「これで全員の入会が無事認められた。入会儀礼はここまでとする」
全員の入会儀礼がすみ、エステル男爵が宣言した。
ようやく終わったか。
思ったより長くて疲れたような気がする。簡約痩身
主に精神的に。
「全員の入会を歓迎しよう」
「迷宮と魔物の駆除に力を奮ってほしい」
伯爵と公爵が再び男爵の横に並んで立った。
伯爵もちゃんと歓迎してくれるようだ。
俺も背筋を伸ばす。
皇帝の横に立つ気はないが。
「無事入会をすませた君たちにハンドサインを教える」
「ハンドサイン?」
「帝国解放会の会員であることを示すサインだ。その人が会員であるかどうか確信が持てない場合や、会員である誰かに助けを求めたいときなどに使う。サインはこうだ」
エステルが体の前で手をクロスさせ、左手の手のひらを右二の腕の裏側に当てた。
そんなサインがあるのか。
「これでいいのか?」
皇帝が真似をする。
「右腕は伸ばせ。そうだ」
「こうやるのか」
俺もやってみた。
「まだ君たちには関係ないが、誰かを解放会の会員として推薦しようと考えたときには、相手が会員でないかどうかこのサインを示して反応を見たりする」
ということは俺もやられたはずだ。
驚いて公爵を見ると、公爵がうなずく。
「余もやったぞ」
俺も試されていたらしい。
いつ示されたのかまったく心当たりもない。
そのくらい分かりにくい微妙なサインだ。
会員かどうか分からない人に対してやるのだから、違和感を持たれて会員であることがばればれになってもまずいのだろう。
「誰かがこのサインを示したときには、相手に同じしぐさをやり返す。助けを求められた場合には、積極的に応じ、できる範囲内で支援してほしい。会員同士の友愛のためだ」
「分かった」
一応うなずいておくべきだろう。
俺が助けを求めることもありうる。
あまり使う機会はないと思うが。
「ただし、みだりに使うことは厳禁だ」
「そうだろうなあ」
「また、毎年冬には会員総会が開かれる。第二位階と第一位階の会員に出席の義務はないが、できれば積極的に参加してほしい」
会員総会なんていうめんどくさそうなものまであるのか。
まあそういうのもあるんだろうけど。
出席の義務はなしと。
「朕は諸侯会議の時期と聞いたが」
「そうだ。同じ時期に集まってしまうのが好都合なのでな。貴族関係の会員はどうしても多い。詳しい日取りなどはロッジに来れば書記の方から話があろう」
「となると朕の参加は難しそうか」
皇帝が口を挟んだ。
諸侯会議なんていうのがあるのか。
そして貴族関係者の会員はやはり多いらしい。
カシアや皇帝みたいに義務感から積極的に迷宮に挑む貴族も多いのだろう。
貴族の子どもは赤ちゃんのころからパーティーを組み、他のパーティーメンバーだけが迷宮に入って純粋培養もされる。
魔法使いになれるのも貴族や金持ちの子弟だけだし、強くなる人に貴族やその関係者が多くなるのも道理だ。
諸侯会議というくらいだから貴族が集まるのだろうし、帝国解放会の会員総会も同じ時期にやってしまえということだろう。
フィールドウォークがあるからいつでも集まることができるとはいえ、諸侯会議出席のために帝都にいる時期にやってしまえば都合がいい。
スケジュール調整なども楽だ。V26Ⅳ美白美肌速効
もちろん諸侯会議も帝都で行われるのだろう。
ただし、その時期皇帝は忙しいらしい。
普通に考えれば諸侯会議の主催者でもあるのだろう。
報告とか取りまとめとかいろいろある。
皇帝も大変だ。
「まだしばらく先のことになるだろうが、四十五階層を突破した場合、突破試験が受けられる。ロッジに来て書記に話をすれば話が通るだろう」
「突破試験か」
それもあるんだよな。
十何年も先の話だが。
「後は、ブロッケンから何かあるか」
「五十階層以上に挑めるようになったら、どの迷宮に入るか書記に伝えておくといい」
公爵が付け足した。
これは俺向けなんだろう。
帝国解放会の会員になると迷宮を倒したときに承認を受けられやすいとかいう話だった。
どの迷宮に入るか把握されてなかったとしても、皇帝が迷宮を倒したらそれを疑うやつはいまい。
「ブルーノ、副会長として何かあるか?」
おまわりさんこいつなバーコード伯爵は帝国解放会の副会長だったらしい。
大丈夫なのか、この組織。
「特にはない。帝国解放会は新しい会員の入会を歓迎する。ともに腕を磨き合い、迷宮と魔物を駆逐して、いつの日か解放をなし遂げよう」
「それでは、入会式および入会儀礼は以上で終了だ」
副会長と会長が最後を締めた。
誰かがドアを開け、部屋が明るくなる。
本当にここまでのようだ。
「貸し出した衣装はここにもってこい」
いち早くダルマティカを脱いだ伯爵が呼びかけた。
俺もダルマティカを脱いで伯爵に渡す。
「この後は、部屋を移って乾杯する。全員移動するように」
エステルも一声かけてからダルマティカを脱いだ。
出たよ、飲みニケーション。
やはりまあそんなものか。
二十一世紀の日本にだってあるのに、この世界ではしょうがないだろう。
「朕のため時間がとれずにすまんな」
「大丈夫だ」
皇帝と伯爵がダルマティカを渡しながら会話する。
「いつもはもっと大きな宴会が催されることもあるが、今日は軽く乾杯するだけだ」
皇帝と伯爵の会話の意味を、横に来た公爵がひそかに教えてくれた。
なるほど。
さすがに皇帝は忙しく、宴会などやっている暇はないのだろう。
皇帝様様だ。
「そうか」
「ミチオも無事に入会したので、うちでもささやかながら祝宴を開きたい。十日後辺りでどうか」
「分かった」
「では十日後の夕方にパーティーメンバー全員で来てくれ」
部屋を出て移動するエステルの後ろについていきながら、公爵と話をする。
推薦してくれたのだし、断ることはできないだろう。
いまさら断る手もないが。
「お待ちしておりました。入会式は無事おすみになられましたでしょうか」
廊下を進み階段を下りると、セバスチャンが待っていた。
「終わった」
「お部屋はこちらに用意してございます」
部屋まではセバスチャンが誘導する。
総書記が部屋のドアを開け、全員が中に入った。男根増長素
最初に来たときと同じような広くて豪華な会議室だ。
皇帝も使うことがあるなら、確かにこの豪華さも納得だ。
エステルがテーブルの向こうに回った。
公爵も俺の横を離れて向かう。
テーブルの向こう側が上座なのだろう。
向こうにいったのは貴族三人。
新会員三人はこっち側か。
皇帝だからという特別扱いは本当にないらしい。
せめて皇帝は真ん中だろうから、俺は端に座った。
「我にはデュンケルを。ブロッケンとブルーノは好きなものを頼め。新会員にはドワーフ殺しとシュタルクセルツァーを一本ずつ」
向こう側の真ん中にはエステル男爵が座る。
まあ会長だしな。
「かしこまりました」
注文を受け、セバスチャンが部屋を後にした。
ドワーフ殺しなんていう飲み物があるのか。
「新会員は、酒が飲めるならドワーフ殺し、飲めない場合にはシュタルクセルツァーだ。飲まない方は持って帰ればいい」
ドワーフは水代わりに酒を飲むとか言っていた。
そのドワーフを殺すのだ。
きっときっついのだろう。
新会員いじめは懺悔で終わりではなかったらしい。
「シュタルクセルツァーか」
ドワーフ殺しのオルタナティブで示されたシュタルクセルツァーも、酒を飲まない人用とはいえ気をつけた方がいい。
きっと新会員いじめの一環だ。
セバスチャンはすぐに戻ってきて、給仕を始める。
ドワーフ殺しもシュタルクセルツァーも準備してあったに違いない。
慣例の新会員いじめなのか。
「こちらがドワーフ殺し、こちらがシュタルクセルツァーになります」
俺たちの前に小さな壷が二本ずつ並べられた。
素焼きではなく釉薬のかけられた壷だ。
なかなかに高級品っぽい。
「朕はこの後まだ執務があるのでな」
皇帝はシュタルクセルツァーを手に取る。
護衛もシュタルクセルツァーを持った。
酔っては仕事にならないのだろう。
「では俺も」
「なんだ。誰もドワーフ殺しにいかないのか。まだ栓は取るなよ」
俺がシュタルクセルツァーに手を伸ばすと、エステルが注意した。
さすがに名前がよくない。
ドワーフ殺しだもんな。
人間族なら瞬殺だろう。
実は名称は引っかけで、たいしたことはなかったりするのだろうか。
シュタルクセルツァーが新会員いじめの本命とか?
ここまであからさまだとそれもありうるか。
「栓を取ったら、一気に飲め」
「飲む前に壷をよくゆすっておくといいぞ」
なんか公爵と伯爵の指示で読めたんですけど。
壷をゆすれとか。
鬼畜な伯爵だ。
「では。入会と新会員の前途を祝して。乾杯」
「乾杯」
会長の音頭で乾杯する。
コルクみたいな感じの栓を取り、小さな壷を傾けて中の液体を口に注いだ。男宝
炭酸だ。
思ったとおり炭酸だった。
口の中でシュワシュワと泡が駆け巡る。
かなり強いな。
アメリカからの輸入物で安く売られているなんとかコーラみたいな感じ。
もっとも、コーラではなく水だ。
砂糖は入っていない。
ただの炭酸水だ。
「ガイウスなら知っておったであろうが、ミチオも知っていたのか?」
俺が驚くことなくシュタルクセルツァーを飲み干すと、エステルが聞いてくる。
「知らなかったが、昔住んでいたところの近くに似たような飲み物があった。ここまで強くなかったが」
「あるところで湧いている水でな。中でも特に強いのがそれだ」
自然に湧き出る炭酸水というのがあるのだろうか。
いずれにしても、知らない人が初めて口にしたら吹き出すかもしれない。
いろいろきつい悪戯だ。
「やはりドワーフ殺しが正解だったのか」
「ドワーフ殺しも強い酒だぞ。壷一本を軽く飲み干せる者を我は知らん。ドワーフでもそうはおるまい」
どっちを飲んでも地雷だったんじゃねえか。
性質悪いな。
「朕は昔ドワーフ殺しを飲み干すというドワーフの噂を聞いたことがある。そのような剛の者がおったら是非会ってみたいものだ」
「余も知らん。エルフではひとたまりもあるまい」
皇帝や公爵の知り合いにもいないみたいだ。
酒が飲めるから偉くなれるわけでもないしな。
ドワーフの知り合いが大量にいなければそんなものなんだろう。
「まさかセリーが頼んだりしてないよな」
セバスチャンに確認した。
資料室にあるならセリーもドワーフ殺しを飲んでいるかもしれない。
そんな強い酒を飲んで暴れられたりしても困る。
「セリー様は、ドワーフ殺しは仕事に影響が出るかもしれないから水でいいとおっしゃられて」
かもしれない、なのか。
休日であって仕事ではないのだが。
というか、その水はエイチツーオーの水じゃないだろう。
いろいろと突っ込みどころの多い返事だ。
「さすがは師兄。そのような剛の者を知っておるとは」
「いや。一気飲みできるかどうかは」
「仕事に影響が出るかもしれないというレベルなのであろう」
やっぱり突っ込まれた。
貧乳好きドMの皇帝にセリーを会わせるのはまずいような気がするが。三体牛鞭
2014年7月15日星期二
2014年7月13日星期日
ジェノベーゼ
路地裏にその扉がひっそりと佇んでいるのを確認し、帝国の騎士グレアム=ベルトランはほっと息をついた。
「良かった。今日は、あったか」
思わずそんな声が漏れる。
今から七日前、昼時の街中の見回りにかこつけてこの扉の元にやってきたとき、扉は既に消えていた。RU486
今回が初めてでは無く、何度かあったことから、この街の誰かが『使って』いるのだろう。
自分のあずかり知らぬ、別の客がいるということは気に入らないが、そこに文句を言うわけにもいかない。
とにかく今日は自分が使う。
そう考えながら、扉に手を掛けて開く。
そして、グレアムの耳に十四日ぶりに軽やかな鈴の音が響き、扉が開く。
その音を聞きながらグレアムは扉をくぐる。
グレアムが踏み込むのは、閉ざされた地下の部屋。
その部屋は窓一つ無いにも関わらず昼日中のように明るく、暖炉も無いのに冬を感じさせぬほどに温かい、不思議な部屋。
「いらっしゃいませ。ヨーショクのネコヤへようこそ! 」
グレアムが入ってくると同時に、料理を運んでいた魔族の少女が笑顔で歓迎の意を表す。
「ああ、適当に座らせてもらうぞ」
その少女に返事を返し、グレアムは適当な席に座る。
「すまないがメニューを」
「は~い!ただいま! 」
座ると同時に少女を促してメニュー……この店で出せる料理をまとめた本を持ってくるよう頼む。
「それじゃあ、お決まりになりましたらおよび下さいね」
「ああ」
少女が仕事に戻ったのを見送りつつメニューを開き、何を食べるかを考える。
(……やはり陸の食べ物よりは海の食べ物だな)
メニューに載っている料理は豊富で、どれも美味なのは分かっているが、まずグレアムの目が行くのは海の幸……
魚や貝にクラーコ、シュライプといったものを使った料理である。
(……故郷にいた頃は毎日肉が良いなどと思っていたのだがな)
メニューを眺めながら、少しだけ懐かしく思う。
グレアムの故郷は、数十年前に帝国に飲み込まれた港町であった。
毎日ひっきりなしに他の東大陸の港やはるか西大陸から交易船が訪れ、人々が行きかっていた、潮の匂いがする街。
そこの代々の騎士の家であったグレアムの生家では毎日、魚の類が食卓に上っていた。
幼かったグレアムは交易品として運ばれてくる肉の方が好きだったが、こうして海など欠片も見当たらぬ帝国の内地に住み、毎日肉とダンシャクの実を食べる生活をしていると、無性に魚が食いたくなる。
更に帝国では都たる帝都ですら海の魚は貴重品で、騎士試験(帝国では騎士試験を突破すれば誰であっても騎士に叙せられる)を突破したばかりで大した俸給を貰っていないグレアムには手が出ない代物だった。
だからこそ、海の幸を使った料理をグレアムの手に届く程度の金額で酒付きで出してくれる異世界の料理屋は、グレアムにとって貴重な憩いの場であった。
(さて頼むのはフライか、グラタンか、ピラフか……いや、パスタか)
異世界食堂のメニューは、海の幸を使った料理を使った料理だけでも何種類もある。
上質な軍装を纏い剣を佩いた、グレアムより腕の立ちそうな騎士が好んで食べる油で揚げた料理。
どこかの平民の娘が好んで食べている、シュライプと王国風の騎士のソースを使った料理。
帝国風のドレスを纏った砂の国の貴族らしき娘が好む西大陸風の米を使った料理。
そして、海の幸だけではなく、様々な味付けを施された王国風の麺を使った料理。
グレアムは毎回悩みどころである。どの料理を頼むかであわせる酒も変わってくるのでなおさらだ。
(よし……今日は白い葡萄酒と麺だな)
「すまない。注文を頼む」
しばし悩み、頼むものを決めたグレアムは給仕を呼ぶ。
「はい。ご注文はお決まりですか? 」
「ああ、今日は白いワインを瓶で。それと、麺……そうだな、まずは魚介のジェノベーゼを頼む」
選んだのは、香しい香草の風味を持つ、緑の麺料理。
「はい。少々お待ちください」
「うむ」
注文を受けて、厨房に向かう給仕の娘を見送りながら、グレアムはゆったりと背もたれにもたれかかりながら待つ。
辺りから聞こえるのは、この店を訪れる客たちの声。
あるものは席を同じくした他の客と朗らかに会話を交わし、またあるものはグレアムのようにじっと目当ての料理が来るのを待っている。
その種族は様々で、来るたびに驚かされる。
(それだけ、ここの料理が美味ということか……)
その気持ちは分からないでもない。
彼自身、半年前にここを見つけてからは扉が現れるドヨウになるたびに日参しているのだから。
「お待たせしました!お酒とお料理をお持ちしました! 」
そして、待ち望んでいた料理が届けられる。
美しく形が整った、葡萄酒の入った緑の瓶と、緑色の麺料理。
「それじゃあ、ごゆっくりどうぞ! 」
「ああ、そうさせてもらおう」
給仕の娘の言葉を聞き流しながら、グレアムは早速とばかりに料理を食べ始める。
(まずは……酒だ)
瓶を封じている木製の栓をそっと抜き、華奢な脚つきの硝子製の杯に、酒を注ぐ。
緑色の瓶からあふれ出すのは、かすかに黄色を帯びた、白い酒。
それが注がれると同時に香しい葡萄酒の香りがグレアムの鼻をくすぐる。中絶薬
(うむ、よき香だ)
まずはその香りをひとしきり楽しみ、それから口へと運ぶ。
広がるのはほんの少しだけ甘みを帯びた、酸味と酒精。
異世界で飲む雑味の混じらぬそれはは、瓶一本で銀貨二枚だと言う値段を越える上質な葡萄酒の味がした。
(これが帝国で出回ったら、向こうの酒商人の商売がなりたたんな)
騎士であっても商売にはそれなりに通じている交易都市の生まれとして、そんな考えがふとよぎる。
値段の割に、異常に質の良い店。
入り口があのように不便なつくりの『扉』で無ければ、今頃もっと流行っていただろう。
(さてと、冷める前にこちらにも手をつけるか)
ひとしきり酒を味わったところで、料理の方にも手を伸ばす。
鮮やかな緑の香草を刻み、新鮮で上質な油で和えたソースをまぶした麺料理。
その料理には具材として、ごろごろと大ぶりな海の幸が踊っている。
(まずは、麺だ)
グレアムはフォークをそっと麺に刺しこみ、巻き取る。
ソースによって緑に染まった麺が、天井からの光を受けて、鮮やかに映える。
その美しさと香りにごくりと唾をひとつ飲み……口へと運ぶ。
(うむ、この味!これこそが麺の良さだ!)
