俺は俺自身の弱さに負けた、過去を思い出し、孤独と絶望に恐怖した。
「甘えないで……私に甘えるな、西園寺恭平!」
その結果、俺は春雛に見放されてしまう。終極痩身
惨めな姿を見せた俺に彼女の言葉は当然のことだった。
「……これでいいんだよな」
春雛との別れ、皆ともこれからは距離を置こう。
そうするのが1番いいんだ……いいんだよな?
俺は今、何が悲しいんだろう。
美月の死の事実、想いの行方、春雛に嫌われた事……全てが悲しい。
これが正しい選択……嫌な事からは全て逃げてしまえばいいんだ。
「……逃げる?これでいい?……何、寝言を言ってるんだよ」
心の奥底から湧き上がるもの、それは俺に対しての怒りの感情だった。
俺はまた逃げるのか、過去の記憶、孤独の恐怖、自分の弱さ、俺の想い、春雛への気持ち、全てから逃げ出すのか、それが本当に正しい選択だって言うのか?
……逃げていい、違う、弱いんだからしょうがない、違う、違うだろっ!
「……何をやってるんだよ、俺はッ!!!!」
俺は自己嫌悪の苛立ちに浴室の壁を思いっきり拳で殴りつける。
弱いと逃げて、しょうがないと諦めて、それで何が変わる、何も変わりやしない!
言葉と気持ちが止め処なく俺の心にわき上がる。
情けない自分、弱い自分、それらは全部恭平という一人の人間だ。
だけど、強い自分も確かに存在する、それを愛してくれた人がいる、だからッ!
「……このまま終わらない、終わらせない。俺はもう自分から逃げやしない」
俺は春雛を愛してる、だから……前を向いて今を生きる決意をする。
強い意志を取り戻し、俺はシャワーで弱い自分を洗い流した。
シャワーを浴び終わり、服を着替えた俺は皆のいるリビングへと踏み込んだ。
「恭ちゃん……」
戸惑いの表情を見せる久遠、理奈ちゃん。
意外と心配性な彼女、昔から俺に対しては二面性を持っている。
「春雛はまだ帰ってきてないのか?」
「うん。電話も置いていったたから連絡もつかないし、どこに行ったんだろうね」
「そっか。……それじゃ、俺、もう1回出かけてくるから」
「……恭ちゃん?え……あっ……」
久遠が俺の顔を見て、すぐにわかってくれたらしい。
ホント、幼馴染ってすごいね。
久遠は今までの表情を消して、すぐにいつもの悪態つく彼女の姿に戻る。
「恭ちゃん、男前の顔に戻ってるじゃない。いつもより、カッコいいぞ」
「俺は元から男前ですが、何か?」
「そうなんだ?あはは……初めて知ったわ、そんなこと」
「失礼だな。こんな男前に何言いやがる」
軽口言い合うのもいつもの事、大丈夫だ、俺は……笑えている。
あえてそう言ってくれる久遠にも感謝しておこう。
「恭平君……春雛さん、早く連れて帰ってきてね。今日は晩御飯、肉じゃがだから。冷めないうちに帰ってきて欲しいな」
「ああ、それは楽しみにしてるよ。俺、肉じゃがは和食の中で好物なんだ」
「うん。楽しみにしておいて。恭平君、ファイトッ!」
理奈ちゃんに可愛く応援されて俺は玄関に出て行く。
ありがとう、理奈ちゃん。
キミの後押しで俺はまた一歩を進める。
玄関まであと少し、俺は最後の一歩を進む覚悟を久遠にたずねた。超級脂肪燃焼弾
「あっ……久遠、聞きたいことがあったんだ」
「何?私に……何が聞きたいの?」
「……俺と美月のこと。俺達は笑いあっていたか?幸せそうな兄妹だったか?」
ふたりが幸せだったのか、俺には記憶はないから。
久遠は迷いもなく素直にそれを言葉にした。
「ええ。ふたりは幸せそうな兄妹だった。本当に……幸せだったんだと思う」
「そうか。それならいいんだ。それじゃ、行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
俺は皆に支えられてるんだと実感しながら、ようやく最後の一歩を踏み込んで外に出た。
夜になった外は雨は既にやんでいた。
……俺はヨチヨチ歩きしかできない子供だった。
人に支えられて初めて歩くことができる。
今、俺は頼りにしてきた支えを背にひとりで歩き始めたんだ。
支えられる事は楽でいい、でも、自分で歩かないと意味がない。
……行こう、支えてくれる人達が応援してくれているから。
この先に希望があるかなんて分からない。
それでも俺は逃げたくない、前を向かなきゃ進めない。
気持ちのいい夜風にふかれて月が姿を現した。
「さぁて、行くか……。春雛、待っていてくれ」
俺は夜の街を走り出す、ただ愛してる女の子の元へと走る。
弱さから逃げ続けていた俺だけど、変わらない気持ちがあるんだ。
会いたい、お前に会いたい……。
『好きなの。誰よりも私はキョウが好きなの。……だから、記憶の過去から逃げないで……お願いだからっ……私に貴方を助けさせてよ』
春雛は俺に対して愛情を常に向けてくれていた。
俺がそれに答えられなくても傍にい続けてくれていた。
だから、俺は彼女の事が好きになったんだ。
この2ヶ月間、俺達は大きく関係を変えてきた。
それまで数年間とこの2ヶ月、どちらも大切な俺達の時間。
これからもそんな時間をキミと紡いで俺はいきたい。
「……もう泣かせない。絶対に……泣かせやしない」
俺の痛みに共鳴するように彼女も俺の苦しみを感じてくれた。
春雛の優しさに甘え続ける男はもう嫌だろ?
……覚悟を決めろ、男なら、やるときはやれ。
「いた……待ってくれていた」
公園内に入って俺はすぐに彼女の姿を見つける事ができた。
静かに雨に濡れた地面を歩きながら彼女に近づく。
春雛はベンチに座ったまま、俯いたまま視線を地面に向けていた。
小さな嗚咽が聞こえる、泣いてるのか?
