「わかった。じゃあ今日はよろしく頼むよ」
「了解なのです! ここまで言わないとパーティー組んでくれないとか、九乃さんは本当に性根から歪んでますね~。わたしが叩き直してあげますから、覚悟するのです!」
「……ボスを倒しにいくんだよな?」花痴
「当たり前じゃないですか」
「だよな」
なにやらフレイが物騒なことを言ってるんだが……ホントに大丈夫か?
「ちなみに、俺が頑固に行かないっていったらどうするつもりだったんだ?」
「悲しくなるつもりでした。九乃さんは乙女を悲しませるような人じゃなかったようで一安心です」
「……うん、それは確かに俺も一安心だ」
「じゃ、そういう訳なので、今日は引きこもりはNGですよ?」
「わかってるって……」
俺の初パーティー戦か。どうなることやら。
その後。
二時限目の途中で俺は本格的にだるくなったので、保健室に行きましたとさ。
ベッドで昼寝したら全回復だぜ! 玲花が滅茶苦茶心配してたが、丈夫さが取り柄なんだって。むしろ俺がここまでになるとか、俺は昨日どんだけ脳を使ったんだって話だ。
まぁ、VR酔いは脳が慣れれば、同じ原因では再発しないからもう大丈夫だけども。何事も、慣れって大切だよね~。
―――
「はい、では只今より、いつまでたっても第二のボスを倒さないクノさんのために、ギルド総出でソルビアルモスを倒しに行きますよ~!」
「「「「「おー」」」」」
「ウウレ」の北門。
そこに、「花鳥風月」の全メンバーが集まっていた。
ここをまっすぐ進んでいくと、フィールド「恐れの花畑」に到着する。この間だいたい1キロだそうだ。
どのエリアも、ボスのいるフィールドまでは1キロほどなんだな。第三のボスがいるフィールドまでの道のりもそうだったらしい。
まぁ、それはいいや。
で、その「恐れの花畑」の奥に、ボスであるソルビアルモスが出てくるということだな。
「ではしゅぱーつ……の、前に。クノさん」
「ん?」
「あー、その、ごほん……ぶっちゃけクノさんは行軍の足手まといなんですよー」
「ぐはっ」
なにやら、棒読みでそんなことを言うフレイ。
おいこら。
何いきなり毒吐きやがるよ。棒読みだけど。
仲間に頼りましょう、迷惑なんかじゃないです、とか言っときながらそりゃないんじゃない……? 棒読みだけど。
「クノさん。私達は普通にAgiにもステータス振ってますから、ボスまでは終始早歩き……クノさんからするとちょっとしたランニングですが、体力持ちませんよね?」
「……おっしゃる通りです」福源春
その通り、俺がボスんトコまでいこうと思ったら、途中の戦闘も考慮するとスタミナ的に、てくてく歩いて行くしかない。フィールドの広さを考えると、道中のモンスターを全て無視しても30分はかかるんじゃないか? 戦闘していったら倍はかかるか?
はぁ。ほら、こういうところで地味に迷惑がかかるのが俺って奴だ。だからパーティープレイは好きじゃない。
「でも今日はなるべくちゃっちゃとボスまでたどり着きたいんですよ。私達はここのボスは既に倒しているので、時間がもったいないですから」
「うん。なんでさっきからそんなに言葉がきついの?」
追い打ち気味なフレイの言葉。
なんかいつもと様子が違う。
具体的には、なんか変な、引きつった笑みを浮かべながら俺を罵倒してくる。意味わからん。腰引けてるし。棒読みだし。
「あの子、クノさんの歪んだ性根を叩き直すんだ、と言って張り切ってたけれど」
「私式スパルタなのです、とも言っていたね」
「なんだそりゃ」
エリザとカリンが隣に来てこそっと教えてくれる。
叩き直すっていうか、なんか違うよね。スパルタっていうか、SMだよね。いやそれも違うけど。
手段にとらわれて目的を見失って更にその手段もずれてるという訳わかんないことになっちゃてる。
完全に無理してるだろ。お前にはそんな厳しめの役割は似合わんよ……
いや、言葉はいちいち正確なんだけど、それ以前の心構えとかがもう駄目だ。
「ふー。こ、こんなもんですかね……という訳で、じゃーん! 私こんなもの買ってきました!」
そういってフレイが、急に声の調子をがらっと変える。
あれ? スパルタ(笑)は諦めたのか? や、そのほうがお互いのためだろうけど……一体何がしたかったんだよ……
メニューをいじって実体化させたものは……なんだこれ?
