2014年11月2日星期日

精霊契約の実情

「契約? 何を言ってる?」


 突然ホオズキに『精霊』と契約をしないかと言われて呆気にとられてしまう。ニンニアッホでさえも、彼の言動に時を止めたように固まってしまっている。D10 媚薬 催情剤


 しかしホオズキは先程の言葉を裏付けるようにもう一度同じ言葉を述べる。


「契約じゃよ。ここにおる『精霊』とのう」
「……どういうことだ? 今話していた内容から察するに、普通の『人間族ヒュマス』や『魔族イビラ』では器が小さ過ぎて不可能なんじゃないのか?」


 『精霊』と契約して、その力に押し潰されて廃人のようになるのはゴメンだ。


「確かにのう、普通の者ならその負荷に耐え切れず精神の死を迎えることになってしまう。だがのう、あくまでも普通の者ならばという話じゃ」
「……説明をしてくれ」
「何、簡単な話じゃよ。《赤気しゃっき》を扱うことができるということは、二つの異なった力のコントロールに長けているということじゃ。本来《赤気》はハーフ……つまり二種族の魂を持った者にしか生み出すことができなかったんじゃ」


 それは知っている。ある程度の知識は文献や《四文字解放》した時に頭の中に流れてきた。


「それだけ異なった力を混ぜ合わせるのは非常に難しい……というか、普通はできんのじゃ。じゃがハーフは元々そういうコントロールを得手として生まれてくるのじゃ」
「それは分かってる。オレが聞きたいのは、ハーフでも無いし、魂の器だって一つしかないオレに契約を勧める理由だ」


 ホオズキは思わせぶりに髭を擦りながら息を長く吐く。


「……本来純粋な人間であるはずのお主が《赤気》を扱う。それすなわち、ハーフと同等の資質があるということじゃ」
「……ん? ちょっと待て、ならハーフは簡単に『精霊』と契約できるということか?」


 そう、今の話から推察すればそういう見解に辿り着く。


「血の中に獣人が混ざっておらなかったらのう」
「……なるほどな。ハーフでも獣人の血を引く奴は、自身に眠る『精霊』がいるから新たに契約はできないということか?」
「その通りじゃ。じゃが人と魔のハーフには可能じゃ。無論全員が全員契約できるわけではない。あくまでも《赤気》を扱えるほどの熟達した者限定じゃ」
「なるほどな。なかなかに興味深い話だなそれは」


 つまり今までハーフは《禁忌》とされて蔑まれてきた。それは魔法も《化装術》も、彼らには何も与えられていなかったからだ。まさに異質な存在。だからこそ忌み嫌われていた。


 しかしそんなハーフという存在にも光明があった。それが《赤気》だ。簡単に言うなら力のコントロールが突出して上手いということだ。


 そしてそんな《赤気》を扱えるようになれば、強力な『精霊契約』を結ぶことができるのだ。もしシシライガやユキオウザのような『高位精霊』と契約できれば、それこそハーフが他種族から飛び抜けて台頭する可能性だってあるのだ。


(何ともまあ、それぞれに一長一短があって面白いもんだな。しかしそれにしても、この話を聞いたハーフ排斥派どもの青ざめる顔が思い浮かぶようだな)


 旅先ではそういう連中とも出会って来た。ハーフは何も持たない貧弱で薄汚れた種族だと聞かされてきた。ハーフであるシャモエも過去にはそういう経験を嫌というほどされてきたと聞かされている。


 しかし現実にはハーフにはハーフとしての力が確かに備わっていた。無論その力を育てなければ何もできないが、それでも何も無いというゼロ観念から脱することができるだけで大きな違いである。紅蜘蛛(媚薬催情粉)


「……まあ、ハーフについてはそれでいい。ようはハーフでも無いオレがホントに契約なんてできるのかということだ」


 それに契約したからどうなるかなどまだ聞いていないので不安が浮かんでくる。


「何じゃ、『精霊王』の儂の言うことが信じられんのかのう?」
「会ったばかりの他人を信用などできるか」


 寝言は寝て言ってほしいものだ。まだほとんど会話もしていない状況で相手を信じられるのならこちらがどうかしている。


「ほっほっほ、それもそうじゃのう。では少し試してみようかのう」


 そう言いながらゆっくりとした足取りでこちらへ向って来る。日色も同じように立ち上がると、二人にニッキたちは視線を向ける。


「まさか契約はアンタとか?」
「ほっほっほ、そうしたいのはやまやまなんじゃがのう」
「違うのか?」
「今の儂には契約を維持できるだけの力は残っとらんからのう……」


 少し寂しそうに言う彼を見たニンニアッホも同じような表情を作っているのを視認できた。どうやら深い事情がありそうだがそこはどうでも良かったので話を変える。


「ならもし契約できるとしてオレと契約するのは誰だ? まさか、さっきのやかましいヘビ女じゃないだろうな?」


 嫌な表情をしながら言う。どことなくヒメとは相性が悪いような気がするのだ。顔を突き合わせると言い合いに発展しそうなのだ。


「ほっほっほ、儂としてはそっちの方が嬉しいんじゃがのう」
「勘弁してくれ」
「安心するんじゃ。ヒメのお相手はお主じゃないわい」


 その言葉を聞いて少しホッとする。もしヒメと契約して、ずっと一緒にいることになったら、リリィン以上に小言を言われそうだ。しかし彼女ではないとすると一体……


「それじゃ誰なんだ?」
「ここにおるテンじゃよ」


 そう言いながら呆けている猿の頭に手を置いた。どうやら自分に近づいてきたのではなくテンに近寄ったらしい。


「……へ、へぇっ!? お、俺ぇっ!?」


 どうやらテンも寝耳に水だったようで驚愕に顔を歪めている。


「何じゃ嫌なのか? お主前々から外へ出て一花咲かせたいとか言っておったじゃないか」
「え……あ、いや……それはそうだけど……」


 チラチラとこちらを見ながら、値踏みするように観察している。


「それにじゃ、これから先、このような機会など無いかもしれんぞ?」
「う……」
「さらにじゃ、このヒイロは恐らく天下でもなかなかにお目にかかれぬほどの傑物じゃぞ?」
「う~」
「お主だって、薄々は感じていたんじゃないのかのう」
「……」