「春雛……」
俺が彼女に声をかけると、沈んだ表情ながら彼女は顔を上げてこちらを見る。
「……キョウ?……よかった、戻ってきてくれたんだ……っ……」
ポロポロと大粒の涙を零しながら、俺に抱きついてくる彼女。
それは不安から解放されたと言った感じ、俺もそうだ。
春雛がいてくれたから今、とても安心しているのだから……。
「探したんだよ、キョウ。でも、どこにもいなくなって、言い過ぎたって後悔して、ぐすっ、どうしようって……」
「逃げてごめん……。泣かせて、ごめんな」
「キョウっ……」
春雛は俺を見放したわけでも、見捨てたわけでもなかった。
彼女は俺を信じて待ってくれていたんだ。
いつか俺が戻ってくるのをただずっと待ってくれていた。
夜空の月明かりが俺達を照らす、彼女は泣き顔に俺は心を痛めながら、
「……俺、もう大丈夫だから。ひとりじゃないって気づいたから。信じてるよ、皆の事を。春雛を、麗奈を、久遠や皆の事も信じている。……だから、大丈夫だ」
人の気持ちは儚く脆い、信じるより疑う方が容易いから。
だけど、強く信じた気持ちは鋼のように強い。
美月の記憶を思い出し、孤独に恐怖し、世界に絶望した……。
支えてくれる人にすがりつき、ただ一方的な感情をぶつけた。
もうそんな孤独に負けない、ひとりじゃないって信じているから。SUPER FAT
BURNING
俺は春雛を抱きしめたその手で彼女の髪に触れた。
「……俺はカッコ悪いところばかりを春雛に見せてるな」
「いいよ、別に。私はそれ以上にキョウのカッコいいところをたくさん知ってるもの」
「春雛……ありがとう」
感謝しても仕切れない気持ちが俺の中にある。
ありのままの俺を受け入れてくれる、それが何よりも嬉しかった。
「キョウ、ひとりで立ち上がれたんだね。辛かった、苦しかったでしょ?」
「ああ。辛くて、苦しくて、悲しかった。美月のことも、麗奈の事も、そうだけど、1番辛かったのは春雛に拒絶された事だった」
大切な存在に見放されそうになって初めて現実を知った。
逃げ続けることの愚かしさと悲しさを体験した。
生きるという事は幸せな事だけじゃない。
世界にはいろんな側面が存在し、俺達が見ているのは一部でしかない。
自分が弱いことを知った今だからこそ見えてくる事がある。
辛い事も、悲しみも、全てを含めた世界が俺達の世界だから。
「でも、俺は闇の中から立ち上がることができたんだ。それは春雛がいてくれたから。春雛が信じて待ってくれていたから」
彼女の言葉に俺は最後の最後に倒れこまずにすんだんだ。
全てを諦めてしまう寸前に、彼女の気持ちを思い出して踏ん張れた。
このままで終われないって、諦めずに前を向く事ができた。
あのまま春雛に甘えてすがりついてしまっていたら、俺はもうダメだっただろう。
俺の心は折れきって、自立できないままだった。
彼女は強い、本当に強い女の子だ……。
「私はキョウを信じてたよ。だって、私の好きになった男の子だもん」
どうしようもない愛おしさがこみ上げてくる。
好きだ、もうこの手に抱きしめてるだけじゃ収まらない。
「愛してるよ。春雛の事を、本当に大事にしたいって思うくらいに、愛してるんだ」
「……キョウ……本当に?」
信じられないと言った彼女の様子に俺は言葉を続けた。
「……俺の恋人になって欲しい。支えるんじゃなくて、俺の隣を一緒に歩いて欲しいんだ。春雛……キミの未来を俺に託して欲しい」
俺の言葉に春雛は静かに「うん」と頷いたんだ。
「……幸せになりたいね」
そして、俺達はどちらもともなく唇を近づけてキスをした。
俺達が理奈ちゃんの家に帰ったからはずいぶんと皆に怒られた。
春雛を待たせたことも、全て、それでも皆は祝福してくれたから。
「……恭平君、約束、守ってくれたね。ありがとう」
「……お礼を言うのは俺の方だ、理奈ちゃん」
理奈ちゃんに言われた春雛を好きになって欲しい、と。
俺はその約束通りに春雛と恋人になったんだ。
「兄貴はいいなぁ。俺、やっぱり兄貴を尊敬するよ」
羨ましがる透夜、お前もいつかはそういう人と出会うはずだ。
久遠は俺と春雛が付き合うと言った時に嬉しそうに言葉にした。
「ふたりとも、よかったじゃない。こうなる事が1番、自然なんだもの」
「……久遠」
「恭ちゃんはヘタレだからね。ハルっちも苦労するわよ」
「お前、祝福するのか、馬鹿にしてるのかどっちだよ」
これもいつもの関係、久遠との関係はいつもこうでないと面白くない。
俺を支えてくれる彼らがいる。
それが今の俺に勇気を与えてくれたんだ。
「……春雛、今日だけは甘えてもいいかな」
「うん。いいよ、キョウ……」
うっとりとする微笑みに俺は飲み込まれそうになる。
可愛すぎだ、春雛と一緒にいると幸せな気持ちになれた。
春雛は俺の大切な存在、恋人とは弱さと強さを持つもの。美人豹
弱い自分と強い自分を知る相手だからこそ、人は相手を愛する事ができる。
俺は春雛に身をゆだねて、その温もりを確かめ合う。
美月、俺は今を生きてるよ。
……だけど、お前もひとりじゃない。
お前の気持ちは俺の中にあるのだから……一緒に生きていこう。
「キョウ……大好きだからね。ちゅっ」
皆の前で俺にキスをしてくる彼女。
俺はそれを受け入れて唇を重ねあう。
親友達や恋人に囲まれて、幸せな時間がここにはある。
これからもそういう時間が流れていくのだと……俺は信じていた。
その時が来るまでは信じていたんだ……。
大阪旅行も終わりを告げて俺達は再び東京へと戻ってきた。
俺は定期健診を行っている病院にいた、月に数回、俺はここで検査を受けている。
今回の旅行、まぁ、俺は雨に濡れ続けた事もあり、先生に厳重に注意された。
運が悪ければ肺炎を起こす……俺の場合はそれが命とりになるからな。