堅すぎず、さりと柔らかすぎない茹で上がりの麺にはいくつもの味付けが複雑に絡み合っている。
具材として使われている、魚や貝、クラーコやシュライプの旨み。
緑色のソースに使われている香草の香りと香ばしい炒った豆の味。
そしてそれらを引き締めるトガランの辛み。
それらが一つにまとまることで、ジェノベーゼは完成された一皿の麺料理となっている。
(うむ、うむ……)
その味にグレアムは無言となり、無心に食べ続ける。
麺を巻き取って口に運び、時折り麺に混じりこんだ、具材を食べる。
何口か食べるごとに葡萄酒を一口飲んで爽やかな風味を楽しむ。
グレアムとて、若い男である。
そんな風に食べていれば、あっという間に皿の上のジェノベーゼは、尽きた。
(ふう……まずはこんなところだろうか)
とりあえず人心地ついたグレアムはそっと腹の上をなぜた。
(さて……)
無論、この麺料理一皿では、グレアムの、働き盛りの若者の胃袋が満足しようはずも無い。
グレアムは再びメニューを開いた。
(次は、どれに手を出すか……)
目に写るのは、この店の様々な料理の数々。
グレアムはそっとメニューに手を当てて指差しながら、次に頼むメニューを決めるのであった。
ハンバーグ
西大陸の東端に海の国と称される一つの国がある。
その国は沿岸にある都と、人間や獣人、魔族などが住む無数の小さな島々からなっている。
島々……海国諸島は島ごとに様々なものが住み、色々なものが取れるがそれぞれの島から得られる恵みの量は決して多くない。
それゆえに古くから島々で取れるものの交換……交易が頻繁に行われ、同時に海を渡る航海術が磨かれてきた。
その歴史は現在にも大きな影響を与え、西大陸の海国といえば、魔族との戦いを終えて平和になった東大陸との交易により大いに栄える貿易国家である。
そんな、無数にある島々には無論、知性ある生き物が住むのに適さず、人のいない島もある。
近くの島で親父からもらった小さな船を財産に独り立ちし、魚を取って干物を作り暮らしている若い漁師、ロウケイがアルテに先導されてやってきたのはそんな島のひとつであった。
「あのさ……」
「なに?」
まだ、昇ってからそう時間がたっていない朝日を受けて、遠慮がちに尋ねるロウケイに、振り向いたアルテ……
ほっそりとした身体に南方の砂の国の民のような褐色の肌と海色の髪と瞳、そして魚の下半身を持つ、南の海から来たという人魚まあめいどの少女は振り向いて、いまいち表情の動かぬ真顔で聞き返す。
「いや、そのさ……本当にここ? 」
その海のように澄んだ瞳に見つめられ、頬を赤らめながらロウケイはしどろもどろになる。
「そう……見つけたときは持ち合わせが無かったから、だめだった。ロウケイのお陰。感謝する」
そんなロウケイにアルテは重々しくうなづく。
その顔は自信に満ちていて、美しい。
女といえば地元の漁村のたくましい女しか知らぬロウケイにはいささか刺激が強すぎるほどに。
ロウケイがアルテと知り合ったのは、3日前の嵐の日のことである。
あの日、荒れる波にさらわれて船から放り出され、死に飲み込まれそうになっていたロウケイはアルテに助けられた。
嵐をものともしない人魚の泳ぎで沈んでいくロウケイを船のへりまで運び、水の神(本人が言うには青の神だそうだが)に祈りを捧げて波を止めて見せた。
その後、嵐がやんだ後は人が住む島まで運んでもらい、ロウケイは辛くも死から逃れた。
当然ロウケイは感謝したし、その美しさとやさしさ惚れたりもした。
自分にできる事ならどんなお礼でもする、そう言ったりもした。
……例えその礼として要求されたのが『銀貨10枚』という色々な意味で台無しな代物だったとしても、ロウケイにとってアルテは命の恩人であり、大切な人となっていたのだ。
その後、約束は約束としてアルテに銀貨10枚……駆け出しの漁師にはそこそこの金だが命の対価にはだいぶ安い金を渡した後、ロウケイは尋ねた。
一体何に使うのか、と。威哥王三鞭粒
ロウケイとてこの世界のこと全てを知っているわけではないが、人魚が人間のように金で買い物をするなんて話は聞いたことが無かった。
人魚に限らず、人の姿に近くとも魔物と呼ばれるような種族は普通、貨幣を『価値あるもの』と考えないのだ。
だが、この自称南の海から来た人魚は違った。
どうやら彼女の故郷では、人魚は『青の神を信じるもの』として人間たちとも普通に交流していたらしく、貨幣の価値もちゃんとわかっていた。
とはいっても修行の旅として出てきた北の海では、人魚は青の神を奉じず、また人間と交わろうともしないので普通に考えると使い道は無いらしい。
……ただ一つの用途を除いて。
そして、唯一つの用途に使うため、アルテはロウケイを案内していた。
「この先の森の中にある」
「そうなんだ……森の中? 」
アルテの言葉に、ロウケイは首をかしげ、水面の下に沈むアルテのヒレを見る。
ゆらゆらと水の中で揺れるそれは魚のような尾。
水中を泳ぐには最適だろうが、陸上を歩くのはいかにも向いていない。
「問題ない……ん」
そんなロウケイの疑問を察したアルテは青の神に祈る。
偉大なる六色の神を奉じる神官の、奥義とでもいうべき祈りによりアルテの脚が変じる。
魚のようなヒレが見る見るうちに人間のそれへと変じ……脛から下は蒼い鱗と鉄でも引き裂けそうな爪が生えた脚へと変わったのだ。
「ええっ!?」
「青の神に祈れば龍の脚が手に入る……翼とかはまだ無理だけど」
驚くロウケイに、少しだけ胸をはってアルテが言う。
優秀な青の神の神官でもあるアルテの、龍の脚を手に入れる祈り。
修行のため、陸の民との交流を行うために身に着けた技である。
「行こう。遅くなると、人が多くなる」
目の前の光景に驚いているロウケイを促しつつ、手を取って上陸する。
そして、やや強引にアルテは森の中を突き進み、その場所へとたどり着く。
「……ついた」
そしてアルテはその扉の前にたどり着く。
かつて、故郷で見出したのと同じ、黒い猫の絵が描かれた扉。
「行く」
ロウケイの手を取り、扉を開く。
チリンチリンと響く鈴の音を聞きながら、アルテとロウケイは扉をくぐった。
「いらっしゃい……おや、お久しぶりですねアルテさん」
朝の早い時間に訪れた客がここ最近見かけなかった少女であることと、その少女が見慣れぬ少年を連れていたことに少しだけ驚きながら尋ねる。
「久しぶり。注文、いい? 」
そんな店主に挨拶を返しつつマイペースなアルテは早速とばかりに注文してもよいか尋ねる。
「はい。大丈夫ですよ。いつもどおり……っと、そちらさんの分はどうしましょう? 」
アルテが頼む料理はいつも同じなのでその確認だけと考えつつ、店主は今日はいつもと違う連れがいることに気づく。
いつもの、アルテより若干年上であろう女性ではなく、日焼けした黒髪の少年。
この店では初めて見る客である。
「うん。デミグラスハンバーグ、ライスで2人分」
そんな店主の考えを知ってか知らずか、アルテはいつもの料理を注文する。
食べなれた海の魚ではなく、陸の獣の肉を焼いた、柔らかな料理。
竜の脚を手に入れる祈りを覚えた後同じ神官の先輩に『ご褒美』として連れて行ってもらえるようになってから、アルテはずっとこれの虜であった。
「はいよ。少々お待ちください」
注文を受け、店主は奥の厨房に引っ込む。
「さ、座ろう」
それを見届けた後、アルテは適当な席に座る。
「えっと、ここは……? 」
アルテに従い座りながら、ようやく事態に頭が追いついたロウケイはアルテに尋ねる。
先ほど、アルテの脚が竜の脚に変わったと思ったら、森の中に不自然な扉があり、そこをくぐった先は、なぞの部屋。
はっきり言ってわけがわからなかった。
「ここは、異世界食堂」
そんなロウケイに、アルテは淡々とその場所について教える。
「デミグラスハンバーグが食べられる場所」
……あくまで彼女にとっての認識だが。
それから待つことしばし。
「お待たせしました!デミグラスハンバーグをお持ちしました! 」
脚が出ている、ずいぶんとしっかりした仕立ての服を着た少女がアルテとロウケイの前にそれを置く。
鮮やかな色のかりゅうとや東大陸で食べられているというだんしゃく、小さな黄色い粒の野菜に彩られた黒い皿の中央に置かれた、平たく丸められ、上から赤黒い汁を掛けられ、上に焼いた卵がのせられた、肉。
ロウケイが普段余り口にすることは無い、陸の獣の肉を細かく刻み、まとめたものだろう。三鞭粒
熱せられた鉄の皿の上に置かれたそれはじゅうじゅうと音を立てている。
傍らに置かれているのは、いかにも上質であることをうかがわせる、器に盛られた純白の飯。
「へえ……」
その、肉が焼ける音と匂いに、ロウケイはごくりとつばを飲む。
「えっとこれ……」
尋ねようとしたところで、早速とばかりにアルテがナイフとフォークを手に『でみぐらすはんばぁぐ』とやらを食べているのを見て、ロウケイは色々聞くことをあきらめる。
「おいひい。たべればわきゃるはず」
もごもごと肉を咀嚼しながら、アルテはロウケイに大事なことを伝える。
「……うん、ありがとう」
その独特の間合いに慣れてきたロウケイは、己も食べ始めることにする。
「……あ、結構柔らかいんだね」
アルテに習い、使い慣れぬナイフとフォークを手にしたロウケイはまず肉を切り分ける。
よく磨かれた、金属製のナイフで切るくらいだから結構硬いのではと思っていたそれは予想以上に柔らかく、あっさりと切れる。
この柔らかさならば、おそらくロウケイが使い慣れた箸でも十分食べられるほどではと思えるほどだった。
「それじゃあ……」
それから、一口分に切った肉をフォークで口に運ぶ。
そしてかみ締め……
「……えっ!? 」
そのおいしさに驚いた。
普段食べなれぬ、陸の獣の肉。
その肉は獣くささの無い、上質な肉だった。
かみ締めるたびに、肉の中にたっぷりと含まれた肉汁が溢れ、口の中に広がる。
そしてその肉汁が上から掛けられた、甘酸っぱい風味を持つ汁と交じり合い……
(こ、これは……ご飯が欲しくなる!)
傍らに置かれた飯を手に取り、フォークでかっ込む。
(おお!これはすごいな!)
ほんのりと甘い、ねっとりとした米の淡い風味が、肉汁と汁の風味と出会うことで、すばらしい味になる。
はんばぁぐそれだけでも十分うまいが、米と一緒に食べるはんばぁぐはまた別格であった。
「……卵の黄身もあわせるといい」
その味に魅了され、盛大にハンバーグとライスを食べ進めるロウケイに、アルテが先達としてアドバイスする。
ロウケイがこっちを見たのを確認し、アルテは先輩から教わった食べ方を伝える。
そう、陸の獣の肉の味に、複雑な味のソース、それに火が通りきっていない卵の黄身の柔らかな味が加わり、更に味が高まるのだ。
「……本当だ。卵が加わるともっとおいしいや」
そんな言葉と共にアルテに向けられる、笑顔。
それはアルテに、不思議と満足感をもたらした。
それから、二人は大いに食べ、店を後にする。
「アルテが銀貨を欲しがったのは、あの店に行くためだったんだね」
海に戻る途中、ロウケイに尋ねられ、アルテはこくりと頷く。
「そう」
その答えを聞き、かすかに頬が熱くなるのを感じながら、ロウケイは先ほどから考えていた提案をする。
「それじゃあさ、また今度、時々でいいから僕と一緒に行かないか?そのときの御代は、僕が出すから 」
「いいの? 」
その提案に、アルテは少しだけ首をかしげながら、聞き返す。天天素
「もちろんだよ」
そんなアルテに、精一杯の勇気を振り絞ったロウケイは、笑顔で答えた。
「良かった。今日は、あったか」
思わずそんな声が漏れる。
今から七日前、昼時の街中の見回りにかこつけてこの扉の元にやってきたとき、扉は既に消えていた。RU486
今回が初めてでは無く、何度かあったことから、この街の誰かが『使って』いるのだろう。
自分のあずかり知らぬ、別の客がいるということは気に入らないが、そこに文句を言うわけにもいかない。
とにかく今日は自分が使う。
そう考えながら、扉に手を掛けて開く。
そして、グレアムの耳に十四日ぶりに軽やかな鈴の音が響き、扉が開く。
その音を聞きながらグレアムは扉をくぐる。
グレアムが踏み込むのは、閉ざされた地下の部屋。
その部屋は窓一つ無いにも関わらず昼日中のように明るく、暖炉も無いのに冬を感じさせぬほどに温かい、不思議な部屋。
「いらっしゃいませ。ヨーショクのネコヤへようこそ! 」
グレアムが入ってくると同時に、料理を運んでいた魔族の少女が笑顔で歓迎の意を表す。
「ああ、適当に座らせてもらうぞ」
その少女に返事を返し、グレアムは適当な席に座る。
「すまないがメニューを」
「は~い!ただいま! 」
座ると同時に少女を促してメニュー……この店で出せる料理をまとめた本を持ってくるよう頼む。
「それじゃあ、お決まりになりましたらおよび下さいね」
「ああ」
少女が仕事に戻ったのを見送りつつメニューを開き、何を食べるかを考える。
(……やはり陸の食べ物よりは海の食べ物だな)
メニューに載っている料理は豊富で、どれも美味なのは分かっているが、まずグレアムの目が行くのは海の幸……
魚や貝にクラーコ、シュライプといったものを使った料理である。
(……故郷にいた頃は毎日肉が良いなどと思っていたのだがな)
メニューを眺めながら、少しだけ懐かしく思う。
グレアムの故郷は、数十年前に帝国に飲み込まれた港町であった。
毎日ひっきりなしに他の東大陸の港やはるか西大陸から交易船が訪れ、人々が行きかっていた、潮の匂いがする街。
そこの代々の騎士の家であったグレアムの生家では毎日、魚の類が食卓に上っていた。
幼かったグレアムは交易品として運ばれてくる肉の方が好きだったが、こうして海など欠片も見当たらぬ帝国の内地に住み、毎日肉とダンシャクの実を食べる生活をしていると、無性に魚が食いたくなる。
更に帝国では都たる帝都ですら海の魚は貴重品で、騎士試験(帝国では騎士試験を突破すれば誰であっても騎士に叙せられる)を突破したばかりで大した俸給を貰っていないグレアムには手が出ない代物だった。
だからこそ、海の幸を使った料理をグレアムの手に届く程度の金額で酒付きで出してくれる異世界の料理屋は、グレアムにとって貴重な憩いの場であった。
(さて頼むのはフライか、グラタンか、ピラフか……いや、パスタか)
異世界食堂のメニューは、海の幸を使った料理を使った料理だけでも何種類もある。
上質な軍装を纏い剣を佩いた、グレアムより腕の立ちそうな騎士が好んで食べる油で揚げた料理。
どこかの平民の娘が好んで食べている、シュライプと王国風の騎士のソースを使った料理。
帝国風のドレスを纏った砂の国の貴族らしき娘が好む西大陸風の米を使った料理。
そして、海の幸だけではなく、様々な味付けを施された王国風の麺を使った料理。
グレアムは毎回悩みどころである。どの料理を頼むかであわせる酒も変わってくるのでなおさらだ。
(よし……今日は白い葡萄酒と麺だな)
「すまない。注文を頼む」
しばし悩み、頼むものを決めたグレアムは給仕を呼ぶ。
「はい。ご注文はお決まりですか? 」
「ああ、今日は白いワインを瓶で。それと、麺……そうだな、まずは魚介のジェノベーゼを頼む」
選んだのは、香しい香草の風味を持つ、緑の麺料理。
「はい。少々お待ちください」
「うむ」
注文を受けて、厨房に向かう給仕の娘を見送りながら、グレアムはゆったりと背もたれにもたれかかりながら待つ。
辺りから聞こえるのは、この店を訪れる客たちの声。
あるものは席を同じくした他の客と朗らかに会話を交わし、またあるものはグレアムのようにじっと目当ての料理が来るのを待っている。
その種族は様々で、来るたびに驚かされる。
(それだけ、ここの料理が美味ということか……)
その気持ちは分からないでもない。
彼自身、半年前にここを見つけてからは扉が現れるドヨウになるたびに日参しているのだから。
「お待たせしました!お酒とお料理をお持ちしました! 」
そして、待ち望んでいた料理が届けられる。
美しく形が整った、葡萄酒の入った緑の瓶と、緑色の麺料理。
「それじゃあ、ごゆっくりどうぞ! 」
「ああ、そうさせてもらおう」
給仕の娘の言葉を聞き流しながら、グレアムは早速とばかりに料理を食べ始める。
(まずは……酒だ)
瓶を封じている木製の栓をそっと抜き、華奢な脚つきの硝子製の杯に、酒を注ぐ。
緑色の瓶からあふれ出すのは、かすかに黄色を帯びた、白い酒。
それが注がれると同時に香しい葡萄酒の香りがグレアムの鼻をくすぐる。中絶薬
(うむ、よき香だ)
まずはその香りをひとしきり楽しみ、それから口へと運ぶ。
広がるのはほんの少しだけ甘みを帯びた、酸味と酒精。
異世界で飲む雑味の混じらぬそれはは、瓶一本で銀貨二枚だと言う値段を越える上質な葡萄酒の味がした。
(これが帝国で出回ったら、向こうの酒商人の商売がなりたたんな)
騎士であっても商売にはそれなりに通じている交易都市の生まれとして、そんな考えがふとよぎる。
値段の割に、異常に質の良い店。
入り口があのように不便なつくりの『扉』で無ければ、今頃もっと流行っていただろう。
(さてと、冷める前にこちらにも手をつけるか)
ひとしきり酒を味わったところで、料理の方にも手を伸ばす。
鮮やかな緑の香草を刻み、新鮮で上質な油で和えたソースをまぶした麺料理。
その料理には具材として、ごろごろと大ぶりな海の幸が踊っている。
(まずは、麺だ)
グレアムはフォークをそっと麺に刺しこみ、巻き取る。
ソースによって緑に染まった麺が、天井からの光を受けて、鮮やかに映える。
その美しさと香りにごくりと唾をひとつ飲み……口へと運ぶ。
(うむ、この味!これこそが麺の良さだ!)
堅すぎず、さりと柔らかすぎない茹で上がりの麺にはいくつもの味付けが複雑に絡み合っている。
具材として使われている、魚や貝、クラーコやシュライプの旨み。
緑色のソースに使われている香草の香りと香ばしい炒った豆の味。
そしてそれらを引き締めるトガランの辛み。
それらが一つにまとまることで、ジェノベーゼは完成された一皿の麺料理となっている。
(うむ、うむ……)
その味にグレアムは無言となり、無心に食べ続ける。
麺を巻き取って口に運び、時折り麺に混じりこんだ、具材を食べる。
何口か食べるごとに葡萄酒を一口飲んで爽やかな風味を楽しむ。
グレアムとて、若い男である。
そんな風に食べていれば、あっという間に皿の上のジェノベーゼは、尽きた。
(ふう……まずはこんなところだろうか)
とりあえず人心地ついたグレアムはそっと腹の上をなぜた。
(さて……)
無論、この麺料理一皿では、グレアムの、働き盛りの若者の胃袋が満足しようはずも無い。
グレアムは再びメニューを開いた。
(次は、どれに手を出すか……)
目に写るのは、この店の様々な料理の数々。
グレアムはそっとメニューに手を当てて指差しながら、次に頼むメニューを決めるのであった。
ハンバーグ
西大陸の東端に海の国と称される一つの国がある。
その国は沿岸にある都と、人間や獣人、魔族などが住む無数の小さな島々からなっている。
島々……海国諸島は島ごとに様々なものが住み、色々なものが取れるがそれぞれの島から得られる恵みの量は決して多くない。
それゆえに古くから島々で取れるものの交換……交易が頻繁に行われ、同時に海を渡る航海術が磨かれてきた。
その歴史は現在にも大きな影響を与え、西大陸の海国といえば、魔族との戦いを終えて平和になった東大陸との交易により大いに栄える貿易国家である。
そんな、無数にある島々には無論、知性ある生き物が住むのに適さず、人のいない島もある。
近くの島で親父からもらった小さな船を財産に独り立ちし、魚を取って干物を作り暮らしている若い漁師、ロウケイがアルテに先導されてやってきたのはそんな島のひとつであった。
「あのさ……」
「なに?」
まだ、昇ってからそう時間がたっていない朝日を受けて、遠慮がちに尋ねるロウケイに、振り向いたアルテ……
ほっそりとした身体に南方の砂の国の民のような褐色の肌と海色の髪と瞳、そして魚の下半身を持つ、南の海から来たという人魚まあめいどの少女は振り向いて、いまいち表情の動かぬ真顔で聞き返す。
「いや、そのさ……本当にここ? 」
その海のように澄んだ瞳に見つめられ、頬を赤らめながらロウケイはしどろもどろになる。
「そう……見つけたときは持ち合わせが無かったから、だめだった。ロウケイのお陰。感謝する」
そんなロウケイにアルテは重々しくうなづく。
その顔は自信に満ちていて、美しい。
女といえば地元の漁村のたくましい女しか知らぬロウケイにはいささか刺激が強すぎるほどに。
ロウケイがアルテと知り合ったのは、3日前の嵐の日のことである。
あの日、荒れる波にさらわれて船から放り出され、死に飲み込まれそうになっていたロウケイはアルテに助けられた。
嵐をものともしない人魚の泳ぎで沈んでいくロウケイを船のへりまで運び、水の神(本人が言うには青の神だそうだが)に祈りを捧げて波を止めて見せた。
その後、嵐がやんだ後は人が住む島まで運んでもらい、ロウケイは辛くも死から逃れた。
当然ロウケイは感謝したし、その美しさとやさしさ惚れたりもした。
自分にできる事ならどんなお礼でもする、そう言ったりもした。
……例えその礼として要求されたのが『銀貨10枚』という色々な意味で台無しな代物だったとしても、ロウケイにとってアルテは命の恩人であり、大切な人となっていたのだ。
その後、約束は約束としてアルテに銀貨10枚……駆け出しの漁師にはそこそこの金だが命の対価にはだいぶ安い金を渡した後、ロウケイは尋ねた。
一体何に使うのか、と。威哥王三鞭粒
ロウケイとてこの世界のこと全てを知っているわけではないが、人魚が人間のように金で買い物をするなんて話は聞いたことが無かった。
人魚に限らず、人の姿に近くとも魔物と呼ばれるような種族は普通、貨幣を『価値あるもの』と考えないのだ。
だが、この自称南の海から来た人魚は違った。
どうやら彼女の故郷では、人魚は『青の神を信じるもの』として人間たちとも普通に交流していたらしく、貨幣の価値もちゃんとわかっていた。
とはいっても修行の旅として出てきた北の海では、人魚は青の神を奉じず、また人間と交わろうともしないので普通に考えると使い道は無いらしい。
……ただ一つの用途を除いて。
そして、唯一つの用途に使うため、アルテはロウケイを案内していた。
「この先の森の中にある」
「そうなんだ……森の中? 」
アルテの言葉に、ロウケイは首をかしげ、水面の下に沈むアルテのヒレを見る。
ゆらゆらと水の中で揺れるそれは魚のような尾。
水中を泳ぐには最適だろうが、陸上を歩くのはいかにも向いていない。
「問題ない……ん」
そんなロウケイの疑問を察したアルテは青の神に祈る。
偉大なる六色の神を奉じる神官の、奥義とでもいうべき祈りによりアルテの脚が変じる。
魚のようなヒレが見る見るうちに人間のそれへと変じ……脛から下は蒼い鱗と鉄でも引き裂けそうな爪が生えた脚へと変わったのだ。
「ええっ!?」
「青の神に祈れば龍の脚が手に入る……翼とかはまだ無理だけど」
驚くロウケイに、少しだけ胸をはってアルテが言う。
優秀な青の神の神官でもあるアルテの、龍の脚を手に入れる祈り。
修行のため、陸の民との交流を行うために身に着けた技である。
「行こう。遅くなると、人が多くなる」
目の前の光景に驚いているロウケイを促しつつ、手を取って上陸する。
そして、やや強引にアルテは森の中を突き進み、その場所へとたどり着く。
「……ついた」
そしてアルテはその扉の前にたどり着く。
かつて、故郷で見出したのと同じ、黒い猫の絵が描かれた扉。
「行く」
ロウケイの手を取り、扉を開く。
チリンチリンと響く鈴の音を聞きながら、アルテとロウケイは扉をくぐった。
「いらっしゃい……おや、お久しぶりですねアルテさん」
朝の早い時間に訪れた客がここ最近見かけなかった少女であることと、その少女が見慣れぬ少年を連れていたことに少しだけ驚きながら尋ねる。
「久しぶり。注文、いい? 」
そんな店主に挨拶を返しつつマイペースなアルテは早速とばかりに注文してもよいか尋ねる。
「はい。大丈夫ですよ。いつもどおり……っと、そちらさんの分はどうしましょう? 」
アルテが頼む料理はいつも同じなのでその確認だけと考えつつ、店主は今日はいつもと違う連れがいることに気づく。
いつもの、アルテより若干年上であろう女性ではなく、日焼けした黒髪の少年。
この店では初めて見る客である。
「うん。デミグラスハンバーグ、ライスで2人分」
そんな店主の考えを知ってか知らずか、アルテはいつもの料理を注文する。
食べなれた海の魚ではなく、陸の獣の肉を焼いた、柔らかな料理。
竜の脚を手に入れる祈りを覚えた後同じ神官の先輩に『ご褒美』として連れて行ってもらえるようになってから、アルテはずっとこれの虜であった。
「はいよ。少々お待ちください」
注文を受け、店主は奥の厨房に引っ込む。
「さ、座ろう」
それを見届けた後、アルテは適当な席に座る。
「えっと、ここは……? 」
アルテに従い座りながら、ようやく事態に頭が追いついたロウケイはアルテに尋ねる。
先ほど、アルテの脚が竜の脚に変わったと思ったら、森の中に不自然な扉があり、そこをくぐった先は、なぞの部屋。
はっきり言ってわけがわからなかった。
「ここは、異世界食堂」
そんなロウケイに、アルテは淡々とその場所について教える。
「デミグラスハンバーグが食べられる場所」
……あくまで彼女にとっての認識だが。
それから待つことしばし。
「お待たせしました!デミグラスハンバーグをお持ちしました! 」
脚が出ている、ずいぶんとしっかりした仕立ての服を着た少女がアルテとロウケイの前にそれを置く。
鮮やかな色のかりゅうとや東大陸で食べられているというだんしゃく、小さな黄色い粒の野菜に彩られた黒い皿の中央に置かれた、平たく丸められ、上から赤黒い汁を掛けられ、上に焼いた卵がのせられた、肉。
ロウケイが普段余り口にすることは無い、陸の獣の肉を細かく刻み、まとめたものだろう。三鞭粒
熱せられた鉄の皿の上に置かれたそれはじゅうじゅうと音を立てている。
傍らに置かれているのは、いかにも上質であることをうかがわせる、器に盛られた純白の飯。
「へえ……」
その、肉が焼ける音と匂いに、ロウケイはごくりとつばを飲む。
「えっとこれ……」
尋ねようとしたところで、早速とばかりにアルテがナイフとフォークを手に『でみぐらすはんばぁぐ』とやらを食べているのを見て、ロウケイは色々聞くことをあきらめる。
「おいひい。たべればわきゃるはず」
もごもごと肉を咀嚼しながら、アルテはロウケイに大事なことを伝える。
「……うん、ありがとう」
その独特の間合いに慣れてきたロウケイは、己も食べ始めることにする。
「……あ、結構柔らかいんだね」
アルテに習い、使い慣れぬナイフとフォークを手にしたロウケイはまず肉を切り分ける。
よく磨かれた、金属製のナイフで切るくらいだから結構硬いのではと思っていたそれは予想以上に柔らかく、あっさりと切れる。
この柔らかさならば、おそらくロウケイが使い慣れた箸でも十分食べられるほどではと思えるほどだった。
「それじゃあ……」
それから、一口分に切った肉をフォークで口に運ぶ。
そしてかみ締め……
「……えっ!? 」
そのおいしさに驚いた。
普段食べなれぬ、陸の獣の肉。
その肉は獣くささの無い、上質な肉だった。
かみ締めるたびに、肉の中にたっぷりと含まれた肉汁が溢れ、口の中に広がる。
そしてその肉汁が上から掛けられた、甘酸っぱい風味を持つ汁と交じり合い……
(こ、これは……ご飯が欲しくなる!)
