俺は俺自身の弱さに負けた、過去を思い出し、孤独と絶望に恐怖した。
「甘えないで……私に甘えるな、西園寺恭平!」
その結果、俺は春雛に見放されてしまう。終極痩身
惨めな姿を見せた俺に彼女の言葉は当然のことだった。
「……これでいいんだよな」
春雛との別れ、皆ともこれからは距離を置こう。
そうするのが1番いいんだ……いいんだよな?
俺は今、何が悲しいんだろう。
美月の死の事実、想いの行方、春雛に嫌われた事……全てが悲しい。
これが正しい選択……嫌な事からは全て逃げてしまえばいいんだ。
「……逃げる?これでいい?……何、寝言を言ってるんだよ」
心の奥底から湧き上がるもの、それは俺に対しての怒りの感情だった。
俺はまた逃げるのか、過去の記憶、孤独の恐怖、自分の弱さ、俺の想い、春雛への気持ち、全てから逃げ出すのか、それが本当に正しい選択だって言うのか?
……逃げていい、違う、弱いんだからしょうがない、違う、違うだろっ!
「……何をやってるんだよ、俺はッ!!!!」
俺は自己嫌悪の苛立ちに浴室の壁を思いっきり拳で殴りつける。
弱いと逃げて、しょうがないと諦めて、それで何が変わる、何も変わりやしない!
言葉と気持ちが止め処なく俺の心にわき上がる。
情けない自分、弱い自分、それらは全部恭平という一人の人間だ。
だけど、強い自分も確かに存在する、それを愛してくれた人がいる、だからッ!
「……このまま終わらない、終わらせない。俺はもう自分から逃げやしない」
俺は春雛を愛してる、だから……前を向いて今を生きる決意をする。
強い意志を取り戻し、俺はシャワーで弱い自分を洗い流した。
シャワーを浴び終わり、服を着替えた俺は皆のいるリビングへと踏み込んだ。
「恭ちゃん……」
戸惑いの表情を見せる久遠、理奈ちゃん。
意外と心配性な彼女、昔から俺に対しては二面性を持っている。
「春雛はまだ帰ってきてないのか?」
「うん。電話も置いていったたから連絡もつかないし、どこに行ったんだろうね」
「そっか。……それじゃ、俺、もう1回出かけてくるから」
「……恭ちゃん?え……あっ……」
久遠が俺の顔を見て、すぐにわかってくれたらしい。
ホント、幼馴染ってすごいね。
久遠は今までの表情を消して、すぐにいつもの悪態つく彼女の姿に戻る。
「恭ちゃん、男前の顔に戻ってるじゃない。いつもより、カッコいいぞ」
「俺は元から男前ですが、何か?」
「そうなんだ?あはは……初めて知ったわ、そんなこと」
「失礼だな。こんな男前に何言いやがる」
軽口言い合うのもいつもの事、大丈夫だ、俺は……笑えている。
あえてそう言ってくれる久遠にも感謝しておこう。
「恭平君……春雛さん、早く連れて帰ってきてね。今日は晩御飯、肉じゃがだから。冷めないうちに帰ってきて欲しいな」
「ああ、それは楽しみにしてるよ。俺、肉じゃがは和食の中で好物なんだ」
「うん。楽しみにしておいて。恭平君、ファイトッ!」
理奈ちゃんに可愛く応援されて俺は玄関に出て行く。
ありがとう、理奈ちゃん。
キミの後押しで俺はまた一歩を進める。
玄関まであと少し、俺は最後の一歩を進む覚悟を久遠にたずねた。超級脂肪燃焼弾
「あっ……久遠、聞きたいことがあったんだ」
「何?私に……何が聞きたいの?」
「……俺と美月のこと。俺達は笑いあっていたか?幸せそうな兄妹だったか?」
ふたりが幸せだったのか、俺には記憶はないから。
久遠は迷いもなく素直にそれを言葉にした。
「ええ。ふたりは幸せそうな兄妹だった。本当に……幸せだったんだと思う」
「そうか。それならいいんだ。それじゃ、行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
俺は皆に支えられてるんだと実感しながら、ようやく最後の一歩を踏み込んで外に出た。
夜になった外は雨は既にやんでいた。
……俺はヨチヨチ歩きしかできない子供だった。
人に支えられて初めて歩くことができる。
今、俺は頼りにしてきた支えを背にひとりで歩き始めたんだ。
支えられる事は楽でいい、でも、自分で歩かないと意味がない。
……行こう、支えてくれる人達が応援してくれているから。
この先に希望があるかなんて分からない。
それでも俺は逃げたくない、前を向かなきゃ進めない。
気持ちのいい夜風にふかれて月が姿を現した。
「さぁて、行くか……。春雛、待っていてくれ」
俺は夜の街を走り出す、ただ愛してる女の子の元へと走る。
弱さから逃げ続けていた俺だけど、変わらない気持ちがあるんだ。
会いたい、お前に会いたい……。
『好きなの。誰よりも私はキョウが好きなの。……だから、記憶の過去から逃げないで……お願いだからっ……私に貴方を助けさせてよ』
春雛は俺に対して愛情を常に向けてくれていた。
俺がそれに答えられなくても傍にい続けてくれていた。
だから、俺は彼女の事が好きになったんだ。
この2ヶ月間、俺達は大きく関係を変えてきた。
それまで数年間とこの2ヶ月、どちらも大切な俺達の時間。
これからもそんな時間をキミと紡いで俺はいきたい。
「……もう泣かせない。絶対に……泣かせやしない」
俺の痛みに共鳴するように彼女も俺の苦しみを感じてくれた。
春雛の優しさに甘え続ける男はもう嫌だろ?