今回は俺が悪い、でも、結果としてはOKなので許して欲しいな。
帰り道、いつもと同じように廊下を歩いてると中庭に女の子が座っていた。
車椅子の美少女……歳は俺より下か、麗奈と同じくらいだろうか。
幼さの残る長髪の少女は熱心にスケッチブックに絵を描いている。
パジャマ姿でもあるし、ここの入院患者なのだろうか、そう思っていたら強い風が吹いて、そのスケッチブックが宙に舞う……。
そのスケッチブックは俺の方へと飛んできたので俺は拾い上げた。
綺麗な木々のイラストがそこには描かれている。
「これ、キミのだろう?」
俺はそれを車椅子の少女に手渡そうとして、硬直してしまう。
少女は微笑を浮かべて俺に言う。
「うわぁ、取ってくれてありがとう。お兄ちゃん」
黒い髪がそよ風に揺れて少女の美しさを際立たせる。
「母さん……?」
それがなぜか俺には自分の亡き母の面影とダブったのだ。
ありえない事に衝撃を受けた俺に彼女は不思議そうな顔をする。
「ん?どうしたの?」
「いや、なんでもない。はい、どうぞ」
「えへへ……ありがとう」
手渡してやるとすぐに彼女はそのスケッチブックに絵を描き始めた。
「絵が上手いんだな。とても綺麗なイラストだ」
「そう?そう言ってくれると嬉しいの。お兄ちゃんは病院の人じゃない?」
病院の人……ああ、入院患者という意味か。
「違うよ。俺は病院の先生に診察してもらいにきただけ」
「そうなんだ。お兄ちゃんもどこか悪いんだね……」
彼女も車椅子で入院という事はそれなりの病にかかってるというわけだろう。
彼女は興味ありげに俺の方をアーモンドみたいな瞳で見つめる。
可愛らしい女の子に見つめられると照れる。
「ねぇ……お兄ちゃんの名前は?」
「俺か?俺の名前は西園寺恭平って言うんだ。キミは?」
「私。私の名前はみづき、美しい月で美月って言うの。可愛い名前でしょ?」
「……みづき。……そうなんだ、本当に可愛らしい良い名前だね」
俺達の世界は不条理に出来ている、それが現実、そんな世界に俺達は生きているのだ。
少女の笑顔と共に紡がれた名前、俺達はまだ何も始まってもいなかったことに今さら気づいてしまう、そう、本当の物語はこれから始まるのだから。絶對高潮
2014年5月29日星期四
2014年5月28日星期三
ある雨の日に
静かに降り続く雨の音。
雨は人が流す涙に似ている。
空が流す涙、だから、人は雨を見ると悲しいと思うのだろう。韓国痩身1号
雨は別れを意味するのにも使われる。
それは全てを覆いつくしていく寂しさ。
冷たい雨粒があの過去を思い出させるから俺は雨が嫌いだ。
……思い出したくもないあの日も朝から強い雨が降っていたから。
『このままじゃダメだ。俺達は別れた方がいいと思う』
体育館の裏で、俺と1人の少女がどしゃぶりの雨に2人は濡れている。
俺達は今さらながら少しでも濡れないようにと体育館の屋根の影に入って座り込む。
『私はね……』
冬の冷たい雨が俺達の心を冷やしていく。
『それでも、ここにいたいから』
俺の胸に顔をうずめる彼女の呟く声、これだけ近づかなければ雨音に消されてしまう。
後悔、拒絶、別れ……色々な感情が入り混じる。
『やめよう。それじゃ、お互いに辛いだけだ』
俺にとっては汚点としかいえない辛い日々。
なかった事にしたい、今でもそう強く思う。
雨か涙か区別がつかないほど身体中を雨に濡らしながら彼女は泣いていた。
『どうしてかな……。傷ついたって、私はいいの。貴方と別れたくない。別れるくらいなら、自分の立場も、何もいらない。ただ傍にいたい、それじゃダメなの?』
俺はただ目の前の少女を守りたかった。
彼女の存在、立場、全てから守るためには俺から離れるのが一番だと思った。
寂しさ……そんな感情と引き換えに彼女を守ることができるのなら。
『ごめんな。……これでさよなら、だ』
俺はそれでもいいと思った。
『嫌よ……。絶対に……それだけは嫌ッ!!』
だが、小さな水音と唇の感触が全てを遮る。
“雨”の味がするキスを彼女は俺にしながら、
『そうだ、高校!高校を卒業したら、また一緒にいられるわ。そうよね?』
『それは……』
彼女は俺の心を必死に留めようとしていた。
雨は強さを増して、傍にいる俺達の声しか聞こえない。
『だから、それまで私は好きでいるから。貴方も私を好きでいて。お願い……』
雨を見れば嫌でもあの時の泣いているアイツの顔を思い出してしまうから。
だから、俺は雨が大嫌いだ……。
……。
と、いう恋愛ドラマを昨日見たせいで少し気分が沈んでいる、俺。韓国痩身一号
「今日は夕方から雨が降るでしょう。ホントに天気予報通りに降りそうだ」
俺はあいにくの空模様に俺は置き傘を手に持ち歩いていた。
しばらくすると予想通り、雨がポツポツと降ってくる。
傘を差して歩いていると、あちらこちらで慌てて走る人の姿を見つける。
こういう時って、傘を持っている優越感にひたれるよね。
そんな俺は心の狭い社会的弱者ですか?
「……ん?」
ふと、俺の目に飛び込んできたのは我が愛しき妹、麗奈の姿。
傘を持っていないのか、とある店の軒下で雨宿りをしている。
チャンス到来、ってやつだ。
お約束の相合傘イベントですよ。
『えへへ、お兄ちゃんと一緒の傘なんて恥ずかしい』
そう言いながらも、嬉しそうにひとつの傘に入る妹。
『雨に濡れるから、もう少し近づいてもいい?いいよね?』
近づく身体の距離、やがて距離はゼロに……なったら動けないな。
こういう場合はぴったりと身体をよせあうだけにしておこう。
俺の腕に妹の腕を絡めて、兄妹仲良く一緒に帰るんだ。
さぁ、いざ妄想の実現に向けて出陣!
店の軒下に再び目を向ける俺。
「――あれ?」
いつのまにか妹はそこにはいなかった。
というか、目の前で走ろうとしているように見えます。
まさか家まで全力ダッシュの強硬手段?
