あぁ、暖かい。こんなにベッドがふかふかなんて…。アリアが布団を干してくれてたのかな。すごくいい香りがする…。
あまりのベッドの気持ちよさに暖かい気持ちで微睡んだままゆっくり瞼を持ち上げると、ベッドには朝日が射し込んでいる。何だかこういうのいいな。なんて思いながら起き上がろうとしたが何かに阻まれていてそれができない。procomil
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働かない頭で何故だろうかとぼんやり考えてみる。
昨日、そういえば夜会に行ったんだっけ。そこでご飯これでもかってくらい食べて…シャンパン飲んで、ワイン飲んで…。あ、ワインが美味しいのを初めて知ったんだ。
それからそれから…それか…ら…ん?
目の前にあるのは誰かの胸板だと気付き、ゆっくり視線を上げると軽く寝癖のついたアプリコットの髪の隙間からアメジストの瞳がこちらを見て目を細めている。
「おはようブリトニー」
ブリトニーって誰だ?…あ、そう言えばそう名乗った…それよりこの目の前の男は…
思わず目を見開いた。
「ラ…ランスロット…王子!」
「よかった。酔っぱらってたから覚えてないかと思った。」
満足そうに微笑むランスロットに背筋が凍る。ブリトニーと呼ぶと言うことはバレていない?それとも解っていてわざと呼ぶのか?
この性悪男ならあり得る。反応を楽しんでいるとかありそう!
何と返事すべきか躊躇していると、腰へ回された腕に引き寄せられる。
「んっんん…っ」
離れようと胸板を思い切り押すがびくともしない。昨日、力で勝てなかったのはお酒のせいではなかったらしい。…情けない。
息が苦しくなるほど口付けされ、もう酸欠、と言うところで肩をばしばしと叩いて訴えるとやっと解放される。
必死で酸素を取り込もうと肩で息をしているとランスロットはくつくつと笑う。
「俺にキスされて逃げようとする女は初めてだな」
「そ、そんな事より今!今何時ですか?!」
腹立たしいが今のでしっかり目が覚めた。今日は仕事の日だ。こんな奴の相手している場合ではない。多少の遅れは騎士団長の特権で適当に言い訳出来るが昼前には第四王子に会って一日の流れに変更が無いか等話さなければならない。
騎士団長と言っても毎日朝から晩まで剣の稽古をしている訳ではない。
勢力を広めたこのクレイモア王国に刃向かう国なんて無く、騎士なんて言い方名ばかりで、防衛と言うより警護と言う方がしっくり来る。
平和すぎて侍従の様な事までやらされている。
「今…九時前だな」
「くっ…?!」
今から帰って着替えて王宮に行って甲冑に着替えて…。よし、すぐ帰って急げばギリギリ間に合う。もうお風呂は空いた時間に官舎で軽く済ませよう。
「あ、あの!私用事があるので帰ります!」
気が緩んでいるランスロットの腕を払い退け、ドレスを拾おうとするがすぐに腕を掴まれ引き戻される。
「それって俺より大事な用事か?」
「え?…はい」
第三王子の貴方じゃなく、第四王子付きなんだから優先するのは勿論第四王子だ。
それより遅刻しそうだから離して。
「送ってやる」
掴んだ腕に優しく唇を落としたランスロットは思い立った様に起き上がり、服を着始める。
起き上がろうとしたら押さえ付けたり、無理矢理キスしたり、腕を掴んだと思えば軽くキスして送ってやる?
