2013年7月11日星期四

エレメントマスターVSラースプン

闇が支配する夜の時間、だがゴブリンの切り開いたこの空き地においては真昼の如き明るさが戻っていた。
  黒髪と大岩の牢獄に閉じ込められたモンスターの真上に、リリィ渾身の『星墜メテオストライク』が炸裂したのだ。SUPER FAT BURNING
  これまで命中すれば確実に敵を葬ってきた必殺の一撃、だが、
 「おいおい――」
  クロノは見た、頭上より迫り来る虹色の隕石を前に、モンスターが己の拳一つで迎撃するのを。
 『星墜メテオストライク』が発動し、虚空に白い光の魔法陣が描かれるのと同時、モンスターは左よりも一回り太いアンバランスな大きさを誇る右腕に自由を取り戻していた。
  何てことは無い、ただ力ずくで黒髪の拘束を引き千切り、動きを抑える岩の牢を吹き飛した、それだけのことである。
  その時点で、宇宙から直接隕石でも呼んでいるのではないかと思えるような勢いで、魔法陣から光の塊が撃ち出されていた。
  モンスターは真上を睨み、その巨大な右拳を握って弓を引くように大きく腕を振りかぶる。
  右手の甲に輝く『紅水晶球クイーンベリル』の如き真紅の宝玉が輝くと、そこから紅蓮の炎が生まれ右腕全てを包んでいく。
  そうして燃え盛る炎を纏った右腕は、天より迫る隕石を迎撃するミサイルのように正面からぶつかる。
  衝突、虹色の輝きと真紅の煌きが光の奔流となって辺り一帯に荒れ狂う。
  そのインパクトの瞬間を目にしたクロノは、その直後に眩い光のために視界を閉ざす。
  だが『星墜メテオストライク』に真っ向から炎の拳を叩き込むモンスターの姿はあまりに力強い。
  そして一瞬の内に光の洪水は収まり、再び『灯火トーチ』の輝きだけが周囲を照らす闇夜が戻ってくる。
 「本当に『星墜メテオストライク』を防いだぞ……」
  視線の先には、直径数十メートルのクレーターの中心に、全ての拘束から解き放たれたモンスターの五体満足な姿があった。
 「くそっ、コイツはマジでヤバそうだな、流石は神の試練ってところか」
  そう愚痴をこぼしつつも、今更後戻りすることなど出来ない。
  クロノはパーティメンバーであるリリィとフィオナと共に空き地へと躍り出る、その場所はちょうど、幹部候補生とメイドを庇うような立ち位置であった。
 「あ、お前は……」
  クロノ達の姿に真っ先に反応したのは、長身の、といってもクロノよりは僅かに小さいが、幹部候補生の少年だった。
  酷く驚いた様子、まぁこの状況を考えれば驚かないほうが不自然だ、クロノはそう考え、必要な事だけを手短に伝えることにする。
 「おい、このモンスターは俺たちが引き受ける、あんた達は早く逃げろ!」
  切羽詰った緊急事態のため、クロノは初対面の相手だが敬語を使うのを止めて強い口調で訴えかけた。
 「え、あ、しかし――」
  見ず知らずの冒険者に、このとんでもなく強力なモンスターの相手を押し付けることに抵抗感があるのか、はっきりと解答しない男子生徒。
 「ありがとうございます!」
  だが、彼の護衛メイドはこんな場面でも冷静に判断を下せるようだ。
  彼女はさっさと主をかついで、礼の一言を残すと今にもその場を去らんとクロノたちにエプロンドレスの背を向けた。
  そして、クロノはそんな彼女を止めるつもりはない、むしろ逃げてくれなければ困るのだから。
 「アイツはランク5モンスターのラースプンだ! 倒そうなんて考えず君たちも早く逃げるんだぁああああ!!」
  メイドに抱えられて去ってゆきながら、そんな台詞を男子生徒は絶叫していた。
  その心遣いに、思わずクロノは微笑みを浮かべてしまう。
 「ラースプンなんて言うのか、プンプンの進化系かな?」
  その割には凶悪すぎる進化を遂げたものだと呑気なことを考えながら、クロノはランク5モンスターに向き直る。