待って、それは待ってください。
「ちょっと待て。濡れて帰る気か、麗奈」
俺は駆け足で麗奈に追いつくと、彼女は既にほんの少しだけ濡れていた。
濡れた髪が色っぽい、この子、本当に中学生?
なんて、いやらしい視線で見れば一発で嫌われるのでやめておく。
「お兄さん。珍しくちゃんと傘を持ってきたんですね」
「まぁ、梅雨だからな。いつ雨が降ってきてもいいように置き傘をしていたんだ。ほら、突っ立ってないで傘に入れよ」
「……お兄さんと相合傘するくらいなら濡れて帰ります」
「ひどっ!風邪でもひいたらどうするんだ?」
妹も妹なりに考える事があるのだろう。御秀堂養顔痩身カプセル第2代
兄と一緒の傘に入りたくないという悩みは普通に悲しいです。
「……濡れて風邪をひくのは別に構いませんが、見舞いと称して、私の部屋に堂々とやってくるお兄さんは勘弁ですね」
そう言って俺の傘に入る麗奈。
さりげに毒を吐くよね、うちの妹って……ぐすん。
「素直じゃないな」
「残念でしたね、素直さんじゃなくて」
「……いや、そっちの素直じゃないから。ややこしいなぁ」
俺達はそのまま相合傘で仲良く帰る事にした。
麗奈に歩幅を合わせてゆっくりと雨に濡れた道を歩んでいく。
俺と麗奈の身体の距離も微妙に開いている。
ぴったり並んで歩くのが定番なのに。
しかも互いに会話がない、気まずい雰囲気。
「あのさ……」
「何も言わずに黙って歩いてください」
「……はい」
妹よ、兄は時々、真剣に思います。
もう少し、兄に対して愛想をよくするべきだ、と。
兄妹のコミュニケーション不足はいかんと思うのですよ。
あっ、もしかして照れてるのか?
「……お兄さん。私が隣にいる時に変な顔をするのはやめてください」
「そんな顔、してないもん」
「男が“もん”なんて付けてしゃべると、正直、死ねばいいと思います」
……くっ、目から雨の雫が零れるぜ。
日に日にうちの妹の口が悪くなってきます。
それにも負けずに話題を変えて、話しかける。
「……そういえばさ。昔、雨の降る中で子猫を拾って帰ってきた事があるんだよ。子猫だから、びしょ濡れなのを放っておけなくてそのまま家につれて帰った」
「それで……そのネコはどうしたんですか?」
「いや、それだけ。雨がやんだらいつのまにか勝手に出て行ってしまったから。俺としてはそのまま飼い猫にしたかったんだけどな」
あの頃の俺はそれが寂しくて少し泣いたんだよなぁ。
今でもネコが捨てられていると拾って帰りたくなる。
それができないのがわかっているのに、愛らしきものには同情してしまう。
そんな子供の頃の優しい思い出。御秀堂養顔痩身カプセル第3代
「野良猫を飼うのは普通に止めておいた方がいいですよ。いろいろ病気とか持ってますから。ワクチンとか、メスなら避妊手術も受けさせないといけませんし」
「……子供の優しい心を現実論で片付けないでください」
またひとつ、俺の思い出が妹に切り捨てられてしまいました。
彼女は水たまりにうつる自分の姿を眺めながら、
「でも、そういう優しいところがあるのはいい事ですよね。私ならそういう場面でも見捨てていきますから」
「それはどうかな。実際、そう言っていても、子猫の瞳とか見ちゃうとどうしても情がわくものだ。麗奈は優しい子だから、簡単に見捨てるのはできないよ」
「私って、結構残酷な人間ですよ」
「ホントに残酷な人間は宣言しないから。小悪魔ぐらいで我慢してくれ」
俺の言葉に麗奈は視線をそらすだけだった。
俺にはなんとなく分かっていた。
彼女も同じような経験があるのだろう。
多分、動物をお母さんに飼うのを反対された類の過去が。
だから……見捨てるなどという発言で誤魔化す。
本当に見捨てる人間は気にもしないから。
「雨が強くなってきました。狭いので傘から出て行ってください」
「これ、俺の傘なんですが。しかも、それならもっと近づこうとかそういう展開に……」
「なりません」
「ですよねぇ……はぁ」
何て事を言ってるうちに本降りになってきた。
麗奈は本当に仕方なくと言った顔をして、
「……鞄を濡らしたくはないので」
鞄を胸に抱きながら俺の横に距離を縮めてくる。
触れる肩にはさすがの麗奈もほんのり顔を赤らめていた。
「さっさと帰りますよ。それとも、置いて帰ってもいいんですか?」
「ゆっくり帰ろう。急いでも濡れるだけだろ」
雨に感謝、麗奈と一緒に帰る時間はいつもと違う特別な時間。
降り続く雨もこのシチュエーションなら嫌にならない。御秀堂 養顔痩身カプセル
雨は人が流す涙に似ている。
空が流す涙、だから、人は雨を見ると悲しいと思うのだろう。韓国痩身1号
雨は別れを意味するのにも使われる。
それは全てを覆いつくしていく寂しさ。
冷たい雨粒があの過去を思い出させるから俺は雨が嫌いだ。
……思い出したくもないあの日も朝から強い雨が降っていたから。
『このままじゃダメだ。俺達は別れた方がいいと思う』
体育館の裏で、俺と1人の少女がどしゃぶりの雨に2人は濡れている。
俺達は今さらながら少しでも濡れないようにと体育館の屋根の影に入って座り込む。
『私はね……』
冬の冷たい雨が俺達の心を冷やしていく。
『それでも、ここにいたいから』
俺の胸に顔をうずめる彼女の呟く声、これだけ近づかなければ雨音に消されてしまう。
後悔、拒絶、別れ……色々な感情が入り混じる。
『やめよう。それじゃ、お互いに辛いだけだ』
俺にとっては汚点としかいえない辛い日々。
なかった事にしたい、今でもそう強く思う。
雨か涙か区別がつかないほど身体中を雨に濡らしながら彼女は泣いていた。
『どうしてかな……。傷ついたって、私はいいの。貴方と別れたくない。別れるくらいなら、自分の立場も、何もいらない。ただ傍にいたい、それじゃダメなの?』
俺はただ目の前の少女を守りたかった。
彼女の存在、立場、全てから守るためには俺から離れるのが一番だと思った。
寂しさ……そんな感情と引き換えに彼女を守ることができるのなら。
『ごめんな。……これでさよなら、だ』
俺はそれでもいいと思った。
『嫌よ……。絶対に……それだけは嫌ッ!!』
だが、小さな水音と唇の感触が全てを遮る。
“雨”の味がするキスを彼女は俺にしながら、
『そうだ、高校!高校を卒業したら、また一緒にいられるわ。そうよね?』
『それは……』
彼女は俺の心を必死に留めようとしていた。
雨は強さを増して、傍にいる俺達の声しか聞こえない。
『だから、それまで私は好きでいるから。貴方も私を好きでいて。お願い……』
雨を見れば嫌でもあの時の泣いているアイツの顔を思い出してしまうから。
だから、俺は雨が大嫌いだ……。
……。
と、いう恋愛ドラマを昨日見たせいで少し気分が沈んでいる、俺。韓国痩身一号
「今日は夕方から雨が降るでしょう。ホントに天気予報通りに降りそうだ」
俺はあいにくの空模様に俺は置き傘を手に持ち歩いていた。
しばらくすると予想通り、雨がポツポツと降ってくる。
傘を差して歩いていると、あちらこちらで慌てて走る人の姿を見つける。
こういう時って、傘を持っている優越感にひたれるよね。
そんな俺は心の狭い社会的弱者ですか?