ランスロットが何をしたいのか解らず、困惑しながらドレスを着ると手を差し出される。
「…何?」
「腰、痛いだろ?馴れないヒールはキツいんじゃないか?」
「な…何で馴れてないって…」
やっぱり正体がバレてるんじゃないかと血の気が引いていく。
バレてたらクビだよね?王宮の仕事が無くなったらあの衝動買いをぎりぎりで賄えるような仕事探さなきゃ…でも女で騎士クラスのお給金貰えるとこなんてあるんだろうか…。
母と仕事とお金の事で頭が一杯になっているとランスロットは笑みを崩さず言った。
「ヒールの踵が削れてないし、足、靴擦れしてんだろ。新しい靴は馴れるまで辛いよな。」
「え…あ…そうです…。」
ヒールを新調して履いてたからと思われたのか…。いや、普段ヒールなんて履かないから間違っては無いけど。房事の神油
そういえば友人達は夜会に行く度ドレスや装飾品を新調してたっけ。
ランスロットがヒールを拾うと差し出された手にそっと手を重ねる。
腕の力だけで引っ張られ、あっと言う間に立たされて目を丸くする。放蕩王子の癖にどこにそんな力があるんだ?
驚いたか?なんて顔しながらに手を回され、思わず体が強張る。なんかこの人触り方がいちいちエロい。
しかしいざ立ち上がってみるとランスロットが言う通り腰が痛く、奥歯を噛み締める。
「ほら、掴まっとけよ」
「え?あっ!!」
ふわりと体が浮いたと思えばランスロットは軽々と私の体を横抱きに抱え、昨晩昇ってきた階段を軽快に降り、重そうな顔も一切せずにホールを横切り馬車に乗せられた。
男に横抱きになんてされたことが無く、あっと言う間の出来事だった。本当に、どこにそんな力が?
家はストリア家かと聞かれ、思わずはいと答えてしまった。
でもどこかで適当に降ろしてもらっても家に徒歩で向かうよりは断然早い。第四王子は時間に煩いから遅れるのだけは本当に避けたい。
しばらく馬車を走らせると我が家が見える。
「俺の弟の、コンラッドの騎士がブリジット=ストリアなんだ。血縁か?」
「ブリジットは…あ、姉です。」
それ。私です。
なんて言える訳もなく、家まで来てしまっているし悩み抜いて苦い作り話をする。
やっと家の前で馬車が止まり、そそくさをドレスの裾を持って降りようとするとまた腕を掴まれた。
「また会えるか?」
「王宮へは行けませんから…」
「ブリジットに用だと言って来れば良い。」
それ、私に妹が居ても困るから。
何かもっとマシな案出そうよ。
「仕事中の姉様に迷惑は掛けたくありませんから…。」
「そうか…」
ランスロットが何か良いかけたが、お礼だけ言い腕を振り払い馬車を降りる。
背後からは何だか哀愁の籠った声でまたな。と聞こえた。
ランスロットは毎晩後宮の女と寝るといつもこうやって腕を掴んで名残惜しそうにするんだろうか。今みたいに名残惜しそうな声でまたな、なんて言うんだろうか。
執心している女なら喜ぶだろうな。いや、それがランスロット王子の作戦なんだろう…。
でも昨日も今日も、いつも見るランスロットとは違い、やたら優しくてなんだかくすぐったい気持ちで調子が狂う。
「…あ、仕事!」
急いで家へ入っていく。
女騎士団長とお勉強2
今、絶句している。
コンラッド王子の部屋を開けるとカウチに正座する王子。隣に座るのはにやにやしながらクッキーを食べているリオネル第二騎士団長。そしてコンラッド王子の前で手を腰に当て仁王立ちしている黒髪の女…の子?
「あの…?」
これはどういう状況なんだろうか。どうしよう。コンラッド王子が飼い主に怒られている犬に見えてしまう。
持ってきたティーセットを落としそうになりながら一度扉を閉めようとしたが目が合ったリオネルが私を呼び、手招きするので仕方なく入室する。
「ええと…初めまして。第四騎士団長のブリジット=ストリアと申します。」
冑を取って挨拶するが黒髪の女の子は明らかに私より年下に見える。
それにしても、目がくりっとしていて美少女だ。前髪はきりそろえられていてお人形みたい。
美少女はこちらを凝視してにこっと微笑む。か、可愛い。蔵秘回春丹
「初めまして。私はアーネストの所に住まわして貰っとるアヤメって言います。私、可愛い女の子は大好きなんよ!仲良くしてね!」
可愛い笑顔で握手してくるアヤメに私はポカンとした。
アヤメ?珍しい名前だな…。それに何だか喋り方が独特だし、アーネスト王子の所に住んでいるってどういう事だろうか?
