カン、カンッ!
と、むわりとした熱気と共に甲高い鉄と鉄のぶつかり合う音が耳に響いて聞こえてくる。
イリスと共に来た鍛冶屋、そこはまさに今、稼働中のようであり、店内にも客が数人いた。男根増長素
その誰もがその恰好や雰囲気からして冒険者や騎士などの武具を商売道具としている者であるのはここが鍛冶屋であることから当然だが、あまり若い者がおらず、かなりのベテラン、と言った風格のある者が大半を占めているのは、ここがグランたちなどの高位冒険者御用達の店だからだろう。
腕は良いが、頑固で決して自らの腕を安売りしようとはしない、よく言えば昔気質の、悪く言えば頭の固い店主とその息子が親子二代でやっている店。
それがこの鍛冶屋、“ドワーフの栄え”の基本的な態度であった。
しかしその店名とは裏腹に、店主もその息子も、人族ヒューマンである。
昔は鍛冶と言えばドワーフ、ドワーフと言えば鍛冶、とまで言われていたのだが、今は違うのだろうか。
そう思って、店内に並べられた武具を見ながら、レイアウトを変えていっている店主の息子にルルは話しかける。
「なぁ……」
「はい、なんでございましょう?」
笑顔と共に、すぐに振り返って応じたその表情は明るく、よく言えば愛想があり、悪く言えばビジネスライクなもので、父親のような職人気質というタイプではないらしいことが分かる。
だから、この親子は、父親が奥で鍛冶を、息子が店先に出て接客を、という分担をしているのだろう。
ルルはそんなことを考えながら続ける。
「ちょっと聞きたいことがあるんだが……この店の名前って、ドワーフの栄え、だろう? なんでこんな名前なんだ?」
その言葉に、彼はすぐに応じて答えた。
特に不思議なことを聞かれた、という感じでもないので、よく質問されることなのだろう。
しかし返ってきた答えに、ルルは首を傾げてしまった。
「あぁ……それは、ドワーフがもういないからですよ。ただ、そうは言ってもかつて、人族ヒューマンがどうやっても辿り着けないほどの鍛冶の極みに達した一族と言われる人々ですから、我々鍛冶師には彼らに対する憧れと言うものがあります。ですから、そんな彼らの技術にあやかろうと思いまして……洒落てるでしょう?」
あっけらかん、と言った様子でそう述べた店主の息子の言葉に、ルルは何を言っているのか、と思った。
ドワーフがもういない、とは一体どういうことなのか。
あの酒好きの、気のいい種族がもういないとは。
そう聞きたかったのだが、彼は他の客に呼ばれてその場を辞し、去って行ってしまう。
驚愕にしばらく考え込んでいたルルは、はっとしてイリスに尋ねた。
「どういうことだと思う?」
イリスはルルの言葉に少し首を傾げ、それから答えた。
「我々が古代魔族、と呼ばれているのと同様なのでは……」
確かにそれが一番納得の行く話だ。
ドワーフもまた、古代魔族と同様、歴史の波間の中に消えていった、つまりそう言う事だと言うのだろう。
けれど、古代魔族が消えた理由には一応、人族ヒューマンとの敵対の結果、数を減らしたのだろうと言うものがあった。男宝
ドワーフにはそのような理由はない。
彼らは人族ヒューマンとは異なる種族ではあったが、人族ヒューマンに魔族のように蔑まれていた訳ではないし、人族ヒューマンに対し協力もしていたからだ。
その反面、魔族に対しても協力をしていて、つまりドワーフと言う種族がどちらかの陣営に全体として与する、ということはなかったので、たとえ過去どちらが勝利したのだとしてもある程度の数が残っていてしかるべきだ。
なのに、いないのだという。
確かに言われてみれば、王都に来てドワーフの姿は一度も見ていない。
一人たりとも、である。
そのことに奇妙さを感じなかったのは、過去存在した他の種族はそれなりの割合で街を歩いていたからだ。
獣族アニマゼアスに古族エルフ、人族ヒューマンに、海人族アクアリスなど、そこにあの当時の陣営の違いなどによる影響は残っていないように思われた。
けれど、ここにきてそれがどうやら正確ではないらしいことが分かる。
首を傾げながら、ルルとイリスはああでもないこうでもないと話を続ける。
「彼らがいないから、人族ヒューマンの文明は衰退しているのか?」
ふと、今まで見た街の様子や道具の作りから、文明が衰退していると感じたことを思い出し、それをドワーフと結び付けて考えてみる。