「……ん?」
ふと、俺の目に飛び込んできたのは我が愛しき妹、麗奈の姿。
傘を持っていないのか、とある店の軒下で雨宿りをしている。
チャンス到来、ってやつだ。
お約束の相合傘イベントですよ。
『えへへ、お兄ちゃんと一緒の傘なんて恥ずかしい』
そう言いながらも、嬉しそうにひとつの傘に入る妹。
『雨に濡れるから、もう少し近づいてもいい?いいよね?』
近づく身体の距離、やがて距離はゼロに……なったら動けないな。
こういう場合はぴったりと身体をよせあうだけにしておこう。
俺の腕に妹の腕を絡めて、兄妹仲良く一緒に帰るんだ。
さぁ、いざ妄想の実現に向けて出陣!
店の軒下に再び目を向ける俺。
「――あれ?」
いつのまにか妹はそこにはいなかった。
というか、目の前で走ろうとしているように見えます。
まさか家まで全力ダッシュの強硬手段?
待って、それは待ってください。
「ちょっと待て。濡れて帰る気か、麗奈」
俺は駆け足で麗奈に追いつくと、彼女は既にほんの少しだけ濡れていた。
濡れた髪が色っぽい、この子、本当に中学生?
なんて、いやらしい視線で見れば一発で嫌われるのでやめておく。
「お兄さん。珍しくちゃんと傘を持ってきたんですね」
「まぁ、梅雨だからな。いつ雨が降ってきてもいいように置き傘をしていたんだ。ほら、突っ立ってないで傘に入れよ」
「……お兄さんと相合傘するくらいなら濡れて帰ります」
「ひどっ!風邪でもひいたらどうするんだ?」
妹も妹なりに考える事があるのだろう。御秀堂養顔痩身カプセル第2代
兄と一緒の傘に入りたくないという悩みは普通に悲しいです。
「……濡れて風邪をひくのは別に構いませんが、見舞いと称して、私の部屋に堂々とやってくるお兄さんは勘弁ですね」
そう言って俺の傘に入る麗奈。
さりげに毒を吐くよね、うちの妹って……ぐすん。
「素直じゃないな」
「残念でしたね、素直さんじゃなくて」
「……いや、そっちの素直じゃないから。ややこしいなぁ」
俺達はそのまま相合傘で仲良く帰る事にした。
麗奈に歩幅を合わせてゆっくりと雨に濡れた道を歩んでいく。
俺と麗奈の身体の距離も微妙に開いている。
ぴったり並んで歩くのが定番なのに。
しかも互いに会話がない、気まずい雰囲気。
「あのさ……」
「何も言わずに黙って歩いてください」
「……はい」
妹よ、兄は時々、真剣に思います。
もう少し、兄に対して愛想をよくするべきだ、と。
兄妹のコミュニケーション不足はいかんと思うのですよ。
あっ、もしかして照れてるのか?
「……お兄さん。私が隣にいる時に変な顔をするのはやめてください」
「そんな顔、してないもん」
「男が“もん”なんて付けてしゃべると、正直、死ねばいいと思います」
……くっ、目から雨の雫が零れるぜ。
日に日にうちの妹の口が悪くなってきます。
それにも負けずに話題を変えて、話しかける。
「……そういえばさ。昔、雨の降る中で子猫を拾って帰ってきた事があるんだよ。子猫だから、びしょ濡れなのを放っておけなくてそのまま家につれて帰った」
「それで……そのネコはどうしたんですか?」
「いや、それだけ。雨がやんだらいつのまにか勝手に出て行ってしまったから。俺としてはそのまま飼い猫にしたかったんだけどな」
あの頃の俺はそれが寂しくて少し泣いたんだよなぁ。
今でもネコが捨てられていると拾って帰りたくなる。
それができないのがわかっているのに、愛らしきものには同情してしまう。
そんな子供の頃の優しい思い出。御秀堂養顔痩身カプセル第3代
「野良猫を飼うのは普通に止めておいた方がいいですよ。いろいろ病気とか持ってますから。ワクチンとか、メスなら避妊手術も受けさせないといけませんし」
「……子供の優しい心を現実論で片付けないでください」
またひとつ、俺の思い出が妹に切り捨てられてしまいました。
彼女は水たまりにうつる自分の姿を眺めながら、
「でも、そういう優しいところがあるのはいい事ですよね。私ならそういう場面でも見捨てていきますから」
「それはどうかな。実際、そう言っていても、子猫の瞳とか見ちゃうとどうしても情がわくものだ。麗奈は優しい子だから、簡単に見捨てるのはできないよ」
「私って、結構残酷な人間ですよ」
「ホントに残酷な人間は宣言しないから。小悪魔ぐらいで我慢してくれ」
俺の言葉に麗奈は視線をそらすだけだった。
俺にはなんとなく分かっていた。
彼女も同じような経験があるのだろう。
多分、動物をお母さんに飼うのを反対された類の過去が。
だから……見捨てるなどという発言で誤魔化す。
本当に見捨てる人間は気にもしないから。
「雨が強くなってきました。狭いので傘から出て行ってください」
「これ、俺の傘なんですが。しかも、それならもっと近づこうとかそういう展開に……」
「なりません」
「ですよねぇ……はぁ」
何て事を言ってるうちに本降りになってきた。
麗奈は本当に仕方なくと言った顔をして、
「……鞄を濡らしたくはないので」
鞄を胸に抱きながら俺の横に距離を縮めてくる。
触れる肩にはさすがの麗奈もほんのり顔を赤らめていた。
「さっさと帰りますよ。それとも、置いて帰ってもいいんですか?」
「ゆっくり帰ろう。急いでも濡れるだけだろ」
雨に感謝、麗奈と一緒に帰る時間はいつもと違う特別な時間。
降り続く雨もこのシチュエーションなら嫌にならない。御秀堂 養顔痩身カプセル
2014年5月25日星期日
プロジェクトD
和歌の従姉、唯羽の正体を知った俺は衝撃を受けていた。
魂が見えるゆえの孤独、それに同情していた矢先。
あの子のダメっぷりをみせつけられた。OB蛋白の繊型曲痩 Ⅲ
ネトゲ三昧で引きこもり。
俺は別にネトゲが悪いとは言わない。
だが、学校にも行かずにやるということは限度を決めろと言いたい。
実の両親からも呆れられ、和歌も不健康な生活に心配する毎日。
俺はそんなダメっぷりの唯羽をどうにかしようと考えていた。
別に……前世がダンゴムシと言われた事に怒ってるからじゃない。
ダンゴムシ……この俺が……?