傍らに置かれた飯を手に取り、フォークでかっ込む。
(おお!これはすごいな!)
ほんのりと甘い、ねっとりとした米の淡い風味が、肉汁と汁の風味と出会うことで、すばらしい味になる。
はんばぁぐそれだけでも十分うまいが、米と一緒に食べるはんばぁぐはまた別格であった。
「……卵の黄身もあわせるといい」
その味に魅了され、盛大にハンバーグとライスを食べ進めるロウケイに、アルテが先達としてアドバイスする。
ロウケイがこっちを見たのを確認し、アルテは先輩から教わった食べ方を伝える。
そう、陸の獣の肉の味に、複雑な味のソース、それに火が通りきっていない卵の黄身の柔らかな味が加わり、更に味が高まるのだ。
「……本当だ。卵が加わるともっとおいしいや」
そんな言葉と共にアルテに向けられる、笑顔。
それはアルテに、不思議と満足感をもたらした。
それから、二人は大いに食べ、店を後にする。
「アルテが銀貨を欲しがったのは、あの店に行くためだったんだね」
海に戻る途中、ロウケイに尋ねられ、アルテはこくりと頷く。
「そう」
その答えを聞き、かすかに頬が熱くなるのを感じながら、ロウケイは先ほどから考えていた提案をする。
「それじゃあさ、また今度、時々でいいから僕と一緒に行かないか?そのときの御代は、僕が出すから 」
「いいの? 」
その提案に、アルテは少しだけ首をかしげながら、聞き返す。天天素
「もちろんだよ」
そんなアルテに、精一杯の勇気を振り絞ったロウケイは、笑顔で答えた。
2014年7月10日星期四
憤怒の盾
咆哮に張り合うように叫び、影の腕を盾で受け止める。
痛くも痒くも無い。
「GYA!?」
黒い影の奴、俺をあざ笑っていたくせに、驚愕に口元を歪ませている。
滑稽だ。花痴
「死ね!」
俺が受け止め、そのまま黒い影を投げ飛ばす。
黒い大きな影は驚きの声を出しながら飛んでいった。
「GYAOOOOO!」
しかし、黒い大きな影は俺の攻撃など物ともせず、直ぐに起き上がって俺の方へ駆けて来る。
……この盾でも敵を攻撃することは出来ないのか。
使えない。
黒い影は懲りずに俺に腕と、後ろから尻尾を伸ばして叩き伏せる。
「きかねえよ!」
ガインという音と共に黒い影の攻撃は全て俺に効果が無い。
「はは……馬鹿じゃないのか?」
しかし、倒す手段が無いな。
そう思った直後、俺を中心に黒い炎が巻き起こり、黒い大きな影の腕と尻尾を焼き焦がす。
「GYAOO!?」
影はその事実に驚き、転倒した。
「へぇ……ここまで攻撃力のある反撃効果があるのか」
怯えるように俺から距離を取ろうとする影。
「は、今更命乞いか? 許すわけねえだろ!」
俺は徐にスキルを唱える。
「アイアンメイデン!」
しかし、スキルは発動せず、俺の視界にスキルツリーが浮かび上がった。
シールドプリズン→チェンジシールド(攻)→アイアンメイデン。
発動条件か?
面倒だな、こうなったらワザと影にぶつかってカウンター効果を発動させるとしよう。
「待ってろ……必ず殺してやる……」
近づいてくる俺の向ける殺意、怒りに、影が怯えた様に腕を振り回す。
それに盾をぶつけて黒炎を影に燃え上がらせる。
肉を焼き払い、骨を溶かす。
火力が足りない……存在その物を消滅させたい。
「――――っ!」
なるほど……憤怒の盾とやらは俺が怒り狂えば狂う程、力が増すらしい。
ソンナコト簡単ダ。
アイツ等に抱いている感情を思い出せば良い。
マイン=スフィア……本名はマルティだったか。
名前を思い出すだけで怒りが込み上げて来る。
次にクズ王、元康、錬、樹。
コイツ等から受けた物を一つ一つ思い出す。
憎い……殺したい……。
真っ赤な盾に俺の怒りが溶け出して、黒く染まっていく。
「今度コソ殺ス……全員……」
影の腕を受け止めて、憤怒の炎で全てを消し炭にする。
瞬く間に炎は影全体を包み込み、何もかもを飲み込む。福源春
そこで俺の手に誰かが触れる。
ドクン……。
それは……あの時と同じ優しい何か……。
「世界中の全てがナオフミ様がやったと責め立てようとも、私は違うと……何度だって、ナオフミ様はそんな事をやっていないと言います」
……え?
黒く歪んでいた視界が僅かに揺らぐ。
心のどこかで、怒りに任せていてはもっとも大切なものを失うと心がざわつく。
否定したい。だけど……。
「どうか、信じてください。私は、ナオフミ様が何も罪を犯していないと確信しています。貴重な薬を分け与え命を救い、生きる術と戦い方を教えてくださった偉大なる盾の勇者様……私はアナタの剣、例えどんな苦行の道であろうとも付き従います」
声が俺に囁きかける。
このまま殺意に飲まれてはいけない。
守らねばいけない。
イカリをワスレタノか?
……忘れない。だけど、それよりも俺は自分を心から信じている者に報いたい。
ワレニサカラウノカ?
命令が気に食わない。俺は俺自身で道を決める!
……イツデモワレガ隙ヲ狙ッテイルトオモエ……。
黒い声がスーッと引いていき、視界が少しだけ鮮やかになる。
「ゲホ! ゲホ!」
気が付くとラフタリアが咳を必死に堪えながら俺の手を握り締めていた。
「だ、大丈夫か!?」
酷い火傷を負っていた。
ここには炎を使える敵なんていない。
一体……何が……。
あ……。
憤怒の盾の専用効果、セルフカースバーニングに巻き込んでしまったんだ。
「ラフタリア!」
「ゲホ――」
崩れ落ちるようにラフタリアは微笑んで倒れる。
俺の……所為でラフタリアが重傷を負ってしまった。
『力の根源足る盾の勇者が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を癒せ!』
「ファストヒール!」
『力の根源足る盾の勇者が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を癒せ!』
「ファストヒール!」
『力の根源足る盾の勇者が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を癒せ!』
「ファストヒール!」
『力の根源足る盾の勇者が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を癒せ!』
「ファストヒール!」
俺の魔力が尽きるまで、俺は魔法を唱えるのをやめない。
ラフタリアは……ラフタリアは俺を唯一信じてくれた大切な人なんだ!
酷い火傷だ。治療するには初級の回復魔法では足りない。急いで馬車の方へ行ってヒール軟膏を使わねば。
「GYAOOOOOO!」
振り返るとドラゴンゾンビが咆哮をして、俺達に向けて焦げた腕とは反対の腕をブレスと共に降ろす瞬間だった。
「邪魔をするな!」
腕を振り上げると、ドラゴンゾンビの攻撃は受け止められる。
盾が黒く光り輝き、セルフカースバーニングを発動させようとする。
「やめろ!」
俺の声に呼応するかのごとく、盾は沈黙する。
ここで盾が発動したら今度こそラフタリアも一緒に焼き殺してしまう。
そんな事をするわけにはいかない。だけど、こうしてずっと毒のブレスを耐えることはラフタリアの生命力から厳しい。
俺の意思に呼応したように盾はセルフカースバーニングを毒のブレスだけを焼き払う。だけど、本格的に敵を屠るには出力が足りない。勃動力三体牛鞭
どうしたものか。
盾からは常に殺意と怒りが俺に供給され、飲み込まれまいとする意識でどうにかねじ伏せているが、いつまた怒りに飲まれるか分からない。
今は一刻も早く馬車に戻ってラフタリアの治療をしなくてはいけない。
俺の意思は辛うじて、ラフタリアを守ろうとする事で保たれていた。
「GYA!?」
そんな攻防をしている最中、突如ドラゴンゾンビはおかしな声を上げ、胸を掻き毟りながら悶え苦しみだした。
「な、何が……」
一体何が起こっているんだ? セルフカースバーニングの炎が侵食しているとでも言うのか?
「GYAOOOOOOOOOO!!!」
やがてドラゴンゾンビはピクリとも動かなくなり、元の骸に戻った。
今は、事態を観察している状況じゃない。
見ると、辺りをブンブンと飛んでいたポイズンフライの姿が無い。ドラゴンゾンビが暴れまわった所為でしばらくの間、どこかへ逃げたのだろう。
俺はラフタリアを抱えて馬車へ戻り、馬車の中にあるヒール軟膏と即席で作った火傷治しの薬草混合物をラフタリアの患部に塗る。
そしてラフタリアに解毒剤を服用させた。
「あ……ナオフミ様」
呼吸が静かになったラフタリアは目を開けて笑顔で俺に声を掛ける。
「大丈夫か!?」
「はい……ナオフミ様の薬のお陰で……」
それでも、やけどがかなり酷い。単純な火傷は薬のお陰で治っているが……黒い魔法的効果というのだろうか、黒い痕が残っている。少しずつ良くなっているのだけど、治りが悪い。
「わ、私よりも……早く……ドラゴンを」
「ドラゴンゾンビはもう動いていない」
「そう、ではなく……早く死骸の処理をしないと」
「……分かった」
ラフタリアの視線は強く、俺がドラゴンの死骸を処理しないといけないと注意していた。
「ここに置いていって大丈夫か?」
「自分の身を守る程度には戦えます」
「そうか……分かった」
俺は馬車から降りて、ドラゴンの死骸に向けて歩き出した。
あれを解体して盾に吸わせなければならない。
そしてフィーロ……せめて遺体だけでも引き摺りだして、墓を立ててやらないとな……。
死骸に近づくと、モゾモゾと内臓が蠢いているのが見て取れた。
これから一体、何が起こるというのか……。
今の俺には戦う術が辛うじて存在する。
憤怒の盾……。
この、心を侵食する危険な盾は強大な防御力と強力なカウンター攻撃を持っている。
さすがに常に出し続けるには俺の心が持たないために、今はキメラヴァイパーシールドに変えている。
でも、何時でも対応できるように常に構える。
そして死骸に近づいた。
蠢きが一箇所で止まり、腹を食い破って何かが現れる!
「ぷはぁ!」
そこには体中を腐った液体で滴らせた見慣れた鳥がドラゴンの死骸から体を出していた。
「ふう……やっと外に出られたー」
「フィーロ? 無事だったのか!? 怪我はしていないか?」
「うん。怪我なんてしてないよ」
「じゃあ……お前が食われたとき出たあの血はなんだ?」
「血? フィーロ、ドラゴンにパックンされた時にお腹を押されてゴハンを吐いちゃったの」蒼蝿水
フィーロが食べていたのはトマトに似た赤い実……あれを吐いて血に見えたって訳か!?
確かに戦闘前に食いまくっていたが。
「驚かすな! お前が死んだかと思ったんだぞ!」
「あの程度の攻撃じゃフィーロ痛くもかゆくもなーい」
化け物かこの鳥。
いや、魔物ではあるのは事実だが……。
まったく……おどろかせやがって。
「ごしゅじんさま、フィーロのこと心配してくれるのー?」
「知るか」
「ごしゅじんさま照れてるー」
「今度は俺自ら引導を渡してやろうか?」
「やーん」
はぁ……無事だったなら良いんだ。
ニヤニヤしているフィーロに腹が立つ。後で覚えてろよ。
「それで何があった」
「うん。このドラゴンのお腹の中を引き裂いて進んでいったら紫色に光る大きな水晶があったの……」
「ヘー……」
もしかしてあれか?
ドラゴンゾンビの体を動かしていた大本がその大きな水晶なのか?
フィーロが出てきた場所は胸の辺り……心臓か。
しかしなんでそんなものが……。
ドラゴンだからか? 死んでも体に宿った魔力が死後の放置された骸で結晶化して動き出したとか……。
ありうる。
「で……その結晶は?」
「ゲッフゥウウウ!」
うん。この返答はアレだよな、食ったんだな。何か腹部が光ってるし。
こいつ……殴りたい……。
「少しだけ余ったの。ごしゅじんさまにおみやげ」
そう言って、フィーロはポンっと紫色の小さな欠片を俺に渡す。
……どうしたものかな。
一応、半分にして盾に吸わせた。
やはりツリーやLvが足りなくて解放されない。
「ラフタリアは怪我をしているからフィーロ、お前と一緒にこの死骸を掃除するぞ」
「はーい!」
まったく……本当にこの鳥は俺を驚かせる。
フィーロを見ていて思う。
あの時、怒りに任せなくて良かった。
フィーロの仇を討つ為に盾を変えたというのに後半は怒りで完全に我を失っていた。
ラフタリアが止めていなければ、俺はフィーロすらも燃やしていたはずだ。
憤怒……呪われた盾。
勇者の意識すら乗っ取って何をさせようとしていたのか……。
ただ言える事は、あのままだったら俺はあいつ等を殺しに向ったはず。
……少なくともあの時は、その事しか考えられなかった。
「いただきまーす!」
「こらフィーロ、その肉は腐ってる! 食うな!」
「お肉は腐りかけが一番おいしいんだよ、ごしゅじんさまー」
「腐りかけじゃない! 完全に腐ってるんだよ!」
なんだか緊張感の無いまま、ドラゴンゾンビの処理は終わった。SEX DROPS
骨とか肉とか皮とか、色々とあった訳だけど、ツリーを満たせなかった。
それでもドラゴンゾンビの皮とかドラゴンの骨とかは素材になりそうで、一部を馬車に乗せることにした。
痛くも痒くも無い。
「GYA!?」
黒い影の奴、俺をあざ笑っていたくせに、驚愕に口元を歪ませている。
滑稽だ。花痴
「死ね!」
俺が受け止め、そのまま黒い影を投げ飛ばす。
黒い大きな影は驚きの声を出しながら飛んでいった。
「GYAOOOOO!」
しかし、黒い大きな影は俺の攻撃など物ともせず、直ぐに起き上がって俺の方へ駆けて来る。
……この盾でも敵を攻撃することは出来ないのか。
使えない。
黒い影は懲りずに俺に腕と、後ろから尻尾を伸ばして叩き伏せる。
「きかねえよ!」
ガインという音と共に黒い影の攻撃は全て俺に効果が無い。
「はは……馬鹿じゃないのか?」
しかし、倒す手段が無いな。
そう思った直後、俺を中心に黒い炎が巻き起こり、黒い大きな影の腕と尻尾を焼き焦がす。
「GYAOO!?」
影はその事実に驚き、転倒した。
「へぇ……ここまで攻撃力のある反撃効果があるのか」
怯えるように俺から距離を取ろうとする影。
「は、今更命乞いか? 許すわけねえだろ!」
俺は徐にスキルを唱える。
「アイアンメイデン!」
しかし、スキルは発動せず、俺の視界にスキルツリーが浮かび上がった。
シールドプリズン→チェンジシールド(攻)→アイアンメイデン。
発動条件か?
面倒だな、こうなったらワザと影にぶつかってカウンター効果を発動させるとしよう。
「待ってろ……必ず殺してやる……」
近づいてくる俺の向ける殺意、怒りに、影が怯えた様に腕を振り回す。
それに盾をぶつけて黒炎を影に燃え上がらせる。
肉を焼き払い、骨を溶かす。
火力が足りない……存在その物を消滅させたい。
「――――っ!」
なるほど……憤怒の盾とやらは俺が怒り狂えば狂う程、力が増すらしい。
ソンナコト簡単ダ。
アイツ等に抱いている感情を思い出せば良い。
マイン=スフィア……本名はマルティだったか。
名前を思い出すだけで怒りが込み上げて来る。
次にクズ王、元康、錬、樹。
コイツ等から受けた物を一つ一つ思い出す。
憎い……殺したい……。
真っ赤な盾に俺の怒りが溶け出して、黒く染まっていく。
「今度コソ殺ス……全員……」
影の腕を受け止めて、憤怒の炎で全てを消し炭にする。
瞬く間に炎は影全体を包み込み、何もかもを飲み込む。福源春
そこで俺の手に誰かが触れる。
ドクン……。
それは……あの時と同じ優しい何か……。
「世界中の全てがナオフミ様がやったと責め立てようとも、私は違うと……何度だって、ナオフミ様はそんな事をやっていないと言います」
……え?
黒く歪んでいた視界が僅かに揺らぐ。
心のどこかで、怒りに任せていてはもっとも大切なものを失うと心がざわつく。
否定したい。だけど……。
「どうか、信じてください。私は、ナオフミ様が何も罪を犯していないと確信しています。貴重な薬を分け与え命を救い、生きる術と戦い方を教えてくださった偉大なる盾の勇者様……私はアナタの剣、例えどんな苦行の道であろうとも付き従います」
声が俺に囁きかける。
このまま殺意に飲まれてはいけない。
守らねばいけない。
イカリをワスレタノか?
……忘れない。だけど、それよりも俺は自分を心から信じている者に報いたい。
ワレニサカラウノカ?
命令が気に食わない。俺は俺自身で道を決める!
……イツデモワレガ隙ヲ狙ッテイルトオモエ……。
黒い声がスーッと引いていき、視界が少しだけ鮮やかになる。
「ゲホ! ゲホ!」
気が付くとラフタリアが咳を必死に堪えながら俺の手を握り締めていた。
「だ、大丈夫か!?」
酷い火傷を負っていた。
ここには炎を使える敵なんていない。
一体……何が……。
あ……。
憤怒の盾の専用効果、セルフカースバーニングに巻き込んでしまったんだ。
「ラフタリア!」
「ゲホ――」
崩れ落ちるようにラフタリアは微笑んで倒れる。
俺の……所為でラフタリアが重傷を負ってしまった。
『力の根源足る盾の勇者が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を癒せ!』
「ファストヒール!」
『力の根源足る盾の勇者が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を癒せ!』
「ファストヒール!」
『力の根源足る盾の勇者が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を癒せ!』
「ファストヒール!」
『力の根源足る盾の勇者が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を癒せ!』
「ファストヒール!」
俺の魔力が尽きるまで、俺は魔法を唱えるのをやめない。
ラフタリアは……ラフタリアは俺を唯一信じてくれた大切な人なんだ!