 「ごめんなさいクロノ、仕留め切れなかったわ」
  右隣から謝罪の声をかけるのは、すでに少女の姿へ戻り淡いグリーンの『妖精結界オラクルフィールド』に身を包むリリィ。
 「いや、アイツは炎を使ってた、熱に対して高い耐性を持ってるんだ、相性が悪かった」
  モンスターは自身が炎や雷などの属性を操る場合、ほぼ確実にその属性に対して高い耐性を持っている。
  このラースプンと呼ばれるモンスターも例に漏れない、むしろランク5であるならば、ほぼ無効化に近いほどの耐性を誇るはずだ。
 「それなら私とも相性が悪いですね」
  左隣からは、四方百里を焦土に変える炎の暴走魔女フィオナの声。
  確かに、『星墜メテオストライク』でも四肢の一つも吹き飛ばないほど耐えて見せたのだ、相性の関係で『黄金太陽オール・ソレイユ』でも倒せなかったに違い無い。
 「炎熱に耐性を持つモンスター相手だと大きく遅れをとるな、ウチのパーティの弱点発見だな」
  と言っても、それを今すぐ改善できるはずも無い。超級脂肪燃焼弾
 「仕方無い、俺が切り伏せるしかないな、リリィとフィオナは援護に徹してくれ」
  了解の言葉がクロノの両耳にそれぞれ違った声音で届いた。
  その手には、すでに相棒たる『呪怨鉈「腹裂」』が握られ、背後には十本の黒化剣が翼を広げるように展開されている。
 「行くぞ――」
  クロノが真っ直ぐ駆け出すと同時、ラースプンは赤毛を逆立たせ、再びガラハド山中に木霊する凶悪な咆哮をあげた。

  耳をつんざく咆哮を轟かせ、怒り状態となったラースプンには、ほとんど『星墜メテオストライク』のダメージが堪えていない様に思える。
  『星墜メテオストライク』の主なダメージソースとなる光の高熱がほとんど無効化されてしまったため、体に通ったのは爆発の衝撃のみ。
  ただの人間なら、いや、例えミノタウルスだったとしても爆発の威力だけで四散五裂するところだが、このラースプンはパワータイプのモンスターに共通する衝撃に対する耐性もかなり高いレベルで持ちえているということが、この元気な姿を見れば即座に理解できた。
 (けど、斬撃ならどうだ)
  モンスターと言っても万能では無い、強いところがあれば弱いところもある。
  ラースプンの見た目は厚い毛皮に覆われた熊とゴリラを足したような、いわば魔獣と呼ぶべき姿だ。
  その毛皮と筋肉は衝撃や打撃には強い耐性を持つが、鋭い刃による斬撃は、モンスターのセオリーからいけば有効なはず。
  逆に肉の身体を持たない骨だけのスケルトンや硬い鱗や甲羅を持つモンスターは、打撃が有効で斬撃は効き難い、というようになる。
  クロノはこれまであらゆる敵を切り裂いてきた『呪怨鉈「腹裂」』ならば、このランク5のモンスターだろうと、その肉体を断つことができると信じて斬りかかる。
  だが、対するラースプンはそうして駆けるクロノを黙って待っていることなどしない。
  未だ両者の間合いが重ならない距離、だがラースプンは右腕を振りかぶると、その手のひらに再び火炎が収束し始める。
 (火球を飛ばせるのか!?)
  それはまるで炎の攻撃魔法のように、大きな火球を手のひらの上で形成された。
  そして、クロノがモンスターの巨体へ肉薄する前に、炎の豪腕が振るわれ弾丸の如き速度で火球が放たれる。
 「――黒盾シールド!」
  黒い繊維が折り重なるように防御魔法が形成される。
  その大きさはクロノの膝から頭の上までを覆う長方形、目前に迫る直径1メートルほどの火球を前に、その黒い盾はあまりに頼りなく見えた。
  それはきっと、ラースプンも同じ。
  着弾、爆発、黒煙と熱波が吹き荒れると、鋭い牙が並んだ口元は邪悪な笑みで歪められた。
それは、ブルーマリンのような青い宝石がはめ込まれたアクセサリーだった。
 『蒼炎の守護ナナブラスト・アミュレット』、それがこのアクセサリーの名前だ。
