「ユウ~おはよ~」
「……おはよう」
目が覚めると、左右をニーナとレナに挟まれていた。道理で寝苦しかった理由だ。
二人を押しのけて、顔を洗いに行く。今日は、ニーナとレナのレベル上げに付き合うのと、俺のランクアップの為に、採集と討伐クエストを受ける。SPANISCHE
FLIEGE D6
昨日のゴブリンキングとの戦いで、俺のレベルは25に、ニーナは24、レナは17に上がっていた。
そのことを伝えると、ニーナが焦りだした。
悔しがると思ったんだが、ユウに置いてかれる~と、自分からレベル上げに協力して欲しいと言ってきた。
「おいし~♪」
今日の朝食は、魚介類を煮込んだスープに、焼き上げたばかりのパンだ。魚介類のスープは、透き通っているが出汁がしっかり出ており食事が進む。パンにバターを乗せるとトロリと溶けて、噛むとサクッという食感が堪らなかった。
「……ユウ、昨日の約束」
「わかってる。その前におっちゃんのところに行くから」
急かすレナを落ち着かせ、朝食を済ませる。
鍛冶屋のおっちゃんの所に行くと、珍しく店の奥ではなく入口に立っていた。
「おっちゃん、店の奥じゃなくて、外に居るなんて珍しいな」
「おう、おはようさん」
おっちゃんは挨拶すると、腰に手を当て反り返っていた。所謂、ラジオ体操みたいな動きをしていた。
「たまにはこうやって、運動しないと鈍るからなっ!」
そう言いながら豪快に笑う。おっちゃんに、ニーナの短剣とレナのマントで、お勧めがないかを聞く。
ニーナの鋼鉄のダガーは昨日の戦いで刃が欠けてしまった。魔力で覆うことにより、切れ味と摩耗を防いでいたが永遠とはいかずに、等々限界を迎えてしまった。レナのマントも同様に、ゴブリン達の攻撃で切り裂かれてしまった。
おっちゃんに事情を説明すると
「丁度、良いのがあるぞ」
そう言うと、おっちゃんは店の奥へ走って行った。
「ゼェゼェ……これを……見てくれ」
ソードブレイカー(5級):切れ味上昇
黒曜鉄のダガー(5級)
シュテッカーのマント(5級):火耐性
「まずこの『ソードブレイカー』だが、迷宮産だ。冒険者が迷宮で手に入れたそうなんだが、ボロボロで使い物にならないと売りに来たんだ。なんで俺なんかの店に売りに来たって?そりゃ、どこも買い取らなかったからだ。
だがよ鍛え直せば、まだまだ使えると睨んだんだが、予想以上に良い出来に仕上がったぜ!しかも『切れ味上昇』のスキル付きだ。
次に『黒曜鉄のダガー』こいつはユウの大剣と同じ、黒曜鉄で出来てんだが、前にも言ったかもしれんが兎に角、頑丈だ。
『シュテッカーのマント』は、火の森に生息しているファイアーラットの毛皮に、鋼鉄蜘蛛の糸で編み込んでいる。こいつも頑丈だし何より『火耐性』のスキルが付いている。」
「んじゃ、それ全部買う」
「おおう……値段も聞かずに全部買うのか」
「物は良い物だし、おっちゃんのオススメだからな」
おっちゃんはそうかそうかと、嬉しそうにしながら金を受け取る。
『ソードブレイカー』は、格安で仕入れたそうで、本来なら金貨20枚はするところを金貨15枚で、『黒曜鉄のダガー』は金貨7枚、『シュテッカーのマント』は金貨5枚と銀貨7枚。合計で277万マドカで売ってくれた。
それにしても、最近は収入が増えたとはいえ、金銭感覚がおかしくなってきた。
「ユウ、刃が欠けたのは鋼鉄のダガーだけだよ?」SPANISCHE
FLIEGE D9
「……自分の装備位、自分で払う」
「いいんだよ。臨時収入があったからな」
臨時収入とは、昨日のゴブリンキングの報酬だ。
レナは報酬を受け取ると、全てこちらに渡してきた。自分は何も出来なかったのと、助けて貰った礼だそうだが、別に気にするなと伝えても頑なに拒否したのでそのまま受け取った。
その際にレナから、ある提案があったので了承している。