酷い火傷だ。治療するには初級の回復魔法では足りない。急いで馬車の方へ行ってヒール軟膏を使わねば。
「GYAOOOOOO!」
振り返るとドラゴンゾンビが咆哮をして、俺達に向けて焦げた腕とは反対の腕をブレスと共に降ろす瞬間だった。
「邪魔をするな!」
腕を振り上げると、ドラゴンゾンビの攻撃は受け止められる。
盾が黒く光り輝き、セルフカースバーニングを発動させようとする。
「やめろ!」
俺の声に呼応するかのごとく、盾は沈黙する。
ここで盾が発動したら今度こそラフタリアも一緒に焼き殺してしまう。
そんな事をするわけにはいかない。だけど、こうしてずっと毒のブレスを耐えることはラフタリアの生命力から厳しい。
俺の意思に呼応したように盾はセルフカースバーニングを毒のブレスだけを焼き払う。だけど、本格的に敵を屠るには出力が足りない。勃動力三体牛鞭
どうしたものか。
盾からは常に殺意と怒りが俺に供給され、飲み込まれまいとする意識でどうにかねじ伏せているが、いつまた怒りに飲まれるか分からない。
今は一刻も早く馬車に戻ってラフタリアの治療をしなくてはいけない。
俺の意思は辛うじて、ラフタリアを守ろうとする事で保たれていた。
「GYA!?」
そんな攻防をしている最中、突如ドラゴンゾンビはおかしな声を上げ、胸を掻き毟りながら悶え苦しみだした。
「な、何が……」
一体何が起こっているんだ? セルフカースバーニングの炎が侵食しているとでも言うのか?
「GYAOOOOOOOOOO!!!」
やがてドラゴンゾンビはピクリとも動かなくなり、元の骸に戻った。
今は、事態を観察している状況じゃない。
見ると、辺りをブンブンと飛んでいたポイズンフライの姿が無い。ドラゴンゾンビが暴れまわった所為でしばらくの間、どこかへ逃げたのだろう。
俺はラフタリアを抱えて馬車へ戻り、馬車の中にあるヒール軟膏と即席で作った火傷治しの薬草混合物をラフタリアの患部に塗る。
そしてラフタリアに解毒剤を服用させた。
「あ……ナオフミ様」
呼吸が静かになったラフタリアは目を開けて笑顔で俺に声を掛ける。
「大丈夫か!?」
「はい……ナオフミ様の薬のお陰で……」
それでも、やけどがかなり酷い。単純な火傷は薬のお陰で治っているが……黒い魔法的効果というのだろうか、黒い痕が残っている。少しずつ良くなっているのだけど、治りが悪い。
「わ、私よりも……早く……ドラゴンを」
「ドラゴンゾンビはもう動いていない」
「そう、ではなく……早く死骸の処理をしないと」
「……分かった」
ラフタリアの視線は強く、俺がドラゴンの死骸を処理しないといけないと注意していた。
「ここに置いていって大丈夫か?」
「自分の身を守る程度には戦えます」
「そうか……分かった」
俺は馬車から降りて、ドラゴンの死骸に向けて歩き出した。
あれを解体して盾に吸わせなければならない。
そしてフィーロ……せめて遺体だけでも引き摺りだして、墓を立ててやらないとな……。
死骸に近づくと、モゾモゾと内臓が蠢いているのが見て取れた。
これから一体、何が起こるというのか……。
今の俺には戦う術が辛うじて存在する。
憤怒の盾……。
この、心を侵食する危険な盾は強大な防御力と強力なカウンター攻撃を持っている。
さすがに常に出し続けるには俺の心が持たないために、今はキメラヴァイパーシールドに変えている。
でも、何時でも対応できるように常に構える。
そして死骸に近づいた。
蠢きが一箇所で止まり、腹を食い破って何かが現れる!
「ぷはぁ!」
そこには体中を腐った液体で滴らせた見慣れた鳥がドラゴンの死骸から体を出していた。
「ふう……やっと外に出られたー」
「フィーロ? 無事だったのか!? 怪我はしていないか?」
「うん。怪我なんてしてないよ」
「じゃあ……お前が食われたとき出たあの血はなんだ?」
「血? フィーロ、ドラゴンにパックンされた時にお腹を押されてゴハンを吐いちゃったの」蒼蝿水
フィーロが食べていたのはトマトに似た赤い実……あれを吐いて血に見えたって訳か!?
確かに戦闘前に食いまくっていたが。
「驚かすな! お前が死んだかと思ったんだぞ!」
「あの程度の攻撃じゃフィーロ痛くもかゆくもなーい」
化け物かこの鳥。
いや、魔物ではあるのは事実だが……。
まったく……おどろかせやがって。
「ごしゅじんさま、フィーロのこと心配してくれるのー?」
「知るか」
「ごしゅじんさま照れてるー」
「今度は俺自ら引導を渡してやろうか?」
「やーん」
はぁ……無事だったなら良いんだ。
ニヤニヤしているフィーロに腹が立つ。後で覚えてろよ。
「それで何があった」
「うん。このドラゴンのお腹の中を引き裂いて進んでいったら紫色に光る大きな水晶があったの……」
「ヘー……」
もしかしてあれか?
ドラゴンゾンビの体を動かしていた大本がその大きな水晶なのか?
フィーロが出てきた場所は胸の辺り……心臓か。
しかしなんでそんなものが……。
ドラゴンだからか? 死んでも体に宿った魔力が死後の放置された骸で結晶化して動き出したとか……。
ありうる。
「で……その結晶は?」
「ゲッフゥウウウ!」
うん。この返答はアレだよな、食ったんだな。何か腹部が光ってるし。
こいつ……殴りたい……。
「少しだけ余ったの。ごしゅじんさまにおみやげ」
そう言って、フィーロはポンっと紫色の小さな欠片を俺に渡す。
……どうしたものかな。
一応、半分にして盾に吸わせた。
やはりツリーやLvが足りなくて解放されない。
「ラフタリアは怪我をしているからフィーロ、お前と一緒にこの死骸を掃除するぞ」
「はーい!」
まったく……本当にこの鳥は俺を驚かせる。
フィーロを見ていて思う。
あの時、怒りに任せなくて良かった。
フィーロの仇を討つ為に盾を変えたというのに後半は怒りで完全に我を失っていた。
ラフタリアが止めていなければ、俺はフィーロすらも燃やしていたはずだ。
憤怒……呪われた盾。
勇者の意識すら乗っ取って何をさせようとしていたのか……。
ただ言える事は、あのままだったら俺はあいつ等を殺しに向ったはず。
……少なくともあの時は、その事しか考えられなかった。
「いただきまーす!」
「こらフィーロ、その肉は腐ってる! 食うな!」
「お肉は腐りかけが一番おいしいんだよ、ごしゅじんさまー」
「腐りかけじゃない! 完全に腐ってるんだよ!」
なんだか緊張感の無いまま、ドラゴンゾンビの処理は終わった。SEX DROPS
骨とか肉とか皮とか、色々とあった訳だけど、ツリーを満たせなかった。
それでもドラゴンゾンビの皮とかドラゴンの骨とかは素材になりそうで、一部を馬車に乗せることにした。
2014年7月8日星期二
餌付け
フィーロに馬車を引かせて夜の行軍をし、朝方には領土であるラフタリアの村とその周辺に到着した。
「ごしゅじんさま着いたよー」
「ああ」
馬車で仮眠を取っている最中、どうも俺にいたずらしようとしたキールをラフタリアが事前に叱りつけた。男宝
もちろん、ラフタリアやリーシア以外の奴隷は拘束を厳しめにしてあるので、そんな真似をしたら速攻で奴隷紋が作動したわけだが……。
それに、ビッチに嵌められた所為で寝ている時に何かされると目が覚めるし。
初日は村の建物の残骸を撤去する作業を奴隷たちと行った。
「この家は俺の大事な家なんだ!」
そう拒絶するのはキールというガキ。
「大事に思うのは良いが、屋根は落ち、壁は無残にも破壊されている。残念だが、補修できる家と出来ない家があるのを理解しろ」
何か金目になるものや使える物は無いかと調べたのだが、泥棒に入られたのか、物は無いし、あっても錆びていたりして使えそうな物はあまり無かった。
井戸がまだ使えるのが救いか。
畑も……整備すればどうにかなりそうだ。
「思い出にしたいという気持ちは分からなくもないが、復興する上で邪魔になりそうなのは廃棄しないといけない」
「でも――」
「キールくん! あんまり我が侭を言わないで」
ラフタリアが注意する。ま、止める必要性は無いな。
だけど……。
「ここはお前が住んでいた家なんだな」
「ああ!」
「じゃあ、そこに新しく建てた家はお前の物だ」
「え……」
キョトンとした表情でキールというガキは俺を見上げる。
「ただし、お前が管理する共同の家となる。他にも人を集めるからな、責任を持って管理するんだぞ」
「う、うん……」
言葉を濁すようにキールは頷く。
「そういう訳だ――今だ! フィーロ!」
「はーい!」
キールが隙を見せたその瞬間。廃屋にフィーロが突撃し、支柱を蹴り飛ばして破壊する。
「あぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!?」
呆然とするキールを置いて、俺は次の作業に出る。
昼前には女王に手配させた家の材料と城の兵士が到着した。
石材に木材……後は石膏か?
「盾の勇者様はここを復興なさるので?」
女王から話は聞いているだろうに、兵士が聞いてきた。
「ああ、せめて日が落ちるまでに屋根のある物にしたい。無理を承知で頼む」
「我々は兵士でもありますが、建設関係も若干心得があります。お任せください」
「頼んだ」
建設関係……徴兵か何かか?
っと、そこで昼になりかけているのを理解した。
「とりあえず建物は兵士に任せて、ラフタリアとフィーロ、そしてリーシア」
「はい」
「なーに?」
「なんでしょうか?」
三人が俺の呼びかけに答える。
「これから昼飯を作る、お前等は飯を食い終わったら奴隷共と一緒に魔物退治に出かけろ」
「分かりました」
「うん」
「頑張ります」
「班分けは任す。あんまり大人数で動いたら経験値の入りにも悪くなるだろうからな」
実測で試した事は無いけど、経験値の減少ってどれくらいなんだ?
というか分配方式なのか? それとも共有なのか今一理解していないんだよな。三體牛鞭
「誰か詳しい奴は居ないか?」
「あの……」
リーシアが申し訳なさそうに手を挙げる。
「なんだ?」
「えっと……経験値はパーティーを組んだ人数全員に同じ数字が入ります。上限人数は6人。それ以上になると減っていきます」
ああ、だからお前はハブられた訳か。
とか言ったら『ふぇええ』が飛び出すから黙っていよう。うるさいしな。
大人数で遠征する場合は班分けすれば問題はなさそうだな。一つの班で六人ずつで組ませれば良い訳だし。
複数の班で一匹の魔物を倒した場合は分割とかその辺りだろう。
「話は聞いたな」
「はい。こちらで分割致します」
「任せた」
俺はラフタリアに権限を渡して隊を作らせた。
現在奴隷の数は八人だからリーシアが二人、ラフタリアとフィーロが三人ずつ受け持たせよう。
「じゃあ、飯を作るから作業を手伝っていろ」
「はい!」
三人は各々が出来る範囲で手伝いを始める。
「ラフタリアちゃんは手伝わないの?」
放心から立ち直ったキールが料理の下ごしらえをしている俺を睨みながらラフタリアに尋ねる。
意外に復活が早いな。子供だからか?
「ラフタリアちゃん。家事上手だったじゃないか」
「えーっと……」
困った表情でラフタリアは俺に視線を送る。
なんだ? 俺に何を期待しているんだ?
何やら友人に良い所でも見せたいのか、ラフタリアは恐る恐る口を開いた。
「手伝いましょうか?」
「焼き肉や適当なスープを作る程度でか? 火を起こしておいてくれるのならやっていて貰いたいが」
味が良いらしいから俺が食事を作っているんだよなぁ。
もう慣れた。最近じゃ、みんな俺に料理を任せるし。
「片付けは手伝って貰いたいが今は十分だな」
材料を適当にぶつ切りにする。肉がでかいから包丁で切るのも面倒だな。
かと言って、ラフタリアに料理させると味が悪いとかフィーロが言い出すから全部俺が作る羽目になるし……。
ぶつくさ言いたくなるのを我慢して料理を作る。
あ、盾の料理レシピで作るという方法もあるにはあるのだが、これには大きな落とし穴がある。
料理が楽になると霊亀と戦う前、カルミラ島で作ったのだが――。
「盾から食べ物が出てきたよ!」
大興奮でフィーロが俺の盾をうらやましそうに見つめていた。
「ああ、盾の技能で作ってみた」
「凄いですね」
と、昼飯に出したのはこの世界独特のスパゲティみたいな食べ物だ。
名前は食べたナポラータだったか。ぶっちゃけ俺達の世界のパスタに語呂が似ているのは、盾の変換による物だろうか。
ともあれ盾から出すと同時に出来たての温かい料理が出てきた時はこれで料理も楽になると思った。
しかし……。
「なんか……普通ですね」
「うん……普通」
そう、品質の影響なのか、普通としか表現できない微妙な味の食べ物でしかなかった。
不味くは無い。けど美味くも無い。まさしく普通。
「ごしゅじんさまの手作りがいいー」
「そうですね。冷めていてもナオフミ様の手料理の方が美味しいです」
「わ、わかったよ」
なんか二人揃って恨みがましい目で見られたのを覚えている。
そう言った経緯もあって、店の料理か俺の作った物しかこいつ等は喜ばない。狼1号
美食家気取りなのもどうかと思うが、一応食べはする。けどやる気の面で引っかかるというか。
よくよく考えてみると俺が飯を作るって立場逆転してね?
とりあえず料理班もいずれ作らねば、じゃないと領地で料理屋をさせられかねない。
「ほら、昼飯が出来たからさっさと食って出かけてこい」
俺はぞんざいに鉄板に肉を乗せて焼き肉を作り、適当に素材を煮たスープを配る。
「やっぱ、すげえうめえ!」
「うん! 美味しい!」
奴隷共がこぞって笑顔で飯を貪る。
ついでに家を作ってくれる兵士にも持て成す。
「これは……今まで食べた事が無いくらい美味い焼き肉だ!?」
「うそだろ? 材料があのカメの肉って……城でも同じのが出てきたけど、こんなに美味くなかったぞ」
盾の手作り補正は果てしないな。
下ごしらえに香辛料と塩を練りこんでいたのか効いたか?
奴隷共はそれなりに俺の作った飯を食った。
それでも、そこまで大量に食ってはいないな。
きっと、Lv上げから帰ってくると……それに備えて作っておかないとだめだな。
「さて、お前ら、それぞれに武器を渡す。それで戦ってこい!」
俺の宣言に奴隷共は怖気づく。ラフタリアと同じ女の子なんて刃物を持って血の気が引いていた。
城で貰った中古の武器をそれぞれに渡す。初心者用に大半が短剣だ。
「戦わない限り、胸が苦しくなるから覚悟しろ。後、お前等の故郷は、帰ってこないと思え」
「ぐ……」
キールが代表して俺に文句を言おうとしてくる。
だけどラフタリアに遮られて何も言えないみたいだ。
「俺は別にお前達じゃなくても良い。ここを領地にするだけだからな。だが、俺の言う事を素直に聞いているラフタリアへのご褒美としてお前等を勧誘したんだ。履き違えるなよ」
忌々しそうに奴隷達が俺を睨みつける。
憎まれ役はこの世界でも慣れている。別に俺は慈善事業をしようとしている訳でもない。どうせ元の世界に帰るのだから後顧の憂いなど気にする必要もない。ラフタリアが平和に過ごせる場所を用意できれば良いんだ。
「さて……フィーロ、倒した魔物は荷車に乗せて来い。使い道は沢山あるからな」
「はーい!」
目下、食料だけどな。
後は錬がやっていた様に盾に吸わせる用でもある。
こっちは色々な意味でまだまだ先だと思うけどな。
「ほら、行ってこい。じゃあな」
俺はフィーロの馬車を指差して命令する。
奴隷共はしぶしぶ、馬車に乗って、フィーロに引かれて狩りに出かけた。
「速度には気を付けろよー」
「はーい」
ごとごととフィーロが引く馬車は進んでいく。
「さて、じゃあ、家の建設を頼む」
「わ、わかりました」
兵士に建設を頼んで、俺は盾に調合を指示し、次の料理の準備を始めた。
魔物を孵化させるのはもう少し後だな。巨根
霊亀の肉が底をつく前に、食材を調達する方法を模索しないとな……。
「で……」
ラフタリア達と一緒に狩りへ出かけた奴隷達はその日の夕方には帰ってきた。
全員、くたくたになっている。馬車に連結させている荷車には倒した魔物がそのまま積載されている。当面の食料にしないといけないし、調度いいだろ。
だが、それよりも酷いのは。
ぐううううう……。
ぐううう……。
きゅるるるるるる……。
ぐぎゅるるるるるる……。
爆音のように腹を空かせている事か。
食べるのにも不自由な環境で急激にLvをあげたらどうなるんだ? ちょっとした好奇心が湧くな。
大方、死にはしない飢えという奴なんだろう。ラフタリアを見るとそう思う。
急成長しようとする体が栄養を欲して空腹を訴えているのだ。
「よく帰ってきたな、ちゃんと戦えたか?」
「ええ、みんな頑張りましたよ」
ラフタリアが笑みを浮かべて答える。
その様子を奴隷共は微妙な顔で見ているな。
スパルタをしている訳ではないけど、釈然としないとかそんな感じだろうな。
「ふへぇ……疲れました」
「おう、リーシア。調子はどうだ?」
「前よりも動きやすいような気がします」
確かにステータスはリセット前よりも上がっている。戦闘も多少は楽になっただろう。
「リーシア姉ちゃん。なんできぐるみ着てんだ?」
「それはリーシアが着ぐるみマニアだからだ」
「ふぇえ!」
ぶんぶんと否定するリーシアだが、間違ってなんかいないだろ。
「やっぱりそうなんだ……」
キールに至っては納得する始末。
俺を嫌っているなら信じるなよ。
「ま、ちゃんと頑張っているなら良いだろう。飯だ」
俺は前もって準備していた霊亀の肉を使ったシチューやステーキをテーブルに出す。
こうなる事は予想済みだったからな。量だけは無駄にある。
沢山作ったが、きっとすぐになくなるだろう。勃動力三體牛鞭
「ごしゅじんさま着いたよー」
「ああ」
馬車で仮眠を取っている最中、どうも俺にいたずらしようとしたキールをラフタリアが事前に叱りつけた。男宝
もちろん、ラフタリアやリーシア以外の奴隷は拘束を厳しめにしてあるので、そんな真似をしたら速攻で奴隷紋が作動したわけだが……。
それに、ビッチに嵌められた所為で寝ている時に何かされると目が覚めるし。
初日は村の建物の残骸を撤去する作業を奴隷たちと行った。
「この家は俺の大事な家なんだ!」
そう拒絶するのはキールというガキ。
「大事に思うのは良いが、屋根は落ち、壁は無残にも破壊されている。残念だが、補修できる家と出来ない家があるのを理解しろ」
何か金目になるものや使える物は無いかと調べたのだが、泥棒に入られたのか、物は無いし、あっても錆びていたりして使えそうな物はあまり無かった。
井戸がまだ使えるのが救いか。
畑も……整備すればどうにかなりそうだ。
「思い出にしたいという気持ちは分からなくもないが、復興する上で邪魔になりそうなのは廃棄しないといけない」
「でも――」
「キールくん! あんまり我が侭を言わないで」
ラフタリアが注意する。ま、止める必要性は無いな。
だけど……。
「ここはお前が住んでいた家なんだな」
「ああ!」
「じゃあ、そこに新しく建てた家はお前の物だ」
「え……」
キョトンとした表情でキールというガキは俺を見上げる。
「ただし、お前が管理する共同の家となる。他にも人を集めるからな、責任を持って管理するんだぞ」
「う、うん……」
言葉を濁すようにキールは頷く。
「そういう訳だ――今だ! フィーロ!」
「はーい!」
キールが隙を見せたその瞬間。廃屋にフィーロが突撃し、支柱を蹴り飛ばして破壊する。
「あぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!?」
呆然とするキールを置いて、俺は次の作業に出る。
昼前には女王に手配させた家の材料と城の兵士が到着した。
石材に木材……後は石膏か?
「盾の勇者様はここを復興なさるので?」
女王から話は聞いているだろうに、兵士が聞いてきた。
「ああ、せめて日が落ちるまでに屋根のある物にしたい。無理を承知で頼む」
「我々は兵士でもありますが、建設関係も若干心得があります。お任せください」
「頼んだ」
建設関係……徴兵か何かか?
っと、そこで昼になりかけているのを理解した。
「とりあえず建物は兵士に任せて、ラフタリアとフィーロ、そしてリーシア」
「はい」
「なーに?」
「なんでしょうか?」
三人が俺の呼びかけに答える。
「これから昼飯を作る、お前等は飯を食い終わったら奴隷共と一緒に魔物退治に出かけろ」
「分かりました」
「うん」
「頑張ります」
「班分けは任す。あんまり大人数で動いたら経験値の入りにも悪くなるだろうからな」
実測で試した事は無いけど、経験値の減少ってどれくらいなんだ?