 さすがにそこまで褒められると少し恥ずかしさを覚えるが、こちらにも言いたいことがある。


「おい、オレはまだ契約するとは言ってないぞ?」
「ふむ、嫌なのかのう?」
「嫌……というより契約したらどうなるのかをまず教えてくれ」


 もしこんな猿と融合なんかした日には目も当てられない。紅蜘蛛赤くも催情粉


「お、そうじゃのう。そもそもお主は契約とはどういったものじゃと考えておる?」
「質問を質問で返すなよな……まあいい。契約か……獣王のように『精霊』を扱えるんじゃないのか?」


 つまりイメージとしては《化装術》のように、属性の力を使役でき、また『精霊』そのものを呼び出すことだと思っている。


 しかしそんな返答にホオズキは首を振って否定する。


「いや、獣人たちのそれとは全く契約の意味が違う。獣人たちのはあくまでも元々備わっている自らの力を顕現しているのじゃ。じゃが、この契約では主になる者がまず媒介となるものを提示しなければならん」
「媒介?」


 つまり日色とテンに置き換えると、まず日色が何か所持品を提示し、その品に互いに契約の印として血印を押す。そしてその血を通して生命力と魔力を同時に流し始める。


 ここで注意すべきなのは、互いに全く同じ量の力を流すこと。そしてその力を主になる者はバランスよく混ぜ合わせる。簡単に言えば合成するのだ。上手く合成することができれば『精霊』はその品に宿り主の力として支援することが可能になる。


「なるほどな。その媒介を通して互いの力をオレが上手く合成させることができれば契約成立するということか」
「そうじゃ。そしてその媒介が、契約者と『精霊』を繋ぐ楔になるんじゃ」
「失敗したら?」
「ん~まあ、運が悪かったら死ぬだけじゃのう。あ、それと媒介は消失するぞ」


 さらっととんでもないことを言いのける。死ぬだけじゃないぞ死ぬだけじゃ!


 しかし上手くいけば『精霊』の力を宿した物が手に入る。それが高位の『精霊』なら確かに試してみる価値はあるかもしれない。


 二つの力を混ぜ合わすには相当の集中力が必要になってくるだろう。確かに《赤気》を生み出す時も気が抜けない。しかし《赤気》はあくまでも自分の力。


 契約は他人と力を共有させなければならず、それ以上の難解さを要求されるに違いない。簡単に契約できないという理由が良く分かる。


「言い忘れておったが、媒介なら何でも良いというわけじゃないぞ?」
「ん? そうなのか?」
「そうじゃ、それは『精霊』が決めることなんじゃが、大概は主の思い入れのある物であったり、その『精霊』が気に入った物じゃがのう」
「なるほどな」


 それを聞き、一応自分の所持品にどんなものがあったか思い出してみる。しかしその時、


「その刀だ!」


 皆がその発言をした者に視線を送る。


「何がその刀なんじゃテン?」


 皆が気になった疑問を代表してホオズキが聞く。


「いや、だからもし俺がそいつと契約するんならその刀が良い!」


 どうやら彼が指し示しているのは《絶刀・ザンゲキ》らしい。紅蜘蛛


「その刀からはおめえの意思がビンビン伝わってきやがる。その刀だったら、俺と相性も良さそうだし!」
「ほほう、テンはそのように言うておるが、どうじゃヒイロ? 試してみるかのう?」
「けどちょっと待ってくれよ」


 またもテンが間を割るように言い放つ。


「何がじゃ?」
「これは別に強制なんかじゃねえよな?」


 テンはホオズキに尋ねると、彼もハッキリと頷く。


「当然じゃ。ただこの中じゃとお主が適任かと思っただけじゃ」


 テンも頷きを返すと日色を見つめる。


「確かに俺は外へ出て暴れてみてえ。けどつまんねえ野郎に命を預けてえとも思わねえ」
「…………」


 ジッとテンの目を見つめ返す。その目には真剣さが込められており澱みなど一切感じない。


「ならばどうするんじゃ?」


 テンはビシッと日色を指差すとこう言い放つ。


「おめえが俺の主に相応しいか、ここで見極めてやる! だから俺と戦え眼鏡野郎!」


 そういうことかと心の中で得心する。確かに彼の言い分も分かる。どうしようもない奴と契約などしたくはないだろう。契約とはそれほど彼らにとって重いものを指すのだろう。


 だからここでもし日色がテンのお眼鏡に叶うことがなく、テンも外へとはばたけないとしても、つまらない主につくよりは良いと判断するのは当然だろう。


 どうせこんな馬鹿っぽい猿だから勢いで契約するとか言い出すのではと思ったが、存外感心する部分を持ち合わせていたようだ。


 だからこそ思わず小さな存在が大きく見えてしまって、少し驚きを得た。勃動力三體牛鞭

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