「……よって、2~3日もしないうちに完全に病は治るだろうというのが、クラーク神官長との共通の見解だ。以上」
グレッグからの通信を聞き、トロン冒険者ギルドの一室に歓喜の声が響き渡る。
そこにはグレッグには聞こえない事を承知で思わず喜びの声をあげ、アリア達と感動を共有しているジンの姿があった。三体牛鞭
トロンの街に着いた翌日、ジン達は予定通りトロンの冒険者ギルドを訪れ、グレッグとの通信に臨んでいたのだ。
「こちらジンです。本当に良かったです。以上」
手短に返信するジンの声は少し震え、その瞳は潤んでいた。涙こそこぼさなかったが、もし誰も居なかったらば完全に泣いていただろう。
実際堪こらえきれなくなったレイチェルはその場に座り込んでポロポロと涙をこぼし、それをフォローするアリアも目元にハンカチをあて、エルザも指でこぼれた涙を拭っていた。
だが共通して言えるのは、涙を見せながらも皆が笑顔だったと言う事だ。それは悲しみの涙ではなく、嬉しさや安堵が入り混じった喜びの涙だった。
「こちらグレッグだ。もう少し詳しく話すぞ。お前が言っていたように、実際に生活魔法を使わせた子供達の方が回復が早いようだ。中にはクラーク神官長が直々に『診断』の魔法を使っても、完全に病の痕跡が感じられなかった者もいたそうだ。勿論完全に治ったものはまだ数名で治りつつある者がほとんどだが、既に高熱を出している子供はいない。恐らく、病自体は今日中には完治する見込みだ。とは言え、さすがに体力は消耗しているので一日二日はまだベッドで寝かせる事になるだろうが、それも直ぐに元通りになるだろう。そういう状況だから、もう安心していいぞ。お前達がこれ以上そこで待機する必要はないから、もう帰って来い。皆で待ってるぞ。以上」
グレッグが言うとおりなら、確かにもう安心だとジンは思う。
高熱を出している子供達が既にいないと言う事は、その体に余分な魔力を放出する仕組みが出来上がったという証明と言えるだろう。だから原因不明で過剰に与えられている魔力は勿論、まだ体の中に残留している魔力も時間が経てば完全に抜け切るはずだ。
ジンはリエンツの街に帰る事を考え始めていた。
今回は意外なほどに早い病からの回復となったが、もしこれが第二段階ではなくて最終段階まで『魔力熱』が進行していた場合は話が違っていただろう。
刻一刻と減り続ける体力に対抗し、時間との勝負になって『滅魔薬』との併用が必要となる者もいたかもしれない。しかし、ジン達が急いだおかげで、最終段階まで進んだ子供がいなかった事が幸いした形だ。
ましてや『滅魔薬』は大きな秘密を抱え、使用にはかなりのリスクもある。使わないで済むのであれば、それに越した事は無いのだ。
「こちらジンです。話し合いますので数分間時間をください。以上」
「こちらグレッグ。了解、以上」
ジンはグレッグに断りをいれ、アリア達に向き直って口を開く。
「と言う事なんだけど、皆の意見はどうかな?」
ジンの意見は決まっているが、パーティ全体の行動方針なのできちんと話し合うべきだと思ったのだ。
「私は帰る事に賛成です。グレッグ教官やクラーク神官長がお墨付きを出すぐらいですから、危機的状況は去ったと思います」
そのアリアの意見に続き、泣き止んで落ち着きを取り戻していたレイチェルも口を開く。
「私もアリアさんと同意見です。おじい……神官長が直々に診断された上でのことですから、もう心配は無いかと」
途中でレイチェルが言い直したのは、祖父ではなく神殿の長としての公的な立場を尊重したのだろう。男宝
この二人に共通しているのは、共に所属している組織の長と付き合いが長く、その判断に絶対の信頼を置いているところだった。
「私達はまだこのギルドで依頼を受けるわけにも行かないしな。体は充分休まったし、私もそろそろ出発したいな」
エルザも肩をすくめてアリア達に同意する。
ちょっと皮肉っぽく言っているのは、さっき涙を見せてしまった気恥ずかしさを隠す為だろうか。ジンは可愛いなと素直に思った。
ちなみに、エルザが言っているのはギルドランクの事だ。ジン達は現在Dランクだが、このままではまだリエンツの街の依頼しか受ける事が出来ないし、本来は街を移動するような依頼も受ける事は出来ない。今回のジン達の行動はCランク試験という名目ゆえの事で、あくまで例外的な話だ。
だからDランクまではその街の専属冒険者のような立ち位置で、Cランクになって初めて世界を股に掛ける冒険者と言えるようになるのだ。
「そうか、俺も同意見だ。それじゃあ、帰ることにしようか」
全員の意見が揃い、いよいよリエンツの街に帰ることが出来る。帰ったらアイリス達の無事な姿を見ることが出来るだろうし、アリアも正式にパーティに参加する事になる。
ジンは頭をよぎったその未来予想図に、思わずニッコリと笑みを浮かべた。
「こちらジンです。お待たせしました。帰還の件、了解しました。昼過ぎにでもトロンの街を出発する事にします。以上」
「こちらグレッグ。了解した。最後まで気を抜かず、無事に帰って来い。以上」
確かにまだ依頼は完了していない。このまま無事リエンツの街に戻り、報告して初めて依頼達成となるのだ。
「こちらジン。ありがとうございます、最後までちゃんとやり遂げます。これで通信を終わります。以上」
だからジンはもう一度気を引き締め、無事を祈ってくれるグレッグに感謝を込めてそう伝えた。
「色々とお世話になりました。ありがとうございました」