というか分配方式なのか? それとも共有なのか今一理解していないんだよな。三體牛鞭
「誰か詳しい奴は居ないか?」
「あの……」
リーシアが申し訳なさそうに手を挙げる。
「なんだ?」
「えっと……経験値はパーティーを組んだ人数全員に同じ数字が入ります。上限人数は6人。それ以上になると減っていきます」
ああ、だからお前はハブられた訳か。
とか言ったら『ふぇええ』が飛び出すから黙っていよう。うるさいしな。
大人数で遠征する場合は班分けすれば問題はなさそうだな。一つの班で六人ずつで組ませれば良い訳だし。
複数の班で一匹の魔物を倒した場合は分割とかその辺りだろう。
「話は聞いたな」
「はい。こちらで分割致します」
「任せた」
俺はラフタリアに権限を渡して隊を作らせた。
現在奴隷の数は八人だからリーシアが二人、ラフタリアとフィーロが三人ずつ受け持たせよう。
「じゃあ、飯を作るから作業を手伝っていろ」
「はい!」
三人は各々が出来る範囲で手伝いを始める。
「ラフタリアちゃんは手伝わないの?」
放心から立ち直ったキールが料理の下ごしらえをしている俺を睨みながらラフタリアに尋ねる。
意外に復活が早いな。子供だからか?
「ラフタリアちゃん。家事上手だったじゃないか」
「えーっと……」
困った表情でラフタリアは俺に視線を送る。
なんだ? 俺に何を期待しているんだ?
何やら友人に良い所でも見せたいのか、ラフタリアは恐る恐る口を開いた。
「手伝いましょうか?」
「焼き肉や適当なスープを作る程度でか? 火を起こしておいてくれるのならやっていて貰いたいが」
味が良いらしいから俺が食事を作っているんだよなぁ。
もう慣れた。最近じゃ、みんな俺に料理を任せるし。
「片付けは手伝って貰いたいが今は十分だな」
材料を適当にぶつ切りにする。肉がでかいから包丁で切るのも面倒だな。
かと言って、ラフタリアに料理させると味が悪いとかフィーロが言い出すから全部俺が作る羽目になるし……。
ぶつくさ言いたくなるのを我慢して料理を作る。
あ、盾の料理レシピで作るという方法もあるにはあるのだが、これには大きな落とし穴がある。
料理が楽になると霊亀と戦う前、カルミラ島で作ったのだが――。
「盾から食べ物が出てきたよ!」
大興奮でフィーロが俺の盾をうらやましそうに見つめていた。
「ああ、盾の技能で作ってみた」
「凄いですね」
と、昼飯に出したのはこの世界独特のスパゲティみたいな食べ物だ。
名前は食べたナポラータだったか。ぶっちゃけ俺達の世界のパスタに語呂が似ているのは、盾の変換による物だろうか。
ともあれ盾から出すと同時に出来たての温かい料理が出てきた時はこれで料理も楽になると思った。
しかし……。
「なんか……普通ですね」
「うん……普通」
そう、品質の影響なのか、普通としか表現できない微妙な味の食べ物でしかなかった。
不味くは無い。けど美味くも無い。まさしく普通。
「ごしゅじんさまの手作りがいいー」
「そうですね。冷めていてもナオフミ様の手料理の方が美味しいです」
「わ、わかったよ」
なんか二人揃って恨みがましい目で見られたのを覚えている。
そう言った経緯もあって、店の料理か俺の作った物しかこいつ等は喜ばない。狼1号
美食家気取りなのもどうかと思うが、一応食べはする。けどやる気の面で引っかかるというか。
よくよく考えてみると俺が飯を作るって立場逆転してね?
とりあえず料理班もいずれ作らねば、じゃないと領地で料理屋をさせられかねない。
「ほら、昼飯が出来たからさっさと食って出かけてこい」
俺はぞんざいに鉄板に肉を乗せて焼き肉を作り、適当に素材を煮たスープを配る。
「やっぱ、すげえうめえ!」
「うん! 美味しい!」
奴隷共がこぞって笑顔で飯を貪る。
ついでに家を作ってくれる兵士にも持て成す。
「これは……今まで食べた事が無いくらい美味い焼き肉だ!?」
「うそだろ? 材料があのカメの肉って……城でも同じのが出てきたけど、こんなに美味くなかったぞ」
盾の手作り補正は果てしないな。
下ごしらえに香辛料と塩を練りこんでいたのか効いたか?
奴隷共はそれなりに俺の作った飯を食った。
それでも、そこまで大量に食ってはいないな。
きっと、Lv上げから帰ってくると……それに備えて作っておかないとだめだな。
「さて、お前ら、それぞれに武器を渡す。それで戦ってこい!」
俺の宣言に奴隷共は怖気づく。ラフタリアと同じ女の子なんて刃物を持って血の気が引いていた。
城で貰った中古の武器をそれぞれに渡す。初心者用に大半が短剣だ。
「戦わない限り、胸が苦しくなるから覚悟しろ。後、お前等の故郷は、帰ってこないと思え」
「ぐ……」
キールが代表して俺に文句を言おうとしてくる。
だけどラフタリアに遮られて何も言えないみたいだ。
「俺は別にお前達じゃなくても良い。ここを領地にするだけだからな。だが、俺の言う事を素直に聞いているラフタリアへのご褒美としてお前等を勧誘したんだ。履き違えるなよ」
忌々しそうに奴隷達が俺を睨みつける。
憎まれ役はこの世界でも慣れている。別に俺は慈善事業をしようとしている訳でもない。どうせ元の世界に帰るのだから後顧の憂いなど気にする必要もない。ラフタリアが平和に過ごせる場所を用意できれば良いんだ。
「さて……フィーロ、倒した魔物は荷車に乗せて来い。使い道は沢山あるからな」
「はーい!」
目下、食料だけどな。
後は錬がやっていた様に盾に吸わせる用でもある。
こっちは色々な意味でまだまだ先だと思うけどな。
「ほら、行ってこい。じゃあな」
俺はフィーロの馬車を指差して命令する。
奴隷共はしぶしぶ、馬車に乗って、フィーロに引かれて狩りに出かけた。
「速度には気を付けろよー」
「はーい」
ごとごととフィーロが引く馬車は進んでいく。
「さて、じゃあ、家の建設を頼む」
「わ、わかりました」
兵士に建設を頼んで、俺は盾に調合を指示し、次の料理の準備を始めた。
魔物を孵化させるのはもう少し後だな。巨根
霊亀の肉が底をつく前に、食材を調達する方法を模索しないとな……。
「で……」
ラフタリア達と一緒に狩りへ出かけた奴隷達はその日の夕方には帰ってきた。
全員、くたくたになっている。馬車に連結させている荷車には倒した魔物がそのまま積載されている。当面の食料にしないといけないし、調度いいだろ。
だが、それよりも酷いのは。
ぐううううう……。
ぐううう……。
きゅるるるるるる……。
ぐぎゅるるるるるる……。
爆音のように腹を空かせている事か。
食べるのにも不自由な環境で急激にLvをあげたらどうなるんだ? ちょっとした好奇心が湧くな。
大方、死にはしない飢えという奴なんだろう。ラフタリアを見るとそう思う。
急成長しようとする体が栄養を欲して空腹を訴えているのだ。
「よく帰ってきたな、ちゃんと戦えたか?」
「ええ、みんな頑張りましたよ」
ラフタリアが笑みを浮かべて答える。
その様子を奴隷共は微妙な顔で見ているな。
スパルタをしている訳ではないけど、釈然としないとかそんな感じだろうな。
「ふへぇ……疲れました」
「おう、リーシア。調子はどうだ?」
「前よりも動きやすいような気がします」
確かにステータスはリセット前よりも上がっている。戦闘も多少は楽になっただろう。
「リーシア姉ちゃん。なんできぐるみ着てんだ?」
「それはリーシアが着ぐるみマニアだからだ」
「ふぇえ!」
ぶんぶんと否定するリーシアだが、間違ってなんかいないだろ。
「やっぱりそうなんだ……」
キールに至っては納得する始末。
俺を嫌っているなら信じるなよ。
「ま、ちゃんと頑張っているなら良いだろう。飯だ」
俺は前もって準備していた霊亀の肉を使ったシチューやステーキをテーブルに出す。
こうなる事は予想済みだったからな。量だけは無駄にある。
沢山作ったが、きっとすぐになくなるだろう。勃動力三體牛鞭
2014年7月6日星期日
愛の狩人
「くぬ! ぬお! 天使達! やめるんだ!」
うーん……元康を封じるとあの取り巻きが襲って来そう。
事の原因である元康を封じたら良いのかも知れないが、あの三匹は止められるのか?
二匹は押さえつけられるけどフィーロがな。
失敗した場合は確実に俺の負けだ。花痴
しかも元康は取り巻きとの戦いに集中していて動き回っている。
狙うには厳しい。
賭けの要素としてなら元康を狙った方が良いが、射程範囲から外れていて、魔力を上手く込められる自信が無い。
込めた分だけ伸びるような気がするのだけど、練習せねば出来るものも出来ないだろう。
「ごしゅじんさま……食べたい」
まだ言うか!
「フィーロちゃん!」
メルティが俺を守るように前に出て呼びかける。
「危ないから下がっていろ!」
「いやよ! 私はフィーロちゃんの友達なのよ! こんなフィーロちゃんを見捨てるなんて出来ないわ!」
こいつは本当にヴィッチの妹なのかと疑問に思う程の思いやりがあるよなぁ。
友情の為なら命すらなげうつ覚悟か……もしもメルティの命が危ないのなら俺も守ってやらねばならないだろうな。
フィーロが邪魔なら友人を敵として排除するという選択を取るのなら、メルティとリーシアを守りながら攻撃の命令を出さねばならない。
「メル……ちゃん?」
お? フィーロの奴、メルティの呼びかけの応じて顔を向けた。
よし、そのまま説得を続けるんだ。
「そうよ! フィーロちゃん! ナオフミはそんな状態のフィーロちゃんとの関係なんて望んでいないの、だから……あんな奴の力に操られないで、元に戻って!」
「ぐ……う……」
メルティの言葉を聞いてフィーロの奴、ぐらぐらと揺れながらメルティに近づいて行く。
「フィーロちゃん」
メルティは手を伸ばし、フィーロの胸を撫でようと試みる。
俺は警戒しつつ、最悪の事態に備えて魔力を練り、SPに込めて構える。
「さ、フィーロちゃん。元に……戻って」
「……」
説得完了か? フィーロが大人しくなってメルティに頭を下げた。
メルティも微笑んでいるのか、フィーロの頭を撫でている。
「――フィーロ、メルちゃんも食べたい」
「え――」
ガシッとフィーロはメルティの肩に掴みかかる。
「あ、ちょっと!?」
そしてメルティの服の下に手を伸ばして――
少々外道だがこのチャンスを逃すのは惜しい。
済まんメルティ。後で必ずこのツケは払う。
「今だ! シールドプリズン!」
「な、何を言っているの!?」
メルティごとフィーロを盾で作られた檻に閉じ込める。
大丈夫だ。きっとフィーロの良心がメルティは俺と同等として大切なものと認識しているはず。
食べると言う意味も俺に言ったのと同じで、メルティを食べ物として見ていないと……思いたい。
「ナオフミ――ちょ!」
メルティがフィーロに襲い掛かられている最中、俺の作った檻が完成した。
ぐ……魔力がごっそり持って行かれた。
これで少しの間、フィーロは閉じ込められたはず……。
「ふぇえ……王女様がぁああ!」
「メルティは尊い犠牲になって貰った。大丈夫だ。きっと」
最悪……は諦めよう。
ただ、色欲に支配されたフィーロに取ってメルティも対象に入っているのだと信じよう。
暴食に支配されていたら危なかった。
「アトラ、どうだ?」
「はい。尚文様の出した囲いが禍々しい力を断ち切ったのが感じ取れました」
「そうか!?」
それは良かった。つまり檻の中のフィーロは元に戻ったという事になる。
メルティも良くやってくれた。
「尚文様の作りだした檻はとても素晴らしいモノです。まだ所々に解れがありますが、禍々しい力は遮りました」
「ほう……」
どうやら魔力を込めるとプリズンの隙を無くせるようだ。
これは良い事を聞いた。女騎士の攻撃で簡単に壊されたが、次はそうもいかないか。要練習だな。
後は元康達だ。
フィーロの方に意識を集中していて気付かなかったけど、まだ争っている。
手伝ってやっても良いが……どうした物か。
「ぬおおおおおおおおおお! フィーロタンとオトウさんを守って見せます!」
とか。
「天使達! もうヤメるんだ!」
って騒いで凄く五月蠅い。福源春
「もっくんはあたしの――」
「いいえ、もーくんは私のです――」
「違います。もとやすさんはボクの――」
「「「あんなメスになんてやらない!」」」
ああもう。ずっとやってろ!
仲が良いな、あいつ等。
どれもフィーロに似ているけど、アホ毛が無い。
赤いのは爪が基本だけど時々炎を吐いたりする。フィロリアルって火を吐けるのか? 魔法の一種にあるのかもしれないが。
青いのは魔法が基本だけど、羽を抜いて投げてくる。フェザーショット的な攻撃だ。
緑色のはずっと人型。羽が生えた人間みたいで斧を振り回し、魔法を放つ。一番、亜人っぽい戦い方とも言える。大人しい見た目の癖に豪快な奴。
というか、フィーロとは戦闘スタイルがどれも違うなぁ。
フィロリアルの個性か? 知りたくもない。
そんなこんなでプリズンが解けるのを待っていたのだが、効果時間が魔力を込めたからか伸びている。
普段は十五秒しか持たないはずなのに、三分は続いている。
「長いな」
「長いですね」
「ふぇえ……」
中で何が起こっているのか、想像したくもない。
この檻が消えた時に何が待っているのか。
一種の猫箱だよな。シュレリンガーの猫だったか?
違うか。檻が解けた時にフィーロとメルティに何があるのか……。
可能性はたくさんある。
俺が閉じ込めたと同時にフィーロが我に返って大人しくしているかもしれない。
逆にフィーロに大変な事をされているかもしれない。
可能性は無限だな。
メルティがフィーロを上手く説得できたかもしれない。
そして五分経過した頃、そっと……檻は消えた。
「ふう……」
そこにはフィーロが恍惚とした表情で座り込んでいた。
羽毛が逆立ってなんか気持ちよさそう。
メルティは何処だ?
フィーロに食われていない事を祈る。
考えてみれば王女様なんだからそんな目に会っていたら俺は国外逃亡を余儀なくされる。
フィーロとメルティの友情を信じないといけない。
「お?」
メルティも生きていた。
フィーロの横で……なんかかませ犬で有名な奴が敵にやられた時のポーズで横になっている。
服は脱ぎ散らかされているので、王女の名誉の為に視界に入らないようにしよう。
「メルティ様!」
リーシアが心配してメルティの元に駆け寄る。
仰向けにして生きているかリーシアが確認すると、半笑いのメルティの瞳から一筋の涙が零れ落ちる。
えっと、どこかで見たような光景だ。女の子同士のゆるーい百合の漫画みたいだと思う。
「メルティ……その……本当にすまなかった。後で必ずこの埋め合わせはする……その……悪かった……」
思わず素で出た言葉だ。
まさかここまでの結末が待っているとは……想像の範疇ではあったんだが。
なんというか、咄嗟の事だったんだが……もっとうまくやれたかもしれない。
俺の無力を恨んでも良い。本当にすまなかった。
箱の中の猫は犯されていました。
中で何が起こっていたのか、それは猫にしかわからない。
ま、本人が喋ったらわかるけどさ。メルティは喋らないだろ。
そしてリーシアが転がっていたメルティの服を掛けて抱き起こす。
「大丈夫ですか!」
「うう……大変な目にあったわ」
「またやろうね♪」
「いやよ!」
我に返ったフィーロがメルティに首を傾げていた。
「調子はどうだ?」
「えっとねーなんかスッキリ」
「あれだけ暴れれば、そりゃそうだろうよ」
「ナオフミ! 絶対に後で殺すから覚悟なさい!」
「済まなかったとは思っている。相応の罰は受けよう。だが、お前とフィーロの友情を俺は信じただけさ」
もうそこまでの関係なら俺は何も言うまい。勃動力三体牛鞭
フィーロもメルティの事が大好きみたいだし、もう二人を別つ者はいないだろう。
「綺麗事を言って誤魔化したって私は騙されないわよ! 絶対に、絶対に許さないんだから!」
「まあ……全てはお前の姉と俺が悪かったと言う事で我慢してくれ」
「ムキー!」
「メルちゃん。何怒っているの?」
「え、えっとね……そのね。フィーロちゃん。あのね」
「キスしたの怒ってるの? でも前した時は許してくれたよね」
なんだって?
コイツ等……俺の知らない所で、随分とアブノーマルな関係が進んでいたんだな。
俺も無粋じゃない。これからは遠くから見守らせてもらおう。
またの名をフェードアウトとも言う。
「あのね。その事じゃなくて」
「フィーロの初めてはごしゅじんさまだから安心してね」
なんだって?
いつのまに襲われたんだ?
いや、ありえない。寝込みを襲われてもさすがに気付くだろう。
適当な事を言いやがって。
「……フィーロちゃん。私の初めてのキスはずいぶん前にフィーロちゃんに取られちゃったんだけど……」
「でもメルちゃんがキスってどんなのかしらって言うから」
「セカンドもサードもフィーロちゃん……うう……もう母上には絶対に話せないわ」
メルティが顔を真っ赤にしてフィーロと話をしている。
怪しいとは思っていたがそこまで進んでいた訳か。
良かったなフィーロ、もはやお前とメルティは親友を超えた関係だよ。
だから、俺を相手に発情するなよ。メルティで解決しろ。
フィーロの初めて? キスか?
俺? えっとー……思いっきり舐められた覚えがあるが、あれか?
うえ……そのカウントだと俺もキスされた事になるのか……。
「メルティ」
「何よ!」
「フィーロのはノーカウントにしよう。俺とお前の決まり事だ」
「ふざけないで!」
「別にふざけてはいないぞ」
俺はイヤだ。
気にしない方向でメルティにも合意して貰わないと事実の物となってしまう。
「余計悪いわよ!」
「で? どうなんだ?」
「うう……わかったわよ!」
「よし。じゃあ次の行動に移るか」
ふむ、良く見るとフィーロの張った結界も解けているな、このまま逃げ切る事は出来そうだ。
元康の方は……まだ、戦っている。俺たちの方に飛び火しないのが奇跡だな。
どうした物か。
あのまま放置していると何時までも戦っていそうだ。
で、下手にまたスキルを使われるとシャレにならない。
「フィーロ」
「なーに?」
艶が良くなっているフィーロに俺は命令する。
「元康に向けて俺の言う通りに言え」
「えー……やー!」
まったく、理性が戻っても反抗的な奴。
「じゃないと元康にまた操られるぞ。今度こそ助けてやらないからなぁ……気付かない内に、元康に何をされるか――」
「や、やー! ごしゅじんさま! どうしたら良いの!?」
「俺の言った通りにするんだ」
「何言わせるつもりよ」
ぼさぼさの格好のメルティが魔法で体を清め、服を着直して尋ねてくる。
「ああ、実はな――」
「やめるんだ!」
元康はずっと取り巻きの説得を続けている。
原因はお前だ。その取り巻きはどうやらお前の事が好きみたいで、フィーロに嫉妬しているんだ。蒼蝿水
と、言っても聞かないだろうから、冷静になったフィーロに解決して貰う。
「あのねー! 槍の人聞いてー!」
フィーロの声に元康が振り返る。
嬉しそうな顔をしているが、打ん殴りたくなるな。
「ハーい! なンですかフィーロタん!」
「えっとね。フィーロはプラトニックな人が好きなの、世界が真の平和になるまでそう言うのは考えないようにしてるのー。他にもね、なんだっけ? えっとね、誠実でね、皆に優しくてね、ズルをしなくてね、賭け事はちゃんと釣りあった条件でしてね。後ね、約束は表面だけじゃなくて、しっかり守ってー」
ここぞとばかりに元康に対する不満をフィーロに言わせる。
これで改善されれば良いんだが……。
尚、フィーロの好みに関しては嘘だ。
さっきまでメルティに襲い掛かっていた奴では説得力皆無だ。
この状態だって、直ぐに解けてしまうかもしれない。
言わば賢者タイム中のフィーロに言わせているような物だ。
しかしフィーロ、一つ抜けているぞ。
「あ! 最後にね、人の話はちゃんと聞いてー。特にごしゅじんさまの命令は絶対に聞いてね。後ね、世界が本当に平和になるまでフィーロにつきまとわないで!」
最後のは俺が言った内容では無いんだが……。
妙な所で知恵を付けやがって。
「そ、ソウナのですか!? フィーロタン!」
よしよし、元康の懐柔に成功した。
後はフィーロ、奴の槍を変えるだけだ。
「だからー……」
フィーロが目を泳がせて俺に視線を向ける。
教えた事を忘れたな。鳥頭が。
「あっ。そうそう、その槍を別のにしないとー嫌いになっちゃう! 特にその槍にしたらダメー」
「そ、ソンナ! わかりました! ワタクシ、元康。この槍には絶対に変えません!」
フィーロの言葉に元康はサッと槍を別の槍に変えた。
素直な奴……アッサリ過ぎる。
というか、そんな簡単に変えられるのかよ。
元康が槍を変えた瞬間、取り巻きは電池が切れたように地に倒れる。
これで静かになった。
「さて……」
俺はフィーロに次の伝言を吹き込む。
「えっとー……フィーロはー、世界の為に戦う勇者が好きなのーだから自分の罪に向き合って、女王様に自首してー」
「わかりました!」
もう元に戻っているはずなのに元康の奴、なんかおかしいな。SEX DROPS
うーん……元康を封じるとあの取り巻きが襲って来そう。
事の原因である元康を封じたら良いのかも知れないが、あの三匹は止められるのか?