……覚悟を決めろ、男なら、やるときはやれ。
「いた……待ってくれていた」
公園内に入って俺はすぐに彼女の姿を見つける事ができた。
静かに雨に濡れた地面を歩きながら彼女に近づく。
春雛はベンチに座ったまま、俯いたまま視線を地面に向けていた。
小さな嗚咽が聞こえる、泣いてるのか?
「春雛……」
俺が彼女に声をかけると、沈んだ表情ながら彼女は顔を上げてこちらを見る。
「……キョウ?……よかった、戻ってきてくれたんだ……っ……」
ポロポロと大粒の涙を零しながら、俺に抱きついてくる彼女。
それは不安から解放されたと言った感じ、俺もそうだ。
春雛がいてくれたから今、とても安心しているのだから……。
「探したんだよ、キョウ。でも、どこにもいなくなって、言い過ぎたって後悔して、ぐすっ、どうしようって……」
「逃げてごめん……。泣かせて、ごめんな」
「キョウっ……」
春雛は俺を見放したわけでも、見捨てたわけでもなかった。
彼女は俺を信じて待ってくれていたんだ。
いつか俺が戻ってくるのをただずっと待ってくれていた。
夜空の月明かりが俺達を照らす、彼女は泣き顔に俺は心を痛めながら、
「……俺、もう大丈夫だから。ひとりじゃないって気づいたから。信じてるよ、皆の事を。春雛を、麗奈を、久遠や皆の事も信じている。……だから、大丈夫だ」
人の気持ちは儚く脆い、信じるより疑う方が容易いから。
だけど、強く信じた気持ちは鋼のように強い。
美月の記憶を思い出し、孤独に恐怖し、世界に絶望した……。
支えてくれる人にすがりつき、ただ一方的な感情をぶつけた。
もうそんな孤独に負けない、ひとりじゃないって信じているから。SUPER FAT
BURNING
俺は春雛を抱きしめたその手で彼女の髪に触れた。
「……俺はカッコ悪いところばかりを春雛に見せてるな」
「いいよ、別に。私はそれ以上にキョウのカッコいいところをたくさん知ってるもの」
「春雛……ありがとう」
感謝しても仕切れない気持ちが俺の中にある。
ありのままの俺を受け入れてくれる、それが何よりも嬉しかった。
「キョウ、ひとりで立ち上がれたんだね。辛かった、苦しかったでしょ?」
「ああ。辛くて、苦しくて、悲しかった。美月のことも、麗奈の事も、そうだけど、1番辛かったのは春雛に拒絶された事だった」
大切な存在に見放されそうになって初めて現実を知った。
逃げ続けることの愚かしさと悲しさを体験した。
生きるという事は幸せな事だけじゃない。
世界にはいろんな側面が存在し、俺達が見ているのは一部でしかない。
自分が弱いことを知った今だからこそ見えてくる事がある。
辛い事も、悲しみも、全てを含めた世界が俺達の世界だから。
「でも、俺は闇の中から立ち上がることができたんだ。それは春雛がいてくれたから。春雛が信じて待ってくれていたから」
彼女の言葉に俺は最後の最後に倒れこまずにすんだんだ。
全てを諦めてしまう寸前に、彼女の気持ちを思い出して踏ん張れた。
このままで終われないって、諦めずに前を向く事ができた。
あのまま春雛に甘えてすがりついてしまっていたら、俺はもうダメだっただろう。
俺の心は折れきって、自立できないままだった。
彼女は強い、本当に強い女の子だ……。
「私はキョウを信じてたよ。だって、私の好きになった男の子だもん」
どうしようもない愛おしさがこみ上げてくる。
好きだ、もうこの手に抱きしめてるだけじゃ収まらない。
「愛してるよ。春雛の事を、本当に大事にしたいって思うくらいに、愛してるんだ」
「……キョウ……本当に?」
信じられないと言った彼女の様子に俺は言葉を続けた。
「……俺の恋人になって欲しい。支えるんじゃなくて、俺の隣を一緒に歩いて欲しいんだ。春雛……キミの未来を俺に託して欲しい」
俺の言葉に春雛は静かに「うん」と頷いたんだ。
「……幸せになりたいね」
そして、俺達はどちらもともなく唇を近づけてキスをした。
俺達が理奈ちゃんの家に帰ったからはずいぶんと皆に怒られた。
春雛を待たせたことも、全て、それでも皆は祝福してくれたから。
「……恭平君、約束、守ってくれたね。ありがとう」
「……お礼を言うのは俺の方だ、理奈ちゃん」
理奈ちゃんに言われた春雛を好きになって欲しい、と。