はっ、いかん……ここは冷静にならないとな。
私怨もあるが、アイツにはまともな生活を送って欲しいとも思うのだ。
俺は唯羽には助けられた借りがある、その借りをここで返しておきたい。
「それを本人が望んでいないのが問題か」
翌日、俺は朝から降り続く雨にうんざりしながら窓の外を眺めていた。
学校に登校して教室の自分の隣の席を見るも、当然いない。
不登校を続けている唯羽、その理由が病弱ではなくネトゲがしたいからだとは……。
「なんだ、今度は何か悩みか?」
俺の態度が気になったのか黒沢が声をかけてきた。
「黒沢は確かネトゲに詳しかったよな」
「あぁ。なんだ、柊もゲームをする気になったのか?」
「逆だ。俺の知り合いにネトゲ三昧で引きこもり気味なやつがいてな。そいつをどうにかしてほしいと、家族から頼まれた」
「なるほどなぁ。ネトゲ廃人か……気をつけた方がいいぞ?」
黒沢は神妙な面持ちでそう告げる。
「どういうことだ?」
「いや、ネトゲで引きこもりってのは珍しくない。ネトゲは依存度が高いからさ。下手に手を打つと、とんでもないことになる事もある」
「おいおい、たかがゲームをやめさせるだけだぞ?」
俺はそれなりに気軽な気持ちでいたのだが、ネトゲ依存者は相当、大変らしい。
「……そこが問題だ。家族はやめさせるのを簡単だと思い込んでる。ネトゲの依存度にもよるだろうが、煙草やお酒みたいにやめさせるのが大変だってことだよ」
黒沢いわく、例えば、ネトゲをやめさせようとして、インターネットをできなくさせる、パソコンを取り上げるなどしたら、家を放火したという事件さえ起きたらしい。
もちろん、それがすべてのネトゲユーザーに当てはまるわけじゃない。
だが、ネトゲに依存する人間はそこのネトゲの世界を自分の世界だと思い込んでいる。
それゆえに、抜け出させるのは難しそうだ。
「事件を起こすってマジかよ」
「たまにテレビで報道される事件とかあるだろ。ネトゲごとき、とか言うけどさ。そいつらにとっては大事な世界だ。否定や下手に対処すると余計にこじれる」
「どうすればいいんだ?」
「そうだな。まぁ、難しいかもしれないが、ネトゲ以外の事に興味を持たせることが一番の方法だって言われている。普通なら飽きればネトゲをやめるが、大抵はヘビーユーザになると飽きることもないだろうし。そうするのが近道だろうな」V26 即効ダイエット
他の事に興味を持たせる、か。
今の唯羽の情報は少ない。
ここは本格的に行動してみる必要がありそうだ。
昼休憩、俺は屋上で和歌の手作りお弁当を食べながら至福のひと時を味わっていた。
口に広がる奥深い味わい、よく味が染み込んだ煮物ほど美味しいものはない。
「うまい、うますぎる……和歌。素晴らしい」
「ふふっ。元雪様は本当に和食がお好きなんですね」
「あぁ、好きだぞ。それに和歌の料理が好きと言う事もある。この煮物とか最高だ。相変わらず、和歌は料理が上手だな」
和歌を褒めると嬉しそうに笑みを見せる。
うちの恋人は可愛すぎる恋人です。
「と、そうだ。唯羽のことなんだが、俺なりに計画を考えてみた」
「作戦ですか?」
「その名もプロジェクトDだ」
なお、某有名な公道をレースする車の漫画とは一切関係ありません。
「元雪様、Dってなんですか?」
「……Dは『ダメな唯羽をマジでどうにかしよう』の略だ」
「うぅっ。唯羽お姉様がひどい言われようです」
「唯羽の事は甘やかしてはいけない。時には厳しくするのも大切だ」
……俺の前世をダンゴムシと言ったから許さん。
「それで、具体的にはどうするんですか?」
「それはな……これから考えるんだ」
……だって、俺は唯羽の事を電波系美少女と言うこと以外、何も知らないのだ。
まずは情報を得ることが大切だ。
俺は和歌に出来る限りの唯羽の情報を教えてもらうことにした。
「唯羽って何かできるのか?」
「えっと、その言い方には問題があるように思います。お姉様はああみえて本当はなんでもできる人なんですよ。お料理だって、私よりも上手なんです」
「嘘だ、ありえない!?だって、昨日だってカップラーメンを食べていたじゃないか」
「……自分のために作るのは面倒だそうです」
和歌の料理の腕前も相当だが、それ以上だと?福潤宝
……ぜひ、今度、俺のために里芋の煮物を作ってください。
「私は趣味で生け花をしてるんです。お姉様は私と流派は違いますが、小さな頃から生け花をしていて、すごい才能があるって言われています」
「……ほ、他には?」