二匹は押さえつけられるけどフィーロがな。
失敗した場合は確実に俺の負けだ。花痴
しかも元康は取り巻きとの戦いに集中していて動き回っている。
狙うには厳しい。
賭けの要素としてなら元康を狙った方が良いが、射程範囲から外れていて、魔力を上手く込められる自信が無い。
込めた分だけ伸びるような気がするのだけど、練習せねば出来るものも出来ないだろう。
「ごしゅじんさま……食べたい」
まだ言うか!
「フィーロちゃん!」
メルティが俺を守るように前に出て呼びかける。
「危ないから下がっていろ!」
「いやよ! 私はフィーロちゃんの友達なのよ! こんなフィーロちゃんを見捨てるなんて出来ないわ!」
こいつは本当にヴィッチの妹なのかと疑問に思う程の思いやりがあるよなぁ。
友情の為なら命すらなげうつ覚悟か……もしもメルティの命が危ないのなら俺も守ってやらねばならないだろうな。
フィーロが邪魔なら友人を敵として排除するという選択を取るのなら、メルティとリーシアを守りながら攻撃の命令を出さねばならない。
「メル……ちゃん?」
お? フィーロの奴、メルティの呼びかけの応じて顔を向けた。
よし、そのまま説得を続けるんだ。
「そうよ! フィーロちゃん! ナオフミはそんな状態のフィーロちゃんとの関係なんて望んでいないの、だから……あんな奴の力に操られないで、元に戻って!」
「ぐ……う……」
メルティの言葉を聞いてフィーロの奴、ぐらぐらと揺れながらメルティに近づいて行く。
「フィーロちゃん」
メルティは手を伸ばし、フィーロの胸を撫でようと試みる。
俺は警戒しつつ、最悪の事態に備えて魔力を練り、SPに込めて構える。
「さ、フィーロちゃん。元に……戻って」
「……」
説得完了か? フィーロが大人しくなってメルティに頭を下げた。
メルティも微笑んでいるのか、フィーロの頭を撫でている。
「――フィーロ、メルちゃんも食べたい」
「え――」
ガシッとフィーロはメルティの肩に掴みかかる。
「あ、ちょっと!?」
そしてメルティの服の下に手を伸ばして――
少々外道だがこのチャンスを逃すのは惜しい。
済まんメルティ。後で必ずこのツケは払う。
「今だ! シールドプリズン!」
「な、何を言っているの!?」
メルティごとフィーロを盾で作られた檻に閉じ込める。
大丈夫だ。きっとフィーロの良心がメルティは俺と同等として大切なものと認識しているはず。
食べると言う意味も俺に言ったのと同じで、メルティを食べ物として見ていないと……思いたい。
「ナオフミ――ちょ!」
メルティがフィーロに襲い掛かられている最中、俺の作った檻が完成した。
ぐ……魔力がごっそり持って行かれた。
これで少しの間、フィーロは閉じ込められたはず……。
「ふぇえ……王女様がぁああ!」
「メルティは尊い犠牲になって貰った。大丈夫だ。きっと」
最悪……は諦めよう。
ただ、色欲に支配されたフィーロに取ってメルティも対象に入っているのだと信じよう。
暴食に支配されていたら危なかった。
「アトラ、どうだ?」
「はい。尚文様の出した囲いが禍々しい力を断ち切ったのが感じ取れました」
「そうか!?」
それは良かった。つまり檻の中のフィーロは元に戻ったという事になる。
メルティも良くやってくれた。
「尚文様の作りだした檻はとても素晴らしいモノです。まだ所々に解れがありますが、禍々しい力は遮りました」
「ほう……」
どうやら魔力を込めるとプリズンの隙を無くせるようだ。
これは良い事を聞いた。女騎士の攻撃で簡単に壊されたが、次はそうもいかないか。要練習だな。
後は元康達だ。
フィーロの方に意識を集中していて気付かなかったけど、まだ争っている。
手伝ってやっても良いが……どうした物か。
「ぬおおおおおおおおおお! フィーロタンとオトウさんを守って見せます!」
とか。
「天使達! もうヤメるんだ!」
って騒いで凄く五月蠅い。福源春
「もっくんはあたしの――」
「いいえ、もーくんは私のです――」
「違います。もとやすさんはボクの――」
「「「あんなメスになんてやらない!」」」
ああもう。ずっとやってろ!
仲が良いな、あいつ等。
どれもフィーロに似ているけど、アホ毛が無い。
赤いのは爪が基本だけど時々炎を吐いたりする。フィロリアルって火を吐けるのか? 魔法の一種にあるのかもしれないが。
青いのは魔法が基本だけど、羽を抜いて投げてくる。フェザーショット的な攻撃だ。
緑色のはずっと人型。羽が生えた人間みたいで斧を振り回し、魔法を放つ。一番、亜人っぽい戦い方とも言える。大人しい見た目の癖に豪快な奴。
というか、フィーロとは戦闘スタイルがどれも違うなぁ。
フィロリアルの個性か? 知りたくもない。
そんなこんなでプリズンが解けるのを待っていたのだが、効果時間が魔力を込めたからか伸びている。
普段は十五秒しか持たないはずなのに、三分は続いている。
「長いな」
「長いですね」
「ふぇえ……」
中で何が起こっているのか、想像したくもない。
この檻が消えた時に何が待っているのか。
一種の猫箱だよな。シュレリンガーの猫だったか?
違うか。檻が解けた時にフィーロとメルティに何があるのか……。
可能性はたくさんある。
俺が閉じ込めたと同時にフィーロが我に返って大人しくしているかもしれない。
逆にフィーロに大変な事をされているかもしれない。
可能性は無限だな。
メルティがフィーロを上手く説得できたかもしれない。
そして五分経過した頃、そっと……檻は消えた。
「ふう……」
そこにはフィーロが恍惚とした表情で座り込んでいた。
羽毛が逆立ってなんか気持ちよさそう。
メルティは何処だ?
フィーロに食われていない事を祈る。
考えてみれば王女様なんだからそんな目に会っていたら俺は国外逃亡を余儀なくされる。
フィーロとメルティの友情を信じないといけない。
「お?」
メルティも生きていた。
フィーロの横で……なんかかませ犬で有名な奴が敵にやられた時のポーズで横になっている。
服は脱ぎ散らかされているので、王女の名誉の為に視界に入らないようにしよう。
「メルティ様!」
リーシアが心配してメルティの元に駆け寄る。
仰向けにして生きているかリーシアが確認すると、半笑いのメルティの瞳から一筋の涙が零れ落ちる。
えっと、どこかで見たような光景だ。女の子同士のゆるーい百合の漫画みたいだと思う。
「メルティ……その……本当にすまなかった。後で必ずこの埋め合わせはする……その……悪かった……」
思わず素で出た言葉だ。
まさかここまでの結末が待っているとは……想像の範疇ではあったんだが。
なんというか、咄嗟の事だったんだが……もっとうまくやれたかもしれない。
俺の無力を恨んでも良い。本当にすまなかった。
箱の中の猫は犯されていました。
中で何が起こっていたのか、それは猫にしかわからない。
ま、本人が喋ったらわかるけどさ。メルティは喋らないだろ。
そしてリーシアが転がっていたメルティの服を掛けて抱き起こす。
「大丈夫ですか!」
「うう……大変な目にあったわ」
「またやろうね♪」
「いやよ!」
我に返ったフィーロがメルティに首を傾げていた。
「調子はどうだ?」
「えっとねーなんかスッキリ」
「あれだけ暴れれば、そりゃそうだろうよ」
「ナオフミ! 絶対に後で殺すから覚悟なさい!」
「済まなかったとは思っている。相応の罰は受けよう。だが、お前とフィーロの友情を俺は信じただけさ」
もうそこまでの関係なら俺は何も言うまい。勃動力三体牛鞭
フィーロもメルティの事が大好きみたいだし、もう二人を別つ者はいないだろう。
「綺麗事を言って誤魔化したって私は騙されないわよ! 絶対に、絶対に許さないんだから!」
「まあ……全てはお前の姉と俺が悪かったと言う事で我慢してくれ」
「ムキー!」
「メルちゃん。何怒っているの?」
「え、えっとね……そのね。フィーロちゃん。あのね」
「キスしたの怒ってるの? でも前した時は許してくれたよね」
なんだって?
コイツ等……俺の知らない所で、随分とアブノーマルな関係が進んでいたんだな。
俺も無粋じゃない。これからは遠くから見守らせてもらおう。
またの名をフェードアウトとも言う。
「あのね。その事じゃなくて」
「フィーロの初めてはごしゅじんさまだから安心してね」
なんだって?
いつのまに襲われたんだ?
いや、ありえない。寝込みを襲われてもさすがに気付くだろう。
適当な事を言いやがって。
「……フィーロちゃん。私の初めてのキスはずいぶん前にフィーロちゃんに取られちゃったんだけど……」
「でもメルちゃんがキスってどんなのかしらって言うから」
「セカンドもサードもフィーロちゃん……うう……もう母上には絶対に話せないわ」
メルティが顔を真っ赤にしてフィーロと話をしている。
怪しいとは思っていたがそこまで進んでいた訳か。
良かったなフィーロ、もはやお前とメルティは親友を超えた関係だよ。
だから、俺を相手に発情するなよ。メルティで解決しろ。
フィーロの初めて? キスか?
俺? えっとー……思いっきり舐められた覚えがあるが、あれか?
うえ……そのカウントだと俺もキスされた事になるのか……。
「メルティ」
「何よ!」
「フィーロのはノーカウントにしよう。俺とお前の決まり事だ」
「ふざけないで!」
「別にふざけてはいないぞ」
俺はイヤだ。
気にしない方向でメルティにも合意して貰わないと事実の物となってしまう。
「余計悪いわよ!」
「で? どうなんだ?」
「うう……わかったわよ!」
「よし。じゃあ次の行動に移るか」
ふむ、良く見るとフィーロの張った結界も解けているな、このまま逃げ切る事は出来そうだ。
元康の方は……まだ、戦っている。俺たちの方に飛び火しないのが奇跡だな。
どうした物か。
あのまま放置していると何時までも戦っていそうだ。
で、下手にまたスキルを使われるとシャレにならない。
「フィーロ」
「なーに?」
艶が良くなっているフィーロに俺は命令する。
「元康に向けて俺の言う通りに言え」
「えー……やー!」
まったく、理性が戻っても反抗的な奴。
「じゃないと元康にまた操られるぞ。今度こそ助けてやらないからなぁ……気付かない内に、元康に何をされるか――」
「や、やー! ごしゅじんさま! どうしたら良いの!?」
「俺の言った通りにするんだ」
「何言わせるつもりよ」
ぼさぼさの格好のメルティが魔法で体を清め、服を着直して尋ねてくる。
「ああ、実はな――」
「やめるんだ!」
元康はずっと取り巻きの説得を続けている。
原因はお前だ。その取り巻きはどうやらお前の事が好きみたいで、フィーロに嫉妬しているんだ。蒼蝿水
と、言っても聞かないだろうから、冷静になったフィーロに解決して貰う。
「あのねー! 槍の人聞いてー!」
フィーロの声に元康が振り返る。
嬉しそうな顔をしているが、打ん殴りたくなるな。
「ハーい! なンですかフィーロタん!」
「えっとね。フィーロはプラトニックな人が好きなの、世界が真の平和になるまでそう言うのは考えないようにしてるのー。他にもね、なんだっけ? えっとね、誠実でね、皆に優しくてね、ズルをしなくてね、賭け事はちゃんと釣りあった条件でしてね。後ね、約束は表面だけじゃなくて、しっかり守ってー」
ここぞとばかりに元康に対する不満をフィーロに言わせる。
これで改善されれば良いんだが……。
尚、フィーロの好みに関しては嘘だ。
さっきまでメルティに襲い掛かっていた奴では説得力皆無だ。
この状態だって、直ぐに解けてしまうかもしれない。
言わば賢者タイム中のフィーロに言わせているような物だ。
しかしフィーロ、一つ抜けているぞ。
「あ! 最後にね、人の話はちゃんと聞いてー。特にごしゅじんさまの命令は絶対に聞いてね。後ね、世界が本当に平和になるまでフィーロにつきまとわないで!」
最後のは俺が言った内容では無いんだが……。
妙な所で知恵を付けやがって。
「そ、ソウナのですか!? フィーロタン!」
よしよし、元康の懐柔に成功した。
後はフィーロ、奴の槍を変えるだけだ。
「だからー……」
フィーロが目を泳がせて俺に視線を向ける。
教えた事を忘れたな。鳥頭が。
「あっ。そうそう、その槍を別のにしないとー嫌いになっちゃう! 特にその槍にしたらダメー」
「そ、ソンナ! わかりました! ワタクシ、元康。この槍には絶対に変えません!」
フィーロの言葉に元康はサッと槍を別の槍に変えた。
素直な奴……アッサリ過ぎる。
というか、そんな簡単に変えられるのかよ。
元康が槍を変えた瞬間、取り巻きは電池が切れたように地に倒れる。
これで静かになった。
「さて……」
俺はフィーロに次の伝言を吹き込む。
「えっとー……フィーロはー、世界の為に戦う勇者が好きなのーだから自分の罪に向き合って、女王様に自首してー」
「わかりました!」
もう元に戻っているはずなのに元康の奴、なんかおかしいな。SEX DROPS
2014年7月3日星期四
鳳凰
やはり想像通り、現れた鳳凰は霊亀と同じく手ごろに多数の命が集まっている俺達の方へ向かって飛んできた。
視界に浮かぶ『8』という数字。
やはり八番目の波相当、というのが正解だろうか。
「お前等、間違ってもトドメを刺すタイミングを誤るんじゃないぞ」
「わかっている!」RU486
錬を筆頭に近付いてくる低高度の方の鳳凰に向かって、各々は攻撃を開始した。
「キュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
高高度にいる鳳凰がこっちに向けて羽ばたきで羽根を降り注がせながら火の雨を降らし始める。
「流星盾!」
気の力を込めた流星盾は範囲と防御力がかなり向上する。
そのお陰で最前線の一部は守られるが、それ以外はまだ足りない。
この辺りは想定内だ。
「お前等、わかっているな?」
振り返ると奴隷は元より、連合軍の連中も頷いた。
さすがに大人数を守りきれる自信は無い。
それでも守るために俺は出来る限りの工夫をする事にした。
俺とアトラが協力して作り出したスキルでは無い技、集を俺は降り注ぐ火の雨に向けて展開させる。
大きな漏斗で集めるかのように上から降り注ぐ火の雨は俺に向けて集まって行く。
この攻撃がどれほどの物かで対処が変わってくる。
その間に低高度で襲い掛かってくる鳳凰に向けて攻撃を集中させる。
降り注ぐ火の雨を盾で受け止めた。
バシバシと傘に雨が当たるような、そんな感覚が盾を通じて伝わってくる。
俺が今装備しているのは強化した霊亀甲だ。
霊亀甲(覚醒)+8 70/70 SR
能力解放……装備ボーナス スキル「Sフロートシールド」「リフレクトシールド」
専用効果 グラビティフィールド Cソウルリカバリー Cマジックスナッチ Cグラビティショット 生命力向上 魔法防御(大) 雷耐性 SPドレイン無効 成長する力
熟練度 100
アイテムエンチャントLv8 防御力10%アップ
ドラゴンスピリット 防御力50 火耐性向上
ステータスエンチャント 魔力30+
鳳凰の攻撃を想定してエンチャントは万全だ。
これで火属性の攻撃は相当軽減できる。
蛮族の鎧にも火耐性が付いているから並大抵の攻撃ではビクともしないはずだ。
現に上から降り注ぐ攻撃に対して、俺は痛くも痒くもない。
ただ、さすがに範囲が大きすぎて連合軍全てを守りきれるはずもない。
だけど、そのくらいは想定済みだ。
「アル・ツヴァイト・レジストファイア!」
連合軍の方も後方援護部隊が、火属性の耐性を上げる魔法を常時掛けている。
これである程度は軽減して、戦いに集中できるはずだ。
ん?
鳳凰が落とした羽根が地面に落ちると、そこから鳳凰の使い魔(眷属型)と言う魔物が出現した。
壁画の通りだ。
前衛の近接部隊が出現する鳳凰の使い魔の殲滅に走る。
よし!
「ラフー!」
俺が取りこぼしてしまった鳳凰の羽根をラトの育てた魔物であるミー君が体を絨毯のように変化させて弾く。
形状変化が得意だからか。こう言う時には便利だな。
「いくよー!」
「キュア!」
フィーロとガエリオンと谷子が高高度にいる鳳凰に向けて飛んでいく。
「てぇい!」
「キュア!」
「うん。行こう!」
ここで空を飛べるようになったフィーロに関しての難点を説明しようと思う。
飛ぶと言う事はそれだけ犠牲にする事が増えると言う事だ。中絶薬
本人曰く、俺が説明したらしいのだが、魔力を使って飛ぶようになった。だから飛ぶのは魔力を相当消費する。
更に、地上に居る時よりも腰に力が入らないので蹴りの威力が大幅に下がっていて、くちばしで突くや爪で握るとかしか出来ないそうだ。
しかも意識を集中するクイック系やスパイラルストライクは使い辛いのだとか。
その点で言えば、昔から飛ぶと言う事が出来るガエリオンは空中戦での短所はそこまで無い。
ブレスが基本攻撃だし、爪による引っかき等、戦闘パターンに大きな変化は無い。
むしろLvの影響か、ホーミングで炎で作られた矢を射出する魔法まで使いこなせる。
ただし、鳳凰は火を使うのが得意だからガエリオンのブレスも属性を変えねば威力が出ない。
まあ、火だから耐性も高いんだけどな。
「うぃんぐ・とるねーどー」
強く羽ばたいたフィーロが回転しながら鳳凰に突進した。
スパイラルストライクに似ているけれど、速度が出ていないな。
「てい!」
そして高高度の鳳凰に引っ付いたかと思うと、力強く蹴りあげた。
ああ、確かにその方法なら蹴りの威力は下がらないな。
「ガエリオン、行くよ」
「キュア!」
『我ここにガエリオンの力を導き、具現を望む。地脈よ。我に力を』
『キュアキュアキュア!』
「ハイウィングスラッシュ!」
ガエリオンの翼が光り輝き、羽ばたく事で風の刃が生み出される。
その刃は高高度の鳳凰に突き刺さった。
「キュイイイイイイイイイ!?」
善戦しているな。
今は俺も目の前の鳳凰に意識を集中させよう。
「はぁあ!」
俺が鳳凰の足を掴んで、隙を作るとラフタリアやフォウル、アトラが逃さず攻撃を加える。
「八極陣天命剣二式!」
「タイガーブレイク!」
「行きます!」
ラフタリアの剣が鳳凰の肩口を切り裂き、フォウルの拳が腹部に刺さり、アトラの突きによって突いた場所が弾ける。
「俺も負けてられない! 重力剣!」
「うん! 兄ちゃんの為に頑張るぞーワンワン!」
錬も負けじとスキルを放ち、鳳凰に飛びついて頭に向けて剣を何度も突きさす。
キールもけるべろすになって鳳凰に噛みついた。
おお……バターを切るかのように錬の切りは鳳凰にきつい一撃を与えているようだ。
キールの攻撃も馬鹿には出来ない様だぞ。
しかし。
鳳凰は霊亀の様な生物的な側面と、精霊や幽霊の気体のような部分を持っているようで、傷付けたその場から、炎のように燃えがって傷が消えて行った。
「く……なんて生命力だ!」
切っても、その場で引っ付いて深い傷には出来そうにないか。
なんて厄介な……。
だが、見た感じではあるが、ダメージが入っていない訳では無いようだ。
やはりシミュレーションした通り、自爆しても平気なように低高度の方はダメージを受けることを視野に入れた戦い方をしてこない。攻撃特化な捨て身戦法で攻撃してくる。
だが、鳳凰を想定した攻撃を俺達は組んでいたので、ブレスも羽ばたきも大してダメージを受けない。威哥王三鞭粒
霊亀のようなSP吸収攻撃の様な厄介な攻撃を低高度の方はしてくる気配が無いのが救いだな。
念には念をとガエリオンの所為で弱体化していたラースシールドも強化しておいたが、使わずに済みそうだ。
霊亀甲の性能がかなり高いから、ある程度追いついて来ているんだけどな。
グロウアップするような事態じゃないし。
まあ、何をしてくるか想定しきれないんだけどさ。
もしかしたらそう言う攻撃をしてくるのかもしれないし……。
鳳凰を掴んで高く飛べないように押さえつけている最中、俺は高高度の方に目を向ける。
すると元康、樹とリーシア、サディナと女王がそれぞれ高高度の鳳凰に向けて攻撃をしている。
「フィーロたん気を付けて! ブリューナク!」
「バードハンティング!」
「トルネードスロー!」
「合唱魔法! ウォーター&ライトニングブリッド!」
「高等集団儀式魔法! レインストーム!」
元康が光の槍を鳳凰に向けて投擲した。
そう言えば、取り巻きの三匹は何をしているんだ?
