あ、でも俺ボス戦でも得意分野?である近接戦NGって言われてるからなぁ……
 と、俺が感情のデフレスパイラルにはまっていると、カリン達が追いついてきた。
 「流石はフレイね……荷物を抱えた状態でもあの速度なんて」
  真顔でそんなことをのたまうエリザ。
 「酷ぇな、おい。荷物て」
 「ふふっ、なんて冗談よ。ごめんなさいね、クノ」
 「……うん、冗談かよ。エリザの冗談は分かり辛すぎる」
 「そうかしら?」
  エリザが、ホントにきょとん、とした様子で小首を傾げる。
  頭の上に?マークでも出てきそうな勢いだ。
 「自覚がないっ……!?」
 「エリザは理知的と見せかけて意外と天然だからね……」
  カリンも苦労してそうだな……SEX DROPS

2013年11月7日星期四

恋人達は現実を知る

二人して戻った広間は先程よりも穏やかな雰囲気になっている。
  おそらくフェリクス達は無難に挨拶を終えたのだろう。反論でもしていれば今頃は周囲の視線を集めている筈だ。
 「……こちらに向かって来ていますね。エル達も、ですが」D9 催情剤
 「あれ、もう来ちゃうの?」
 「一緒にではありません。後ろからです。いつでも介入できるようにする為でしょう」
  私よりも背の高いアルからは見えたらしい。つまり今度は魔王様達が出てくるのか。
 「あらら、本番を始める気?」
 「長引かせても結果は変わらないと判断したのでは?」
  更生コースは却下されたらしい。気まずさはあっても反省は見られなかったのか。
  まあ、正直さっきの出来事程度でこれまでずっと『そう育てられてきた』フェリクスが変わることはないだろう。フェリクスが基準のサンドラ嬢も同じく。
  ……彼女は侍女を失う事は嘆いても『何故それが必要なのか』ということまでは理解できなかっただろうから。
  王族、しかも他国の者の前での失態。それを許してしまえば国そのものが価値を落とす。
  だからこそ、イルフェナからの評価を落とさぬ為には必要な事なのだ。
  決して侍女を憐れまないわけではない。彼女が主を守りたい一心だったことはきちんと理解しているのだ、王族とて。
 「どうせならもう一人の獲物も来て貰いたいわね」
  そう呟くとアルは面白そうに目を細める。
 「おや、『彼女』もお望みで?」
 「だって話にならないと思うわよ? 魔王様がこっちに来るならクラウスも居るでしょ、好都合だわ」
 「ふふ……確かに」
  私がやろうとしている事の想像がついたのか、アルは楽しげに笑う。共犯者様も中々にやる気らしい。
 「このような場ですが、しっかりと見せ付けられることは嬉しいですね。クラウスも喜んでこちらの挑発に加わるでしょう」
 「挑発? ただの事実だわ」
 「ご尤も。私達も皆の期待に応えなくてはいけませんからね」
  緩く口角が釣り上り笑みを刻む。それは絶対に『素敵な騎士様』のものではない。
  ぶっちゃけ『彼女』が元凶其の二だもんなー、魔王様に忠誠を誓うアル達が許す筈はないのか。
  ……『翼の名を持つ騎士』は複数の部隊が存在する。当然他にも存在するのだが、私が隔離されている状態なので会わないだけだ。
  例外的に会ったのはキヴェラの時にお世話になった商人さん達だけ。私と接触していない人が望ましいので魔王様が借りてきました。
  基本的に王族が率いる形で魔王様の直属の部下が私が生活する騎士寮の皆さん。年齢からして魔王様達の学友あたりで構成されているのではないかと推測。……黒騎士はクラウスの類友な気がするが。 
  まあ、ともかく。
  今回はイルフェナという『国』を侮辱したので彼等も当然お怒りだったらしい。
  だが、魔王様が出向く事からアル達に一任されたそうだ。それもフェリクスの不幸に繋がっているのだったりする。
  だって、魔王様率いるアル達が一番性質悪いみたいだもの。
  ついでにオプションで私が居ます、彼等の部隊には。
  少なくとも商人の小父さん達は割とまともだった。
  翼の名を持つ騎士が全員こいつらと同類とかではないのだろう。忠誠心はMAXぶっちぎってそうだが。
  そんなことを考えているとフェリクス達がやって来た。どうやら未だに友好的な関係にもっていきたいらしい。
  ……姑息な。
  『誰かを頼ることが前提』ならば愛を貫きたいとか言うなよ。三流恋愛小説の主人公達だってもっと自力で何とかしようと足掻くだろうに。挺三天
 「……魔導師殿、先ほどは申し訳ありませんでした」
  頭を下げながらフェリクスが謝罪する。サンドラもやや顔を青褪めさせながらもそれに倣った。
  ふぇ〜り〜く〜すぅ〜?
  王族に頭下げられたら『御気になさらず』しか返答できねぇだろう!?
  多分、フェリクスはそこまで頭が回らない。裏など無く素でやっている。
 「……御気になさらず」
 「もう期待してませんから」と内心付け加え謝罪を終わらせる。アルもそれが判ったのか苦笑気味。
  フェリクス達は安堵の笑みを浮かべているが、実際には地獄巡りが始まっただけである。エンディングまでノンストップだ、覚悟しとけ。
 「では……」
 「お話の前に」
  フェリクスの言葉を遮りサンドラ嬢に視線を向ける。サンドラ嬢はびくりと肩を揺らしたが、それでも笑みを浮かべて見つめ返した。
 「サンドラ様に窺いたい事がございます。……貴女は御自分の選択を後悔していらっしゃらないのですか?」
 「え? ええ、実家から絶縁されることは辛かったですが後悔はしておりません」
 「そう、ですか」
  やはり絶縁されていたか。彼女の性格を知り、その温い思考が王族には適さないと考えたのならば当然だろう。娘が可愛くとも家ごと破滅させるわけにはいくまい。
  対してサンドラ嬢は己が言葉の意味を理解していないのか、頬を染めている。彼女からすればフェリクスへの揺ぎ無い愛とやらを問われたとしか思っていないらしい。
  だが、私はそんな夢を見せてやるほど優しくは無い。
 「サンドラ様。貴女は教会派の貴族であると窺いました。王家に嫁ぐと言う事は教会派の裏切り者となって王家につくということか、教会派の一員として王家に牙を剥くかのどちらかです。貴女はどちらを選ぶのですか?」
 「え……?」
 「王家の一員となれば教会派の孤児院には寄付できなくなります。個人の資産ではなく、『国の資産を王子の妃として使うことになる』からです。その状態で教会に寄付をすれば単なる税金の横領ですよ」
