2014年4月2日星期三

奇襲

「えーっと、だからさ。最初に図書館の裏に回っただろ?
 あの時に転移バグで地下室に入ってネクラノミコンを取って、もう一度夢幻蜃気楼を使って図書館に入ったんだよ」簡約痩身美体カプセル

 俺はみんなと別れて図書館の裏に回る時、「裏に回ってスキルで入った方が百倍早い」と言ったが、あれは必ずしも大げさな表現ではない。
 裏から夢幻蜃気楼で入った方が、『智を知るモノ』クエストを回避出来る分、大幅に時間を短縮出来るのだ。

 地下室は図書館の一番奥にある。
 つまり、図書館の裏から非常に近い場所にあるということ。
 図書館の館内ではスキルは使えないが、外、図書館の裏手から夢幻蜃気楼を使えば、ギリギリで地下室に届く。

 仮にだが、もし仲間の誰かが俺が夢幻蜃気楼を使う場面を見ていたら、こんな勘違いはしなかっただろう。
 俺は図書館の裏で夢幻蜃気楼を使う前に、「呪文を唱え」、「図書館までの距離を調節」していた。
 スキル無効の図書館に入るにはプチプロ―ジョンの呪文を詠唱する必要はないし、図書館に入るためなら距離を調節しなくても図書館の壁に出来るだけ近付けばそれで事足りる。
 スキルが使える地下室に入るつもりだったからプチプロ―ジョンの詠唱が必要で、間違って図書館に入らないよう距離を測る必要があったのだ。

「じゃ、じゃあつまり、そーまはわたしたちが『智を知るモノ』を始める前に、もうネクラノミコンを持ってたってこと!?」
「ん、ああ。そういうことだな」

 俺が肯定の言葉を口にすると、真希ががっくりと肩を落とした。
 その落ちた肩をぽんぽんと叩いて慰めながら、ミツキが補足する。

「図書館で合流した時、彼は読んでいた本を鞄の中に(・・・・)しまいました。
 ここの本は鞄に入れられませんから、思えばあれがネクラノミコンだったのでしょう。
 彼がもう目的の物を手にしたと、その時に気付くべきでした」

 猫耳をふにゃんと垂れさせながら、面目なさそうにミツキは続ける。

「私とリンゴさんがそれに気付いたのは、そのもう少し後、貴女達がリドルを解いている時です。
 貴女達が必死に頑張っている後ろで、平然とネクラノミコンを読んでいるのですからね。
 どういう神経をしているのかと、あの時は流石に驚きました」
「…びっくり、した」

 全然びっくりしてない感じにリンゴも言い添える。
 それに同調するように猫耳をピコピコさせてから、ミツキは締めくくった。

「彼と行動を共にする以上、こういった事態に遭遇する事はまたあるでしょう。
 早めに体験してもらった方が良いかと思って黙っていたのですが、まさかここまで大事になってしまうとは……。
 本当に、申し訳ありません」
「…ごめん、なさい」

 二人が同時に頭を下げる。
 それを真希があわてて止めた。

「い、いいよー。二人のせいじゃないんだし。
 それよりわたしは、そーまがどうして黙ってたのか、それを聞きたいなー」

 真希が詰め寄ってくる。
 のんびりとした口調とは裏腹に、その眼光は鋭い。

「いや、別に俺も、最初は隠すつもりはなかったんだぞ?
 実際、こっちに来た時に話そうとしてたしな」

 何も悪いことはしていないはずなのだが、その迫力に負けてつい弁解がましい口調になってしまう。
 だが、隠すつもりがなかったのは本当だ。
 セーリエさんがやってきて入館料がどうこうと言わなければ最初に話していただろう。

「なら、どーして今まで黙ってたの?!
 これまでだって、話そうと思えばいつでも話せたはずでしょ!」

 しかし、真希の怒りは収まらない。西班牙蒼蝿水
 容赦のない言葉で、俺を追い詰めようとする。

「……それは、お前たちが真剣にあのリドルに挑んでいるのを見たからだよ」

 俺が、このクエストには誤答問題があると話した時、それでもレイラたちは、このクエストに挑むことをやめなかった。
 あの時のレイラたちは、ネクラノミコンがどうとか、アンフェアな仕掛けがどうとか、そんなことは気にせずに純粋に謎解きだけを楽しんでいるように見えた。

 それは、ゲーマーとして、もっとも正しい姿勢。
 俺が、俺たち『猫耳猫』プレイヤーが失ってしまったもの。
 だから――


「――俺には、出来なかったんだ。
 そんなみんなに、余計な話をして水を差すなんてことは、さ」


 万感の想いを込めたその言葉に、その場にいた全員が感銘を受け、黙り込んだ。

「……そーま」

 その中でいち早く立ち直った真希が俺に近寄ると、

「そーまがそんなんだから、わたしはいつも、いつもぉ!」
「うわ、ちょ、真希、やめっ!」

 俺の胸元をつかんでぐわんぐわんと揺さぶってきた。
 ゲームキャラの馬鹿力のせいか、俺の身体は木の葉のようになすすべなくぐらぐら揺れる。

「落ち、落ち着けって! 話せば、分かる……!!」
「話が分からないのはそーまの方でしょー!」

 俺は揺れる視界の中で必死に真希をなだめながらも、この状況にぼんやりと懐かしさを感じていた。
 日本でも、こういう風に真希は訳の分からない理由で急に怒り出したり騒ぎ出したりして、俺はいつも振り回されてばかりだった。

