【アザゼル海】……魔界に隣接する西海の呼称。【魔国・ハーオス】から一番近い海であり、ここで獲られた魚介類が国で流通している。SEX DROPS
魔界に近い海ということもあり、そこに棲息している魔物も強く、その数も多い。北の海である【ベリアル海】より幾分漁業はし易い環境ではあるが、それでも生半可な覚悟で臨めば手痛い以上のしっぺ返しが待っている。
危険度ランクは間違いなくSSSの位置付けをされている。ムースンの依頼はここに棲息している魚介を獲ってきてもらいたいということだった。
その依頼を【魔国】の軍に席を置いた勇者であるしのぶと朱里は受けることになり、そこに何故か日色も付き添うことになった。
無論最初は完全に乗り気ではなかった日色だったが、まさかこれから向かう【アザゼル海】に以前食べたハピネスシャークという魔物がいるとは思わなかった。
あれはまだアノールドやミュアとともに旅していた時、人間界の街である【サージュ】というところで初めて食べた時のことを思い出す。
(あれはマジで美味かった……)
思い出すだけで口の中に大量の唾液が生まれてくる。衝撃的な出会いだったと今噛み締めていた。
その話をムースンにした時、彼女もハピネスシャークを使った料理を何度も作ったことがあるとのことだった。そしていつかその機会が訪れれば、最高のハピネスシャーク料理をご馳走するので、もし手に入れられる時が来たら力を貸してほしいと頼まれた。
日色は是非も無く二つ返事で「当然」と答えた。
本来ハピネスシャークは人間界に隣接する【グレイトブルー海】でしか獲れない。しかも深海にしかおらず、滅多に海面に浮上してこない。本当に稀にだが、産卵の時期の少しの時間、海面に姿を現すことがある。その体は美しい桃色で頭に翡翠色した角を生やしている。全身、歯も身も、その角も食すことができる完全食体と言われる生物である。
では何故人間界の海にしか棲息していないはずのハピネスシャークがこの魔界の海にいるのかというと、実は元々ハピネスシャークは【アザゼル海】に棲息していたのだ。
だが時が経つに連れ、住み易い地へとハピネスシャークは群れで大移動を行ったらしい。しかし移動を拒否しそのまま【アザゼル海】に残ったものも少なからずいたのだという。
そしてそんな残ったものたちで繁殖し、こうして産卵の時期を迎えたハピネスシャークが、海面に姿を現すのだ。
「おお~海楽しみですぞぉ!」
日色が行くということでついて来たニッキは、久しぶりに行く海が待ち遠しいのだろうか目を輝かせていた。
ニッキも行くのでミカヅキも行きたいと言っていたが、シャモエと買い物をする約束をしていたらしく、普段から日色に「約束だけは守れ」と言われている彼女は仕方無く日色との同行を諦めた。蒼蝿水
リリィンとシウバとクゼルは、三人で少し話し合いたいことがあるとのことで一緒にはこなかった。
結局ついてきたのはニッキ、カミュ、テンの三人になる。しのぶと朱里を合わせると日色も含めて合計六人だ。まあ、正確に言うと五人と一匹だが。
無論それだけではなく、シュブラーズの下にいる兵が一緒に行動している。そして極めつけは空馬車だ。
空馬車とはミカヅキと同じ種族である魔物のライドピークを利用して空を自由に移動する手段だ。
獣人界にいるミカヅキのようなライドピークは、翼が退化しており空を飛ぶことはできないが、魔界のライドピークには立派な翼が生えている。
しかも面白いことに、ライドピークそのものの体が大きな荷台がある馬車のような姿に変化しており、とてもユニークな魔物でもある。
既存の馬車を引いて空を翔けるのではなく、馬車そのものであるライドピークが空を移動するといったところだ。
今、日色たちはそんなライドピークの背に乗り空から魔界を見下ろしている。眼下には様々な光景が目に映る。
大きな山、湖、川、谷、森、多くの自然があり、ニッキだけでなくカミュやテンも楽しそうにはしゃいでいる。