  フィオナが所持する、非常に高い炎熱防御の効果を秘めるレアな魔法具マジック・アイテムで、その効果のほどは実際に第八使徒アイ戦で『黄金太陽オール・ソレイユ』の炎から守ってくれたことで実証済み。
  紅炎の月1日の夜、俺はそんなレアアイテムを貰うこととなった。
 「これは私からのプレゼントです、どうぞ」
  フィオナから手渡された青い輝きを放つお守り。
  どうして、と問えば「買いました」と簡素な答えが返って来る、そういう意味で聞いたのではないのだが。
 「私とお揃いですね」
  俺はそんな男心が勘違いしそうな台詞に恥かしいやら、この‘レア’なアイテムがいくらしたのかとか、色々と気になることしきりであったが、
 「あ、ありがとう」
  大人しく受け取ることしかできなかった。
  その時、妙に冷めたリリィの表情がちょっと怖かった……

 ラースプンの火球攻撃を正面から切り抜けた時、その眼に驚きの色が映ったように見えた。
  俺が無傷で爆発を潜り抜けたことがそんなに予想外だったか。
  まぁ、『蒼炎の守護ナナブラスト・アミュレット』を装備して無かったら、この頼りない見習いローブごと燃やされていただろうな。
  フィオナからプレゼントされたこのお守りはチェーンを通して、腰の革ベルトにくくりつけてある。
  身を焦がす灼熱の火球は、これのお陰でほとんどのダメージを無効化することができた。
  爆発の威力は『黒髪呪縛「棺」』で通常よりやや頑丈になった『黒盾シールド』で綺麗に相殺された。終極痩身
  結果的に、俺は僅かな熱を感じるのみに留まる。
  そうして、黒煙が漂う爆炎を潜り抜けたとほぼ同じタイミングで、
 「――『速度強化スピードブースト』」
  フィオナから支援魔法が飛んでくる。
  体が軽くなり、地を駆ける両足により一層の力が篭り、数十メートルはある彼我の距離は瞬く間にゼロになる。
 「――『腕力強化フォルスブースト』」
  そして、渾身の力で『呪怨鉈「腹裂」』を振り上げると同時、さらなる支援魔法が俺の体にかかり、繰り出す武技の威力を上昇させる。
 「黒凪!」
  ラースプンはその巨体から信じられないほどの速度でバックステップを踏み、瞬時に黒い刃の間合いから逃れる。
  だが、速度と腕力の二重に強化された俺が放つ武技からは、完全に逃れることができない。
  柄を握る両手から、ゴムのような弾力と硬さのある肉体を切り裂く感触が届く。
  バックステップから着地したラースプン、その左腕からは鮮血が滴っている。
  致命傷にはほど遠いが、この刃でダメージが通ることが証明された。
  ならば行ける、コイツを倒すことが出来る。
 「はあっ!」
  追撃で一歩を踏み出す、対する相手も怒りに吼えながら突っ込んできた。
  振り上げられた右腕は、『星墜メテオストライク』を砕いた時と同じように紅蓮の炎を纏っている。
  この炎は火球よりも強力だと直感的に判断、まともにくらえば『蒼炎の守護ナナブラスト・アミュレット』があっても高熱が届くかもしれない。
  もっとも、そうでなくとも破城槌のような腕でパンチを貰えばそれだけで一発KOされる可能性が高い。
 「魔剣ソードアーツ!」
  惜しげもなく十本全ての黒化剣を投擲。
  ラースプンは全く意に介することなく黒い刃に受けてたった。
  突き刺さった剣は七本、肩や腕、足、胸、とバラバラだがどれも傷が浅い、頭部だけは反射的に首を振って回避された。
  それでいて、振りかぶった右腕はそのまま。
  ダメだ、攻撃を止めるほどのダメージにはならなかったか。
  コイツの火炎パンチを防御するのはお守りとグローブの両方があっても危険、攻撃をキャンセルできなかった以上は、もう残された手段は回避のみ。
  脳裏に蘇るのは、大型モンスターと戦うのが当たり前だった機動実験の日々。
  あの時、俺は武器無し、防具無しの体一つだけで、どうやってアイツらと渡り合っていた?
