撫子が俺と口をきいてくれなくなって5日が過ぎていた。
彼女を本気で怒らせたのはいつ以来のことだったか。
過去に記憶がないくらい、撫子は本気モードらしい。D10 媚薬 催情剤
こっちは勉強にも身が入らず、動揺しまくっている。
すべては数ヶ月前の出来事が原因だ。
淡雪さんとの偽装恋人を続けて俺の気持ちに変化が起きていた。
まるで本当に付き合ってるような感覚。
恋に浮かれるような、そんな不思議な気持ちを抱いていた。
それは高校1年の冬休み、最後の日。
偽装恋人を終わらせる、最後の日でもあった。
「……猛クンには感謝してるわ。おかげで、ストーカーも撃退できたし。意外とこう言う関係も楽しめたもの。私には充実した数ヶ月だった」
「こちらこそ。でも……終わらせるのは少しさびしい気もするな。あのさ、淡雪さん。そっちがよければだけど――」
この関係を本物にして、付き合わないか?
俺は勢いで彼女にそう言おうとした。
けれども、その言葉を言う途中で彼女は俺の唇に人差し指を触れさせた。
「ごめんなさい。気持ちは嬉しいけど、それ以上は言わないで」
「……」
「楽しかったわ。でも、これは恋人ごっこのお遊びだから終わりがくる……私は誰とも付き合わないし、付き合えない」
寂しそうな横顔を見せながら彼女は言った。
「キミを須藤家の運命に巻き込ませるつもりはないの」
「……須藤家」
「えぇ。家に縛られてると思うでしょうけど、あの家は特殊すぎるから」
代々、女尊男卑のひどい風習が残りづける旧家。
実際は彼女の話で聞いている以上なのかもしれない。
「恋人がいたら、こんな風に付き合うんだって体験できてよかった。デートしたりとか、すごく楽しかったし。ホント、最後の方はストーカーなんて忘れてしまうくらいにこの関係を楽しめてたわ。私はそれに驚いている」
「俺も楽しかったよ」
偽物の恋人関係が本物になってしまえばいいと思うくらいに。
彼女は俺を抱きしめながら、最後に言ったんだ。
「ありがとう、大和猛クン。これからも私の頼れる友人でいてください」
お礼を言って笑う彼女。福源春
偽装恋人の終わり。
『ごめんなさい』も『ありがとう』も言われて辛いと思ったのは人生で初めてだった。
それから、しばらくは交際が終わった事をアピールする事もあり、互いに少しだけ距離を置いたりして、この春からまた友人としての付き合いを始めた。
ほんの少し心が痛む思い出を胸にしまいこみながら。
明日からはテスト本番。
俺は料理を作ってくれた姉さんと華恋が帰るのを玄関まで見送っていた。
「猛。撫子と喧嘩してるの?」
「えっと、喧嘩って言うほどのモノじゃないけど」
「お兄ちゃんなんだから、しっかりしなさい。どうせ、貴方の些細な態度とか言葉が原因なんだから」
姉さんにはお見通しらしい。
苦笑い気味に彼女は言うのだ。
「……人を好きになる気持ちは止められない。愛をつき通すのも、ひとつの道だと思う」
「兄妹で愛を貫き通しちゃダメでしょう」
「本気で好きなら、撫子みたいに世界を敵に回す覚悟を持ちなさい。中途半端な気持ちじゃダメ。私はどんな事があっても撫子と猛の味方でいるつもりよ」
俺達の関係を反対どころか撫子を応援までしている。
母さんが聞いたら、卒倒するぜ。
「……マジで応援されるのも、どうかと思うんですが」
「あの子の落ち込みようを見たら、ついね。可愛い妹が今にも泣きそうな顔をしてる。それが1日や2日じゃなくて、5日目突入したら可哀想だと同情したくもなる」
「お兄ちゃん。けんかはダメだよ?お姉ちゃんとなかなおりしてね」
華恋にまでそう言われてしまう。
確かにここ最近の撫子の落ち込みようはひどいものだ。
あの件が尾を引いてるんだろうけども、俺から何か言うのも変だし。
「とにかく、今の状況を何とかしてあげて」
明日はテストだし、俺も話をしてみようか。
二人と別れたあと、俺は撫子の部屋を訪れることにした。
「撫子、俺だけども。少しだけ話をしないか?」
ノックをするも、返事はなし。
いないのかと思いながらも俺は扉を開けてみる。
「撫子、入るよ……いるじゃないか」
明かりもつけずに薄暗い部屋の片隅、ベッドに座るような格好で撫子はいた。
顔色も良くないし、明らかにこちらを見た瞬間に不満げな顔を見せる。