日色は何度か自分で空を飛んでこの光景を目にしていたのでさほど感動は強くなかったが、初めて乗った空馬車の乗り心地は意外にも良くて安心して身を任せていた。
そうして五台の空馬車は目的地である【アザゼル海】に到着する。そこで日色の目に映ったのは妙に気合を入れ込んだ表情をしているしのぶと朱里の姿だった。
(まあ、この仕事を上手くこなせば兵士との距離も縮まるかもしれないからな、無理もないが……)
何か失敗して、こちらに害が及ばなければいいがと思い肩を竦めた。
「おおっ!? おっきいですぞぉぉぉぉ!」
「ん……でかい」
「やっぱ海はスケールが違うさ~」
ニッキ、カミュ、テンの順でそれぞれの感想を声に出している。確かにニッキたちの言う通り、目前に広がっている海、その水平線の先には何も見えず、ただただ広大な青に溜め息が漏れる。勃動力三体牛鞭
大陸である魔界も相当の規模を持つが、やはり海と比べると見劣りするのは否めない。海は生命の源。母なる海。その器はどこの世界でも大きなものだと日色は感じた。
兵士たちが海で使用するであろう網や銛のような武器を点検している。しのぶたちもその手伝いをしているようだ。
どうやらシュブラーズの部下とは意外にも意思疎通ができているようで、接し方にも不自然さは見当たらない。恐らく部下たちはシュブラーズを通してしのぶたちがどういった人物なのか聞いているのだろう。
もしくはこんな感じで何度かともに仕事をこなしてある程度は信頼関係ができているのかもしれない。恐らく後者なのだろうと日色は一人で納得する。
「さて……おいバカ弟子」
「あ、はいですぞ!」
日色は海を見て浮かれているニッキに声をかける。
「今から修行の一環としてお前に任務を与える」
「おお! それはまことですかな!?」
余程嬉しいのか興奮気味にニッキは笑顔を浮かべる。
「ああ、馬車の中でも言ったが、これからオレはある魔物を狩りにいく。そしてお前にもあるものを捕獲してもらう」
「はいですぞ! 水練なら得意中の得意ですぞ!」
「二刀流、お前には話したがコイツのお守り頼むぞ」
「ん……ヒイロの頼み。頑張る」
カミュにはここに来る前に、ニッキの補佐を頼んでおいた。まだまだ子供であるニッキは、状況判断も甘い。だから暴走したり焦ってとんでもないことをしないようにお目付け役としてカミュに頼んだのだ。
彼は『アスラ族』の長であり、多くの子供たちとも接してきており、何よりニッキとも仲が良い。だからこそ彼ならば上手くニッキをコントロールできると判断した。福源春
「黄ザル、お前はオレと一緒だ」
「おっけ~」
テンは親指を立てて了承の意を示してきた。
「それじゃ行くぞ」
「なあヒイロ」
「何だ黄ザル?」
「あの子たちは放っておいていいんか?」
テンが少し離れたところにいるしのぶたちに視線を促す。
「別にいいだろ? オレはアイツらのお守りを引き受けたわけじゃない。一緒に行くことを許可しただけだ。それにオレにはオレのやりたいことがある」
無論それはハピネスシャークを捕らえることだ。いちいち他のことに気を回していては、せっかくのチャンスを不意にしてしまう可能性もある。それはゴメンだった。
「ふぅん……なあヒイロ、俺アッチに行っていい?」
「………………好きにしろ」
どうせダメだと言ったところで頑固なテンがそう簡単に意見を変えるとは思っていない。ここで口論するよりは好きに行動させた方が時間の浪費が少なくて済む。
「はいよ、んじゃ気を付けてな~」
テンはそう言うとしのぶたちの方へ向かって行った。こうして漁獲する部隊がそれぞれ決まった。
もう一度、ニッキには油断しないように注意をして、日色は単独で海に入るために準備をし始めた。
服に『濡れず』と書いて海に潜っても濡れないように魔法を施した。幾つか必要になるであろう文字を体に設置して、『飛翔』の文字を使い空を飛び沖へと向かって行った。花痴
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