あの時代、彼らの加工技術と言うのは人族ヒューマンにとっても、魔族にとっても重要なもので、理論や魔力はともかく、実際に作るとなると彼らの持つ技能に頼らざるを得ない部分が多かったのを記憶している。
もちろん、魔族や人族の技術者がいなかったわけではないが、向き不向き、というものがあるのだろう。
高度な技術を早く正確に身に着けるのは、やはりドワーフの方であったのを覚えている。
「もしかしたらそういうことなのかもしれません……ただ、確認しようがないですわ。仮にそれが真実であったとしても、経緯が分からないと断言も出来ません。過去の事ですから、やはり図書館に行って調べる必要があると思いますが……いつでも時間があると思って、古代魔族についてもまだ調べてはいなかったところです。ちょうどよい機会ですから、ここを出た後は図書館に参りますか?」
イリスはそう答えた。
ルルは少し考え、それから頷く。
確かに特に急ぐこともないと思って、のんびりしすぎていたのかもしれない。
そろそろ少しくらいは、本腰を入れて調べてみてもいいのではないだろうかと、そう思った。
「ありませんわね……」
しかし、期待というものは往々にして裏切られるものである。
鍛冶屋に武器を預けて見積もりと引換証を貰ったのち、二人は王都で最も大きな図書館、“王立大図書館”へと向かい、そこで書籍の閲覧を申し込んだ。
書籍は高価であることから、受付で金貨一枚の保証金が取られたが、それも書籍の値段から考えれば安いと考えるべきだろう。
読んだ本に何事も無ければ出るときに返還されると言う話であり、それなら、ということで二人で金貨一枚ずつ司書に手渡した。
壁を埋め尽くす本棚と本の海に、一体どこから調べたものかと一瞬イリスと頭をくらくらとさせる。
けれど調べる内容は、古代の歴史、そしてドワーフ、古代魔族、と大体の方向性が決まっていたので、司書にそう言った書籍がどこにあるのかを訪ねることで解決を見た。
さぁ、これでやっと昔のことが分かる、と思った二人だったが、結果は芳しくなかった、という訳で、今に至る。三体牛鞭
どこに書いてある記述を呼んでも、ユーミスやグラン、それにパトリックが話すような内容を超えるものは無かったと言っていい状態なのだ。
昔、人族ヒューマンと古代魔族との戦いがあったということ、それによって古代魔族は姿を消したことが書かれているだけで、その詳細はむしろルルとイリスの方が良く知っていたと言っていい。
その戦いが最終的にどうなったか、という点については詳しいことは分かっておらず、学説が色々考察されているだけで、真実だろうと呼べるものはどこにもなかった。
ドワーフについては若干の収穫、と呼べるものがないではなかったが、ただそれだけ分かっても仕方のないものでもあった。
それによると、彼らは歴史のある一点において、その姿を消した、ということらしい。
一斉にいなくなってしまい、そしてそれから姿を見たものはいない。
そういう話なのだ。
ついでに言えば、ドワーフの他にゴブリンもそういった経緯で今は見ることが出来ないと言う。
ゴブリンもドワーフと同様、高い細工技術を持っていたから、共通点を見るなら、そこに理由があるのかもしれない、と言うことは出来る。
ただ、それだけで、詳しい経緯や事情はさっぱりなのである。
これはもう、お手上げというほかなかった。
「ここで調べてこれほどまでに何も分からないとなると……あとはやはり、遺跡発掘くらいしか方法がありませんわ」
イリスがため息をついてそう言った。
ルルも同感で頷く。
「昔の魔族の遺跡のどこかの情報端末に歴史が保存されていることを祈るしかないな……しかし、本当にないのか?」
ルルは首を傾げて、どうにかここ以外に歴史に詳しい書籍があるところはないかと考えた。
そして考えても自分にそんなことがわかるはずがないとあきらめ、専門家に尋ねることにする。
つまりは、司書に聞いたわけである。
すると、
「各国の王宮の禁書庫には遥か昔の書籍が所蔵されていると聞きますが……基本的にそういうものは門外不出ですから、閲覧は諦めるほかありませんね」
と言われてしまった。
ここで普通なら諦めるところだが、ルルは普通ではなかった。SEX DROPS
