今日は運命のピアノコンクールの日、私は朝目覚めた時からすっきりとしていた。
負けない、桐生君にだけは負けないと今まで練習をつんできた。
課題曲も完璧に弾けるようになった。御秀堂養顔痩身カプセル第2代
ミスもしなくなったし、気持ちも、調子も万全、負ける要素なんてひとつもない。
私はピアノコンクール会場へと向かった。
会場では久賀先生が私を待ってくれていた。
「おはよう、西園寺さん。よく眠れた?調子はどうかしら?」
「ええ。完璧ですよ。今日は必ず優勝して見せます」
「ふふっ、すごい自信ね。西園寺さんの演奏を楽しみにしてるわ」
彼女から今日のコンクールの発表順を教えてもらう。
「西園寺さんは……最後から2番目ね。1番最後は桐生君。ふたりとも頑張って」
「……まぁ、頑張りますよ。あの人に負けたくないですから」
最後から2番目、悪くない位置だ。
ただし、私の最後が桐生君って言うのはあまり気に入らない。
私は控え室に入って、お兄ちゃんからもらったドレスに着替えた。
黒と白の入り混じったまるでお姫様みたいなフリル付きのドレス。
ゴシックロリータだっけ、よく分からないけど、このドレス、可愛いなぁ。
着てみて思ったんだけど、これ、私の身体のサイズぴったり。
もしかして、オーダーメイドなのかな……私のサイズ、何であの人、知ってるの。
ちょっとだけ怖くなったけど、彼の気持ちは嬉しかった。
ピアノコンクールって言うのは、順番にピアノを弾いていく。
多目的ホールに集まったたくさんの人の前で演奏するのは緊張する。
間違えないかな、上手く弾けるかなというプレッシャー。
私は自信があるから大丈夫だと思うけど、子供の頃はそれでミスもしてしまったりして悔しかった記憶がある。
「……なんだ、今日は冷静なんだな」
私に声をかけてきたのは桐生君だった。
彼はいつもなら“プレッシャー”に負け続けていた。
本番直前まで緊張していたりして、見てるこっちもダメだなって思うくらいに。
それなのに、今日は全くそんな素振りを見せない。
「それは貴方の方でしょう。本番に弱いくせに」
「今日の俺はいつもと違う。甘く見るなよ、俺は西園寺に勝つ」
……彼に不有利な条件はなし、状況は対等、本気の勝負。
「……私も負けないから」
互いに牽制しあうように、見つめあう。
これは怒りではなく、ただ、負けられないというライバル心。
「……うっ……それはずるいだろ」
先に私から視線を逸らしたのは桐生君だった。
なぜか、私の方を見てそこはかとなく顔を紅潮させているようにも見える。
私は睨み付けるのをやめて、おかしな様子を見せる彼に尋ねた。
「何?……何か言いたい事でもあるの?」
「い、いや……なんていうか、その格好なんなんだ?」
「え?……このドレスの事?」
お兄ちゃんからもらったゴスロリと呼ばれた服装。
フリル付きはどことなくメイド服にも見えたりする……やはり、何か変なものだったのかも、お兄ちゃんの選んだ服だからなぁ。
「言いたい事があるならはっきり言って」
「あのさ……やけに可愛くないか、それ。今までの西園寺のドレスってそんなに大胆な感じじゃなかったし。何ていうかお嬢様オーラ全開って感じ……」
「……私がこういう服を着たら変?そう言いたいの?」
「べつにおかしいとか言ってるわけじゃなくて。いや、むしろ西園寺に似合いすぎて可愛いと思う、本当にお姫様みたいに……ハッ、俺は何を言ってるんだ」
彼は慌てた様子でそのまま、私の前から逃げ出した。韓国痩身一号
よく分からないけれど、恥ずかしくなったらしい……照れる必要がどこに?
ん……私が可愛い?
「~~ッ!?」
今度、顔を赤くさせるのは私の番だった。
嬉しかった……彼に褒められて……あれ?
私、なんで、あんな人に可愛いって言われて喜んでるんだろう?
「あ、着替えは終わったの?そろそろ準備して欲しいんだけど」
「せ、先生!?」
「どうしたの?顔、赤いけれど大丈夫?風邪かしら?」
「だ、大丈夫です!全然問題ありませんから……」
久賀先生は心配してくれたけど、問題ないと言って追い返す。
『お前の事が可愛いと思う』
桐生君は私の敵、これはそう、私の心を乱そうという彼の作戦、そうに違いない。
だから……他意なんてない……はず、よね?
しばらく、彼の言葉が耳から離れなくて、私はひとり落ち着くまで時間がかかった。
発表会は自分の番が回ってくるまでは同じように観客席で座って順番を待つ。
今回、審査委員をしているのは有名なピアニスト、レック・シュレッツさん。
フランス人で、日本語も上手なのでテレビでもよく見かける評価の高いピアニストだ。
私の隣で黙って舞台を見つめる桐生君。
先ほどの険悪な様子は一切見せずに集中している。
今回のコンクールはレベルが高いと思った。
私達以外の他の子たちもすごく綺麗に仕上げてきている。
県下のトップクラスの中学生が集められた、そういう大会だと聞いていたけれど、これは私も本気出さないと勝てないかも。
「……そろそろ、私の番か」
まもなくコンクールも終わりに近づいて私の番が近づきつつある。
私は少しだけ席を立って、ホールを出た。
化粧室で鏡を見ながら、髪型チェック、大丈夫だ。
すると、私の鞄からマナーモードにしていた携帯電話が鳴った。
私が携帯電話を取り出すと、表示された名前はお兄ちゃんだった。
「はい。私ですけど」
『あっ、麗奈。今、大丈夫?』
「……はい。でも、もうすぐ発表があるから時間はあんまりありません」
大好きなお兄ちゃんの声、私は気持ちが安心するのを感じた。
『よかった。麗奈が上手く弾けるか心配だったから。体調とかは大丈夫か?』
「問題ないです。調子もいいですし、きっと上手く弾けると思います」
『それならいいんだ。俺も応援してるから、麗奈は自分の弾きたいようにしっかりと弾いてこいよ。楽しんで弾くんだ。その気持ちを忘れないで』
「ありがとうございます」
お兄ちゃんの言葉は私にとって力になる。
私はホールにもどって自分の出番を待った。
『次は西園寺麗奈さんです。曲名はリスト・愛の夢』
……ついに私の名前が呼ばれて、私は舞台へとのぼっていく。
広いホールに満員の人々、緊張するなというほうがおかしい。
でも、私はその雰囲気に負けずにピアノの前に立つ。
いける、私なら……弾いてみせる。
深呼吸してから私は椅子に座り、ピアノの鍵盤に触れた。
何度も練習してきたんだ、自信を持って弾こう。
初めは穏やかな気持ちで私はピアノを弾き始める。
……静かな雰囲気の中で、私はその音色を奏でていた。
落ち着いて、焦らずに、愛の夢という曲はテンポのよい曲……その分、弾き方が難しい。
苦手なところ、中盤部分を中々弾けずに苦しんでいた。
それでも、今の私は完成度も技術も負けない、ここにいる誰にも負けてない。
勝てる、これならば、彼にも勝てる……。
指をスムーズに動かして、私は旋律をこのホール全体に響かせていく。
『貴方に私の何がわかるっていうの!私が彼と、今の関係にどれだけ苦しんでいるかも知らないのにくせに。それなのに好き勝手な事言わないでよっ!……好きな相手に好きって言えない。恋愛が楽しいなんて思ってないのに』
大好きなお兄ちゃんまで否定した桐生君が許せない。
昔からプライドだけが高くて、私に意地悪ばかりしてきた。韓国痩身1号
付き合いだけは長い、こういうのを腐れ縁というのだろうか。
本当に嫌な人、嫌い……優しいところもあるんだって思ったりしたけど、やはり彼は私にとっての敵だった。
桐生雅貴、私のピアノを聞いてもそれだけの事を言える?
これまで私はピアノコンクールで勝ちたいなんて思ってなかった。
皆に自分の曲を聞いてもらいたい、その一心だけ、でも、今日は違う。
私は桐生君に勝つ……私を本気にした事を後悔するのね。
終盤はテンポが速くなり、私はそれでも落ち着いてその曲を弾く。
愛の夢という曲……私がお兄ちゃんを愛していた事が夢……?
……違う、夢なんかじゃない。
あの温もりだけは夢じゃない、夢じゃないよね、お兄ちゃん。
私は……ピアノを弾き終えて、鍵盤からゆっくりと手を離した。
曲を通して完璧に弾けたという、絶対的な自信……私の勝利は揺るがない。
桐生君がどんな演奏をしようとも、私には勝てない。
私に対して惜しみない拍手が皆から送られる。
私は静かに頭を下げて舞台から降り立つ。
桐生君に勝ちたいと思う気持ちが大きくて、私の席の隣にいる彼を一瞥した。
「どう?これでも私に勝てる?」
「……あ?」
彼は今、私に声をかけられた事に気づかないような様子で答える。
何なの、調子が狂うじゃない。
「あ、ああ。……完璧だったな、ミスはなかったよ……でも」
「でも……?」
『最後は桐生雅貴さんです。曲名は……』
アナウンスが私達の会話をさえぎり、彼は席を立ち上がる。
……桐生君は私になぜか寂しそうな顔で答えた。
「今の弾き方は西園寺らしくなかった。俺はそう感じたよ」
「……え?」
去り際に彼は私にそういい残して舞台へとあがっていく。
何で……そんな言葉を使うんだろう。
負け惜しみ、じゃない……違う、私らしくない、その意味は何?
