私の恋はいつも片想いだった。
どんなに恋をしてもそれが実った事はない。
初めて人を好きになったのは小学生3年生の頃。
同じクラスの男の子で、私は彼を小学校を卒業するまでずっと好きだった。三鞭粒
結局はその恋は誰かに知られることなく、彼に伝える事なく自然消滅してしまったけれども、その当時はそれなりに充実した気持ちだった。
それは誰もが一度はした恋。
でも、今、私がしている恋愛は……、
『先に言っておくが、俺が嫌になったらすぐに別れるし、俺が梨乃を愛せる保障はない。それでもいいのか?』
『いいよ。私は観治を愛してる。絶対に私に振り向いてもらうから。そうすれば問題ないよね?』
多分、少数の部類に入る珍しいケースだ。
恋人として傍にいられるだけでいい。
想いが届かなくたって、彼と同じ時間を共有できる。
いつか私に振り向いてくれて、私の事を好きになってくれると思っていた。
だけど、現実はドラマのような甘い恋物語のようには上手くいかない。
観治は私の事を嫌ってはいないようだけど、好きではないみたい。
どうすれば、私を好きになってくれるのだろう。
その日は観治とは履修科目の違いで私は暇な時間があった。
そこで、久しぶりに友人達と一緒に話す時間ができた。
「それで、私買っちゃったのよ」
「そんなに高いのに?物好きだね~」
「でも、私はその気持ちわかるな。だって、ホントに自分が欲しい物だったら高くても買いたいじゃない」
友人達とひとしきり話をしていたら、
「そういえば、梨乃のとこは上手くいってるの?」
突然、友人の一人、桜(さくら)がそんな事を言った。
「上手くって何が?」
「恋人よ。恋人。あの“観治”君と付き合ってるんでしょ」
彼女は悪戯っぽくそういった。
「え、そうなの?梨乃ったらいつのまにそんな仲になってるのよ」
「もうっ!桜、秘密にしておいてって言ったのに……」
口の軽い友人に話したのはまずかったか。
「いいじゃない。有紀(ゆき)に内緒にする理由はないんだし」
観治はこの大学ではそれなりに人気があった。
だから、恋人だと公にはしづらくて、友達である彼女らにも内緒にしていた。
でも、本当の理由は私だけが彼を愛している複雑な恋人関係だからだ。
ちゃんとした恋人になるまでは黙っていようと思っていたのだが、先日、一緒にいるところを桜に見られてしまったからこうなる予想はしていた。
「それはそうだけど……」
確かにそこまでして隠す理由もない。威哥王三鞭粒
「で、二人はどこで知り合ったの?」
「どこでって?大学内だけど……」
「そういえば、私も詳しくは知らないね。いい機会だからちゃんと教えてよ」
彼女達に詰め寄られ、私は仕方なしに私達の本当の関係を除いて話した。
「へぇ、真理奈先輩の紹介だったんだ」
「それにしても意外だよね。観治君と梨乃が付き合うなんて。アノ人って結構冷めてるとこない?付き合いにくいとかじゃないんだけど、いつも冷静沈着って感じ」
それは私も感じている事だった。
彼はすべての物事に関してすごく冷めてる。
何があったのかは知らないけれど、私に本気になってくれないのもそういう所も関係あるんじゃないだろうか。
「そうだね。観治君にはそういう所あるよね。男の子にはそんなに冷たくないんだけど。でも、優しくないわけでもないし。何か女の子に嫌な思い出でもあるとか?」
「例えば、恋人を亡くしたとか、恋人にフラれたとか?はたまた、恋人が失踪したとか」
「どうして恋人にこだわるの?」
私はそういうのに鈍い。
彼女達みたいに積極的に恋愛をしてきた経験もない。
有紀はそんな私をやれやれというような目で見て、
「あのね、梨乃。男が女を避ける理由なんて“恋人”以外にないでしょ。それとも梨乃の恋人は“異性”に興味のない“ホモ”な人?」
「ち、違うわよ!」
「だったら、恋人関係で何かあったくらいしかないじゃない」
本当にそうなのだろうか。
彼が私に冷たいのは、何か過去に影響があるの?
その時の私はその答えを知らないでいた。
いつものように帰ったら、夕食をつくる。
彼のために作り始めた料理だが、元々はそんなに得意な方ではなかった。
最初の頃は失敗ばかりしていたし、おいしくないモノを観治に食べさせていた。
頑張って、何とか食べられるモノを作った料理を観治においしいって言われた時が一番うれしい。
今はまともに料理できるくらいに腕は上達した。
だからというわけでもないけど、観治の反応が薄いのは残念。
時計を見ると既に六時過ぎ。
そろそろ帰ってくる頃だと思うんだけど……。
チャララ……♪
居間のほうから、携帯電話の着信音がしている。
『観治』
ディスプレイには観治の名前。
こんな時間にどうしたんだろう?
「もしもし?」
『あ。梨乃。今日は帰るの遅くなりそうなんだ』
「そうなの?」
『ついさっき昔の友達にあってな。これから飲みに行こうって事になったんだよ』
いつもよりも慌しい声。
観治がウソをついてるのには薄々気づいていた。
私は彼がお酒はあまり好きじゃないのを知っている。
「そう。あんまり飲みすぎちゃダメだよ」
でも、私はそれ以上追及しない。
私は彼を束縛する事ができないから。
『ああ。夜中になるかもしれないから、先に寝てろよ』
「うん」
ピッと携帯が切れる音がした。
ふとそんな時に寂しさを感じる。
私は彼にとって何なんだろう、と。
彼と一緒に暮らし始めてもう一年になろうとしている。威哥王
でも、心も身体も距離が縮まらない。
そんな不安を抱きながらも、私はただ彼の帰りを待つ事しかできない。
観治は……またあの女の人と会ってるのだろうか?
疑ってしまう自分が嫌い。
私にはそんな権利もないのはわかっているのに、普通の恋人の気持ちになる時がある。
他の女の人と一緒にいて欲しくないって気持ちに……。
不安になるのは自然だと思うけど、私達の場合はそれを口にしちゃいけない。
そんな関係を続けていられるほどホントは私は強くない。
だけど、僅かな期待があるから耐え続ける。
いつかホントの恋人になれるかもしれないから。
でも……いつかなんてないかもしれない。
そうやって自分を励ましてるだけ。
わかってる。
最近、自分が観治を好きっていう気持ちよりも、不安に負けそうになっている事を。
ホントは辛くて、泣きたいくらいに切ない気持ちで毎日を過ごしている。
胸が苦しくて、彼の前にいられないくらいに。
だけど、私は彼の前では笑顔でいなくちゃいけない。
涙は見せたくないし、不安も表に出しちゃいけない。
その代わり、観治が私を受け入れてくれれば溜め込んだ感情を彼にぶつけるの。
本音では、こんな恋したくない。
好きだからって、自分を犠牲にしすぎるのもダメだから。
彼の傍にいられればいい、そんな言葉ですむようなものじゃない。
ホントは普通の恋人のように接して、何も気負いせずに純粋に恋愛を楽しみたい。
私はドラマのような甘い恋がしたくて、彼を好きになったワケじゃない。
でも、傷つくのにも限界があるから……。
だから、早く私の事を好きになってよ……観治。
私が不安に負けてしまう前に。MaxMan
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