目覚めると、そこは牢獄ではなくなっていた。
黄泉の国の様式というのは、随分と立派な物らしい。
目にする光景に、イリアスは最初、知らぬ間に自分は死んだのだろうと、小さく息を吐きながらそんな事を思った。簡約痩身美体カプセル
広く豪奢な寝台に寝かされ寝心地の良い寝具に包まれている。
イリアスは、牢獄よりも遥かに良い環境に置かれていた。
ゆっくりと身を起こす。
そうでなければ身体が動かなかったのだ。手足が萎え、随分と細く弱っている己を気味悪く感じた。
腕には点滴まで受けている。病人のような扱いに、眉が寄った。
「???」
牢獄にて厳しい尋問は受けた。しかし、こんなにやつれてはいなかった筈だ。
己の身体の事なのに、どうしてこうなっているのか皆目見当がつかない。
軽く首を巡らせ室内を見渡すが人気は無く、疑問を問う事もできない。部屋はどれ程眺めても記憶に該当する物の無い、まったく見覚えの無い場所だった。
己が暮らしていた屋敷よりも遙かに華麗な室内装飾が施され、置かれている家具調度に関しても、歴史的価値も技術も尋常の物でないのが容易に窺い知れた。
例えるなら、王弟殿下の宮に近い。
贅を尽くした部屋で、イリアスは小さく首を傾げた。
「……どこだ、ここは?」
まさか、本当に黄泉の国ではあるまい。
だからと、窓の外に見える景色のみでははっきりとした事は分からないが、リディエマに居るような気もしない。
王弟殿下が自分を助けてどこか知らぬ場所に運んだ。という事はまったく考えられなかった。
もし、助命を願って下さっていたとしても、王と公爵がそれを受け入れる筈がないのだ。殿下を処刑としないなら、余計にイリアスにすべての罪を被せるに決まっている。牢獄から出して処刑するならまだしも、こんな豪奢な部屋で静かに眠らせてくれる訳などない。
イリアスはその処刑を覚悟し、牢獄にて過ごしていた事は覚えている。
それが、突然壁が外部より破壊されたのだ。
その衝撃により身体が飛ばされ全身を強打した。訳が分からぬまま痛みに意識が朦朧とするイリアスに、開いた壁より入り込んできた者達が何かを強引に飲ませたのだ。
そこでイリアスの記憶は途絶え、現在となっている。
萎えた身体に、見知らぬ部屋。
美しい場所ではあるが天の国とも思えない。黄泉の国よりも酷い地獄にでも落とされたのか、と苦笑と共に馬鹿げた妄想をしかけた所で、少し離れた場所にて扉の開く音がした。
そちらに目を向ける。西班牙蒼蝿水口服液+遅延増大
すると、まったく癖の無い銀髪を背の中程まで長く伸ばした、身なりの良い男が一人入って来た。
自分よりも少し年上に見える、堂々たる体躯の持ち主だった。
品の良い立ち姿に、己を強者と自覚している自信に溢れた美貌。
他者に命令し慣れている雰囲気をはっきりと滲ませているのに、間違いなく貴族だと感じた。
ただ、リディエマの貴族ではない。やはりここは外国のようだ。
男はイリアスを見て、満足そうに笑った。
「目覚めたようだな。……少々薬を使い過ぎたので目覚めぬ可能性もあったのだが、こうして話が出来る事を嬉しく思う」
寝台の傍らにある椅子に腰掛け、長い足を組んだ。
腕も組み、尊大な態度でこちらを見ている。しかし、オーサーなどとは違いそれが様になっていた。
男はイリアスを威圧しようとわざとそうしているのではなく、そうするのが極自然の事なのだと見て取れた。
その、低いが良く通る声音は、耳に悪くない。悪くないが、ルーク・メイナードが側に居て話し掛けているようにも感じ、イリアスはあまり良い気がしなかった。
しかも、さらりと何でもない事のように語られたが、薬の使い過ぎとは不穏な言葉だ。
だから、己の身体がこんな風に弱っているのだろうか。
処刑を覚悟していたとは言え、見知らぬ者に突然薬を盛られて好きにされるなど許し難い事だった。
「薬の影響で口がきけぬのか?」
不快な信用ならぬ相手に警戒し、無言でいるとそう問われる。
氷と言っても良い、酷薄な気配を漂わせる切れ長の紫暗の瞳がイリアスを射抜くように見つめた。
心臓が跳ね、背筋が寒くなる。
「……ここは、どこですか? あなた様は、一体どういった方なのでしょうか?」
情の無い王だ。
何故かそんな事を真剣に思い、腹を立てたり逆らうのは得策ではない相手だと本能が感じた。
目の前の男は貴族ではなく、それより上位にある王族だ。間違いない。しかも、リディエマの王族とは違い大きな力を持つ存在だ。下手な真似をすれば、一瞬で命を奪われるのを確信した。
「ここは、イレーゼの帝都カルファークだ。……私の名は、ラーシュ・レヴィ・グランフェルトだ」
イリアスが口をきいたのに軽く頷くと、男はニヤリと笑い、面白そうに問いに答えて名乗った。