「あとは……お姉様はスポーツも万能で、運動神経がすごくいいんです。中学の頃はテニス部でしたが、個人レベルでは全国区だって言われてました。団体で全国制覇の経験もあります」
「ま、マジッすか。実はテニスのお姫様の経験もあったとか……今と比べるとどうにもならんな」
ホントに今の唯羽は残念な子だよな。
いろんな才能があるのに、もったいない。
「今のお姉様は全てを放棄してしまっているようにみえるんです」
「本人は楽しんでるから問題ないって言ってたぞ。適当に生きて、思う存分にネトゲ人生を送りたいんだとさ。やれやれだ」
「疲れてしまったのでしょうか。私なりに考えたんですけど、お姉様は基本的に優しすぎるくらいに優しい方なんです」
「待て、激しく待て。ホントに優しい人は『最凶』なんておみくじを渡しません」
そこだけは完全に否定させてもらおう。
和歌は苦笑いをしながら、昔の事を語る。
「お姉様の実家はあの神社からも近いので私たちは幼馴染のように仲が良かったんです。昔のお姉様は本当にすごい人でした。魂の色が見える、霊感がものすごくあって、他人の悩みとかもすぐに分かってしまうんです」
「あぁ。そのせいで孤独になったんだよな」
「……はい。それでも、昔のお姉様は他人から尊敬されていました。どんな人にも優しく接して、人の痛みを分かってあげようとする。悩みを抱えている人には適切なアドバイスを与え、物事を解決させる。そんな役回りに皆が望んでいたんです」
人は自分勝手だ。
勝手に期待を押し付けて、その期待が崩れた時にはあっさりと手のひらを返す。
唯羽はそう言う辛い想いをしたのではないか。
それが和歌の考えだった。
学校が終わると、俺は唯羽に会いに椎名神社を訪れる。
とりあえず、和歌には3日ほど、唯羽に専念させてもらえるように話をしておいた。
『元雪様と触れあえないのは寂しいですが、お姉様をよろしくお願いします』
和歌の協力も得て、俺はプロジェクトDを本格始動させる。VIVID XXL
まずは本人の話を聞くのが一番だろう。
「……小百合さんかも頼まれてしまった」
唯羽の事は和歌経由で昨日のうちに和歌のお母さんである小百合さんにも伝わっていたらしく、家に行くとすぐに唯羽の事を頼まれた。
小百合さんも以前から、唯羽のことをどうにかしたいと考えていたらしい。
「さぁて、と。唯羽、いるか。入るぞ」
「……柊元雪か?」
俺は部屋にはいると相変わらず汚い部屋だ。
そして、唯羽は案の定、ネットゲームをしていた。
……寝転がってるせいで和服が乱れて、ちょっと色っぽいじゃないか。
「なぁ、唯羽。お前、ネトゲ以外の趣味はないのか?」
「……今はないな」
「中学の時にやってたテニスは?生け花も相当な腕前らしいな」
「テニスは全国大会を制覇して飽きた。生け花は母の影響でやってただけで、私自身が興味のあるものじゃない。他に趣味らしいものはないな。ヒメから聞いたのか?」
唯羽は基本的にネトゲ以外に興味があるものがないらしい。
「そうだ。唯羽、ネトゲをやめるという選択肢はないか」
「あるはずがない。まさか……柊元雪、私にネトゲをやめさせようとか、そんなおぞましい事を考えているのではないな」
「その通りだ。俺はお前をネトゲ生活から脱却させてやる」
「……出ていけ。私の敵に用はない。本気で呪うぞ」
俺を敵とみなした唯羽は威嚇する猫のように警戒される。
「お前なぁ。自分でもネトゲ廃人がダメ人間って分かってるんだろ」
「ネトゲ廃人と呼ぶな。ダメとか決めつけるな」
唯羽も今のままじゃダメだってことは分かっているはずなんだ。
ニート、ネトゲ廃人、残念女子……誰だって言われたくないからな。
「……唯羽、俺はお前に借りがある。その借りを返すぞ」
「以前に私が助けたことか。あんなことは忘れろ。気にするな」
「いや、俺に前世をダンゴムシと言われたことだ。あれだけは許さない」
「……かわいそうに。ダンゴムシを侮辱した事を謝れ。土下座して謝罪しろ」
違うだろ、お前が俺に謝れ!
この椎名唯羽という女は一筋縄にはいきそうにない。挺三天
魂が見えるゆえの孤独、それに同情していた矢先。
あの子のダメっぷりをみせつけられた。OB蛋白の繊型曲痩 Ⅲ
ネトゲ三昧で引きこもり。
俺は別にネトゲが悪いとは言わない。
だが、学校にも行かずにやるということは限度を決めろと言いたい。
実の両親からも呆れられ、和歌も不健康な生活に心配する毎日。
俺はそんなダメっぷりの唯羽をどうにかしようと考えていた。
別に……前世がダンゴムシと言われた事に怒ってるからじゃない。
ダンゴムシ……この俺が……?