リオネルを一瞥するがただ微笑んでいるだけで表情を崩さない。
「まぁええけ、もっとちゃんと考えんさいよ!」
「……わかった」
アヤメは鋭い眼光をまたコンラッド王子へ向けて厳しく言う。やはり何だか喋り方が独特…。
コンラッド王子はうんざりした顔で大きくため息をつく。するとリオネルが立ち上がり、アヤメを捕まえてまたねと手を振り出ていった。
「…あの…大丈夫ですか?」
なんだか台風一過のような気分。しかし、アヤメとは何者なんだろうか?そういえばまた女の子って言われた。
リオネルが付いているから大丈夫なんだろうけど。
「何なんだあのチビ。」
「さぁ…初めて見ました。」
カウチに座り直したコンラッド王子は頭を掻いてまた大きくため息をついた。
「王子、今忙しいですか?」
「いや。どうした?」
気を取り直して疲れている王子にアルファルファのハーブティーを淹れると改めて向き合い、深々と頭を下げた。
「…何が言いたいんだ」
いつもの口調で言うコンラッド王子は解せないといった顔をする。
「頂いたオイルやクリーム…うちのメイドや厨房のおばちゃんの手がカサカサだったから少しでも良くなればと思って…いくつかあげてしまったんです…。沢山あるから、と使わないものをくれたのかなと思ってたんですが…ずっと私に渡そうと思って取り寄せてくれていたものだって聞いて…本当にすみません。」
どうしよう。凄く申し訳なくて泣きたくなる。
「誰から聞いた」
怒られるだろうと身構えていたがコンラッド王子の関心は違うところへ向いていた。
「え?…ワイアットさんです。」
「…あのジジイ…」
眉間に皺を寄せてハーブティーを飲む王子に首を捻った。ワイアットさんがどうしたんだろう?
「二年以上近くで見てるんだ。お前がそういう事をするくらい予想はついていた。お前にやったんだから使うも捨てるも好きにすれば良い。」
流石に捨てたりはしないけど。
空になったティーカップを置いてコンラッド王子は私の手を取る。
「俺が本当に渡したかったのはこれだからな。」
私の手にはコンラッド王子から贈られたガントレット。指先に添えられた大きな手が慈しむように革の生地の上から私の指を撫でられる。
「また、擦り切れたら言えよ」
「あ、いえ、今度はちゃんと自分で用意しますから」
いいから、と強く言う王子の頬は少し赤に染まっている。
「…ありがとうございます。」
昨日から急にコンラッド王子が優しくなったものだから何だかくすぐったい気持ちになってしまう。
正直、勿体ないから使わずにいたいくらいだ。でも着けているところを見たときのコンラッド王子の嬉しそうな顔が何だか可愛くて、使わせてもらっている。
「侍従の仕事、そんなに重く考えるな。」
思わず「え?」と口から言葉が零れた。突然そんなことを言われても何の事だか解らない。目を泳がせると視界に入ったのは昼も積み上げられていた分厚い本の山。
よく、見れば所々から顔を覗かせている付箋に見覚えがある。男用99神油
ワイアットさんの本だ。
「もしかして、王子もお勉強を?」
「まぁ…な」
ばつが悪そうに少し目線を逸らす王子を見て嬉しさと申し訳なさが入り交じる。
私が困らないよう、質問しなくても良いように自ら勉強しているんだ。
「すみません。私…頼りなくて…。」
俯くと王子は慌てたように立ち上がる。
「この勉強はワイアットが退職する日が決まる前からやっている。お前が頼りないなんて思ってはいないから気にするな!」
「王子は…お優しいですね」
感謝の気持ちを込めて言ったのに王子はただ目を逸らしただけだった。
王子の読み終わった本を持ち、ワイアットさんの部屋に帰り質問の続きをある程度終えた頃だった。
背後から扉の開く際の重厚な音が聞こえ、コンラッド王子かと思い振り返ろうとしたが後頭部を掴まれ制止される。
「ワイアット。ちょっといいか。人事の話がしたい。」
その声に目を剥く。この声は…ランスロット…。
