2012年5月16日星期三

愛の契約

今日でふたりっきりの生活はお終い、またいつもの生活に戻る。 ふたりだけっていうのは寂しくもあり、楽しくもあった。 祥吾ちゃんも同じ気持ちを感じてくれていると思う。福源春  「……どうかな?美味しい?」 朝御飯を作ってあげるのにも少しだけ慣れてきた。 今日は私の好きな和食メニュー。 自分でもけっこう自信作に仕上がった料理がテーブルに並んでいる。 彼は私の作った料理を食べながら、 「美味しい……。更紗は和食なら失敗しないんだな」 「それ、どういう意味?」 「いや、別に他意はないんだけど。そう声を低くするな」 私がムッとしたのを彼は警戒した様子を見せた。 うぅ、褒められたのにあんまり喜べない。 祥吾ちゃんはそれでも、私に笑いかけてくれる。 「更紗が俺のために作ってくれたから嬉しいんだよ。そう口を膨らませると、可愛い顔が台無しだって。機嫌をなおしてくれ」 祥吾ちゃんが私をうまく言いくるめようとしている。 こんな風に言われたら私だって無意味に怒る理由がない。 「祥吾ちゃんの言い方ってやらしい」 「何でだよ?」 「私が怒れないようにしてるんだもん。ずるい~」 私は彼に唇を尖らせる素振りをする。 「……更紗の扱いはプロだからな。危険な猛獣は飼いならさないとね」 「私を猛獣扱いするなぁ」 「冗談だよ、冗談。更紗のそういう所が、からかうと面白いんだって」 私を何だと思ってるの、と意地悪する彼に思う。 でも、楽しいんだ、祥吾ちゃんが私と一緒にいてくれるだけで些細な事が楽しい。 「……鏡野更紗は既に祥吾ちゃんのモノなんだよ」 自分はすっかりと彼のモノになってる実感に酔いしれる。 私の言葉に祥吾ちゃんが「何か言ったか?」と不思議そうな顔をしていた。 「何でもない。今日は楽しいデートになるといいね」 祥吾ちゃんと久しぶりのデート、今日はふたりで楽しもうっ。   私達がデート先に選んだのは山奥にある鏡野家の別荘だった。 去年も同じ時期に訪れた場所で祥吾ちゃんも楽しそうだ。 緑溢れる自然の光景、都会にはない独特の雰囲気がそこにはある。 大きな湖のあるほとりに向かうと、キラキラと太陽の光が水を反射していた。 「うーん、すごく綺麗だよね。この場所が私は大好きかな」 「俺も好きだな。のんびりとできていい感じだ」 ふたりして湖を眺めながらゆっくりとその周囲を歩いていく。 風によって揺れる木漏れ日が私達を静かに照らす。 「天気はいいし、外の空気も気持ちいい……あっ」 隣を歩いていた祥吾ちゃんが私の手を握り締めてくる。 「……今日はデートなんだから、もっと“らしく”やろうぜ?」 「うんっ!」 私が彼に微笑みかけると彼もにっこりと笑う。 祥吾ちゃんの笑顔って心に残るような感じでとても心地いいから好き。 「祥吾ちゃん、大好きだよ」 私は彼の腕に抱きつくと、ふっと髪を撫でて受け入れてくれる。 「更紗はホントに可愛いな」 「……えへへ、祥吾ちゃん。そう言われると照れるよ」 こうしてると普通に恋人同士みたい。 まぁ、婚約者だからそうなんだけど、実感するとまた違って見えてくる。 祥吾ちゃんと久しぶりのデート。 ショッピングとかじゃなくて、こういうのも私達らしくていいなぁ。 「あれ……?何だろう?」花痴  私はあるモノを見つけて湖の岸におりていく。 「何だ、何かあったのか?」 遊歩道からちょっと外れた湖岸の端で私はそれを見つけんただ。 「祥吾ちゃん、アレ見て!すっごく可愛いっ♪」 私は思わずはしゃいでしまう、指差した方向にいるのは子連れの水鳥達。 水の上を泳いでいる親鳥の後ろを小さな子鳥が頑張って追いかけてる。 小さくても、ちゃんと泳げてるその可愛さに見惚れてしまう。 うぅ、あの可愛さは罪だよ、持って帰りたいなぁ。 「ああ、カモだな。ちゃんと親鳥の後を追いかけてるのか」 「いいよねぇ、ああいうの。見ていて微笑ましくて……」 「……一応、言っておくが食べられないぞ?」 「食べないよっ!祥吾ちゃん、それはひどくない?うぅ、祥吾ちゃんのバカッ」 せっかくの感動を壊されて私は祥吾ちゃんの胸を軽く叩く。 「ムードぶち壊すなんてひどい、空気を読んでよね!」 「悪かったよ……って、おいっ!?」 「ん?きゃっ!?」 手を繋いだままだったので彼はバランスを崩して後ろに倒れこんでしまう。 私も一緒に彼の上に乗りかかるように倒れた。 「だ、大丈夫?祥吾ちゃん?」 怪我とかないか心配で声をかけると彼は優しい声で、 「草むらがクッションになってくれたんだ。