木箱にコの字の取ってと大きな車輪がついた、えっと……リアカー?
小さめで、人一人乗れるかどうかという。
まさか。
「はい、何か気付いたような顔してますねぇ! その通りですよ! これにクノさんを乗っけて、私がボスの所まで走っちゃいます!」
「まじですか?」
「まじですっ」
何かの反動のようにテンション高めのフレイ。いや、いつものフレイ。
いやまぁ、確かに合理的だけども。フレイのステータスならこのくらい訳ないだろうけども。
……恥ずかしいじゃない?
女の子の引くリアカーに乗せられてる俺……シュールすぎる。
ってか、アイテムショップにはこんなものまで売ってんのかよ。
「安心するといい。道中引っかけたモンスターは全て後続の私達が倒すから」
「レベル的には格下なのだしね、楽勝よ。フレイとクノが先頭切って、私達が後を追う形になるかしら。」
「クノさん……頑張ってくださいね?」
「後ろは任せろー!」
「ということですっ」
満面の笑みを浮かべるフレイ。
ああうん。もう、いいや。フレイがそれでいいって言うのなら、俺が文句をいう筋合いは無いかな。
せめて騎獣があればなぁ……
もしくは、用途に合わせて専用装備的な感じで防具を換装できれば、俺もエリザにAgi特化防具作ってもらってそれ装備するんだが、あいにくとフィールド内では「防具」の変更はできないんだよなぁ。「武器」と「アクセサリ」は出来るけど。勃動力三体牛鞭
まぁ、できたとしてもそれはそれで、Str極振りとしては邪道な気がするからやらなかったかもだけど。
「おっけ、わかった。じゃあ頼むぞフレイー」
「任せてください!」
「よっこらせ、と」
フレイが持ち手を支える、小さなリアカーに乗り込む俺。
スペースが狭いので体育座りだ。
「ぷっ、くくくく」
「おいこらエリザ。何笑ってんだ」
「い、いえ、笑って無いわよ?」
「口元にやけてる上に眼が泳いでるから」
「……くっ。貴方がそんなシュールな格好してるのが悪いのよ!」
「逆ギレ!?」
エリザは随分と……なんというか、感情表現が豊かになってきた気がする。
それだけ信頼されてるってことかな?
や、まぁ。それでもデフォは無表情なんだけど。
「ドナドナドナドナ……」
「カリンも不吉なこと言ってんじゃないよ」
「……はい、良くお似合いです」
「……うん。流石クノくんだね」
「ノエル! リッカ! やめて!? そんなに引かないで!?」
良くお似合いですって何!? 何に対してのフォローだよそれ!
「はい、では今度こそしゅっぱーつ!」
「え、まじで? いやちょっとまぁぁぁあああ!?」
慌ててリアカーにしがみ付いた直後。
俺の身体に猛烈な加速がかかる!
ちょ、速い、速すぎるよフレイ! 落ちる落ちるっ。こんな序盤からぶっ飛ばしてて大丈夫か!? エリザ達をぶっちぎってるぞ!?
って言う不平を伝えることもできずに。
……うへ、気持ち悪ぃ……眼がなんかくらくらする……耳がギュオオ! ってなってる。
「いえぇぇえい! とばすぜー!」
こういうところでもAgiだのVitだのが足りないツケが回ってくるというのか。
俺は直接加速の風にさらされながら、振り落とされないようにされるのが精いっぱい……あ、Vitがないからしがみつく力が弱まってきた!