俺はその約束通りに春雛と恋人になったんだ。
「兄貴はいいなぁ。俺、やっぱり兄貴を尊敬するよ」
羨ましがる透夜、お前もいつかはそういう人と出会うはずだ。
久遠は俺と春雛が付き合うと言った時に嬉しそうに言葉にした。
「ふたりとも、よかったじゃない。こうなる事が1番、自然なんだもの」
「……久遠」
「恭ちゃんはヘタレだからね。ハルっちも苦労するわよ」
「お前、祝福するのか、馬鹿にしてるのかどっちだよ」
これもいつもの関係、久遠との関係はいつもこうでないと面白くない。
俺を支えてくれる彼らがいる。
それが今の俺に勇気を与えてくれたんだ。
「……春雛、今日だけは甘えてもいいかな」
「うん。いいよ、キョウ……」
うっとりとする微笑みに俺は飲み込まれそうになる。
可愛すぎだ、春雛と一緒にいると幸せな気持ちになれた。
春雛は俺の大切な存在、恋人とは弱さと強さを持つもの。美人豹
弱い自分と強い自分を知る相手だからこそ、人は相手を愛する事ができる。
俺は春雛に身をゆだねて、その温もりを確かめ合う。
美月、俺は今を生きてるよ。
……だけど、お前もひとりじゃない。
お前の気持ちは俺の中にあるのだから……一緒に生きていこう。
「キョウ……大好きだからね。ちゅっ」
皆の前で俺にキスをしてくる彼女。
俺はそれを受け入れて唇を重ねあう。
親友達や恋人に囲まれて、幸せな時間がここにはある。
これからもそういう時間が流れていくのだと……俺は信じていた。
その時が来るまでは信じていたんだ……。
大阪旅行も終わりを告げて俺達は再び東京へと戻ってきた。
俺は定期健診を行っている病院にいた、月に数回、俺はここで検査を受けている。
今回の旅行、まぁ、俺は雨に濡れ続けた事もあり、先生に厳重に注意された。
運が悪ければ肺炎を起こす……俺の場合はそれが命とりになるからな。
今回は俺が悪い、でも、結果としてはOKなので許して欲しいな。
帰り道、いつもと同じように廊下を歩いてると中庭に女の子が座っていた。
車椅子の美少女……歳は俺より下か、麗奈と同じくらいだろうか。
幼さの残る長髪の少女は熱心にスケッチブックに絵を描いている。
パジャマ姿でもあるし、ここの入院患者なのだろうか、そう思っていたら強い風が吹いて、そのスケッチブックが宙に舞う……。
そのスケッチブックは俺の方へと飛んできたので俺は拾い上げた。
綺麗な木々のイラストがそこには描かれている。
「これ、キミのだろう?」
俺はそれを車椅子の少女に手渡そうとして、硬直してしまう。
少女は微笑を浮かべて俺に言う。
「うわぁ、取ってくれてありがとう。お兄ちゃん」
黒い髪がそよ風に揺れて少女の美しさを際立たせる。
「母さん……?」
それがなぜか俺には自分の亡き母の面影とダブったのだ。
ありえない事に衝撃を受けた俺に彼女は不思議そうな顔をする。
「ん?どうしたの?」
「いや、なんでもない。はい、どうぞ」
「えへへ……ありがとう」
手渡してやるとすぐに彼女はそのスケッチブックに絵を描き始めた。
「絵が上手いんだな。とても綺麗なイラストだ」
「そう?そう言ってくれると嬉しいの。お兄ちゃんは病院の人じゃない?」
病院の人……ああ、入院患者という意味か。
「違うよ。俺は病院の先生に診察してもらいにきただけ」
「そうなんだ。お兄ちゃんもどこか悪いんだね……」
彼女も車椅子で入院という事はそれなりの病にかかってるというわけだろう。
彼女は興味ありげに俺の方をアーモンドみたいな瞳で見つめる。
可愛らしい女の子に見つめられると照れる。
「ねぇ……お兄ちゃんの名前は?」
「俺か?俺の名前は西園寺恭平って言うんだ。キミは?」
「私。私の名前はみづき、美しい月で美月って言うの。可愛い名前でしょ?」
「……みづき。……そうなんだ、本当に可愛らしい良い名前だね」
俺達の世界は不条理に出来ている、それが現実、そんな世界に俺達は生きているのだ。
少女の笑顔と共に紡がれた名前、俺達はまだ何も始まってもいなかったことに今さら気づいてしまう、そう、本当の物語はこれから始まるのだから。絶對高潮
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