 「な!? わ、私はそんなつもりはっ」
  今初めて知ったように青褪め慌てるサンドラ嬢。フェリクスは驚愕しながらも、サンドラへと視線を向けた。
  ……気付いてなかったな、こいつら。
 「国が運営する孤児院ならば公務として訪れることが可能です。ですがそれも特定の孤児院を贔屓するのではなく平等に回り、寄付……これは物資に限定されますね。その寄付も国からの物であって貴女からのものではありません」
 「そうですね、王子の妃たる方が個人的に親しいからといって寄付に差をつけるわけにはいきません。何より民の税を個人的に使うなど許される筈も無い。己に与えられた予算は『王子の妃として』のものであり、個人の所有ではないのですから」
  私とアルの追い打ちにサンドラ嬢は漸くこれまでの暮らしができなくなると悟ったらしい。
  本来ならば王子の手を取るか否かという段階でしなければいけない選択だったろう。
  フェリクスは理解していなさそうだし母親も同様だろうな。それに彼女の家族もフェリクスを前にしてこんな発言はできまい。下手をすれば『二人を引き裂く為に言っている』と受け取られ、不興を買ってしまう。VIVID XXL
 「『個人』としてではなく『王族の一員』として生きる。そんな生活を納得されたのでしょうか、本当に」
  アルは幼馴染としてずっと魔王様の傍に居た。だからこそ、半端な覚悟で王族を名乗る輩が許せないのだろう。普段よりも随分とキツイことを言っている。
 「わ……私は、フェリクス様から、そんなことは……」
 「先ほどのフェリクス殿下を見て疑問に思いませんでしたか? 殿下は王族としての義務など理解されていないように見受けられましたが」
 「!?」
  私の言葉にサンドラ嬢は先ほどのやり取りとライナス殿下の言葉を思い出したのだろう。つまり……『フェリクスが王に挨拶をする常識すら理解していなかった』と。
  益々青褪めるサンドラ嬢。彼女は漸く自分が選んだものの危うさに気がついた。
  ……が。
  予想外の人物が突如会話に割り込んでくる。
 「そのくらいにしていただけませんか? いくら魔導師といえど我が国では何の地位もありませんのよ」
  視線を向けた先には気の強そうな金髪の美少女が私を睨みつけている。
  ……誰、この子。フェリクスは顔を顰めているけど。
  訝しげになる私達を他所に美少女は更に近寄り、私にしっかりと視線を合わせた。
 「お初に御目にかかりますわ、魔導師様。わたくし、エインズワース公爵家のヒルダと申します。先ほどから聞いていれば少々言葉が過ぎるのではございませんか? 下賎の者ごときが王家の方に過ぎた口を聞くなど許されることではありません! 去りなさい!」
  キツイ口調での糾弾は私に向けられている。アルならばギリギリ許容範囲だが、民間人でしかない私はアウトということらしい。
  侍女の処罰に対して身分制度を語ったならばこの言葉も受け入れろと言う事だろう。確かに正論だ。
  だが、フェリクスは不快感も露にヒルダ嬢に噛み付いている。
 「ヒルダ! 元婚約者とはいえ、でしゃばるな!」
 「……殿下、わたくしは殿下の為にしていることですわ」
 「それが余計だと言っている!」
  ……。
  私は無視かよ、お二人さん。一応、当事者なんですがね?
  それよりも私はヒルダ嬢の言動が気にかかる。
  『身分制度の強調』に『フェリクスから遠ざける』、『殿下の為にしていること』……?
  ……うん? 彼女の行動ってかつてのエレーナと似てないか?
  下賎と罵ることで『周囲にこの国の貴族が軽んじられてはいないと判らせる』。
  フェリクスとの会話を止めさせることで『フェリクスがこれ以上の恥を晒す事を止めた』。
  去れと促す事で『私達をフェリクスから解放させようとした』。
  ……。
  自分から悪者になってこの場を収めようとしてないか? この人。
  彼女の言い分は正しいし、私はイルフェナの汚点とならない為にも彼女の言葉を受け入れ謝罪するしかない。
  そんな姿を見れば周囲とて先ほどの『第四王子にすら無視される貴族』という状況に対する批判もある程度は和らぐだろう。私が『貴族を格下扱いしてません』的な姿勢を見せているのだし。
  この行動で彼女が得る物など無い。自身の評判――特にフェリクスから――を落とすだけだ。
  そもそも彼女は私が魔導師だと理解できていた。それなのに敢えて悪印象を抱かせたのはフェリクス達以上に自分を敵と認識させる為じゃないのか?福潤宝
  災厄の代名詞に喧嘩を売る馬鹿は居ない。抗議されれば国に被害を向かわせない為に処罰とて十分ありえるからだ。彼女はその役をフェリクスから引き受けたように見える。
  『元婚約者』だとフェリクスは言った。あの態度なのだ、それを望んだのは当然王家だろう。
  彼女は……フェリクスの『御守り役』だった……?
  そんな私の考えを他所にフェリクスはヒルダ嬢と口論している。自分の為に起こした行動という言葉の意味を考えることさえ無いのか、フェリクス。
 「魔導師殿! 彼女の言う事を聞く必要など無い! この女は私のする事全てが気に入らないだけなのだからな!」
 「わたくしは常に殿下の味方であっただけですわ」
  その言葉に自分の推測がほぼ正しい事を悟る。彼女は常に忠告しフェリクスの間違いを正してきたのか。
  尤も当のフェリクスはそれを小言としか受け取らなかったらしい。
  『全てが気に入らない』って……それ、『王族として未熟だからヘマをしないよう見張ってた』ってことじゃないんかい。
 「魔導師殿? どうかしたのか?」
  呆れた視線を向けるもフェリクスは意味が判らず困惑。アルも同じ結論に達したようでやや蔑みの視線をフェリクスに向けている。そして私は深々と溜息を吐いた。
 「もう結構です。呆れ果てましたわ、フェリクス様には」
 「え?」
  きょとんとなるフェリクスを放置し、ヒルダ嬢に向き直る。
 「御苦労されてきたのですね。御自分を悪者に仕立て上げてまで貫く忠誠、お見事だと思います」
 「一体、何のことですの?」
  ヒルダ嬢は表情を崩さぬまま平然と問い返すが、やや焦りが見える。やはり彼女の狙いは別にあるようだ。
 「我等はそう愚かではございませんよ? 『得をするのは誰か』『この状況の結果どうなるか』。それに思い至れば貴女の思惑に気付くかと」
  しっかりと目を合わせ言い切ると、彼女は諦めたかのように険しい表情を消す。その表情は先程よりも幼く見えた。こちらが本来の彼女なのだろう。
 「……。そ、う……気付かれたのですか」
  寂しげに、それでも誤魔化そうとした罪悪感からかすまなそうにヒルダ嬢は目を伏せる。
 「ヒルダ嬢。我々は『王の許可を得ております』。己を犠牲に出来る貴女の忠誠と優しさは尊いものだと思いますが、我々とて譲れぬものがある。……御理解ください」
 「そう、ね。この程度で済まそうなど、随分と虫のいい話でしたわね」
  アルの言葉に私達の行動の意味を悟ったのかヒルダ嬢は小さく溜息を吐いた。
  ただ、フェリクスとサンドラ嬢だけが理解していない。彼らには彼女の言葉の意味など理解できないのだろう。
  彼らにとってはヒルダ嬢は『悪役』。それが一度決定されてしまえば簡単には覆らない。
  特にフェリクスの婚約者だったという点が大きいのだろう。物語では愛し合う二人を邪魔する悪役ポジションなのだから。
 「一体何の事を言っているのです? 魔導師殿?」
  フェリクスの問いは私達が答えてやろう。ヒルダ嬢からの言葉など彼らは絶対に信じないのだから。
  ヒルダ嬢に視線を向けると「御願いします」というように軽く頭を下げた。それを受けてアルが口を開く。
 「ヒルダ嬢の言動は本当に貴方の為だったのですよ、殿下。貴方がこれ以上醜態を晒さないように、先ほどの事からミヅキが貴族達より批判を受けぬようにする為に、そして私達が貴方達から逃げられるように」
 「な……そんな筈はっ!」
 「……貴方達以外から見ればとても判り易いですよ? 彼女は自分の評判を地に落とすどころか、魔導師の不興を買うことも覚悟で会話を終わらせようとしたのですから」
 「勿論、その場合は処罰されることも覚悟の上でしょうね。……これまでもそうやって苦言を言い、憎まれ役になろうとも貴方を守ってきたのでしょう」
  私とアルの言葉が信じられないのかフェリクスは戸惑うような表情を浮かべている。
  だが、アルの予想は間違ってはいないだろう。フェリクスを支える事を前提として婚約者は選ばれているだろうし。V26 即効ダイエット
  そしてそこに割り込んでくる人達が。
 「そのとおりだ。……ヒルダ、そなたには随分と苦労させてしまったな。すまない」
 「陛下! そのようなお言葉は不要です。わたくしは役を与えられた以上は御期待に応えるべきと思っただけですわ。わたくしこそ望まれた役目をこなせず……」
  頭を下げるバラクシン王。そして跪き王に謝罪するヒルダ嬢。
  そうだよねー、王として国の為に必要だったとはいえ父親としては土下座したくなる事態だわな。
  年頃の娘さんに問題児を押し付けたようなものだもん、しかも最終的に勝手に婚約破棄されてるし。
  王の顔に泥を塗り、公爵家に喧嘩を売ったようなものだろう。王子の婚約者でいた時間、彼女は拘束され続けていたのだから。助けられていた事に気付きもせず邪魔者扱い、はっきり言って最低。
  しかもヒルダ嬢はこれから急いで嫁ぎ先を探さねばならんのだ。にも関わらず再びフェリクス達を助けようとしてくれた。私から見ると聖人に等しいぞ、この御嬢様。
  王はフェリクスに厳しい顔を向けた。ヒルダ嬢の事は予想外だったが、王がフェリクスに対する断罪を止めることはない。
 「お前がこれまで何とかやって来れたのは、お前が間違おうとする度にヒルダが止めていてくれたからだ。その事に気付かぬとは何と情けない」
  王から向けられる明らかな失望にフェリクスは肩を振るわせた。
  やはりそれなりに説教はされたのだろう。だが、これからは説教などというレベルではない。
  『王』が『王子』に対し明らかな失望を隠そうともしない。
  しかもそれを見せつけるように『他国の者が居る場』でそれを行なう。
  言葉こそかけぬが魔王様達も傍に来ている。予定とは少々違った展開になったが、それは単に王からの断罪が早まったに過ぎない。
  ヒルダ嬢は場の雰囲気を察したのか、改めて一礼すると離れていった。今回の共犯者ではない彼女はここに居るべきではない。
 「魔導師殿達が言った事は事実だ、サンドラ。家族の気持ちを理解しなかったお前の居場所はもはやフェリクスの隣しかない。……勝手に婚約破棄までしたのだ、今更逃げられはしないぞ」
  王の言葉にサンドラ嬢は俯き肩を震わせている。
  恋や愛のままに行動して幸せな結末を迎えるのは物語だけだ。幸せになったとしても勝手をした苦労は絶対について回るのだから。
  支え合って生きていくのが最良なのだろうが、そうするにはフェリクスがあまりにも頼り無さ過ぎる。
 「魔導師殿がこの場に居るのは私がエルシュオン殿下を招待し、殿下が己が護衛兼手駒として連れて来たからだ。勿論、私も了承している」
 「え……な、何故そんなことに!?」
  うろたえるフェリクスに王はいっそう厳しい目を向けた。意味の判らぬまま、フェリクスは視線を彷徨わせる。
 「フェリクス。お前、面識の無い魔導師殿に夜会の招待状を送ったそうだな? しかも後見人であるエルシュオン殿下には何も告げず、イルフェナに伺いすら立てず」 
  様子を窺っていた貴族達がざわり、とざわめき驚愕を露にする。彼等はその信じ難い行動の意味するものが判ったらしい。一斉に顔色を変えている。
 「保護している国を無視するなど馬鹿にするにもほどがあるだろう! ……ああ、魔導師殿も侮辱したかったのか? 必要が無ければ淑女のマナーなど異世界人は学ばないからな。仮にも王族からの招待だ、恥をかくことになろうともイルフェナの顔を立てる為に魔導師殿は応じなければならない」
 「わ……私はそのようなつもりは……」
 「通常ならばイルフェナを通して魔導師殿本人の意思を聞き、参加の意思があるならばドレスや装飾品などをこちらで用意せねばならん。加えてイルフェナには淑女のマナーを教えてくれるよう頼み込んでな」
 「それだけではない、最終的には私の許可が必要になってくるよ。彼女の守護役達の都合も含めてね」
  バラクシン王の傍に居た魔王様がクラウスを伴って現れ、王の言葉に続く。OB蛋白の繊型曲痩 Ⅲ

2013年11月5日星期二

決勝当日

サトゥーです。シェイクスピアの有名作品のセリフに「to be or not to be」というのがありますが、高校に入るまでずっと格闘マンガのキャラのセリフが原典だと思っていた黒歴史があります。勘違いって、誰にでもありますよね。韓国痩身1号

 今日は朝からタマの様子がおかしい。
  やたらと部屋を行ったり来たりしてると思ったら、ポチやアリサに絡むというか、くっついて床をゴロゴロとジャレあっている。
 「どうかしたのか? タマ」
 「ん~? 何かムズムズする~」
 「プンプンなのです! 今日のタマはおかしいのです」
  おや? ポチも珍しく怒りっぽいな。
  タマが、オレの膝の上に座っていたミーアを押しのけるように割り込んできて、膝の上で丸くなる。どうしたんだろう? 強引に割り込んで来るなんて珍しい。
 「士爵さま、本日の決勝戦は観戦に行かれないのですか?」
 「ええ、決勝戦後の祝賀会で料理を振舞って欲しいと依頼されているので、もう少ししたら登城する予定です」
  なんでも、複数の貴族達から、公爵の家令に問い合わせがあったそうだ。ここ数日の間にあった陛下が臨席する舞踏会や晩餐会は高位貴族しか参列できなかったので、オレは参加していない。さすがに参加しない晩餐会や舞踏会の料理を作れとは言えなかったのだろう。
  その点、今日の祝賀会は優勝者や貴族だけでなく、本戦出場できた武芸者と公都の有力者も招かれるそうなので、前の舞踏会の時の様に数品の料理を出して欲しいと依頼があったのだ。
  今日の決勝には陛下も臨席されるので、カリナ嬢も弟氏と一緒に列席している。
  タマは、背中を撫でられているうちに落ち着いたのか、難しい顔のまま眠ってしまった。
  公都が震撼したのは、そんな時だ。

 地震があったわけではない。
  例えるなら潜水艦のアクティブソナーのような、探査魔法の信号が1度だけ通り過ぎただけだ。
  ただ、その威力が尋常ではないらしい。
 「何? 今の」
 「信号?」
 「何かゴーンってきたのです!」
 「マスター、戦闘準備を」
  オレだけでなく、半分くらいのメンバーが、さっきの信号を認識したようだ。
  恐らく、タマが情緒不安定だったのは、この前触れを感じていたのだろう。
  リザがこの間渡した新装備を装着し始めている。少し遅れてポチとナナも着替え始めた。目が幸せだが、そのまま眺めているわけにもいかないので、ルルに頼んで、ナナの前に衝立を置いて貰う。
 「タマも着替えなさい」
 「あい~」
  マップには魔族が出現している。闘技場の上空だ。
  闘技場にはリーングランデ嬢や王子と聖騎士達に加え、レベル40越えの者達が20人近くいる。間の悪い魔族だ。オレが介入するまでも無く抹殺決定だろう。
 「何が起こったの?」
 「また、魔族だ」
 「え~、また~」
  本当に、そろそろ自粛して欲しいものだ。
  アリサ達も、この間作った新装備に着替えておいて貰う。リザ達より薄手だが、お揃いの白い革鎧だ。リザ以外の者達は、鋳造魔剣に替えてある。この間、オークションで売ったのとは見た目がかなり違うし、銘がサトゥー・ペンドラゴンになっている。
  魔族は「召喚魔法」「精神魔法」「火炎魔法」が使えるみたいだ。時間をかけると色々召喚しそうなので、早めに処分しよう。
  皆が着替えを始めてしばらくして、警報の鐘の音が公都に響き渡った。韓国痩身一号

 公都の貴族の館には、魔族の襲撃に備えて地下シェルターが存在する。このシェルターは貴族達が自身の安全の為に設置したものだけあって、異常に頑強だ。上級貴族の家にあるものは、なんと外壁なみの強度がある。
  警報の鐘の音に少し遅れて、館付きのメイドさんが、避難誘導に来た。
 「アリサ」
 「ほい、ほ~い」
 「皆で、地下シェルターに避難していてくれ。本気でヤバそうなら例の信号を送るから、後先考えずに地下迷宮に緊急転移して欲しい」
 「あいあい」
  対魔族対策はコレでいいか。
  リザ達に、もう一つのやっかい事の対処を依頼しておく。
 「リザ」
 「はいっ!」
 「セーラ嬢の馬車が、悪漢に追われている。ミーアやナナと一緒に馬で保護に向かってくれ」
 「了解しました」
 「了解です、マスター」
 「ん」
  自由の翼の面々が、セーラ嬢を誘拐しようとしているみたいだ。
  オレが直接助けに行ってもいいのだが、変にフラグが立っても困るからリザ達に任せた。リザ達の実力なら余裕だろう。セーラ嬢は、この屋敷に向かって逃げているようなので、リザに大体の道順を教えておいた。

 オレは公爵城に行くからと地下シェルターへの避難を断って出かける。
  適当な路地裏で、ナナシ銀仮面の勇者バージョンに変身して、闘技場に向かう。
  とりあえず、状況把握の為に新魔法の「遠耳クレアヒアリス」と「囁きの風ウィスパー・ウィンド」を発動する。焦点は、これから向かう闘技場だ。
 『魔族よ、いや魔王よ、貴様の命運もこれまでだ』
  この声は王子だな。レベル71の上級魔族だが、魔王じゃないぞ?
  状況は混沌としているようだが、闘技大会の決勝だけあって、国内有数の強力な者が沢山いるので蹂躙されているわけではないようだ。
 『勇気ある戦士達よ、協力しあって魔物達を討伐するのだ。魔法使い達よ、攻撃魔法より、戦士達への強化魔法を優先しろ』
  今度はリーングランデ嬢だな。
  魔族は、兵隊用の魔物を召喚したのか、王子以外の人々は魔物の排除に追われている。レベル40台の魔物が、10体以上も召喚されている。高レベルの探索者や騎士、武芸者なんかが徒党を組んで戦っているみたいだ。聞こえてくる喧騒が、すごく生き生きとしている。よっぽど戦うのが好きなんだろうな。
 『結界だ、防御結界を張れ』
 『だめだ通路が崩落している、脱出路を確保しろ』
  どうして陛下の影武者を初めとした貴族達は逃げていないのか不思議だったが、そういう事らしい。遠耳と囁きの風って便利だ。
  一般客は通路が無事だったのか、外に向かって殺到している。踏み潰されて死んだ人間はいないみたいだ。血の気の多い人間ばかりだったようなので、心配無用のようだ。
  オレは、天駆と縮地で、闘技場の近くにある尖塔の一つの天辺に降り立つ。
  魔族は、頭部が2つあり、黄色い肌で、肩から水牛のような2本の角が生えている。頭が2つという事は、黄金の猪王みたいに同時に魔法を使って来るんじゃないだろうか。
  リーングランデ嬢や手柄を立てたい人間には「空気読め」と言われそうだが、闘技場には知り合いもいそうなので、さっさと始末しよう。
  まずは、大物の上級魔族を光魔法の「光線レーザー」で倒すか。
  そう決断するのを待っていたかのように、空間を割ってそれは現れた。
  水面から浮かび上がるように光の波紋を生みながら、流線型をした銀色の宇宙船のようなモノが現れた。
  船首には、青い鎧の男――勇者ハヤト・マサキが立っている。アリサに会ったときはレベル61と言っていたが、今はレベル69まで上がっている。
 『俺様、見参!』
  その言葉に挑発のスキルが篭められていたのか、飛行型の魔物が勇者に向かっていく。
 『ほう勇者ハヤト、ワラワの前に現れるとは、死ぬ覚悟ができたのデスか?』
 『いつまでも、昔の俺様だと思うなよ! 今日こそ雪辱を果たさせてもらうぜ!』
  今なら「光線レーザー」で一瞬なんだけど。撃ちにくいな。
 『ひかえろサガ帝国の狗め! 勇者がサガ帝国の専売ではない事を証明してくれる』
  王子だな。任せておけばいいのに。御秀堂養顔痩身カプセル第2代
 『≪踊れ≫、クラウソラス!』
  さっきの≪踊れ≫は、何かの合言葉だったみたいだ。王子の手から離れた聖剣クラウソラスが青い光を放ちながら、黄色魔族を襲う。おお~ 前に博物館で見た絵は、誇張はあるものの嘘じゃなかったんだな。
  あ、弾かれた。
  弱いなクラウソラス。
 『聖剣が泣いてるぜ、王子様。そいつは古の大魔王――黄金の猪王の筆頭幹部だ。数百年生き延びた最上級魔族なんだよ。死にたくなければ、下がっていな。≪歌え≫アロンダイト』
  勇者の持つアロンダイトが、勇者の合言葉を受けて激しい聖光を放つ。
  オレの聖剣にも、ああいう合言葉はあるんだろうか? 魔法道具の説明書のお陰で読めるようになったのが、近代に作られた魔法道具だけだったので、聖剣とかはまだ読みきれていない。合言葉くらいなら読み解けそうだから、ヒマを見つけて調べよう。
  船から現れた勇者の仲間達が、勇者に強化魔法をかけて行く。興味本位で「遠見クレアボヤンス」の魔法を使ったのだが、止めておけば良かった。
  僧侶らしき、ゆるふわタイプの巨乳美女が強化魔法を使う。目の下のほくろがいいね。
  弓兵らしき長耳族の女性が、勇者に接近する魔物を迎撃する。1射した矢が途中で10本ちかくに分裂して魔物に襲い掛かっている。赤い光が漏れているのを見る限り魔法の矢なのだろう。
  弓矢を逃れた魔物達が銀の船の上に着地したが、身軽な軽戦士と双剣の戦士の2人が瞬く間に排除している。彼女達も耳族だ。虎耳族と狼耳族の二人だ。虎耳がポニテ、狼耳がショートヘアの色っぽい美乳美女だ。
  最後に出てきたのが、長杖を持った豪奢な金髪の爆乳美女だ。カリナ嬢に匹敵しそうだ。何か長々とした呪文の詠唱を始めている。
  要は従者全員がグラマラスな美女軍団なわけだ。
  リア充爆発しろ。
  どうしよう。
  トルマ並みに空気を読まずに片付けるべきなんだろうか。
  撃つべきか撃たざるべきか、それが問題だ。
まったく、茶番だわ。
  陛下が臨席するからと言って、どうして私と殿下が模擬戦をしなくてはならないの?
  しかも、殿下の持つのは聖剣クラウソラス。シガ王国を体現するとも言われている「不敗」の剣だもの。
  絶対・・に勝つわけにはいかないのよ。
  正しくは聖剣クラウソラスを持つ者は、決して負けてはいけない。なぜなら、それは不敗のシガ王国の敗北を連想させるから。
  たとえ幻想とわかっていても、敗北は許されない。
  もっとも、わざと負けようとしなくても、魔法抜きだと殿下の方が、やや強いはず。
  奥の手を使わない限り勝ちようがない。使ったら、間違いなく殿下を殺してしまうもの。流石にそれは不味いものね。
  ああ、憂鬱だわ。

 観客席から私の名を呼ぶ声援が聞こえる。殿下への声援もあるけれど、「王子」という称号に惹かれているだけじゃないのかしら。
  勇者の従者になったときに頂いた魔法の鎧チャフタルを身にまとい、迷宮探索中に手に入れた雷の大剣を担ぐ。この鎧は着る者に、身体強化の魔法と同じ効果を与える。魔法回路に魔力を通せば、魔力の盾や狙撃を防ぐための幻術を発動する事もできる。
  試合開始の円陣の中に入る。
  試合開始の合図に合わせて、魔力の盾を発動。続いて、雷の大剣に魔力を通して雷刃を発動する。
  強化魔法を重ねがけする前に嫌な予感がして、横に跳びずさる。
  私がいた場所を、火弾が突き抜ける。
  火弾の杖ファイアボルト・ワンド?
  軍用の兵器じゃない。
  魔法を詠唱しなければいいってものじゃないのよ?
 「懐かしいだろう? 貴様が学院で作ったモノだからな」
  殿下の聖剣が青い軌跡を描きながら襲ってくる。
  なんて、速い。
  聖剣クラウソラスの使い手は空を飛ぶという伝説は本当だったのかも。
  大剣で聖剣の軌道を逸らす。
  重い。手首を痛めそうだわ。御秀堂養顔痩身カプセル第3代
  大剣の刃に纏わせた雷も、聖剣を伝わる事無く宙に散っていく。
  相手が普通の剣だったら、今ので気絶か麻痺状態にさせられたのに。
  お返しとばかりに、大剣を殿下の足に叩きつける。
  聖騎士の鎧が発動している防御膜バリアに大剣を受け止められた。
  さすがに、大国最強の聖騎士の装備だけはある。
  今度は殿下の剣を防ぐのを鎧に任せ、私は攻撃に注力する。
  強打スキル発動。命中や攻撃精度が落ちるけど、今は威力だ。
  魔刃スキル発動。いつもは魔力が勿体無いから使わないけど、今は魔力を温存する意味が無いから。
  大剣が赤い光を帯びる。
  鋭刃スキル発動。殿下を殺す気は無いけれど、殺すつもりでやらないと、あの鎧の防御は抜けない。
 「旋風烈刃」
  必要もないのに技名を叫んでしまう。
  私もハヤトのバカに染まってしまったみたいだわ。
  てっきり防がれると思ったのだけれど、あっさり命中して防御膜バリアを破壊する。
  まずい、このまま刃を止めなければ、勝ってしまう。
  何とか殿下に致命打を与える前に刃を止められた。
  でも、そんな不安定な体勢を殿下が見逃すはずも無く。
  私は鞠のように闘技場の地面を跳ね飛ばされていった。