はっ、いかん……ここは冷静にならないとな。
私怨もあるが、アイツにはまともな生活を送って欲しいとも思うのだ。
俺は唯羽には助けられた借りがある、その借りをここで返しておきたい。
「それを本人が望んでいないのが問題か」
翌日、俺は朝から降り続く雨にうんざりしながら窓の外を眺めていた。
学校に登校して教室の自分の隣の席を見るも、当然いない。
不登校を続けている唯羽、その理由が病弱ではなくネトゲがしたいからだとは……。
「なんだ、今度は何か悩みか?」
俺の態度が気になったのか黒沢が声をかけてきた。
「黒沢は確かネトゲに詳しかったよな」
「あぁ。なんだ、柊もゲームをする気になったのか?」
「逆だ。俺の知り合いにネトゲ三昧で引きこもり気味なやつがいてな。そいつをどうにかしてほしいと、家族から頼まれた」
「なるほどなぁ。ネトゲ廃人か……気をつけた方がいいぞ?」
黒沢は神妙な面持ちでそう告げる。
「どういうことだ?」
「いや、ネトゲで引きこもりってのは珍しくない。ネトゲは依存度が高いからさ。下手に手を打つと、とんでもないことになる事もある」
「おいおい、たかがゲームをやめさせるだけだぞ?」
俺はそれなりに気軽な気持ちでいたのだが、ネトゲ依存者は相当、大変らしい。
「……そこが問題だ。家族はやめさせるのを簡単だと思い込んでる。ネトゲの依存度にもよるだろうが、煙草やお酒みたいにやめさせるのが大変だってことだよ」
黒沢いわく、例えば、ネトゲをやめさせようとして、インターネットをできなくさせる、パソコンを取り上げるなどしたら、家を放火したという事件さえ起きたらしい。
もちろん、それがすべてのネトゲユーザーに当てはまるわけじゃない。
だが、ネトゲに依存する人間はそこのネトゲの世界を自分の世界だと思い込んでいる。
それゆえに、抜け出させるのは難しそうだ。
「事件を起こすってマジかよ」
「たまにテレビで報道される事件とかあるだろ。ネトゲごとき、とか言うけどさ。そいつらにとっては大事な世界だ。否定や下手に対処すると余計にこじれる」
「どうすればいいんだ?」
「そうだな。まぁ、難しいかもしれないが、ネトゲ以外の事に興味を持たせることが一番の方法だって言われている。普通なら飽きればネトゲをやめるが、大抵はヘビーユーザになると飽きることもないだろうし。そうするのが近道だろうな」V26 即効ダイエット
他の事に興味を持たせる、か。
今の唯羽の情報は少ない。
ここは本格的に行動してみる必要がありそうだ。
昼休憩、俺は屋上で和歌の手作りお弁当を食べながら至福のひと時を味わっていた。
口に広がる奥深い味わい、よく味が染み込んだ煮物ほど美味しいものはない。
「うまい、うますぎる……和歌。素晴らしい」
「ふふっ。元雪様は本当に和食がお好きなんですね」
「あぁ、好きだぞ。それに和歌の料理が好きと言う事もある。この煮物とか最高だ。相変わらず、和歌は料理が上手だな」
和歌を褒めると嬉しそうに笑みを見せる。
うちの恋人は可愛すぎる恋人です。
「と、そうだ。唯羽のことなんだが、俺なりに計画を考えてみた」
「作戦ですか?」
「その名もプロジェクトDだ」
なお、某有名な公道をレースする車の漫画とは一切関係ありません。
「元雪様、Dってなんですか?」
「……Dは『ダメな唯羽をマジでどうにかしよう』の略だ」
「うぅっ。唯羽お姉様がひどい言われようです」
「唯羽の事は甘やかしてはいけない。時には厳しくするのも大切だ」
……俺の前世をダンゴムシと言ったから許さん。
「それで、具体的にはどうするんですか?」
「それはな……これから考えるんだ」
……だって、俺は唯羽の事を電波系美少女と言うこと以外、何も知らないのだ。
まずは情報を得ることが大切だ。
俺は和歌に出来る限りの唯羽の情報を教えてもらうことにした。
「唯羽って何かできるのか?」
「えっと、その言い方には問題があるように思います。お姉様はああみえて本当はなんでもできる人なんですよ。お料理だって、私よりも上手なんです」
「嘘だ、ありえない!?だって、昨日だってカップラーメンを食べていたじゃないか」
「……自分のために作るのは面倒だそうです」
和歌の料理の腕前も相当だが、それ以上だと?福潤宝
……ぜひ、今度、俺のために里芋の煮物を作ってください。
「私は趣味で生け花をしてるんです。お姉様は私と流派は違いますが、小さな頃から生け花をしていて、すごい才能があるって言われています」
「……ほ、他には?」
「あとは……お姉様はスポーツも万能で、運動神経がすごくいいんです。中学の頃はテニス部でしたが、個人レベルでは全国区だって言われてました。団体で全国制覇の経験もあります」
「ま、マジッすか。実はテニスのお姫様の経験もあったとか……今と比べるとどうにもならんな」
ホントに今の唯羽は残念な子だよな。
いろんな才能があるのに、もったいない。
「今のお姉様は全てを放棄してしまっているようにみえるんです」
「本人は楽しんでるから問題ないって言ってたぞ。適当に生きて、思う存分にネトゲ人生を送りたいんだとさ。やれやれだ」
「疲れてしまったのでしょうか。私なりに考えたんですけど、お姉様は基本的に優しすぎるくらいに優しい方なんです」
「待て、激しく待て。ホントに優しい人は『最凶』なんておみくじを渡しません」
そこだけは完全に否定させてもらおう。
和歌は苦笑いをしながら、昔の事を語る。
「お姉様の実家はあの神社からも近いので私たちは幼馴染のように仲が良かったんです。昔のお姉様は本当にすごい人でした。魂の色が見える、霊感がものすごくあって、他人の悩みとかもすぐに分かってしまうんです」
「あぁ。そのせいで孤独になったんだよな」
「……はい。それでも、昔のお姉様は他人から尊敬されていました。どんな人にも優しく接して、人の痛みを分かってあげようとする。悩みを抱えている人には適切なアドバイスを与え、物事を解決させる。そんな役回りに皆が望んでいたんです」
人は自分勝手だ。
勝手に期待を押し付けて、その期待が崩れた時にはあっさりと手のひらを返す。
唯羽はそう言う辛い想いをしたのではないか。
それが和歌の考えだった。
学校が終わると、俺は唯羽に会いに椎名神社を訪れる。
とりあえず、和歌には3日ほど、唯羽に専念させてもらえるように話をしておいた。
『元雪様と触れあえないのは寂しいですが、お姉様をよろしくお願いします』
和歌の協力も得て、俺はプロジェクトDを本格始動させる。VIVID XXL
まずは本人の話を聞くのが一番だろう。
「……小百合さんかも頼まれてしまった」
唯羽の事は和歌経由で昨日のうちに和歌のお母さんである小百合さんにも伝わっていたらしく、家に行くとすぐに唯羽の事を頼まれた。
小百合さんも以前から、唯羽のことをどうにかしたいと考えていたらしい。
「さぁて、と。唯羽、いるか。入るぞ」
「……柊元雪か?」
俺は部屋にはいると相変わらず汚い部屋だ。
そして、唯羽は案の定、ネットