2014年3月21日星期五

女は強し 特作嫁の会

 五月晴れのとある土曜日、洗濯物を干し終わって風になびく白いシーツを満足げに眺めているとインターホンが鳴った。こんな時間に来客だなんて珍しい。まさか記者さん達じゃないよね?と恐る恐る出るとモニターには数人の女性が立っているのが映っている。誰だろう?曲美

「はい、どちら様ですかー?」
「森永二佐の奥さまですか? 私達、夫が二佐の下でお世話になっている者で、安住、矢野、下山と申します。急に申し訳ありません、少しお時間いただけますか?」

 安住さん、矢野さん、下山さん、実のところ名前だけは聞いたことがある。確か同じ部隊にいる隊員さんで信吾さんの口から何度か出たことのある名前。だけど奥様方に会うのは初めてだ。

「分かりました、そのまま入ってもらってエレベーターで7階までどうぞ」

 そんなことを考えながら洗濯かごを洗濯機の横に置き、玄関へと向かう。ドアチャイムが鳴ったところでドアを開けた。

「「「まぁぁぁぁぁぁぁ、可愛いぃぃぃぃぃぃ」」」

 女三人寄れば姦(かしま)しいとはよく言ったもので・・・その迫力に思わず後ずさりしちゃった。奥様方が三人揃ったら小娘の私が敵うわけないじゃないかー! っていうか第一声が「まあ、可愛い」って喜んで良いのやらちょっと微妙な気持ち・・・。

「あ、あのぅ・・・どうぞ・・・」

 スリッパを三人分置いて徐々に後ずさり。奥様方は三十代前半から後半の同世代な人達って感じかな。お土産持って来ましたーと言いながら嬉しそうにクッキーやチョコレートの入った紙袋をこちらに押し付けてくれちゃってます。おおお、なんだか凄いパワーを感じます。でも美味しそうなクッキー・・・。

「お茶、用意するので・・・」

 リビングに案内してソファに座ってもらうと、三人はキョロキョロと興味深そうに部屋を見渡している。

「ここのインテリアは奥様が選ばれたんですか?」
「えっと・・・しん、夫と一緒に選んだりしたのもありますよ」

 途端に目をキラキラさせてこちらを見ている三組の目。えーとえーと、なんでしょう、何か私、変なこと言ったかな?

「もしかして二佐とは名前で呼び合ったりしてます?」
「え、あ、はい」
「「「うらやましぃぃぃぃ!!」」」
「ぅえぇ?」
「うちは子供ができてから“パパ”と“ママ”ですよ。それで不満がある訳じゃないんですけど、男と女じゃなくなっちゃったみたいでちょっと寂しくて。新婚さんが羨ましいわあ」
「はあ・・・」

 お茶の用意をしていただいたクッキーをお皿に並べて持っていく。

「奥様は学生さんなんですよね?」
「はい。なので隊の集まりになかなか顔を出せなくて・・・」
「あら、そんなの気にしなくてもいいんですよ。もともと特作は機密性の高い部隊だから、隊員の家族が参加するイベント自体が少ないんです。そういうのもあって、せめて嫁同志だけでも繋がりを持とうって最近になって集まるようになったんですよ」
「そうなんですか?」

 三人の奥様は揃って頷いた。特作嫁の会? そんな感じらしい。

「私は学校に通っているのでなかなか皆さんとのお時間は作れないとは思いますけど・・・」
「ええ、ええ、分かってますよ。二佐がうちの嫁はまだ学生だからって何度か話していらっしゃったから。でも今日はお暇ですよね?」
「はい。今のところは夕方に買い物に行くつもりなだけで」

 三人は“よっしゃっ”て顔をしてる。なんだろう? 何かあるの?

「あの、二佐の制服がしまっている場所、見せていただいて良いですか?」
「???」
「ああ、二佐に頼まれたんです、制服を持ってきて欲しいって。だけど奥様はどれがどの組み合わせか分からないだろうから頼まれてくれと」
「そーなんですか。えっとですね、制服関係はこっちのクローゼットに揃ってる筈なんですけど」

 信吾さんの制服関係はリビングにあるクローゼットに全部入っている、筈。何せ戦闘服とか靴とかいっぱいあって、それ以外にもリュックみたいなものとか着るモノ以外の装備品が山のようにあるので、寝室のクローゼットには入りきらなかったんだよね。だから、こっちのクローゼットの半分は信吾さん専用にして彼に管理を任せてある。だから正直言って私は何が入っているのかよく分からない。K-Y Jelly潤滑剤

「お願いしても良いですか? 必要なものが足りなかったりしたら困るので」
「心得てますよ、大丈夫、任せて下さい。その間に奥様も出掛ける準備をなさって下さいな」

 あまりの勢いに反論する暇がなくて言われるがままに出掛ける準備をする。

「あのう、出掛けるって一体どこへ行くんでしょう?」
「ああ、何も言わずに御免なさい。二佐の奥様に会えたのが嬉しくてつい忘れちゃってました」

 安住さんがテヘペロって感じで笑う。

「基地でね、歓迎会をしようって話になったんです。ご結婚のお祝いもしてないし、二佐はそんなこと必要無いって仰ってたんですけど、やはり妻としては夫の上司の奥さまにお祝いをしなくちゃって思うわけなんですね。なので今日は基地で奥様の歓迎会なんです。他の女性陣はお迎えする準備をしてますから、ほぼ全員と顔合わせが出来ると思いますよ?」