  地を揺るがす強烈な突進、骨まで断つ鋭い爪の一撃、捕らえられれば二度と脱出不可能な顎、およそ人間では実現不可能な、巨大な体躯から繰り出される単純だがそれ故に驚異的な威力を誇る、正にモンスターならではの攻撃。
  受け止める盾も鎧も無い俺が、そんなモンスターと戦い、勝利を治めることができたのは、常に回避を成功させてきたからに他ならない。
  その感覚、大型モンスターと戦う際の立ち回り、セオリー、全てこの体に忘れられない記憶として今でも刻み込まれている。
 「だあっ!」
  そして頭上より振り下ろされる灼熱の鉄拳。
  避けるのは後ろでも右でも左でもない、前だ。
  大型モンスターはその巨体ゆえ、足元や懐が攻撃範囲外になりやすい。
  前転するように躊躇無く飛び込む、すぐ後ろに凄まじい高熱と重量を持つ一撃がギリギリで通り過ぎていくのを感じる。
  俺へと命中する事無く空を切った火炎パンチは、その勢いのまま雑草の生える地面を焼却し、抉ったようだ。
  発生した衝撃波で背中を押されるような感覚、その勢いのまま、俺は転がりながらラースプンの体の下を潜り抜ける。
  武技を繰り出せない崩れた体勢だが、通り抜け様に鉈を振るう。
  僅かな手ごたえ、右後ろ足に刃先がギリギリで届き切り裂いた。
  ラースプンの背後に出た俺が、立ち上がって構えるが、ヤツの反応もやはり早い、無防備な背中へ斬りかかる間も無く、すぐにこちらへ振り返る。
  その時、ラースプンの背中を襲ったのは俺では無くリリィの光線だった。
  あまりダメージが通った様子は無いが、ヤツの意識が俺から外れるのを察す。
  チャンスか――いや、あの右手には炎が球状に収束され始めている。御秀堂 養顔痩身カプセル
 「『影触手アンカーハンド』」
  鉈を握っていない左手から、呪われた黒髪を紡いでワイヤーを作り出す。
  ラースプンが燃え盛る豪腕を振りかぶって、灼熱の一投をリリィへ放つその瞬間に、『影触手アンカーハンド』が絡みつく。
 「うぉおおおおおお!」
  渾身の力を振り絞ってワイヤーを引く、だがラースプンの強靭な腕力に、いくら強化されているといっても人間の俺が敵うわけも無い。
  さらにブチブチとワイヤーが次々と引き千切れ、右腕を拘束から解き放つ。
  だが、それで十分だ。
  放られた火球は俺の妨害によって本来のターゲットから大きく逸れて飛んで行く。
  その行方を眼で追う事無く、そのまま俺は追撃をしかけた。
  未だ何本か右腕に絡みつくワイヤーを引いて、岩山のような巨体に足をかけて駆け上る。
  ラースプンが振り払うように体を揺すり、左右の手がまとわりつく羽虫のような俺を掴むべく振り回される。
  その行動をした時には俺の体は跳躍し、上空7メートルを越す、つまりモンスターの頭上にあった。
  重力に囚われ自由落下を始める体、姿勢制御でしっかりバランスをとり、空中から武技を放つ。
 「黒凪っ!」
  狙うは真紅の毛に覆われた首元。
  硬く分厚い頭蓋骨を割るよりも、首を斬る方が致命傷を与えやすい。
  運よく骨ごと首を断ち切ることが出来れば、それだけで決着がつく。
  そして、必殺の一撃となる黒い刃が届くその瞬間、
  ゴァアアアアっ!!
  それだけで吹っ飛びそうになるほどの咆哮、鼓膜が破れんばかりの大声量に頭がガンガンする。
  だが、問題なのはそこではない、直感的に危機を感じたのは、これまで黒毛だった部分も、一瞬の内に朱に染まるという変化を見せた点だ。
  しかしながら、振り下ろされた刃は止められないし、そもそも止めるつもりも無い。
  分厚い毛皮と鋼のような筋肉で覆われた太い首、だが無防備に晒された生物として逃れられない弱点に向けて、渾身の黒凪が炸裂する。
 「ぐあっ、硬っ――」
  しかし、腕に伝わるのは重騎士の大盾タワーシールドを斬りつけた時と同じような感触。
  それは決して気のせいではない、この瞬間、ラースプンの肉体は魔法の防御力を加算した鋼鉄と同じだけの防御力を発揮した。
  結果、首を落とすには遠く及ばない、表面に僅かな切り傷をつけるだけに留まる。
 「――マジかよっ!?」
  全身が赤くなったラースプン、その元々あった黒毛の部分は、どこか金属に似た鈍い輝きを放っている。
  黒凪を放ち着地した俺と、朱染めの金属鎧を装備したような威圧感を発するラースプンが対峙する。
  どうやらこの赤い変化は、武技『硬身アイアン・ガード』のように僅かな時間だけ防御力を急上昇させるものではなさそうだ。
  メタル化、とでも言うべきか、少なくとも全身が赤くなったその姿はハッタリでもなんでもなく、必殺の黒凪を防ぐほどの硬さを実現している。
 「これがコイツの本気ってことか」
  思わず冷や汗が頬を伝う。
  リリィの光もフィオナの火も効かない高い炎熱耐性を持つラースプンに、現状で唯一ダメージを与えうる斬撃まで封じられた。
  それはつまり、今の俺たちにコイツを倒す手段が存在しないという事。御秀堂養顔痩身カプセル第3代

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