「ブリジットちゃん、ちょっと待っててくれるかの?」
「は…はい」
後頭部を掴む手はワイアットさんと共に離れて行った。
掴まれた時は心底驚いたし、ちょっと痛かった…けど、顔を見られたく無いのを察しての行為としか言いようがない。もやもやする…。
掻き消すように温くなってしまった紅茶を飲み干したが消える筈もない。
これ、前にもしたな。
ワイアットさんを待つ間、コンラッド王子の借りていた本をぱらぱらと捲ってみると難しすぎて頭が痛くなってしまう。
だが間に挟まれた紙や付箋にはワイアットさんの細かい助言などが書かれていて、それを元に読んでいけば少しは解りやすくなる。
手に取った本は作物に関するものだった。
この二十年でどれだけ収穫が増えたか、収穫に対する国内消費量、輸出量の推移、何年かに一度くる干ばつでどれだけ蓄えが必要であるか等、事細かに記されている。
…頭いたい。騎士になる時ですらこんなに勉強した覚えは無い。
こんなのを涼しい顔で読むコンラッド王子には本当に頭が下がる。
甘い物ばっかり食べてる糖尿ランスロットに爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。
そういえば、人事の話だと言っていたけど、やはりクラウスは昇格になるのだろうか?あんなやつ。追放されてしまえば良いのに。とは言え、私よりも剣の腕も歴もある。もっと、剣が強ければな。
大きく伸びをして動かしすぎてぼんやりしてきた頭を振る。男根増長素
そうだ。私には他を考えている暇は無い。質問に答えてもらった内容を見返しもう一度理解するまでまた分厚い本のページを捲っていく。
復習したところで、近くにあった違う本を手に取りぱらぱらと捲っていくと今まで王宮で起こった事件や事故の事が書かれている。
日付を見ながら適当に目を通していくと手が止まる。
「…ライナス……軍務…」
父の名だと思い手を止めたのに続きを読もうとしたところで、本を取り上げられ、また頭を押さえつけられる。
「第三王子、それ、案外痛いんですよ。」
「騎士だろ。我慢しろ。」
なんだそれ。まぁそもそも冑を脱いでいた自分が悪いわけだが。
「お前、次の休みまであと何勤だ?」
「確か…五連勤です。」
そうか、と冷たい声が降ってくると頭を押さえる手が離れた。
「あの。」
「何だよ」
つい声を掛けるとやけにぶっきらぼうな返事が返る。
「…私って子供っぽいですか?」
ワイアットさんにもアヤメにも女の子呼ばわりされた。流石に二十歳で女の子は無い。そんなに幼く見えるんだろうかとかなり気になってしまう。
「子供っぽいも何も…俺お前の顔見たことねぇよ」
「……ですよね」
そうだった。ブリトニーで会ってるからつい聞いてしまった。
「…コンラッドのバルコニーで鳩にパンやりながらそのパンかじってる所は子供っぽいっつーか無邪気だよな。」
「…っ見て…!!」
朝、コンラッド王子が朝食を食べているとバルコニーに鳩が止まった。パンでもやれよ、と言われ一つロールパンを渡されたのでちぎって餌やりをしていたが一口分くらい残ってしまったので顎当を外して食べたんだ。まさか…見られていたとは…。
「いいんじゃないか?お前らしくて」
急に優しく頭を撫でられ、驚いたがやはりこの手が心地よく、頬が熱くなる。
「声が笑ってます…」
不貞腐れたように言うとランスロットは鼻で笑い、またな、と頭から手を離す。
あ。そういえばカーニバル…。まぁいいか。元々あっちが勝手に押し付けてきた予定。ブリトニーはブリジットが休みじゃないと出られない設定だし。
先程まで読んでいた本が見当たらず、仕方なくまた、違う本を読み耽る。とりあえず、今までの政策や近隣国の傾向を頭に入れておけば少しはマシかもしれない。
また一つページを捲る。男宝
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