 こういうことって男には任せておけませんから、とは下山さんの言葉。そんな訳で三人の奥様方と私は矢野さんの奥様が運転する車に乗って基地までお出掛けすることに。初めて目にすることになる信吾さんの職場ってどんな感じだろう。戦車がゴロゴロ走っていたりするのかな、あ、それって演習だっけか。

「歓迎会をするならもっとお洒落なところでって考えていたんですけどね、野郎共の時間が合わなくて難しいんですよ。なので申し訳ないんですが、仕事中でも顔が出せる基地が一番手っ取り早いかなってことで基地ですることになっちゃいました。改めて女性だけでお食事会は開きましょうね」
「いえいえ、皆さんと顔を合わせられることの方が大事ですから」
「でもね、二佐が必要無いって言った本当の意味が分かった気がします」

 助手席に座っていた下山さんがこちらを見ながら笑った。

「と言いますと?」
「きっと二佐は奥様を他の男共の目に触れさせたくなかったんですよ。こんなに可愛い奥様ですものねー、変な虫がつきでもしたら大変って思ったに違いないです」
「変な虫・・・」
「全員が既婚者じゃありませんからね、独身男もいる訳ですよ。それこそ二十代の若造が。二佐はそういう男の目から奥様を隠したかったんですよ、きっと」

 二佐も可愛いーとか三人ではもってるし。

「あの、三人の奥様方は仲良しなんですね」
「うちの人達はここに配属される前にいた空挺で一緒だったから付き合いが長いんですよ。それこそ結婚する前からなので」
「へえ・・・」

 えっとクウテイっていうのは確か・・・。

「簡単に言うとパラシュートで飛び降りる人達ですね」

 横から安住さんが説明してくれる。さすが奥様達は詳しい。あ、旦那さんがいるところだから当然なのかな? そう言えば、信吾さんってトクサクに来る前は何処にいたんだろう。最初からここなのかな?

「二佐は元はレンジャーにいたんですよ、確か」
「そうなんですか。私、あまり仕事に関しては聞かないようにしてるので信吾さんが何をしていたかとか全く知らなくて」
「分かります、それ。最初は戸惑いますよね、あれこれ話せないって言われるから仕事に関しては喋っちゃいけないのかなって。私も最初の頃そうだったから」福源春

 ハンドルを握っていた矢野さんが頷く。

「聞きたいことや知りたいことがあったら私達に聞いて下さい。少なくとも奥様よりは長いこと自衛官の妻をしてますし、私達が知っている事は話しても問題ないことばかりだろうから」
「ありがとうございます」

 そしてせっかくなので名前で呼び合うようにしませんかって話になった。名字だと旦那さんがいる時に不便だし、奥様って呼び合うのも何だか妙な感じだものね。安住さんの奥さんが京子さん、矢野さんの奥さんが茉莉さん、そして下山さんの奥さんが弥生さん。今日はそれ以外の奥様達にも会うことになるんだろうけど、全員の名前と顔、一致できるようになるかな・・・。


++++++++++


 到着した自衛隊基地。マッチョな人達がウロウロしていることもないし戦車もゴロゴロ走ってない。よかった、制服の人達を見かける以外はいたって普通の場所だ。

「皆、おまたせー、奈緒さん、連れてきたよー! それじゃあ潤ちゃん、準備よろしく!!」
「はーい、ここからは潤ちゃんにお任せ下さーい♪ さあ奈緒さん、覚悟はよろしーでしょーかっ!」
「え・・・は、い?」

 会議室みたいなところに引っ張っていかれると、そこには数人の女性が待ちかまえていたみたい。こちらを見ると“はじめましてー”の大合唱。全員が特作嫁の会(仮称)のメンバーらしい。潤ちゃんと呼ばれた私の隣に立っている人は他の人達よりも少し若いくらいで、もしかしたら私と一番年が近いんじゃないかな?

「あのぅ・・・」
「奈緒さん、お式挙げてないって聞いたんですけど本当ですか?」
「え・・・はい、入籍だけです、けど」

 途端に部屋中で大ブーイング。あわわ、そんなブーブー言われてもっ!!

「こんな可愛い奥さんもらっておいて式も披露宴も無しだなんて使えねぇぇぇ!! オヤジに言って森永さんのケツ、蹴ってもらうっ!!」

 潤ちゃんさんが叫ぶ。見た感じはお人形みたいな可愛い系な人なのに言葉遣いが恐ろしいです。そして潤ちゃんさんはどうやら“奥様”ではなく“お嬢様”の方らしい。

「やっぱり野郎には任せておけないってことが結論付けられました! では皆さん、奈緒さんのお支度を手伝って下さい!!」
「え? あ?」

 部屋の真ん中に敷いてあるカーペットの方へと引っ張っていかれると、先ずは靴を脱げと言われ、それに従うと今度は服を脱げと言われた。ななな? 何で服を?