 歓声と悲鳴と罵声。
  一瞬だけど気を失っていたみたいだ。
  王子が追撃の火弾を連射してきている。殺す気なの?
  どうやら、先ほど剣を止めたせいで彼の肥大化したプライドを傷つけてしまったようだ。殿下の目が怖いくらいに血走っている。
  詠唱の早い破裂クイック・バーストで火弾を爆破して止める。
  でも、私達の戦いは、ここまでだ。
  空に生まれる召喚陣。
  アレハキケンダ。
  頭が割れそうなくらい、直感が危険信号を送ってくる。
  私は、魔法爆破ブラスト・マジックの詠唱を始める。だめだ、殿下は、上空の召喚陣に気が付いていない。私しかみていないんだ。
  殿下の攻撃を回避するために、呪文の詠唱を中断する。
  こんな事なら、さっき刃を止めるんじゃなかった。
  召喚を止める事ができなかった。
  そこに現れたのは、黄色い肌の魔族だ。あの存在感に威圧感、間違いなく上級魔族だ。身長5メートルを超える巨躯が地面に着地する振動で倒れそうになる。
  前にハヤトが言っていた。
  たった一度だけ、魔族から逃げた事があると。
  その時に、仲間の半数がハヤトを逃がすために犠牲になったと悔しそうに言っていた。あの非常識なまでに強いハヤトが遅れをとったなんて信じられなかったけど、今ならわかる。
  アレは桁が違う。
  魔王は、アレより更に強いの?
  無理だ。
  絶対に無理。
  理屈じゃない、魂が叫んでる。今すぐここから逃げたい。
  心が折れそうな私が踏みとどまれたのは、意外な人の言葉のお陰だった。

「魔族よ、いや魔王よ、貴様の命運もこれまでだ」
  殿下、相手の強さも測れないなんて。彼は虚勢を張っているわけじゃない。もし、こんな時に、絶対強者に対して虚勢を張れるくらいの男気があったなら婚約を解消する事もなかったかもしれない。
  魔王は首を傾げた後に殿下の剣を見て興味を抱いたようだ。
 「その剣はクラウソラス、デェスね? ヤマトの子孫デシタか」
  なんだろう黄肌魔族が会話をしながら、何かが咆哮する声が聞こえる。もう一つの首の方か、詠唱しているんだ。
  召喚を妨害するために、詠唱の早い破裂クイック・バーストを、黄肌魔族に叩き込む。
  だめだ。
  威力の弱い下級魔法じゃ普通に手でふせがれてしまう。
  威力よりも速さを!
  詠唱短縮を発動しつつ、爆裂エクスプロージョンを唱える。たぶん、間に合わない。でも只で詠唱させたりしない。
  黄肌魔族の詠唱が完了し、地面に出現した召喚陣から魔物が出現する。ムカデにサソリ、カマキリ、双角甲虫までいる。
  アレを相手にしながら闘えるほど黄肌魔族は、簡単な相手じゃない。さっきの爆裂も大してダメージを与えられなかった。
  そうだ、会場には本戦の出場者やその仲間達がいる。魔物は彼らに任そう。
  拡声の魔法を使って会場の戦士達に呼びかける。
 「勇気ある戦士達よ、協力しあって魔物達を討伐するのだ。魔法使い達よ、攻撃魔法より、戦士達への強化魔法を優先しろ」
  バラバラに魔物と闘っていた人々が、連携を取り始めた。御秀堂 養顔痩身カプセル
  彼らはベテランだ。きっかけさえあれば、魔物なんかに遅れは取らないだろう。
  ムカデ型の魔物が襲って来た。殿下の方にも甲虫型の魔物が襲い掛かっている。
 「ふむ、やはり勇者はいないデ~ス。これは折角の土産が意味ないデスね」
  黄肌魔族がボヤキながら召喚した魔物に強化魔法をかけている。
  せめて殿下が前衛を引き受けてくれたら、強力な魔法が使えるのに。