ただ、そうは言っても忍び込んで……というわけにはいかない。
父が王宮に務めているのだ。そういう迷惑をかけることはすべきではない。
けれど諦めきれないのも事実で、どうにかならないものかと例外は無いか尋ねる。
すると、司書はため息をつきながら、
「そうですね、今度開かれる闘技大会で優勝すれば国王陛下が御願いを聞いてくださいますから、優勝されれば何とかなるかもしれませんよ?」
などと投げやりに言ったのだった。
どうせこんな子供にそんな大層なことができるはずがない、と言いたげな表情であった。
けれど司書が知る由もないことだが、ルルにはそれを可能とする力があった。
むしろ、それで禁書庫にある書物を閲覧させてくれるのなら、それくらいはやってやろうと思った。
だからルルはその言葉に頷いて、イリスと目を合わせた。
「じゃあ、優勝するか」
気楽な口調でそんなことを言うルルを司書は呆れた顔で見つめてその場から去っていったが、イリスは違った。
むしろそれを確かにこの人は達成するだろうと信じるような目で、深く頷き、
「でしたら、私は準優勝で我慢しておきますわ」
そう言ったのだった。
図書館からの帰り道、ふとイリスが足を止めた。
そこは花屋であり、店先に出ているいくつかの花にイリスは見とれるような視線を向けていた。
「……どうした? 欲しいのか?」
ルルが軽くそう尋ねると、イリスははっとして、首を振った。
「いえ……そういうわけではないのですが、ふと、目をとられてしまいました」
イリスの視線の先を見ると、黄色い雄しべの周りに真っ白な花弁をつける花が一鉢飾られていて、可憐な花を咲かせている。
「綺麗だな」
そうルルが言うと、イリスも頷いて答えた。
「ええ……そうですわね。マーガレットの花でしょう……でも、どうしてこんなに惹かれるのか……こんなこと初めてで、少し驚いています」
その瞳は、なぜか珍しく動揺に揺れている。
怯えている?
いや、違う。
イリスは自分で言った通り、その花に魅入られているようだった。蒼蝿水
こんなことを言うのは失礼かもしれないが、イリスもやはり年頃の女の子である。
花のような、美しいものに本能的に惹かれてしまうものがあるのかもしれないと思った。
そしてルルはイリスに「ちょっと待っててくれ」と言うと、鉢を持って店の中に入っていく。
何をしようとしているのかは明らかで、イリスは肩を掴んで止めようとしたが、その前にルルがさっさと進んで行ってしまったので、店先で待つしかなく、仕方なくその場で他の花々を眺めることにした。
そしてしばらくして、案の定ルルは先ほどの花を買ってきたらようで、しっかりと贈答用にリボンで飾られていて、先ほどの寂しそうな様子から一変した、可愛らしい鉢へと姿を変えていた。
ルルは微笑んで言う。
「なんていうか……イリスには七年前からずっと世話になっているからな。そのお礼と言うか……だから、受け取ってくれ」
そう言って、ルルが鉢を差し出した。
思い返してみれば、ルルからはいつも何かを貰ってばかりのような気がしていた。
小さなころから、誕生日は欠かさずに何かを持ってきてくれて、それ以外の日も会うたびに何かをくれた。
今にして思えば相当忙しかっただろうに、合間を縫って小さな自分と遊んでくれたし、七年前、この時代で眠りから覚めた後も、ずっとお世話をしてくれているのは、むしろルルの方なのだ。
なのに、今でも変わらずに、こうやってイリスのことを見て、そのたびに優しさを与えてくれる。
幸せなことだと思った。
あの頃には、こんな日々が自分の未来に待っているなんて、考えらえなかった。
これは奇跡なのだと、深く想った。
そして、いつか零れ落ちないことを、強く祈った。
だから、そうやってもらった鉢をおそるおそる受取り、それからぎゅっと抱きしめるように持った。
そんなイリスの様子に、ルルは、
「おい……そんな持ち方したが服に土がつくぞ」
などと父親のような台詞を吐く。
いや、ような、というよりほとんどそういう心持ちなのだろうという事は分かっている。
ただ、それでもイリスはこんな日々がいつまでも続くことを、祈って、鉢を抱きしめたのだった。勃動力三体牛鞭
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