「……お兄様の顔を今は見たくありません」
拗ねてそっぽを向く彼女。
俺は電気をつけながら彼女に対して頭を下げる。花痴
「ごめんな。俺が悪かった」
「ホントです。嘘つき、嘘つき……」
拗ねてる彼女は俺に対して、軽く背中を叩いてくる。
「でも、お兄様に浮気されても嫌いにはなれません」
「……浮気はしてないけどな」
「同じようなものです。私以外の女性を好きになるなんて……。今はどうなんですか?今も彼女が好きですか?だとしたら、私は恐ろしいですが、あの人を倒すために言葉にできない非道な真似をする覚悟を持ちます」
「持たなくていいからっ!?」
今も好きと問われて俺は答えを返す。
「ああいう事はあったけどさ。今は……恋愛感情じゃない、と思う」
「では、須藤先輩が嫌いですか?」
「嫌いじゃないよ、好きだよ。あっ、違う、違う。だから、これは友情の好きであって、恋愛の好きではなくて……」
「男らしくありませんよ。お兄様。猛と言う名前のごとく、猛々しく男らしい所を見せてください。お兄様、言い訳ばかりしていては情けないです」
睨みつける妹に押されているダメな兄である。
この対応を間違えると本当に撫子は淡雪さんを攻撃するかもしれない。
今まで犠牲になった女の子達の事を思いだすと、それだけは避けたい。
「今の気持ちを聞かせてください。私と須藤淡雪さん。恋人にどちらかを選ぶとしたら、どちらを選びますか?」
究極の選択肢、来た。
真面目な顔をする彼女に俺は悩みながら、
「恋人、とかまだ分からないけども、傍にいたいのは……撫子だよ」
「え?ほ、ホントですか?私、先輩に勝ってます?」
「……淡雪さんは良い子だし、俺も好きになりかけてたけども。どちらかを選ぶのなら撫子の魅力も俺はずっと傍にいるから知ってる。これからも俺の傍にいて欲しい」
「お兄様~っ!大好きです、愛していますっ」
いきなり撫子が俺に抱きついてくる。
「今すぐキスしてください」
「なぜに!?」
「愛を確認するためです。お兄様の想い、この私の胸に伝わりました」
唇を尖らせて俺に迫る妹。
俺は必死にそこは抵抗しながら、
「お、落ち着いてくれ」
「嫌ですよ。私の想い、今日こそ受け取ってください。ちゅー」
迫りくる妹の淡く濡れた唇。
抵抗むなしく、そのまま強引に唇を奪われてしまった。
「ちゅっ……んぅっ……」
兄妹で重なり合う唇と唇。
唇を離して、彼女は恍惚とした表情を浮かべて見せる。勃動力三体牛鞭
「お兄様とキスするのは久しぶりです。昔はよく一方的にお兄様にされていましたが」
「うぎゃー」
「ふふっ。あの頃はお兄様に唇だけでなく心も奪われてました」
俺は必死に過去の俺を消したくなって悶絶する。
「最近はお兄様からキスを求めてくれる事がなくなってさびしい限りです」
「……過去の俺と今の俺はきっと別人なんだっ」
「たまには、お兄様から求めてくれてもいいんですよ。キスはいつでも歓迎です。これも聞きたかったことですが、須藤先輩とはキスをしたんですか?」
「唇同士はありません。ストーカーを撃退する時に頬にはしたけど、それ以来は何もしてない。これは本当だ、信じてくれ」
キスなんて誰でもするものじゃない。
なぜ妹の唇を奪ったのかは中学の頃の俺に聞きたいけどな。
「いいでしょう。今回の件、許してあげます。真の愛とは相手を許すことです」
「ほっ……」
「ですが、これが本当に最後ですよ?お兄様が次に私を裏切るような事があれば、世間言う所のヤンデレ属性の私は何をしてしまうのか分かりません。ふふふっ」
「え?妹はヤンデレ系だったのか。せめて、クーデレ系でいて欲しかった」
妹の口から語られるまさかの属性に俺はドン引きだった。
「……お兄様は私の愛をなめすぎです。私の愛をもっとその身体で感じてください」
ピタッと俺にくっついて離れようとしない。
元気になってくれたのはいいんだけども。
「明日からテストなんだから頑張らないといけないぞ。早く寝なさい」
「テストも頑張りますけど、お兄様との愛を確かめ合う方が私には優先です。今夜は寝かせませんよ?」
現実逃避ぎみに俺はそう呟いたが、妹はその夜遅くまで俺を解放してはくれなかった。蒼蝿水
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