と思ったら、思いだした。フィロリアル部隊と連携してこっちで戦っているんだった。
樹の矢が拡散しながら鳳凰を射抜き、リーシアの投擲具が竜巻を起こして閉じ込め、サディナが率先して発動させた合唱魔法が命中する。
見た感じ、やはり低高度の方よりもダメージが入っていない。
フィーロとガエリオン、他竜騎兵や空を飛ぶ魔物……グリフィンか? に乗った兵士が善戦しているけれど低高度の方にダメージが入り過ぎている。
このままでは同時に、と言うのは難しいな。
「みんな、もう少し加減しろ。じゃなきゃこっちが先に倒れる! 出来る限りタイミングを合わせるんだ!」
「わかっている!」
「はい!」
前線にいる連中に注意し、俺はエアストシールド、セカンドシールドを小まめに展開させながら低高度の鳳凰を抑えつけた。
後はダメージを抑えつつ、高高度の方のダメージを蓄積させるだけだ。
「!? 尚文様、鳳凰の生命力が回復しています」
「く……やっかいな」
アトラの進言なら間違いない。
攻撃の手を緩めると回復されるか。
かといって本気で行くと先にこっちが倒れる。
難しい塩梅だ。
だが、勝てない相手じゃない。
と言う所で、俺は熱さを感じて鳳凰を見る。
そして、掴んでいた手がすり抜けた。
なんと鳳凰は炎に形を変えて居たのだ。
「全員、俺の後ろに下がれ! エアストシールド! セカンドシールド!」
壁画の中でひび割れていてよくわからなかった部分の攻撃か?
俺は盾を前面に構えて、立ちはだかる。三鞭粒
炎の竜巻と同時に鳳凰が俺達に向かってぶつかってきた。
フィーロのスパイラルストライクに似た突進攻撃だ。
炎を纏っているけれどな。
さすがに無傷とはいかないか。
じりじりと肌が焼かれる感覚がある。
「大丈夫か!?」
低高度の鳳凰の突進攻撃を正面から受け止めたお陰か、後方の連中には被害が無い。
まあ、降り注ぐ羽根と使い魔による戦闘で前線部隊も多少はダメージを受けているが致命傷には程遠い。
と言う所で、俺は自身の異常に気付いた。
魔力が吸われている。
……イヤな予感がする。
「キュイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
「流星盾!」
高高度にいる鳳凰が大きく息を吸い、赤いレーザーの様なブレスを吐き散らした。
命中する直前に発動した流星盾のバリアが俺を中心に展開される。
「わ!」
「キュア!」
高高度の方で接近戦をしていたフィーロやガエリオン達は辛うじて回避したが、そのブレスが地上部隊に放たれる。
「うわぁあああああああああ!」
一部の部隊が玩具のように吹き飛んで行く。
くそ……厄介な攻撃をまだ隠していたようだ。
「魔力を吸われた! 低高度の奴が使ったさっきの攻撃は、地上部隊で戦う奴から魔力を奪って、その魔力を使って高高度の奴が強力なブレスを吐く!」
だがな、奴は一つ大きなミスを犯した。
霊亀甲にはCマジックスナッチがある。
耐えきった俺の盾から、魔法弾が低高度の鳳凰に向かって飛んでいく。
のだが……バシンと音を立てて魔法弾は消失した。
魔力吸収は無理か。
しかもこうして抑えている手前、判明しているのだけどグラビティフィールドは鳳凰に効果が無いようだ。
どれだけ厄介なんだよ。
「うう……」
「攻撃を受けた者を即座に治療するんだ。アル・ツヴァイト・ヒール! 死なれると敵に操られる! 後方部隊は、早く手伝え」
俺の指示に後方援護をしていた部隊が駆けつけて、吹き飛ばされた連中の生存者を救護して行く。天天素
視界に浮かぶ『8』という数字。
やはり八番目の波相当、というのが正解だろうか。
「お前等、間違ってもトドメを刺すタイミングを誤るんじゃないぞ」
「わかっている!」RU486
錬を筆頭に近付いてくる低高度の方の鳳凰に向かって、各々は攻撃を開始した。
「キュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
高高度にいる鳳凰がこっちに向けて羽ばたきで羽根を降り注がせながら火の雨を降らし始める。
「流星盾!」
気の力を込めた流星盾は範囲と防御力がかなり向上する。
そのお陰で最前線の一部は守られるが、それ以外はまだ足りない。
この辺りは想定内だ。
「お前等、わかっているな?」
振り返ると奴隷は元より、連合軍の連中も頷いた。
さすがに大人数を守りきれる自信は無い。
それでも守るために俺は出来る限りの工夫をする事にした。
俺とアトラが協力して作り出したスキルでは無い技、集を俺は降り注ぐ火の雨に向けて展開させる。
大きな漏斗で集めるかのように上から降り注ぐ火の雨は俺に向けて集まって行く。
この攻撃がどれほどの物かで対処が変わってくる。
その間に低高度で襲い掛かってくる鳳凰に向けて攻撃を集中させる。
降り注ぐ火の雨を盾で受け止めた。
バシバシと傘に雨が当たるような、そんな感覚が盾を通じて伝わってくる。
俺が今装備しているのは強化した霊亀甲だ。
霊亀甲(覚醒)+8 70/70 SR
能力解放……装備ボーナス スキル「Sフロートシールド」「リフレクトシールド」
専用効果 グラビティフィールド Cソウルリカバリー Cマジックスナッチ Cグラビティショット 生命力向上 魔法防御(大) 雷耐性 SPドレイン無効 成長する力
熟練度 100
アイテムエンチャントLv8 防御力10%アップ
ドラゴンスピリット 防御力50 火耐性向上
ステータスエンチャント 魔力30+
鳳凰の攻撃を想定してエンチャントは万全だ。
これで火属性の攻撃は相当軽減できる。
蛮族の鎧にも火耐性が付いているから並大抵の攻撃ではビクともしないはずだ。
現に上から降り注ぐ攻撃に対して、俺は痛くも痒くもない。
ただ、さすがに範囲が大きすぎて連合軍全てを守りきれるはずもない。
だけど、そのくらいは想定済みだ。
「アル・ツヴァイト・レジストファイア!」
連合軍の方も後方援護部隊が、火属性の耐性を上げる魔法を常時掛けている。
これである程度は軽減して、戦いに集中できるはずだ。
ん?
鳳凰が落とした羽根が地面に落ちると、そこから鳳凰の使い魔(眷属型)と言う魔物が出現した。
壁画の通りだ。
前衛の近接部隊が出現する鳳凰の使い魔の殲滅に走る。
よし!
「ラフー!」
俺が取りこぼしてしまった鳳凰の羽根をラトの育てた魔物であるミー君が体を絨毯のように変化させて弾く。
形状変化が得意だからか。こう言う時には便利だな。
「いくよー!」
「キュア!」
フィーロとガエリオンと谷子が高高度にいる鳳凰に向けて飛んでいく。
「てぇい!」
「キュア!」
「うん。行こう!」
ここで空を飛べるようになったフィーロに関しての難点を説明しようと思う。
飛ぶと言う事はそれだけ犠牲にする事が増えると言う事だ。中絶薬
本人曰く、俺が説明したらしいのだが、魔力を使って飛ぶようになった。だから飛ぶのは魔力を相当消費する。
更に、地上に居る時よりも腰に力が入らないので蹴りの威力が大幅に下がっていて、くちばしで突くや爪で握るとかしか出来ないそうだ。
しかも意識を集中するクイック系やスパイラルストライクは使い辛いのだとか。
その点で言えば、昔から飛ぶと言う事が出来るガエリオンは空中戦での短所はそこまで無い。
ブレスが基本攻撃だし、爪による引っかき等、戦闘パターンに大きな変化は無い。
むしろLvの影響か、ホーミングで炎で作られた矢を射出する魔法まで使いこなせる。
ただし、鳳凰は火を使うのが得意だからガエリオンのブレスも属性を変えねば威力が出ない。
まあ、火だから耐性も高いんだけどな。
「うぃんぐ・とるねーどー」
強く羽ばたいたフィーロが回転しながら鳳凰に突進した。
スパイラルストライクに似ているけれど、速度が出ていないな。
「てい!」
そして高高度の鳳凰に引っ付いたかと思うと、力強く蹴りあげた。
ああ、確かにその方法なら蹴りの威力は下がらないな。
「ガエリオン、行くよ」
「キュア!」
『我ここにガエリオンの力を導き、具現を望む。地脈よ。我に力を』
『キュアキュアキュア!』
「ハイウィングスラッシュ!」
ガエリオンの翼が光り輝き、羽ばたく事で風の刃が生み出される。
その刃は高高度の鳳凰に突き刺さった。
「キュイイイイイイイイイ!?」
善戦しているな。
今は俺も目の前の鳳凰に意識を集中させよう。
「はぁあ!」
俺が鳳凰の足を掴んで、隙を作るとラフタリアやフォウル、アトラが逃さず攻撃を加える。
「八極陣天命剣二式!」
「タイガーブレイク!」
「行きます!」
ラフタリアの剣が鳳凰の肩口を切り裂き、フォウルの拳が腹部に刺さり、アトラの突きによって突いた場所が弾ける。
「俺も負けてられない! 重力剣!」
「うん! 兄ちゃんの為に頑張るぞーワンワン!」
錬も負けじとスキルを放ち、鳳凰に飛びついて頭に向けて剣を何度も突きさす。
キールもけるべろすになって鳳凰に噛みついた。
おお……バターを切るかのように錬の切りは鳳凰にきつい一撃を与えているようだ。
キールの攻撃も馬鹿には出来ない様だぞ。
しかし。
鳳凰は霊亀の様な生物的な側面と、精霊や幽霊の気体のような部分を持っているようで、傷付けたその場から、炎のように燃えがって傷が消えて行った。
「く……なんて生命力だ!」
切っても、その場で引っ付いて深い傷には出来そうにないか。
なんて厄介な……。
だが、見た感じではあるが、ダメージが入っていない訳では無いようだ。
やはりシミュレーションした通り、自爆しても平気なように低高度の方はダメージを受けることを視野に入れた戦い方をしてこない。攻撃特化な捨て身戦法で攻撃してくる。
だが、鳳凰を想定した攻撃を俺達は組んでいたので、ブレスも羽ばたきも大してダメージを受けない。威哥王三鞭粒
霊亀のようなSP吸収攻撃の様な厄介な攻撃を低高度の方はしてくる気配が無いのが救いだな。
念には念をとガエリオンの所為で弱体化していたラースシールドも強化しておいたが、使わずに済みそうだ。
霊亀甲の性能がかなり高いから、ある程度追いついて来ているんだけどな。
グロウアップするような事態じゃないし。
まあ、何をしてくるか想定しきれないんだけどさ。
もしかしたらそう言う攻撃をしてくるのかもしれないし……。
鳳凰を掴んで高く飛べないように押さえつけている最中、俺は高高度の方に目を向ける。
すると元康、樹とリーシア、サディナと女王がそれぞれ高高度の鳳凰に向けて攻撃をしている。
「フィーロたん気を付けて! ブリューナク!」
「バードハンティング!」
「トルネードスロー!」
「合唱魔法! ウォーター&ライトニングブリッド!」
「高等集団儀式魔法! レインストーム!」
元康が光の槍を鳳凰に向けて投擲した。
そう言えば、取り巻きの三匹は何をしているんだ?
と思ったら、思いだした。フィロリアル部隊と連携してこっちで戦っているんだった。
樹の矢が拡散しながら鳳凰を射抜き、リーシアの投擲具が竜巻を起こして閉じ込め、サディナが率先して発動させた合唱魔法が命中する。
見た感じ、やはり低高度の方よりもダメージが入っていない。
フィーロとガエリオン、他竜騎兵や空を飛ぶ魔物……グリフィンか? に乗った兵士が善戦しているけれど低高度の方にダメージが入り過ぎている。
このままでは同時に、と言うのは難しいな。
「みんな、もう少し加減しろ。じゃなきゃこっちが先に倒れる! 出来る限りタイミングを合わせるんだ!」
「わかっている!」
「はい!」
前線にいる連中に注意し、俺はエアストシールド、セカンドシールドを小まめに展開させながら低高度の鳳凰を抑えつけた。
後はダメージを抑えつつ、高高度の方のダメージを蓄積させるだけだ。
「!? 尚文様、鳳凰の生命力が回復しています」
「く……やっかいな」
アトラの進言なら間違いない。
攻撃の手を緩めると回復されるか。
かといって本気で行くと先にこっちが倒れる。
難しい塩梅だ。
だが、勝てない相手じゃない。
と言う所で、俺は熱さを感じて鳳凰を見る。
そして、掴んでいた手がすり抜けた。
なんと鳳凰は炎に形を変えて居たのだ。
「全員、俺の後ろに下がれ! エアストシールド! セカンドシールド!」
壁画の中でひび割れていてよくわからなかった部分の攻撃か?
俺は盾を前面に構えて、立ちはだかる。三鞭粒
炎の竜巻と同時に鳳凰が俺達に向かってぶつかってきた。
フィーロのスパイラルストライクに似た突進攻撃だ。
炎を纏っているけれどな。
さすがに無傷とはいかないか。
じりじりと肌が焼かれる感覚がある。
「大丈夫か!?」
低高度の鳳凰の突進攻撃を正面から受け止めたお陰か、後方の連中には被害が無い。
まあ、降り注ぐ羽根と使い魔による戦闘で前線部隊も多少はダメージを受けているが致命傷には程遠い。
と言う所で、俺は自身の異常に気付いた。
魔力が吸われている。
……イヤな予感がする。
「キュイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
「流星盾!」
高高度にいる鳳凰が大きく息を吸い、赤いレーザーの様なブレスを吐き散らした。
命中する直前に発動した流星盾のバリアが俺を中心に展開される。
「わ!」
「キュア!」
高高度の方で接近戦をしていたフィーロやガエリオン達は辛うじて回避したが、そのブレスが地上部隊に放たれる。
「うわぁあああああああああ!」
一部の部隊が玩具のように吹き飛んで行く。
くそ……厄介な攻撃をまだ隠していたようだ。
「魔力を吸われた! 低高度の奴が使ったさっきの攻撃は、地上部隊で戦う奴から魔力を奪って、その魔力を使って高高度の奴が強力なブレスを吐く!」
だがな、奴は一つ大きなミスを犯した。
霊亀甲にはCマジックスナッチがある。
耐えきった俺の盾から、魔法弾が低高度の鳳凰に向かって飛んでいく。
のだが……バシンと音を立てて魔法弾は消失した。
魔力吸収は無理か。
しかもこうして抑えている手前、判明しているのだけどグラビティフィールドは鳳凰に効果が無いようだ。
どれだけ厄介なんだよ。
「うう……」
「攻撃を受けた者を即座に治療するんだ。アル・ツヴァイト・ヒール! 死なれると敵に操られる! 後方部隊は、早く手伝え」
俺の指示に後方援護をしていた部隊が駆けつけて、吹き飛ばされた連中の生存者を救護して行く。天天素
2014年7月1日星期二
異世界と現代
あれから数ヵ月後。
波と言うかクソ女神の世界侵略が終わり、復興作業もある程度目処が経った頃の事だ。
錬、樹、元康の聖武器がそれぞれ決断を迫った。
俺の盾は、というかアトラは……まあ、自分の兄貴をからかいながら俺を日々誘惑しようとしてる。Xing霸 性霸2000
その時はさすがに教えてくれたけどさ。
「で? お前等はもう決めたのか?」
俺は昼飯の準備をしながら勇者共の話を聞き、応じていた。
「ああ、俺はこの世界に留まろうかと思ってるよ」
そう答えたのは錬だ。
何でも前回行った異世界でもやはり納得の出来る結末は歩めなかったらしい。
だからいつでも元の世界に帰ろうと思えば帰れる様、剣に願ったそうだ。
錬は現在、世界融合の所為で各地で起こる文化摩擦を止める為に女騎士と共にがんばっている。
女騎士は功績を認められて、グラスの世界の住人との外交をしているそうだ。
出来る限り差別の無い世界にする為に率先して行動している。
谷子はラト、ガエリオンとミー君と共に、グラスの世界の魔物の分布を調査する旅に出ている。
ま、夜になるとポータルで村に帰ってくるけどな。
「私は最初から帰る気はありませんぞ! 世界も救われた今、約束通りフィーロたんの心を掴むために日夜がんばりますぞ!」
「「「ぶー!」」」
元康は……うん。一日中フィロリアルと戯れてる。
一応はゼルトブルとかのフィロリアル調教師から色々と教わっているけどな。
ぶっちゃけ、教える事の方が多いんじゃないかと思う。
三匹フィロリアルは相変わらず元康と一緒だ。
「僕も……この世界に残る選択を選びました」
「そうか」
「イツキ様……頑張りましょうね」
「はい」
樹はリーシアと一緒に世直しの旅に出る予定だ。
この前、リーシアの両親と会って、今後の事を話し合ったらしい。
その辺りで若干いざこざがあったとかだけど、円満に解決したとか。
詳しくは聞いちゃいない。
まあ、リーシアの話だとリーシアが樹と釣り合っていないのではないかと心配した両親と揉めたと言う事らしい。
親も押しが弱いのな。
俺が冗談でも結婚を前提に付き合っているとか言ったらショック死しそうだな。
「どいつも残留か」
「尚文はどうするんだ? あれだけ帰りたがっていたじゃないか」
「まあ、一度帰ったからな。その辺りの決意は……まあ」
「じゃあ残るのか?」
「んー……」
どうしたものかな。
説明すると面倒だ。
「一応は……お前達からしたら残ると言うのが正しいか。その代わりに便利な神の力は殆ど使えなくなる」
「そうなのか?」
「とある決断の結果かな。精霊の願いを叶える代価みたいなもんだ。代わりに今後、波は絶対に来ないから安心してくれ」
元々この俺には過ぎた力みたいなもんだからな。
それはラフタリアもアトラも同じだ。
昨日の夜。
「尚文様。どうかお決めください」
アトラと言うか盾の精霊と他の精霊たちが集まって俺に事情を説明した。
ラフタリアも一緒に居て、話しあう。
「決断か……」
「そうです。どうしましょう?」
選択か。
他の召喚された勇者と俺とでは異なる選択がある。
その辺りの説明は受けていた。
あのアークって奴が説明していた戻れない道に既に立っている俺が選択する未来か。
というか既に選択肢では無いな。
何をするかだった。
一つ目は……まあ簡単に言うならこの世界に残って、日々を過ごす。
なんだかんだで生きづらい世界だけど、みんなといれば死ぬまで楽しく過ごせるような気はする。
思い返せばハーレムが出来ているし、後の世を考えると色々と良い目にも会えそうではある。
この世界に来た当初に思い描いた未来が目の前にあるな。
ラフタリアには苦労を掛けそうだけど、みんなの事を捨てきれない。
なんだかんだで俺の事を好きだって言う信頼できる奴には応えてやりたいと思うし……。
傲慢だけど、世界を救ったんだからそれくらい許されても良いだろ。
ラフタリアの了承は得ているし。
二つ目は……元の世界に戻ってラフタリアと一緒に過ごす。
盾の報酬である死ぬまで安泰と言うのも叶えてくれるそうだ。
今の俺でもその力を抽出できる。
元の世界に戻ったからと言って、魔法が使えない訳じゃない。絶對高潮
それも悪くは無い。
このまま異世界にいたら発情しかけている連中に押し倒されかねないのは確かだ。
特にサディナ辺り、どうやら本気で俺を狙っているらしく、ラフタリアといつゴールするかと毎日聞いてくる。
順番を守る気なのはわかるので、現状、下手にラフタリアに手を出すとあの酒乱がアグレッシブに行動しかねない。
決意を見せないといけない。
だから元の世界に帰るのも手……だ。
納得する形で世界は救われた訳だしな。
というのは、既になぁ……。
「俺は――」
俺はとある選択をした。
「わかりました。ナオフミ様らしい、良い決断だと私も思います」
「そうですわ。さすが尚文様、強欲に誰もが喜ぶ選択だと思いますわ」
「はいはい。じゃあ……やるぞ」
「はい」
「わかりましたわ」
この選択にラフタリアもアトラも頷いた。
結果、この俺はここにいる。
異世界に残るという選択をした俺は翌日の昼間にのどかにも料理の準備をしている訳だ。
「ナーオフミちゃーん。ご飯まだかしら?」
サディナがやってきた。
コイツは最近、近隣の海のサルベージと言うかトレジャーハントをやりおえ、グラスの世界の方の海を探検している。
なんだかんだで銛の勇者になったからか物凄く強い。並大抵の魔物じゃ歯が立たない。
で、夜になるとポータルで戻って来ては俺を狙っている。
ぶっちゃけると、ラフタリア、アトラを除くとフィーロよりもアクティブに俺にそう言った話題を提供してくる。
俺の何処に魅力があるのかとは思う時もあるが、酒が強いのがそんなに気に入っているのだろうか。
「ああ、はいはいもう直ぐ出来るから待ってろ」
「はーい。さ、みんなご飯ができるまで準備よ」
「「「はーい!」」」
相変わらず、俺の村は身寄りの無い奴隷が日々、奴隷商の斡旋でやってくる。
もう村じゃなくて規模で言うと町になっているけどな。
卒業と言うか自活する能力を得た奴等は出て行くのもいる。
波と戦う必要は無いから、村に留まらせる必要は無い。
今じゃ国の兵士として就職したり、何でも屋として冒険者をする者もいる。
蘇ったババアの指導の元、奴隷共はすくすくと成長している。
ただ、リーシアやラフタリア、女騎士程の逸材は稀だそうだ。
サディナは論外。
ま、他に行商をしているのもいるけどさ。こっちは俺の担当か?