そして、その時は無情にも早くにやってきて、
「うわぁ」
遂に完全に手が離れてしまった。
「あわっわわわ」
落ちるっ! まずい、この速さから落ちたらダメージも相当じゃないか!?
移動途中に死に戻りとか、洒落になら……
……
……?
アレ? なんともない。
未だ風は吹きつけてくるものの、何故か俺の身体が振り落とされる様子はなかった。
あらら?
不思議すぎる……流石、ここら辺はゲームだなぁ、と感心だ。
まぁ、考えればリアカーに乗せた荷物が途中で転落するのを防ぐ、というのは普通のこと……今更だけど俺荷物扱いか……!?
ちょっと落ち込みながら、それでも転落の心配のなくなった俺は、特にやることもないので風景を見ながらぼーっ、とする。吹き付ける風は、慣れれば意外とそうでもなかった。
後ろに小さくエリザ達が見える。
俺達は寄ってくるモンスター(ソウトバグの上位互換、デイトバグや、巨大芋虫のキャレピン、蝶型のバルタギイなど)をぶっちぎって進んでいる。
同じパーティー登録をしてあるエリザ達がそいつらの相手をするため、どうしても遅くなってしまうのだな。御苦労さまです。蒼蝿水
とはいえ、レベル差のせいでエリザも言っていたように“楽勝”なんだろうが。
ここのモンスターの平均レベルは大体27。対してうちは軒並み37を超えている(俺を除いて)。カリンに至っては40超え、ただいま43だ。
俺と9も差があるぜ……泣けてくらぁ。
【異形の偽腕】の訓練をするまえに、レベルをちょいと上げなきゃかな……
「おおおぉぉぉお! スパルタですー!」
……はぁ。
フレイ、そりゃお前にとってだろ、どっちかというと。やっぱ、向いてないな。
後、そんな大声ださないで欲しい……さっきからちらほらとすれ違うプレイヤーさん達にガン見されてるから。
俺はいたたまれなくなって、体育座りの膝に顔をうずめ、眼を閉じるのだった。
―――
ボス前のセーフティエリア。
俺とフレイはそこで一息ついていた。
「ふぅ、良い汗かきましたぁ」
「VRだから汗はかかないはずだぞ?」
「気分ですよ気分っ」
他の皆もそろそろ追いついてくる頃かな?
あ、そう言えば地味に俺、レベルアップしました。
パーティー登録をしていると、パーティーで倒したモンスターの経験値は、パーティーメンバー全員にいきわたるんだよな。
それでもともとレベルアップが近かったのか、俺は何にもしてないのに勝手にレベルアップ。
こういうのなんていうんだっけ……寄生?
……がーん。
とりあえず近場の樹に手をついてもたれて、心を落ち着ける。
大丈夫だ、ボス戦で挽回できる! ……でもそもそもボス自体、皆にとっては倒す必要もないわけで。
……まぁ、うん。深く考えたら負けだな。
折角頼ろうって決めたんだし、少しぐらい迷惑かけても……うんそう、少しくらい……
あ、でも俺ボス戦でも得意分野?である近接戦NGって言われてるからなぁ……
と、俺が感情のデフレスパイラルにはまっていると、カリン達が追いついてきた。
「流石はフレイね……荷物を抱えた状態でもあの速度なんて」
真顔でそんなことをのたまうエリザ。
「酷ぇな、おい。荷物て」
「ふふっ、なんて冗談よ。ごめんなさいね、クノ」
「……うん、冗談かよ。エリザの冗談は分かり辛すぎる」
「そうかしら?」
エリザが、ホントにきょとん、とした様子で小首を傾げる。
頭の上に?マークでも出てきそうな勢いだ。
「自覚がないっ……!?」
「エリザは理知的と見せかけて意外と天然だからね……」
カリンも苦労してそうだな……SEX DROPS
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