2013年11月4日星期一

美肌

「……わ、私が、どうなっても……呆れたりせず……許してくださいますか……」
 「もちろんだとも」
 何も我慢しなくて構わないのだと、いつも以上に乱れても良いのだと、優しい笑顔でセリーヌの都合の良いように誘ってくれるのに、その姿を見つめてうっとりと微笑んだ。D9 催情剤
それならば、と僅かに残っていた理性が消えた。
 鎮まらない欲望に抵抗をやめ、忠実になる。
 自ら夜着のリボンを解き、その内側へと我が身に触れる手を導いた。
 「もっと触れて……熱を、鎮めて……ください……」
 我慢しなくて良いならしない。一人で休んで耐えるよりも、愛しい人に思い切り愛される方が良いに決まっていた。
 「ああ。たくさん触れて……君を癒してあげよう……」
 唇に優しい口づけが落ちる。
 布越しではなく胸に直接触れる指に、頂を軽く引っ掻くように撫でられるだけで、快感の波が大きく全身に広がった。
 「あぁ……はぅん……気持ち良いです……もっと……触って……」
 求める言葉しか出なかった。
すると、くすりと楽しそうに笑ったルークが胸に口づけた。突起を軽く吸われ、舌を絡めて舐られ食まれる。
 「ぁあん!」
びりっと走った大き過ぎる快感に、セリーヌは喉を反らして身悶えた。
そこをさらに、両胸共に人差し指で突起を捏ねるように弄られて快感が増す。シーツを掻き毟るようにしながら悦びの声をあげた。
いつもより、ずっと早く高みに追い上げられる。
 「は、くっ…ひ…あ、ああああっ!」
 捏ねられていた両の突起を摘まれ、軽く引っ張るように擦り上げられた瞬間、達して身体が大きく痙攣した。
でも、物足りない。
この程度の快楽では、満足には程遠かった。
セリーヌは欲望に突き動かされるまま、ルークの肩に手を置くと、その身に身を添わせながら脚を絡めた。
ルークはまだ夜着を着たままだった。それでも、内腿がその上からでも熱くなっていると分かるものに触れるのに、欲に濡れた目を細めて微笑んだ。
 「……もっと、深く……強く……触れてください……」
 下肢に手が掛かり、蜜に濡れた下着が取り去られる。脚を大きく開かれ、じゅわりと奥から蜜を滴らせた秘所を指で撫で上げられる。
 「……ああぁ……」
そんな、些細な事でも気持ちが良い。
でも、もっと気持ち良い事を知っている身体は、腰を揺らせて次をねだった。
すると、望み通りに其処に、夜着を脱ぎ落としたルークの熱い屹立が押しあてられる。
そのまま濡れた秘所の表面を擽るように何度もぬるりと滑らされるのに、焦らさないで、と叫びを上げそうになったその時、太腿を掴まれ、奥深くまでぐっと押し入られた。
ぐちゅん、と水音を立て、一息に根元まで入った熱く滾る硬いもので中を一杯に広げられる。
 脳天にまで響いたその衝撃に、セリーヌは再び達し、大量の蜜を吹き零していた。
 「く、ふぅ…んっ…は…あ、あああ……」
 自分が何で、ここがどこかも分からなくなりそうなほど気持ちが良い。
 中ですぐに動き始めたものに媚肉が絡み付き、絞り上げるように舐めた。生々しくその熱く硬い形を感じるのにも快感が芽生え、蜜が引っ切りなしに溢れた。
ルークが腰を突き上げるたびに、男を貪る潤いきった秘所からは、ぐちゅにちゅと淫らな水音が響いた。
 「そんなに気持ちが良いのか……ずいぶんと蕩けているし……とんでもない美肌の薬だな……」
 恍惚として浸っているセリーヌに、顔に掛かる髪を掻き上げてくれながら、少し驚いた様子で呟くように言ったルークに、本当にとんでもない薬だと思う。挺三天
だが、文句は美味な快楽に掻き消されてしまった。
 顔に触れるその指も、甘い声も、好む場所を突き上げ抉られるのも、何もかもが嬉しくて快感になり、中がきゅんと締まった。
 己に与えられるすべてに煽られ、また頂に向かい始める。
その最中、花芯に指が触れ、優しく転がしながら剥き出しにされる。
 「あ、ああぁっ!」
 中は激しく突かれ、外の花芯は優しく愛撫される。その、まったく異なる刺激が堪らない快感をセリーヌにもたらしてくれる。
 目の裏に白い火花が散った。
くねる身体がこれまで以上に大きく跳ね、胸を大きく揺らせながら背を仰け反らせた。
 「あっ、あああああっ!」
 再びの、一度目よりも激しい絶頂に至った。
 同時に最奥に熱い迸りを受ける。
 勢い良く浴びせ掛けられるその刺激も快感となる。
 身体を小刻みに痙攣させながら荒い息を吐く。しかし、それでも欲は少しも鎮まる気配を見せなかった。
それどころか、もっと、もっととセリーヌを追い立てるばかりだった。
セリーヌは、心地良さげに目を細めて己を見下ろすルークの腕に、手を伸ばして触れた。
ゆっくりと撫でながら、さらなる快楽をねだった。
 「……もっと……良いですよね……」
 蜜を滴らせる中を締め、腰を揺らせて欲に蕩けた笑みを浮かべた。
 「っ! セリーヌ……」
すると、ルークは焦ったように少し呻いた。のし掛かるようにして、深く口づけられる。
 何だか、いつもの余裕が感じられない。ちょっと違った熱い口づけをセリーヌは堪能し、入り込んでくる舌を喜んで迎え、絡め合った。
ぴったりと触れ合う熱い身体に胸の突起が擦られて、さらに硬く熱く熟れて敏感になる。
 再び熱さを取り戻したもので、最奥をぐりぐりと抉られるのも好くて、セリーヌは口づけながら熱い息を吐いた。
ぐちゅぐちゅと淫猥な音を立てながら激しく抜き挿しされ、其処が泡立つ。互いの体液で下肢はどろどろになっていた。
 「はぁ…あん……ルーク……まだまだ……欲しい……」
 歯止めが利かないセリーヌは、自ら腰を揺らせてルークの動きに合わせながら訴えった。
すると、機嫌の良い笑みが返ってくる。
 「ああ。我慢はしなくて良い……」
 頬への優しいキスと共に贈られる、我が身をとことん甘やかしてくれる囁きに、セリーヌは己のすべてが快感という名の炎で焼き尽くされるように感じた。
 気持ち良い場所を存分に掻き回し突き上げ、悦ぶように可愛がってくれるのに、再びの頂が見えてくる。
 「ぅんっ……はぁんっ……ああ、ん……」
 意識は押し寄せてくる巨大な快感の波にばかり支配され、他には何も考えられない。
 「ま、また…くる……ぁああん……あっ! あああああ……」
 最も好きな場所を甘く攻められるのに、自然と腰が浮き上がり、そのまま再び達した。
その最中、最奥に叩きつけるように浴びせられる刺激も、すべてを飲み込みきれずに身の内から溢れ出る感触さえも心地良い。
セリーヌはぺろりと舌で己の唇を舐めながら、悦楽に酔い痴れた。


「セリーヌ」
 快感に浸っていると、いつもより息の乱れた甘く掠れた声で名を呼ばれる。
 視線を向けると、ルークは満足げな笑みを浮かべて、汗で額に貼り付く前髪を掻き上げていた。
そんな何気ない仕種ですら艶めいて見える。胸が高鳴り、また、最奥がきゅうんと疼いてしまう。
この人に、もっともっと際限無く愛されたい。
 身の内が欲に燃えるのは、薬のせいなのか、はたまた単に自分が望んでいるだけなのか。正直、セリーヌは分からなくなってしまっていた。
 「そんな顔をされると、まだまだ抱きたくなるな……」
 苦笑して言われるが、それは、こちらの言う言葉だ。VIVID XXL
その、欲と優しさの入り混じった藍の瞳でじっと見つめられると、欲が鎮まるどころか、煽られる一方なのだ。
きっと、物欲しそうに見ているのだろうと思う。とにかくルークが美味しそうに見えて堪らなかった。
 少しも、欲が鎮まらない。
こんな欲に狂った自分に呆れず、もっと抱きたいと言ってくれるなら、ありがたい事だった。
 手を伸ばし、その手を取って指先に口づける。そうして人差し指を口内に含んでゆっくりと舐め上げた。
まだまだ楽しみましょう、との思いを込めた行いに、ルークは気持ち良さそうに目を細めてセリーヌの好きにさせてくれた。
 嬉しくて、舌を絡めて丁寧に舐めねぶりしゃぶったりもした。
ちゅ、と音を立てて舐めていた指から唇を離す。
 「……ルークを、もっと、たくさん下さい……私を、好きになさって……」
 再び身の内で硬くなっているのに、満足の笑みを浮かべる。
 自分の欲を受け止めて可愛がってくれるだけではなく、ルークの欲を、熱く滾る物をすべて我が身に与えて欲しい。
 誘いに、ルークはセリーヌの背に腕を回し、抱き起こすと今度は自分が横になった。
 身の内に入ったままのその行いに、奥へと大量に注がれた物を零してしまう。しかし、それと己の蜜でぬるぬると滑る蜜壷は、自重も掛かってより深くまで屹立を飲み込む事となり、先程までとは違う場所に硬い先端があたった。
セリーヌはルークの胸に手を付いて、新たに与えられる快感に打ち震えた。
 「はぁ……ふ…あああ、んっ……」
あられもなく大きく脚を開いてルークの胴を跨ぎ、その身の上に腰を下ろしているセリーヌの秘所に手が伸びる。
ぷくりと赤く膨れているそれを探られ、優しく撫で転がされた。
 「きゃふっ、あ、…ああっ……」
 快感が腰を伝って背筋を駆け上る。身体が大きく震えて、また新たな蜜が溢れて滴り互いの下肢を濡らした。
 悦楽に震えて自分で腰を揺するだけでも、中を満たすものが好い場所に当たる。花芯を弄られながらのその状態に長く耐えられる筈もなく、セリーヌはすぐに小さく達してしまった。
 「……何だか……西の町で手に入れた媚薬よりも凄いな……一体何を入れたら、こんな副作用の出る美肌の薬になるのだ……」
 促がされる訳でもないのにセリーヌが勝手にその身の上で悶え、身の内を突くものを気持ちの良い場所に導いては快感を貪っているのに、感心と驚き、そして不安の入り混じった呟きが聞こえる。
 本当に、何を入れて作っているのだろう。
 頭の隅で少し思うが、長くは考えられなかった。そんな事よりも、とにかく今は快感に溺れていたかった。
 花芯に触れている手を取る。
そうして、胸の上に導き笑いかけた。
 「ここも……触って、下さい……」
 胸に集まる淫靡な熱は冷める事はなく、その頂は赤く熟れて硬く尖ったままだった。そこを、望み通りにきゅっと摘まれ擦り上げられるのに、望み以上の快感を得た。
 「ああんっ……」
 気持ち良過ぎて勝手に腰が大きく動く。
もっと触って欲しくて、自然と胸を突き出すように背中を反らせていた。
すると、その気持ちにも応えてくれる。胸全体を大きく捏ねるように揉み込まれ、突起は指に挟んで擦られた。
それも好くて、中をきゅっと締めて絞り上げるように舐めてしまう。
 中に居るルークはほとんど動いていないのに、セリーヌは淫らに何度も激しく腰を上下させ、中を満たすものを抜き挿しした。
 潤い蕩けきった内壁と擦り合うのが堪らなく良い。
このままずっと食べていたい。
そんな気持ちで、美味しい物を好きに楽しんでいると、ルークが上体を起こした。変わらず片手では胸を弄りながら、もう片方の手では腰を抱いた。尻を揉んで楽しみ始めたのに、セリーヌはその背に腕を回して抱きつき口づけた。
 口づけはすぐに深まり互いを貪りあうような物になる。
セリーヌは嬉々として己のすべてを差し出した。