「これを着ていただく為です」

 奥様達が自分達の後ろの方に置いてあったものを私の前に持ってきた。

「これ、もしかしてウェディングドレス、ですか?」
「もしかしなくてもウェディングドレスです。私、ブライダル関係の仕事に就いてまして、未使用レンタル品を皆で買い上げて奈緒さんの為に御用意させていただきました!」

 潤ちゃんさんがエッヘンと胸を張った。

「サイズに関しては御心配なく。部隊の野郎を使って尾行させていただき、確認しているので問題ないです」levitra

 ビコウ・・・尾行?! 奥様達に服を半ば強引に脱がされながら目を丸くしてしまった。

「さすが特作でストーキングをさせたら右に出る者はいないと言われた安住三曹の任務は完璧ですよ。二佐にも気付かれないんですよ? ちょっとした勲章モノかもしれません」
「そ、そうなんですか・・・ん?」

 ってことは、お買い物に行った時に手に取った服のサイズなんかを確かめられちゃったんですか? も、もしかして下着とかも?!

「ああ、服のサイズの確認などは京子さんがしているので問題ないですから。その辺は男にさせてないので御心配なく」
「あ、そうなんですか、良かった・・・」

 着替えと髪のセットをしてもらう間、とっかえひっかえ奥様達が自己紹介に訪れる。正直もう覚えるの無理だよー? あ、さすがに潤ちゃんさんは覚えました。潤ちゃんさんはここのグンチョウさんの末のお嬢さん。つまりは信吾さんの上司のお嬢さん。今回の“歓迎会”を最初に言い出したのは潤ちゃんさんだったみたい。

「うちにお越しになった時に信吾さんの制服を頼まれてというのは・・・」
「すみません、森永二佐にではなく、その上の篠原一佐に二佐の礼服を取ってくるように頼まれたっていうのが正解です。ごめんなさいね、驚かせようと思っていたから嘘ついちゃいました」

 矢野さんの奥さん茉莉さんが申し訳なさそうに言った。ってことは今頃、信吾さんの方でもちょっとした騒ぎになっているのかあ。なんだか面白そう、覗いてみたかったな。そうこうしているうちに時間が過ぎていき準備完了。姿見の前に立たせてもらって初めて自分のウェディングドレス姿を確認する。

「わー・・・素敵ぃ」

 綺麗なドレス。パッと見た感じは真っ白なだけなんだけど、近くで見ると胸元と裾に銀糸で刺繍が細かく施されていて、見る角度によって浮き上がって見える。そしてそれを見ながら思ったんだ、キスマーク消えていて良かったって。

「奈緒さん、すごく似合ってますよー。お顔は写真で拝見していたから分かっていたけど着てもらうまではどうかなって心配していたんです。まったく問題なしですね、とーっても素敵な花嫁さんです」

「二佐の方も準備OKですよー。わおっ、奈緒さん素敵ぃ」

 顔を出した京子さんがこちらにやってきた。

「じゃあ、先ずはここで嫁の会一部と記念写真撮りましょう。野郎共は待たせておくぐらいがちょうど良いですし」

 何気に奥様達は強気です。っていうか、もしかしたら特作の妻帯者の皆さんは全員奥様のお尻に敷かれているのかもと密かに思っちゃった。私もそのうち信吾さんをお尻の下に敷けるかな? 奥様達と写真を何枚か撮ると、そのまま隣の大会議室へと移動することに。廊下に出ると何やら信吾さんの声が聞こえてきた。

「お前等、絶対に腕立て伏せ200回だからなっ」
「そんな苛々しちゃダメっすよ、そろそろ花嫁さんが来るっていうのに顔が怖すぎです、二佐」
「ほぉ、どうやら300回に増やして欲しいらしいなっ」

 そんな怒鳴り声を聞いた潤ちゃんさんがおかしそうに笑った。

「あー・・・怒ってる怒ってる。そんなに照れることないと思うんですけどねえ・・・ほらほら、みんなー、花嫁様の御登場ですよー、静粛に静粛に」

 そこにいる全員の目がこちらに向く。ひえぇぇぇ、そんなに注目しないでくださーい! 緊張して動きがぎこちなくなっちゃうよ! 顔を上げることが出来なくて足元を見たまま京子さんに手を引かれて信吾さんの横に立った。おおーっとざわめきが広がっている。うわー・・・顔上げるの怖いー。そんな訳で隣にいる信吾さんのピカピカに磨かれた靴を穴が開くほど見詰め続けることになったんだけど。

「奈緒さーん、写真撮るから顔あげてー」

 って潤ちゃんさんから声をかけられて思わず顔を上げてしまった。顔を上げてちょっと後悔。こ、強面の集団がこっち見てるよっっっ。Motivat

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