一階に戻ったジン達は、昨日に引き続きお世話になった男性職員にお礼と別れを告げていた。
「いえ、これで依頼達成でしょうか? おめでとうございます。気をつけてお帰りくださいね」
男性職員も笑顔でジン達を見送る。
いつもは「それが仕事だろう」と何をしても当然と思われる事が多く、こうして改まってちゃんとお礼を言われる事は少ない。評価されて嬉しいのは、ギルド職員と言えども同じなのだ。
だから、つい親身になって言葉を重ねた。
「そう言えば、昨日は帰り際にザックさん達と挨拶もされてましたし、知り合いにはなれたのでしょうか?」
ジン達が一度絡まれた事もあり、男性職員はザック達とトラブルにならないよう気にかけていたのだ。
だが、蓋を開けてみればトラブルにならないどころか、ジン達は帰り際にザック達がいるテーブルに寄って挨拶して帰るなど、傍目には良好な関係のように見えたのだ。男根増長素
「え? ええ、顔見知り程度でしょうが、一応は」
単にお薦めメニューを教えてもらったぐらいだし、知り合いと言うのはおこがましいかなとジンは答える。
「そうですか、彼らはあれでもBランクのパーティです。まだ成り立てではありますが、実力は確かです。ザックさんも酔っていなければ良い人ですので、知り合いになって損はないと思いますよ」
どの世界でも、横のつながりというのは大事なものだ。今後成長していく彼らにとっても、何らかの役に立つのではと職員は思ったのだ。
「少し前に彼らの先輩にあたる冒険者が盗賊に堕ちたという知らせが入ってきた事もあり、昨日もいつもより荒れていたんですよ。普段はちゃんとした人たちですので、安心してください」
盗賊に堕ちるとは物騒な話だ。Bランク冒険者達の先輩という事であれば、その人物もBランク以上である可能性が高い。
それは魔獣と同じく人を害するだけの存在、凶人きょうじんだ。
「そうなんですか。それはショックを受けるのも頷けますね」
もし、万一初心者講習の時に出会ったゲイン達がそうなったらと考えると、確かにショックを受けて当然だとジンは思う。
「ええ、その堕ちた元冒険者もCランクに上がってからこの街を去るまで、ずっとザックさん達の面倒を見ていましたからね。Aランク間近という所まで来ていたそうですが、とある遺跡でパーティメンバーのほとんどを失い、自暴自棄になって全てを恨むようになってしまったようです。既に何人もの人間をその手に掛けており、討伐対象としてギルドに手配されています。恐らく近いうちに討伐されるでしょうが、それはそれでザックさん達も複雑な思いがあるのでしょう」
そう言う男性職員こそ、語る言葉には苦渋が満ちている。この中年の職員もその堕ちた元冒険者と面識があり、複雑な思いを抱えているのはザック達と同じなのだ。
「未開拓地近くでの出来事でしたのでこの街の近くまで来ることは無いと思いますが、念のため気をつけてください」
未開拓地は確かに遠く、直線距離でもトロンの街から数週間はかかる距離にある。
現在、その男の消息はつかめていないが、同じ様な時期に盗賊被害が発生している事から、恐らくは王都近辺に潜伏していると考えられていた。V26Ⅳ美白美肌速効
男性職員も一応忠告はしたものの、あくまで念の為に言ったまでだった。
「はい。ご忠告感謝します」
こうして男性職員が語ってくれたのも、ジン達の事を親身になって考えたからだ。
ジンもそうした男性職員の気遣いを感じ、笑顔でそう答えた。
とは言え、ジンも男性職員同様にその凶人に遭遇する可能性は低いと考えていた。
ただ、万一の備えとして事前情報を仕入れる事は重要だと認識していたし、それをもたらしてくれた男性職員の気遣いに対して感謝していたのだ、
そうして改めてジン達は男性職員に別れを告げると、簡単な昼食をとった後にトロンの街を出発した。
リエンツの街で待つ皆の事を想うと、ジン達の心は浮き立ち、馬車の進みも心なしか軽やかだった。
しかし、同時に受けた助言を無駄にしないだけの理性も、ジン達には残っていた。
ましてや今後Cクラス冒険者としてリエンツの街を飛び立つつもりならば、対人戦闘を避けて通る事はできないのだ。
ギルド業務の一環として、アリアにはグレッグ達と共に凶人の討伐を行った経験がある。
事前にジン達はレクチャーは受けていたが、改めて対人戦闘についての心得や注意点等がアリアによって経験を交えて語られ、それはメンタルな部分の話にまで及んだ。
アリアが語るその内容は、自身の経験もあってジン達の心に大きく響いた。
その後も聞いただけで終わるのではなく、今回の凶人のような突出した実力者一人の場合はどう対応するか等、実戦を想定した話し合いも行われた。
無論、実際にその盗賊と戦う事を予測しているわけではなく、あくまでシミュレーションの一例として題材に上げただけだ。
それが実際に役に立つか立たないかではなく、いざという時に対応できる心構えと態勢を作る為に、ジン達は真剣に話し合った。
思いがけず始まったミーティングだったが、それはトロン冒険者ギルドの男性職員の一言がなければ行われなかったかもしれない。
しかし、結果的にそれがジン達の命運を左右する一因となった事は紛れも無い事実だろう。
戦いの気配は、すぐそこに近づいていた。V26Ⅲ速效ダイエット
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