私は彼の言葉に混乱しつつも、彼の演奏を聴くことにした。
桐生君の演奏は迫力がある、私にはないスピード感、それに、スケールの大きさ。
男の子らしい力強い弾き方、それでも繊細なメロディ。
聴いて方はゆっくりと心をリラックスして聴ける優しさもある。
しっかりと、落ち着いて曲を奏でる。
ピアノを弾く桐生君はいつもとは違い、冷静に弾けていた。
動揺する事もなく、ただ、誰かのために弾くような人に聴かせるための曲。
想いを伝える曲……そう、まさに音楽が生きているような感じ。
……彼がこんな風に弾けるなんて私は知らなかった。
臨場感に溢れた彼の演奏に聞き惚れる私がいて、その音楽に感動していた。
全ての演奏後、ピアノコンクールの結果がレックさんから発表される。
上位3位までが全国大会に出場できる、その結果……。
「2位、西園寺麗奈……1位、桐生雅貴」
発表された結果は私の敗北だった。
「どうして……私が負けたんですか……」
コンクールの賞状を受け渡された時、私はレックさんに聞いていた。
思わず口を出てしまった言葉だけど、彼は軽く頷きながら、
「キミの曲は確かに素晴らしかった。技術力、完成度という意味ではキミの腕前は全国レベルだろう。しかし、キミと桐生君の間には違いがある。とても大きな違い」
「違い……ですか?」
「そう。……キミの曲には感情がないんだ。ピアノとは喜怒哀楽の感情を表すもの。キミの弾き方は素晴らしいが、人を感動させる力がない。彼にはそれがあった。本来の、キミにもそれがあるはず。今日の演奏ではそれは聴くことができなかった」
レックさんの言葉、私には理解していた。新一粒神
「……あっ……ぁっ……」
そう、お兄ちゃんが言っていた“楽しく”ピアノを弾くという事。
私は勝負を意識しすぎて、1番大事にしていたそれを忘れていたんだ。
自分が楽しくなければ、人を感動させる事なんてできない。
……桐生君の言うとおり、今日の私は自分らしさがなかった。
「自分でも分かってるようだね。全国大会を楽しみにしているよ、西園寺さん。キミらしさを持った弾き方で私にその曲を聴かせてくれ」
「……はい」
そう、私は桐生君の曲に感動を覚えていた。
けれど、私にはそれがなかったから、負けたんだ、完全な敗北だった。
コンクールが終わり、着替え終わった私は廊下に座り込んでいた。
「よう、元気ないな、西園寺」
「ううん。それよりも1位おめでとう、桐生君」
私は顔を上げて勝利者の顔を見つめた。
「今回は私の完敗。負けを認めるわ。悔しいけど、貴方のピアノに感動した」
「今日の演奏はお前らしくなかった、それだけだ。次はどうか分からない」
「そうだといいけど。……ねぇ、桐生君はどうしてあんな風にピアノが弾けたの?」
ピアノで人を感動させる、それは簡単なものじゃない。
「……ピアノって自分のために弾くものじゃないだろう。その音楽を聴かせる相手のために弾くものだから。俺は……聴いて欲しい人がいたから、その人のために弾いた。それだけだ。西園寺も本来はそういうスタイルじゃないか」
聴いてもらいたい人……桐生君にもそういう人がいるんだ。
「気になってたんだけど、この間、一緒にいた男の人って本当にお前の彼氏か?何か、この間の西園寺の態度だと違う気がした」
「……まぁね。あの人、本当は私のお兄ちゃんなの。私がただ片思いしていただけ。それにお兄ちゃんは他に好きな人がいるし、私と彼は結ばれないの」
……そうさせたのは私だという事はあえて伏せておく。
私がそう言うと彼はなぜかホッとした様子を見せて、
「それなら、俺にもまだチャンスあるな……。この間は悪い事を言った。ごめん」
「え……あ、うん。もういいよ、別に……」
彼は素直に謝罪してくれたので、それだけで何だか彼を許してあげてもいい気になる。
まぁ、実際は彼のピアノに感動したし、彼を見直した事が大きな原因なんだけど。
「それで、約束はどうするの?桐生君は私に何をさせたい?何でもいいわ」
「その言い方は何だかなぁ。ま、約束を守ってくれるなら……させてもらおうか」
彼は私に顔を近づいて、その言葉を優しく囁いた。
「俺さ……西園寺が好きだから。ずっと前から好きだった」
一瞬だった、私の唇は彼の唇によって塞がれていた。
それがあまりにも突然すぎて私には理解できてなかった。
「ん?……んんっー!?」
桐生君によって奪われた私の唇……心臓の鼓動が壊れそうなほどに早まっていく。
「き、桐生君?な、何でこんな事するのよ?」
「これが俺が西園寺にしたかったことだ。今度は全国大会で勝負だからな」
「……あっ、キス!?それに……私の事が好き?って、私の気持ちは無視?」
今さら気づいて驚いた頃には彼は「またな」と、その場から歩き出していてしまっていた。
……私、桐生君に告白された……あのいつも意地悪してきた桐生君が私に?
私は自分の唇を押さえて、その後姿をドキドキが収まらないまま、見つめ続けていたんだ蔵八宝。
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