行商と言えばフィーロ。
アイツは何をしているかと言うと、メルティと一緒に世界一周の旅に出ている。
厳密にはフィーロのアイドルツアーか。
各国の関係を良好にする為に女王としてメルティが外交に出て、フィーロが親善大使としてアイドルをする感じだ。
フィーロは天真爛漫な所があるから人には好かれるだろ。
そのメルティの考えも上手くいって、外交は中々良い結果を実らせている。
ま、一応はこの世界で一番大きな国との外交だからグラスの方の世界でも相手は警戒するだろうけどさ。
クズや女王も国の為に頑張っている。
なんだかんだで戦争の爪痕は深くて、色々と大変だとか。
クソ女神の施した蘇生はかなり雑な物だから女王もババアもどれだけ生きていられるかわからない。
それでもクズやリーシア、ババアの息子は満足している。
出来る限り長生きしてくれると良いな。
「そうか」
俺の返答に錬達は頷いて飯を待つ。
お前等も手伝えよ。
なんで俺が炊事担当になってんだよ。
「ナオフミ様。お食事を終えたらどうしますか?」
「そうだな。確か今日はクソ女神の力を授かったらしき転生者を捕まえに行くんだったか」
あのクソ女神から転生させてもらった奴は未だに潜んでいるっぽい。美人豹
全てを倒した訳では無かったのだ。
で、平和になった今更になって最強を求めて暴れ出す事が多い。
山奥で修業って奴?
クソ女神の声にも応じず、強さを追い求めたり、クソ女神の策略に気づいて道具を作って眠っていた奴もいるようなのだ。
この前の奴はご丁寧に滅んだ世界でも生きられる道具を作ったなんて屁理屈を述べていたな。
怪しさ抜群だ。
何百年前の奴かは知らないがな。
昔、歴史に名を残した錬金術師だったな。
そいつと似たような伝承が複数あるとか困りものだ。
やがて、この英雄は帰還するとかそう言った伝承のある弱小宗教が俺達の世界にもグラスの世界にもある。
そう言う奴を捕まえるのが勇者の仕事でもある。
ああ、そうだ。
グラスの奴、世界が平和になってからしばらくして行方知れずになった。
神の力が残っていた頃に探したんだけど、グラスの語る友人と同じ壁にぶち当たった。
その前に、グラスは自分に何かあったとしても無理に探さないで下さいと可能性を示唆していたので、探していない。
どうにかなるだろ。
それにアトラが扇の精霊ともコンタクトが取れる。
話によれば、問題は無いそうだ。
グラスはあくまで勇者代表であっただけで国の代表では無いらしい。
メルティ辺りが交渉事をし出した辺りで暇そうに鍛錬をしていた。
「そうですよ」
「わかった。さて、飯が出来たぞ。これが終わったら行くか」
飯を作り終えた俺は厨房から離れて他の奴に任せる。
「兄ちゃんのご飯、相変わらずうめー!」
今、騒いだのはキールだ。
相変わらず気持ち悪いクレープの木の面倒を見ている。
それ以外は行商をしているか、フォウル相手にじゃれてる。
フォウルはアトラにからかわれる事が多いが村の連中、とりわけ来たばかりの奴隷の面倒を見る事をライフワークにしている。
今では村のリーダー的存在だ。
「ラフー?」
「ああ、はいはい。ラフちゃんも食べるんだぞ」
「ラフー!」
ラフちゃんはラフ種の総統をしていて、この辺りの魔物の治安維持を務めている……らしい。
他は船の勇者としてサディナの仕事の手伝いをしている。
ぶっちゃけるとサディナの相棒がラフちゃんだ。
他に魔物枠だとするとフィトリアか。
フィトリアは元々フィロリアルの縄張りとかそういう関係もあって、既にいない。
まあ、元々は元康の所為なんだけどな。
元康から逃げるように出て行った。
だが、時々フィーロを使って俺に助けを求めてくる。
何処へ逃げても元康が追いかけてくるようになったのか……?
元康曰く、フィーロの次に好きなフィロリアル。
フィーロ曰く、元康を押し付けたい相手。
ま、こんな所か。
武器屋の親父は相変わらず忙しそうだ。
幸いと言うか、隣の町に引っ越してきてイミアの叔父と一緒に武具屋を開いている。
イミアも協力して、武器から服まで幅広い店となっているとか。
他にも色々とあるけれど、俺の知る連中だとこんな所かな。
奴隷商や詐欺商、アクセサリー商は相変わらず儲かっているらしいし。
エレナには宴の時に考えた嫌がらせもさせた。
そんな訳で色々と大変な日々だけど、楽しく過ごしている。
これからも……続いてくれる事を祈るしかないな。
「そうだ。この村はどんな名前を付けようか? まだ決めてないよな、兄ちゃん!」
「名前? そう言えば付けてなかったな。前はどんな名前だったんだ? それで良いだろ」
「えー、今じゃ兄ちゃんが開拓した村で有名じゃん。別の名前にしようぜ。な? ラフタリアちゃん」
「ええ、そうですね」
「良いんじゃないか? 尚文が開拓した村なんだから」
錬が笑みを浮かべながらキールの提案に頷く。
そう言われてもな……。
どんな名前にしようか考えていると元康が口を開いた。超級脂肪燃焼弾
「私はフィーロラブゥ村が良いですぞ」
「却下だ」
「尚文さんが決めるのが良いと僕は思いますよ」
「そうですね」
「そうか?」
「えー……兄ちゃんが決めるのか? みんなで話し合って決めようぜ」
「なんでだキール。お前なら頷くと思ったんだが」
「だって兄ちゃん。ネーミングセンスあんまりねえじゃん」
「「「確かに」」」
おい。なんで同意する奴が多いんだよ。
「フィーロの名前もフィロリアルと言う名前から安直に決めましたし、ラフちゃんは私の名前を区切っただけです」
「ラフー?」
「だからさ、かなり適当な名前になると思うぜ」
「キール、てめぇ……」
覚えたからな。覚えておけよ。
「じゃあさ、尚文の名字である岩谷から取って、ロックバレーってのはどうだ?」
錬が閃いたかのように手を叩いて言い放つ。
その名前はネーミングセンスがあるのか?
いや、無いだろ。
「なんか響きが良いな。どういう意味なんだ?」
「岩と言うのは俺の世界じゃロックとも言うんだ。同様に谷ってのはバレーって言うんだ。だからロックバレー」
「良いなそれ!」
「そう言えば……ナオフミ様の世界の言語にありましたよね」
ラフタリアが俺の世界に行った時の事を思い出していた。
英語か。
「よーし! じゃあこの村は今日からロックバレーだ。みんな! それで良いよな?」
「「「うん!」」」
「おい、お前等、ここは海が見えるだけで絶壁はあるが谷は無いだろ……」
と言う俺の異議は無視され、この村はロックバレーと命名された。
こんな感じで俺の異世界での日々は……まだまだ続くようだ。
日本、某日現代。
「健やかな時も病める時も――」
今日、俺はラフタリアとの結婚式をしている。
異世界から戻った、この俺は自分でも驚くほどとんとん拍子に事が運び、就職に成功。
今じゃ大企業で色々と仕事をしている。
まあ、元々顔が広かった事もあって、ネットの友人が実は大企業の重役で俺を是非にとスカウトしたんだけどな。
しかも会社は現在進行形で不景気なのに他の企業も真っ青の業績を上げている。
きっと因果律とやらの影響だろう。
大学卒業後、俺が就職して一年経った頃、ラフタリアと結婚する事になった。
異世界での経験と言うか商魂たくましくなったお陰で、一年で相当の実績を叩き出した。
神としての力は元の世界に戻る時の俺とラフタリアは捨て去って、今じゃ軽い魔法しか使えない。終極痩身
波と言うかクソ女神の世界侵略が終わり、復興作業もある程度目処が経った頃の事だ。
錬、樹、元康の聖武器がそれぞれ決断を迫った。
俺の盾は、というかアトラは……まあ、自分の兄貴をからかいながら俺を日々誘惑しようとしてる。Xing霸 性霸2000
その時はさすがに教えてくれたけどさ。
「で? お前等はもう決めたのか?」
俺は昼飯の準備をしながら勇者共の話を聞き、応じていた。
「ああ、俺はこの世界に留まろうかと思ってるよ」
そう答えたのは錬だ。
何でも前回行った異世界でもやはり納得の出来る結末は歩めなかったらしい。
だからいつでも元の世界に帰ろうと思えば帰れる様、剣に願ったそうだ。
錬は現在、世界融合の所為で各地で起こる文化摩擦を止める為に女騎士と共にがんばっている。
女騎士は功績を認められて、グラスの世界の住人との外交をしているそうだ。
出来る限り差別の無い世界にする為に率先して行動している。
谷子はラト、ガエリオンとミー君と共に、グラスの世界の魔物の分布を調査する旅に出ている。
ま、夜になるとポータルで村に帰ってくるけどな。
「私は最初から帰る気はありませんぞ! 世界も救われた今、約束通りフィーロたんの心を掴むために日夜がんばりますぞ!」
「「「ぶー!」」」
元康は……うん。一日中フィロリアルと戯れてる。
一応はゼルトブルとかのフィロリアル調教師から色々と教わっているけどな。
ぶっちゃけ、教える事の方が多いんじゃないかと思う。
三匹フィロリアルは相変わらず元康と一緒だ。
「僕も……この世界に残る選択を選びました」
「そうか」
「イツキ様……頑張りましょうね」
「はい」
樹はリーシアと一緒に世直しの旅に出る予定だ。
この前、リーシアの両親と会って、今後の事を話し合ったらしい。
その辺りで若干いざこざがあったとかだけど、円満に解決したとか。
詳しくは聞いちゃいない。
まあ、リーシアの話だとリーシアが樹と釣り合っていないのではないかと心配した両親と揉めたと言う事らしい。
親も押しが弱いのな。
俺が冗談でも結婚を前提に付き合っているとか言ったらショック死しそうだな。
「どいつも残留か」
「尚文はどうするんだ? あれだけ帰りたがっていたじゃないか」
「まあ、一度帰ったからな。その辺りの決意は……まあ」
「じゃあ残るのか?」
「んー……」
どうしたものかな。
説明すると面倒だ。
「一応は……お前達からしたら残ると言うのが正しいか。その代わりに便利な神の力は殆ど使えなくなる」
「そうなのか?」
「とある決断の結果かな。精霊の願いを叶える代価みたいなもんだ。代わりに今後、波は絶対に来ないから安心してくれ」
元々この俺には過ぎた力みたいなもんだからな。
それはラフタリアもアトラも同じだ。
昨日の夜。
「尚文様。どうかお決めください」
アトラと言うか盾の精霊と他の精霊たちが集まって俺に事情を説明した。
ラフタリアも一緒に居て、話しあう。
「決断か……」
「そうです。どうしましょう?」
選択か。
他の召喚された勇者と俺とでは異なる選択がある。
その辺りの説明は受けていた。
あのアークって奴が説明していた戻れない道に既に立っている俺が選択する未来か。
というか既に選択肢では無いな。
何をするかだった。
一つ目は……まあ簡単に言うならこの世界に残って、日々を過ごす。
なんだかんだで生きづらい世界だけど、みんなといれば死ぬまで楽しく過ごせるような気はする。
思い返せばハーレムが出来ているし、後の世を考えると色々と良い目にも会えそうではある。
この世界に来た当初に思い描いた未来が目の前にあるな。
ラフタリアには苦労を掛けそうだけど、みんなの事を捨てきれない。
なんだかんだで俺の事を好きだって言う信頼できる奴には応えてやりたいと思うし……。
傲慢だけど、世界を救ったんだからそれくらい許されても良いだろ。
ラフタリアの了承は得ているし。
二つ目は……元の世界に戻ってラフタリアと一緒に過ごす。
盾の報酬である死ぬまで安泰と言うのも叶えてくれるそうだ。
今の俺でもその力を抽出できる。
元の世界に戻ったからと言って、魔法が使えない訳じゃない。絶對高潮
それも悪くは無い。
このまま異世界にいたら発情しかけている連中に押し倒されかねないのは確かだ。
特にサディナ辺り、どうやら本気で俺を狙っているらしく、ラフタリアといつゴールするかと毎日聞いてくる。
順番を守る気なのはわかるので、現状、下手にラフタリアに手を出すとあの酒乱がアグレッシブに行動しかねない。
決意を見せないといけない。
だから元の世界に帰るのも手……だ。
納得する形で世界は救われた訳だしな。
というのは、既になぁ……。
「俺は――」
俺はとある選択をした。
「わかりました。ナオフミ様らしい、良い決断だと私も思います」
「そうですわ。さすが尚文様、強欲に誰もが喜ぶ選択だと思いますわ」
「はいはい。じゃあ……やるぞ」
「はい」
「わかりましたわ」
この選択にラフタリアもアトラも頷いた。
結果、この俺はここにいる。
異世界に残るという選択をした俺は翌日の昼間にのどかにも料理の準備をしている訳だ。
「ナーオフミちゃーん。ご飯まだかしら?」
サディナがやってきた。
コイツは最近、近隣の海のサルベージと言うかトレジャーハントをやりおえ、グラスの世界の方の海を探検している。
なんだかんだで銛の勇者になったからか物凄く強い。並大抵の魔物じゃ歯が立たない。
で、夜になるとポータルで戻って来ては俺を狙っている。
ぶっちゃけると、ラフタリア、アトラを除くとフィーロよりもアクティブに俺にそう言った話題を提供してくる。
俺の何処に魅力があるのかとは思う時もあるが、酒が強いのがそんなに気に入っているのだろうか。
「ああ、はいはいもう直ぐ出来るから待ってろ」
「はーい。さ、みんなご飯ができるまで準備よ」
「「「はーい!」」」
相変わらず、俺の村は身寄りの無い奴隷が日々、奴隷商の斡旋でやってくる。
もう村じゃなくて規模で言うと町になっているけどな。
卒業と言うか自活する能力を得た奴等は出て行くのもいる。
波と戦う必要は無いから、村に留まらせる必要は無い。
今じゃ国の兵士として就職したり、何でも屋として冒険者をする者もいる。
蘇ったババアの指導の元、奴隷共はすくすくと成長している。
ただ、リーシアやラフタリア、女騎士程の逸材は稀だそうだ。
サディナは論外。
ま、他に行商をしているのもいるけどさ。こっちは俺の担当か?
行商と言えばフィーロ。
アイツは何をしているかと言うと、メルティと一緒に世界一周の旅に出ている。
厳密にはフィーロのアイドルツアーか。
各国の関係を良好にする為に女王としてメルティが外交に出て、フィーロが親善大使としてアイドルをする感じだ。
フィーロは天真爛漫な所があるから人には好かれるだろ。
そのメルティの考えも上手くいって、外交は中々良い結果を実らせている。
ま、一応はこの世界で一番大きな国との外交だからグラスの方の世界でも相手は警戒するだろうけどさ。
クズや女王も国の為に頑張っている。
なんだかんだで戦争の爪痕は深くて、色々と大変だとか。
クソ女神の施した蘇生はかなり雑な物だから女王もババアもどれだけ生きていられるかわからない。
それでもクズやリーシア、ババアの息子は満足している。
出来る限り長生きしてくれると良いな。
「そうか」
俺の返答に錬達は頷いて飯を待つ。
お前等も手伝えよ。
なんで俺が炊事担当になってんだよ。
「ナオフミ様。お食事を終えたらどうしますか?」
「そうだな。確か今日はクソ女神の力を授かったらしき転生者を捕まえに行くんだったか」
あのクソ女神から転生させてもらった奴は未だに潜んでいるっぽい。美人豹
全てを倒した訳では無かったのだ。
で、平和になった今更になって最強を求めて暴れ出す事が多い。
山奥で修業って奴?
クソ女神の声にも応じず、強さを追い求めたり、クソ女神の策略に気づいて道具を作って眠っていた奴もいるようなのだ。
この前の奴はご丁寧に滅んだ世界でも生きられる道具を作ったなんて屁理屈を述べていたな。
怪しさ抜群だ。
何百年前の奴かは知らないがな。
昔、歴史に名を残した錬金術師だったな。
そいつと似たような伝承が複数あるとか困りものだ。
やがて、この英雄は帰還するとかそう言った伝承のある弱小宗教が俺達の世界にもグラスの世界にもある。
そう言う奴を捕まえるのが勇者の仕事でもある。
ああ、そうだ。
グラスの奴、世界が平和になってからしばらくして行方知れずになった。
神の力が残っていた頃に探したんだけど、グラスの語る友人と同じ壁にぶち当たった。
その前に、グラスは自分に何かあったとしても無理に探さないで下さいと可能性を示唆していたので、探していない。
どうにかなるだろ。
それにアトラが扇の精霊ともコンタクトが取れる。
話によれば、問題は無いそうだ。
グラスはあくまで勇者代表であっただけで国の代表では無いらしい。
メルティ辺りが交渉事をし出した辺りで暇そうに鍛錬をしていた。
「そうですよ」
「わかった。さて、飯が出来たぞ。これが終わったら行くか」
飯を作り終えた俺は厨房から離れて他の奴に任せる。
「兄ちゃんのご飯、相変わらずうめー!」
今、騒いだのはキールだ。
相変わらず気持ち悪いクレープの木の面倒を見ている。
それ以外は行商をしているか、フォウル相手にじゃれてる。
フォウルはアトラにからかわれる事が多いが村の連中、とりわけ来たばかりの奴隷の面倒を見る事をライフワークにしている。
今では村のリーダー的存在だ。
「ラフー?」
「ああ、はいはい。ラフちゃんも食べるんだぞ」
「ラフー!」
ラフちゃんはラフ種の総統をしていて、この辺りの魔物の治安維持を務めている……らしい。
他は船の勇者としてサディナの仕事の手伝いをしている。
ぶっちゃけるとサディナの相棒がラフちゃんだ。
他に魔物枠だとするとフィトリアか。
フィトリアは元々フィロリアルの縄張りとかそういう関係もあって、既にいない。
まあ、元々は元康の所為なんだけどな。
元康から逃げるように出て行った。
だが、時々フィーロを使って俺に助けを求めてくる。
何処へ逃げても元康が追いかけてくるようになったのか……?
元康曰く、フィーロの次に好きなフィロリアル。
フィーロ曰く、元康を押し付けたい相手。
ま、こんな所か。
武器屋の親父は相変わらず忙しそうだ。
幸いと言うか、隣の町に引っ越してきてイミアの叔父と一緒に武具屋を開いている。
イミアも協力して、武器から服まで幅広い店となっているとか。
他にも色々とあるけれど、俺の知る連中だとこんな所かな。
奴隷商や詐欺商、アクセサリー商は相変わらず儲かっているらしいし。
エレナには宴の時に考えた嫌がらせもさせた。
そんな訳で色々と大変な日々だけど、楽しく過ごしている。
これからも……続いてくれる事を祈るしかないな。
「そうだ。この村はどんな名前を付けようか? まだ決めてないよな、兄ちゃん!」
「名前? そう言えば付けてなかったな。前はどんな名前だったんだ? それで良いだろ」
「えー、今じゃ兄ちゃんが開拓した村で有名じゃん。別の名前にしようぜ。な? ラフタリアちゃん」
「ええ、そうですね」
「良いんじゃないか? 尚文が開拓した村なんだから」
錬が笑みを浮かべながらキールの提案に頷く。
そう言われてもな……。
どんな名前にしようか考えていると元康が口を開いた。超級脂肪燃焼弾
「私はフィーロラブゥ村が良いですぞ」
「却下だ」
「尚文さんが決めるのが良いと僕は思いますよ」
「そうですね」
「そうか?」
「えー……兄ちゃんが決めるのか? みんなで話し合って決めようぜ」
「なんでだキール。お前なら頷くと思ったんだが」
「だって兄ちゃん。ネーミングセンスあんまりねえじゃん」
「「「確かに」」」
おい。なんで同意する奴が多いんだよ。
「フィーロの名前もフィロリアルと言う名前から安直に決めましたし、ラフちゃんは私の名前を区切っただけです」
「ラフー?」
「だからさ、かなり適当な名前になると思うぜ」
「キール、てめぇ……」
覚えたからな。覚えておけよ。
「じゃあさ、尚文の名字である岩谷から取って、ロックバレーってのはどうだ?」
錬が閃いたかのように手を叩いて言い放つ。
その名前はネーミングセンスがあるのか?
いや、無いだろ。
「なんか響きが良いな。どういう意味なんだ?」
「岩と言うのは俺の世界じゃロックとも言うんだ。同様に谷ってのはバレーって言うんだ。だからロックバレー」
「良いなそれ!」
「そう言えば……ナオフミ様の世界の言語にありましたよね」
ラフタリアが俺の世界に行った時の事を思い出していた。
英語か。
「よーし! じゃあこの村は今日からロックバレーだ。みんな! それで良いよな?」
「「「うん!」」」
「おい、お前等、ここは海が見えるだけで絶壁はあるが谷は無いだろ……」
と言う俺の異議は無視され、この村はロックバレーと命名された。
こんな感じで俺の異世界での日々は……まだまだ続くようだ。
日本、某日現代。
「健やかな時も病める時も――」
今日、俺はラフタリアとの結婚式をしている。
異世界から戻った、この俺は自分でも驚くほどとんとん拍子に事が運び、就職に成功。
今じゃ大企業で色々と仕事をしている。
まあ、元々顔が広かった事もあって、ネットの友人が実は大企業の重役で俺を是非にとスカウトしたんだけどな。
しかも会社は現在進行形で不景気なのに他の企業も真っ青の業績を上げている。
きっと因果律とやらの影響だろう。
大学卒業後、俺が就職して一年経った頃、ラフタリアと結婚する事になった。
異世界での経験と言うか商魂たくましくなったお陰で、一年で相当の実績を叩き出した。
神としての力は元の世界に戻る時の俺とラフタリアは捨て去って、今じゃ軽い魔法しか使えない。終極痩身
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