おっちゃんの店で買い物を済ませたあとは、ギルドでクエストを受けに行く。
今回、受けるクエストは大森林での採集と討伐クエストだ。
コレットさんの居る受付に向かうと、あちらもこっちに気付いたようで、笑顔で手を振りながら挨拶してくる。周りの冒険者、主に男連中からの視線が痛い。
「皆さん、おはようございます!昨日はお疲れ様でした」
「おはようございます。今日は大森林で受けれる。採集と討伐系のクエストを、紹介してくれませんか」
「そうですね。採集クエストは基本的な薬草・魔力草からポッコの花・ムーン草など、どうでしょうか。討伐クエストはビッグボーやブラックウルフが、農作物に被害が出るので常に依頼がありますよ♪
あとは大森林の奥の方へ潜るとシルバーウルフや鋼鉄蜘蛛など、素材の需要が高い魔物が居ますが、ランク4以上と危険なクエストになります!」
コレットさんにいくつかクエストを見繕ってもらい受注する。
気を付けて下さいねと心配してくれるが、周りの冒険者達からの視線が更に強くなる。
コレットさんは誰にでも明るく優しいので、冒険者達から人気あるのでこういった事態になる。
大森林に入るとレナは早速・・『結界』を展開する。
昨日の戦いで何のかんの言って、自分の実力不足を理解したようで、俺がしている常時、闘技を展開してのMP増量を真似している。
「……ふふ、どう?」
レナがドヤ顔でこちらを見てくる。
結界を一部ではなく球状に展開し、どこから攻撃されても、大丈夫なようにしているようだがまだまだ甘い。
「結界にムラがある。魔力の厚いところもあれば薄いところもある。
Dランク以上の冒険者なら、すぐに見抜いて薄い場所から破られるな」
「……むぅ、球状に常時結界を展開するのは大変」
「だからこそMPも増える」
俺は俺で『闘技』と『天網恢秋』を展開している。
まず闘技は身体に流れるように……流動?という技術らしい。流動で纏っていたが、慣れてきたので身体の内側で血液をイメージして、闘技を使用する。かなり難しいができないことはない。
これで前衛職と戦うことがあれば、闘技が使えないと勝手に勘違いするバカが居るに違いない。
MPに関しても日々、増えている。常時、闘技や天網恢恢を展開しているのと成長期だからか、レベルアップしていなくてもMPや身体能力が上がっていく。
「あっビッグボーだ!」
ニーナが『索敵』スキルでビッグボーの接近に気付いたようだ。
勿論、俺も気付いていたが、今回はニーナとレナの育成がメインだから、俺は基本補助しかしない。
「ごめ~んね」
いつものふざけた掛け声を言うと、一瞬でビッグボーの目前に移動していた。
「はっ!?」
ビッグボーまで距離にして、10メートルはあったはずだが、ニーナの始動がほとんど見えなかった。
ビッグボーもいきなり目の前に、現れてパニックになっていた。SPANISCHE
FLIEGE
その隙を逃さず首を切り落とす。武器が強くなり更に魔力で覆っているので、切れ味が凄まじい。首周り70センチはある、ビッグボーの首を一撃で切り落とすなんて中々、出来ることではない。
「えへへ~、このダガーすごい切れ味だよ~」
新しい武器にご満悦のようだ。
レナは結界を常時展開するのが精一杯のようで汗だくだ。
ニーナとステータスを確認する。
「……ユウ、マナ……ポーションを」
レナが青い顔をして、マナポーションを要求してくる。
「わかった」
これがレナとの約束だ。報酬を貰う代わりに、レナにマナポーションを提供する。
レナは好きなだけMPを使い増やすことが出来る。
俺は錬金術でマナポーションを創ることで錬金術のレベル上げも出来るので一石二鳥だ。材料も大森林で集めることができる。さっきから薬草を始め、魔力草・ムーン草・ポッコの花を採集している。