驚け、と言わんばかりの態度に、正直に驚いて見せるなど馬鹿のする事だと思いつつも、動揺するのを隠し切れなかった。
「イレーゼの……グランフェルト……帝王家……」
リディエマではないと予想していたが、敵国。しかも、目の前に居るのはその直系王族だ。
最高君主である帝王を輩出する家。
グランフェルトを己の名として名乗れるのは、玉座に在る者と特に血の近い者である証だ。
イレーゼでは王族と言えどすべてがその名を名乗る事は許されず、他の名を与えられる者の方が多いのである。傍系にも許されるリディエマとは違うのだ。
であるからこそ、その名を与えられし者はイレーゼでは特別に尊ばれる。
尊大な態度が身に付いているのも当然だ。
イリアスは己の知識を脳裏で反芻し、息を飲んでその姿を見つめた。
「そうだ。お前の生国であるリディエマの敵、今回騙されてオースティンにまんまと領土を取られたイレーゼ帝国王の第二皇子だ」
「……私をご自身の手で殺す為に、牢から引き摺り出して来たのですか?」西班牙蒼蝿水
イリアスが上手く情報を流せなかった為、公爵に利用されイレーゼは大きな被害を被った。
自分をここに運んで来たのは、その責任を取らせる為かと素早く結果を導き出したイリアスに、ラーシュ皇子はふん、と鼻で笑った。
「そんな詰まらぬ真似をする為に、誰がわざわざ手間暇掛けてお前をここまで連れて来たりなどするものか。放っておいても、政争に負けたお前はリディエマで処刑されていた。殺したいほど腹を立てているなら、それで終わりとしたさ。そうでないから、リディエマの捜索網に掛からぬようにしながらここまで連れて来させたのだ。リディエマは統治者たる王は甘く隙だらけだが、その分臣下の公爵に隙が無く面倒で煩わしい。その公爵がしつこく捜すものだから本当に骨が折れたのだぞ」
「そこまでして私を帝都に招き入れるなど……何用でしょうか?」
罰を与えるのでもなければ、他に敵国の罪人に何の用があるというのだ。リディエマの情報が欲しいとしても、わざわざ脱獄させてまでと言うのは考えにくい。
「礼を言おうと思ってな。命を助けてやったのは、その気持ちだ」
「お礼、ですか?」
まったく思わぬ返事にイリアスは困惑した。
イレーゼとの交易も行い、失敗してしまったが情報も流した。
だが、イリアスが懇意にさせて貰っていたのは第三皇子に繋がる有力者であり、第二皇子ではない。だから、まったく面識が無く名乗られるまで分からなかったのだ。
初対面の相手から礼として命を助けられても、感謝より先に立つのは疑問であり不信感だった。
「お前の流した情報を、第三皇子のフィリップ・ライトは意気揚々と帝王陛下に上奏し、オースティンに戦を仕掛けた。そして惨敗だ。……我が父は、息子と言えどそのような失敗は許されぬ方だ。フィリップは王への道を閉ざされ、地方に幽閉された。ははっ……実家の力を盾に煩い奴が何もせずとも勝手に自滅してくれたのだ。これほど嬉しい事はない。見事にフィリップを躍らせる情報を流してくれたお前には感謝するばかりだ。後で褒美もやるぞ。領土は、今は奪われていようといずれ必ず取り戻す」
上機嫌で語られるのに、それならば礼と言うのも納得出来るな、とイリアスは思った。
現在、イレーゼの帝王は正式な皇太子を立てておらず、後継者と目される三人の皇子がいる。皇女も居るのだが、イレーゼは女子には王位継承権は与えられない為、皇女という存在は必然的に影が薄くなるのだ。
その、三人の皇子はそれぞれ母親が違う。
第一皇子が正妃の産んだ息子であり、第二、第三皇子は側妃の産んだ息子である。帝王家は一夫多妻制を取っており、正妃を頂点として、王の寵愛を受けた女性が大勢妻として王宮に暮らしている。
リディエマのヴェルルーニ家も本来ならそうなる筈なのだが、現王が王妃以外は要らぬと激しく拒否する為、側妃という存在が居ないだけである。
「私の母の実家もそう悪くはないのだが、フィリップの実家はそれ以上に力を持つ侯爵家だったからな。それも、今回の事で没落して行くだろう。……正妃殿の実家には歴史はあるが力は左程強くない。その上、兄のクリストファーは、生来身体が弱くてな……第一皇子ではあるが、恐らく父は後継者に指名しないだろう。となれば、もう私しか居ないのだよ」
満足げに笑って教えられるのに、イレーゼでは弟が兄に勝つのかと、リディエマとは逆の情勢に心の内で苦笑した。
「左様でございますか。……命をお助け頂き、誠にありがとうございました。ところで、捜索の目を欺かれたとは……一体どのようになさったのですか? よろしければ、お聞かせ願えませんか?」