その後も体位を変えながら何度も何度も深く繋がり合い、今は後ろから貫かれている。
 好い場所を、ぐっと深く突き上げられる。
 「あ、あぅん…っ……」
 与えられるすべてに悦びしかなく、セリーヌは甘く啼く事しか出来ない。
 腰をくねらせながら快感を受け止めていると、もう何度目になるか分からない熱い迸りが最奥に来た。福潤宝
 「く、ふぅ…んっ……」
シーツを強く握り締め、悶えて頭を振ったその時、意識を覆う霞が少し消え、開けたように感じた。
 「あっ……」
すうっ、と一気に身体を焼いていた淫靡な熱が冷めていく。
これまで散々己を翻弄し、掻き乱した物は何だったのだと夢かと思うほどに唐突に、欲を煽る熱は霧散して消えた。
ルークが身の内から退く。
ごぷりと音を立てて下肢から滴るものを感じながら、セリーヌは力尽きて寝台に身を伏せた。
 腰のあたりを撫でてくれながら、こちらを見下ろしているルークに、息を整えながら笑みを向けた。
 「……やっと……意識が、はっきりしてきました……身体が、落ち着きました……ありがとう、ございました……」
セリーヌは欲を少しも我慢しなかった。それでも、何度恥を知らぬ態度で求めても、笑顔で求めに応えてくれた愛しい人に、感謝の気持ちを伝えた。
 寄り添って横になり、優しく頭を撫でてくれる手に目を細めて微笑む。
そのままさらに胸元に抱き寄せられる。
セリーヌは余韻に小さく震えている手をゆっくりと動かし、その身体に回した。
 「礼など言わなくて良い。元は、私があんな物を貰って帰ったからなのだから……すまない。初めての時を思い出して、さぞ怖かっただろう……」
 額に口づけながらの申し訳無さそうな言葉に、セリーヌは柔らかな笑みを浮かべた。
 「あの時とは気持ちが違いますから、大丈夫です。……恥より欲を優先するのに、呆れて嫌われるのが怖い、とは思いましたが……他の恐さはなかったです。……ですから、求めて良いのだと許して頂けて……薬が抜けるまで見捨てずたくさん愛して頂けて……怖いどころか、嬉しくて堪りません」
 素直な気持ちを伝えて、お返しのキスを頬にした。
 「そう言って貰えると助かるが……君には必要のない、美肌の薬などやはり突き返しておけば良かったな……」
しかし、それでもルークは気になるのか、苦笑して悔やんでいた。
セリーヌは気にして欲しくなくて、そっとその耳元に口を寄せると小さく囁いた。
 「ルークの下さるすべてが美味しくて、とても気持ち良く楽しめましたので……もうお気になさらないで下さい」
あからさま過ぎるとも思ったが、セリーヌは今がとても幸せなのだ。それなのに、その幸せをくれた人が悔やんでばかりで少しも幸せそうでない。
それを見て、己の真実を誤魔化す気にはなれなかった。
 同じ幸せを味わって欲しくて、偽り無くすべてをありのままに伝えると、耳をぺろりと舐めた。
すると、笑顔のセリーヌに、ルークは何とも言えない顔をした。
 「流石に……今宵はこれ以上はもう無理なのだが……煽られると、とても困る……」
 「私は、正直な気持ちをお伝えしているだけで……煽ってなどいませんが……」
 孤児院からの帰りもそうだったが、ルークは少しセリーヌの言葉を過剰に受け取り過ぎのような気がする。
 性感を煽っていると言いたいのだろうが、セリーヌは気にして欲しくなくて言葉にしているだけで、抱いて欲しいと言葉にして、誘ってねだっている訳ではないのだ。
それがどうして、そんな風に変換されてしまうのか、理解に難しい謎だった。
 「無意識が、一番性質が悪いな」
 少し苦い顔をしたルークがそう言って、今度は鼻の頭にキスをくれる。
キスは優しくて心地良いが、性質が悪い、とは酷い。
そう思ったが、抗議の声を上げる前に大きなあくびをしてしまう。途端に目蓋も落ちて、とろんと眠りの淵へと引き摺られ始める。
 「……ゆっくり、眠ると良い。……セリーヌには災難だったが、……私もとても気持ち良かった。君こそ、とても美味しかったよ。嬉しい言葉をありがとう」
 目蓋への優しいキスと共に甘く囁かれる。
ルークの方が、絶対に性質が悪いと思う。
そんなに幸せそうな、甘く優しい満足げな声を掛けられては、また飲んでも良いかもしれない、と思ってしまうではないか。
 副作用が他に無く、肌はきちんと整うならば、毎日飲むのはとても無理だが処分は考えなくても良い。
そんな淫らな事を考えてしまう。
こんな事を自分に考えさせてしまう愛しの旦那様は、本当に性質が悪い。
 心の内で少しばかり不平を零しながら、セリーヌはあたたかい腕の中で眠りへと落ちていった。
 欲に支配された淫靡で熱い時が終り、穏やかな時が戻る。OB蛋白の繊型曲痩 Ⅲ
その時、周囲は明け方の雰囲気を纏っていた。