ただ漠然と採集するのではなく、質の良い物だけを採集している。勿論、次も採集出来るように全てを取るようなことはしない。
「……けふっ結界にも慣れてきた」
レナはマナポーションの飲みすぎで、お腹が少し膨らんでいる。
しかしさっきの今で、慣れてくるわけがない。今も顔に余裕はない。
「ふ~ん、んじゃ次はその状態で魔法でニーナの援護な?」
「……も、問題ない。私は天才だ」
「自称な」
そうそういつもストーキングしてくるジョゼフだが、今日は隠密系の装備をせずに尾行している。但し距離は100メートルは離れている。
たまに風の魔法を放つが、躱すか打ち消されている。
その後も大森林を進んで行くと、ゴブリンソルジャー・オーク・オークソルジャー・マーダースネークなど、様々な魔物が現れるがニーナがサクサク倒していく。
レナも所々で援護の魔法を放つが、結界維持がきついのか数は少ない。
「ここって昨日の場所だよね~」
昨日、ゴブリンキングを倒した場所まで着く。
周りはクレータがいくつか出来ている。ゴブリンの死体は魔物達に食われたのか、ほとんどが骨だけになっていた。
ゴブリンキングの死体は、手つかずのようで昨日のままの姿だった。
環境にもよるが死体は数時間後には、腐敗が始まるそうだがゴブリンキングの死体は見た目は、まだ綺麗な状態だったので実験・・をしてみる。Motivator
まずジョゼフが邪魔なので、土と風の魔法を組み合わせた魔法で目潰しをする。
遠くでジョゼフが目が~目が~と某アニメのようなことを叫んでいるが、無視する。
ニーナとレナも興味があるのか、黙って見ている。
大魔猿から奪った『死霊魔法』でゴブリンキングを蘇らせる。
ゴブリンキングの眼が赤黒く光、起き上がる。
『ゴ・・ご命令ヲ・・・ごジュジン様・・』
む、俺の死霊魔法のレベルが低いせいか、もしくは死霊魔法で蘇るとなのかわからないが、昨日より言葉に訛りがある。
「お前には記憶はあるのか?」
『アリ・・・まず・・』
「俺のことは覚えているか?」
『覚エデいまズ。ゴ命令を』
死霊魔法で蘇ると、術者に服従なのか?記憶はあるのに俺に対して敵意を感じない。
横でニーナが不安そうにこちらを見ている。レナは興味深そうに観察している。
「まあいい」
俺は近くに転がっていた腕と脚を拾い。ゴブリンキングに投げ付ける。
『ゴれは?』
ゴブリンキングの切断部に、腕と脚を押し当てヒールを使う。
すると問題なく腕と脚は繋がった。白魔法のヒールはスキル付与の際に、回復速度を高めることからアンデッドには効果はないのかと思っていたが、問題なく回復した。白魔法のヒールの認識を改めてなくてはいけない。
ちなみに神聖魔法の回復魔法だと、アンデッドにダメージを与える。
ゴブリンキングに、その辺に落ちていた鉄の剣を渡す。
「命令を与える。ここら辺の魔物を狩れ、但し冒険者や人間には見付からないように。
用がある際は、こちらから連絡する」
『わガりマ゛した』
耳無しのゴブリンキングはそう答えると、森の奥へ消えて行った。
去り際にゴブリンキングのステータスを確認すると
俺がスキルを奪ったので、見事にスキル0だった。ステータスに若干変化がある。
今回、知りたかったことは俺がスキルを奪った相手は、二度とスキルが手に入らないのか、再度習得出来るかを知る為だ。
その為に、ゴブリンキングを使って実験をする。
死霊魔法で蘇らせたアンデッドとは、魔力を通じて情報の共有が出来るので、俺が動かなくても勝手に大森林の情報も集めてくれる。蒼蝿水(FLY
D5原液)
遠くでは、ジョゼフの叫び声がまだ続いていたが、ニーナとレナは興味が無いみたいでスルーしていた……
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