風が気持ちいいな」 私を抱きしめて寝転がりながら空を見上げる。 心地よい太陽の日差し、澄み切った青空にふく風、木々の安らぐ音。 自然を身体で感じている、表現するならそういう感じ。 「まぁ、しばらくはこうしてるか。更紗は俺の腕の中に閉じ込めておこう」 「はぅ、祥吾ちゃん。これは恥ずかしいよ」 私はドキドキ感が収まらずに真っ赤になってしまう。 祥吾ちゃんは時々、ものすごく大胆になるから困る。 「……祥吾ちゃん?」 「更紗の心臓の音が聞こえる。ドキドキしてるのか?」 祥吾ちゃんの手が私の胸に触れていた。 私はなすがままにされて、恥ずかしくなりながらも、 「ドキドキしてる。大好きな人に抱きしめられてしないわけがないでしょ」 「あはは、昔はすごく強気で我が侭だった更紗が素直になるなんて、ある意味、面白いよな。私に触るなんて許さないって怒鳴っていたのが更紗だろ?」 「……うぁ……そんな昔の事を言わないでもいいじゃない。祥吾ちゃんの意地悪」 すっかりと主導権を握られてしまっている。 昔から私の我が侭に付き合ってくれていた祥吾ちゃん。 祥吾ちゃんを支配しているのは私だって思っていたのに、いつのまにか、私が祥吾ちゃんに支配されている。 もちろん、そう言うのもいいんだけどね。 抱きしめられて伝わるのは彼の身体の温もり。 祥吾ちゃんだってドキドキしてるのが伝わって来るんだもん。 「意地悪だけど、好き……。もっと祥吾ちゃんに意地悪されたい」 「……おやおや、ずいぶんと大人しくなったもんだ。俺に調教されてきたか?」 「成長と言ってよ、成長って!そういう意地悪は嫌いっ」 祥吾ちゃんはサディストかもしれない、ふっと笑う彼に私はそう思った。 「んっ……そろそろ起きるか」 しばらく抱き合っていたけど、彼が起き上がったので、私の身体をゆっくりと離す。 「更紗。もうあと少しで結婚式だな」D10 媚薬 催情剤  湖を一緒に眺めながら彼は私にそう言った。 あと数週間で私達の結婚式、夢のような新しい世界が始まる。 「うん。楽しみだよね……。私達が結婚して夫婦になるって不思議だけど」 「生意気なお嫁さんもらう俺の立場の方が大変さ」 「……祥吾ちゃんは私みたいな女の子は嫌い?」 彼の顔を見つめながらそう言うと、予想通りに彼は私の唇を甘くキスした。 「……んんっ……むぅ……」 祥吾ちゃんが下唇を軽く噛んでくるのに、私も精一杯に彼を受け止める。 最近、キスされるだけで身体から力の抜ける気持ちになってくる。 「嫌なワケない。更紗をお嫁さんにできるのは俺の夢だからな……」 「もうっ、祥吾ちゃんってツンデレだよね」 「……そういう更紗もな」 クスクスと笑いあう私と祥吾ちゃん。 ゆっくりと時間の流れる世界で、私は大事な人の傍で笑う。 「好きな人の前で素直になるのは当然の事だと俺は思うんだ」 「うん……。私もそう思うよ」 これから先、私と祥吾ちゃんが結婚して夫婦になっても今の関係は変わるのかな。 私は不思議と変わらない気がしていたんだ。 これからもこんな風に私達は過ごしていくんだろうなって自然に思えた。 喧嘩したり、一緒に笑いあったり、共感しあったり。 たくさんのいい事も悪い事も、私達は一緒に過ごしていく。 「祥吾ちゃん、久しぶりに契約しない?」 「契約?何だよ、その契約内容によるぞ」 少し警戒して私の言葉を待つ祥吾ちゃん。 大丈夫、私はもう無茶して貴方を縛り付けるような事はしないから。 「祥吾ちゃん。……私だけを愛して欲しいな」 「それが契約?また、何とも単純な契約だな。いいよ、俺は更紗だけを愛する」 「……約束だからね。今度の契約は守ってください」 小指と小指を重ねて指きりしながら、私はそう言葉にした。 私は彼と契約を結ぶ、それは永遠に切れないように願う。 「エンゲージ。私と祥吾ちゃんは永遠に離れない事を誓います」 「……永遠かよ。それはずいぶんと覚悟のいりそうな契約だな」 それでも嫌な顔をせずに私の頬を撫でる彼。 これからも続く私達の時間、傍にい続けてくれる祥吾ちゃんを私は信じる。 「俺と更紗は運命の相手なんだ。この契約、絶対に守り通すさ」 それは愛の契約、かけがえのない相手と結ぶ魔法の言葉と絆。 結婚式まであと少し、私達の未来に希望を込めて私はもう1度、彼に唇を重ね合わせた。紅蜘蛛(媚薬催情粉)

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