 俺が一人暮らしをする前は、休みの日に突然押しかけてきては俺を公園だの遊園地だの映画だの買い物だのに連れ回し、家にいる時でもゲームをしている俺の背中に後ろからのしかかってきたり、俺の膝の上に寝転がったり、俺の飲み物を勝手に飲んだり、マッサージしてあげると言いながら俺の肩関節を破壊しかけたりと、散々傍若無人にふるまってきた。

 真希が起こしたトラブルのしりぬぐいをしたことも、両手の数では足らないほどだ。
 その癖、「そーまはわたしみたいな常識人が傍にいないと、なにするかわからないからねー」と保護者気取り。
 違う世界に来てお姫様にまでなったのだから、少しくらい良識というものを身につけてほしいのだが、望み薄のようだ。

「……これが、英雄。常人と同じ思考をしていては、到達出来ない高みということなのですね」

 俺が何とか真希を引きはがすと、その奥で眼鏡を光らせたセーリエさんが何か言っていた。
 たぶん褒められているように思うのだが、なんとなく居心地が悪い。

 ちなみに最後の一人、レイラはどうなのかと俺が首を向けると、

「ソーマ! 私のために、そこまで考えてくれてたなんて……!」

 うるうるとした瞳で俺を見上げていた。
 真希みたいに突然キレられるのも困るが、これはこれで対処に困る。
 俺が助けを求めるようにミツキの方を見たが、procomil spray

「……いい勉強になるかと思ったのですが、案外うまくいかない物ですね」

 猫耳を元気なくしおれさせていて、見るからに助けてもらえそうな雰囲気ではない。

「ま、待ってください!!」

 しかしその時、思わぬ方向から声があがった。

「……イーナ?」
「だったら、ソーマさんはどうしてあの『智を知るモノ』をクリアする必要があったんですか?」

 今まで必死に話についてこようとして頭をひねっていたイーナが、俺を真正面から見ておずおずと尋ねてきた。

「え? あ、ああ。それ、は……」

 ちらりと横目にセーリエさんの姿を確認する。
 どうして自分に目が行ったのか分からない様子で、セーリエさんは眼鏡の奥の瞳をきょとんとさせていた。

「あの、ソーマさん……?」

 不安そうにイーナが言葉を重ねる。
 ……これは、困った。
 どうやって答えようとか考えていると、リンゴがぽつりとつぶやいた。

「…もぐら、さん?」

 一見、意味不明な単語。
 だが、それだけで察しのいいミツキは気付いた。
 気付いてしまった。

「……成程。そういえば、貴方は最初に言っていましたね。
 ここの図書館から本を盗む、二つの方法。『瞬足万引きダッシュ』と、もう一つ。
 確か……『土竜《もぐら》式転移術』、でしたか?」

 反射的に、びくっと肩が跳ねた。
 あわててごまかそうとしたが、ミツキの目はそれをしっかり捉えていた。

「ま、まさかそーま! わたしたちに地下室を開けて欲しかったのは、地下室から本を盗むためなの!?」
「ほ、本当なんですか、ソーマさん!」

 真希とイーナの視線が痛い。
 俺はいたたまれなくなって目を逸らしたが、その先には眼鏡の鬼がいた。

「あ、あの、セーリエさん? 今のは……」
「……ソーマ様? 少々、お話をよろしいでしょうか」

 食いしばった歯の間から、押し殺すような声を出すセーリエさん。
 入館料を踏み倒しかけた時とは比べ物にならないくらいの怒気を感じる。

 ……あ、まずい。
 これは、なんか駄目な奴だ。WENICKMANペニス増大
 走馬灯のように前回の説教を思い出し、俺が半ば死を覚悟したその時、


 ――ウァアアアアアアン!


 思いもかけない方向から、思いもかけない助け船が出た。

「……なんでしょう、今のは」

 階上、図書館の方から異様な音が聞こえてきたのだ。
 獣の唸り声のような、赤ん坊の泣き声のような、そんな不気味な音だった。

 セーリエさんはそれを俺よりも優先するべき案件が出来たと考えたのか、ひとまず俺を解放すると、

「もしかすると、迷子の子供かもしれません。
 ……少し、様子を見てきますね」

 素早く地上へと続く階段を登っていく。

「……これで、済んだと思わないでくださいね」

 しかも途中、俺にくぎを刺すことも忘れない。

 だがひとまず、セーリエさんが職務熱心な人で助かった。
 俺は胸をなでおろしたが、あまり安心ばかりしてもいられない。

「……ミツキ」
「ええ。分かりました」

 まだ図書館の中は安全だと決まった訳ではない。
 図書館の中は魔法は使えないとはいえ、戦闘行為が出来ない訳ではないのだ。
 俺はミツキにセーリエさんの護衛を頼もうと思ったのだが、その必要はなかった。


「――レイラさん! 本を隠して!」


 上の様子を見に行ったセーリエさんが、駆けもどってきて叫んだのだ。
 どんなに焦っている時でも取り乱すことはなかったセーリエさんが、動揺を隠さず、全力で警告する。

「魔術師ギルドはまだその本をあきらめていません!
 すぐそこまで、怪しい魔術師が――あっ!」

 しかし、その必死の警告はそれでも遅かった。
 セーリエさんの横を、地下室に飛び込んできた漆黒の風が駆け抜ける。Xing霸 性霸2000

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