「リディエマに潜り込ませた手練れの者を使って牢を襲撃した際、薬を使って仮死状態にし、人形の型に入れてリディエマの南から海に出たのだ。そこから北上し、イレーゼの領土に入った。港の検問さえ突破してしまえば、陸路よりは監視の目が緩いからな。民衆の好む大道芸では大人と同じほどの大きさの人形を使う芸もある。それらの道具をしまう道具箱の最も底に、お前を入れた人形も入れて運んだのだ。仮死とは言え、死んだ状態だ。物も言わず食事も摂らない。しかもその人形は一見しただけでは継ぎ目が分からない仕様で作られていてな、中に人を入れているなど余程人形に精通した人間でなければ分からぬ代物なのだ。検問が厳しくとも、わざわざ人形の中まで開いて見るような兵は居らず、お陰でここまで運べたのだ」
「……人形に入れて運んだ……」
ここで目覚めるまでにそんな事になっていたなど、かなりの衝撃だった。procomil spray
それで身体が萎えているのかと納得しても、何日も仮死状態にされるなど、そんな無茶をされれば目覚めぬまま腐敗した可能性もある。いつ本当に死んでいてもおかしくなかった筈だとぞっとした。
皇子は礼をすると言いつつ、実際はイリアスが生きようが死のうがどうでも良かったのだろう。
所詮自分は敵国の人間だ。それも当然だろうと、常軌を逸した国外逃亡方法に思う所はあるが、不満を述べたりはしなかった。
「約三週間……そうして運んだからな。身体は萎えているだろう。しばらく、元に戻す訓練を行い、その後はわたしの側に居ると良い」
「あなた様の側にですか? ですが、第三皇子に連なる方々は私を許さないかと……そんな私をお側に置くのは、ご迷惑となるだけかと……」
意外な申し出に目を瞬いた。
てっきり、それでは後は好きにしろとの一言で、縁は切れると思っていたのだ。
「お前がここで寝ている間、お前のイレーゼでの身分を作っておいた。それと同時に、お前と取引きしていたフィリップに繋がる者達はすべて処分しておいた。フィリップ自身はもう二度と帝都の土は踏めぬだろうから、お前が気にするような事は何もない」
「……何故、親しい縁がある訳でもない私に、そこまでして下さるのですか? 礼にしては過剰過ぎると存じますが……」
ラーシュ皇子は、親切な人の好い人間とは到底思えない。
イリアスは自分のその目を正しいと思う。そんな人間からの破格とも言える配慮に、素直に礼を述べるより先に怪訝に眉を寄せた。
厚意に対して不信を募らせるイリアスに、皇子は不快を示さず平坦な口調で言った。
「リディエマがどうしても恋しいと言うなら、今から帰って処刑の道を歩んでも構わないが、せっかく助かったのだ。そうでないなら、この先はイレーゼで野望を叶えてはどうかと思ってな」
「野望……で、ございますか……」
生国であるリディエマ国内でも叶えられなかった野望が、身分を作って貰ったからと、まともな知り合いも、手持ちの情報も少ないイレーゼで叶えられると思うほど、イリアスは楽天家にはなれなかった。
「私の調べた所、お前はリディエマ一の貴族となりたかったから、王弟ファーガス・ヴェルルーニに与しリディエマを牛耳るメイナードの一族に喧嘩を売ったのだろう?」
「はい」
その通りなので、何も隠さず頷くとラーシュ皇子は続けた。
「お前が、己は本当に国一の貴族となり采配を振るえると思うなら、それをこのイレーゼで叶えてみろと言っている。私が思うに、お前が口先だけではない本物ならば、こちらの方が楽に叶えられる筈だ。リディエマは建国当初よりメイナードという一族が変わらず力を握ってきた国だ。それを覆すのは並大抵の事で出来る物ではない。……だがな、イレーゼにはメイナードのような一氏族で貴族を束ね、王族よりも力を所持する異常に突き抜けて力を持つ者は居らず、新興の者が古株を蹴落とすなど日常茶飯事なのだ。どうだ、こう聞いても心が揺れぬか?」
にやりと笑む、イリアスの心情を正確に読んでいるとしか思えない誘いに、否とは言えなかった。
イレーゼには、メイナードのような貴族の長と呼ばれる存在が居ない。
そして、貴族の勢力図が常に入れ替わる。
才覚さえあれば、新興が古参を蹴落とせる。
そうと聞かされ心が湧き立たないほど、イリアスは人生を投げてはおらず、心が枯れてもいなかった。
「イレーゼで力を付け、帝王となった私の傍らに立ち、共にリディエマを奪わぬか?」
どんな言葉よりも力を持つ甘い誘惑に、イリアスはその場で頭を下げ、従う意思を示した。
まだ、人生を諦めなくても良いのだ。
再び、リディエマの権力に挑戦出来る。闇しかなくなったと思っていた世界に光が灯った。
その僥倖を作ってくれたラーシュ皇子に、素直に感謝を捧げた。WENICKMANペニス増大
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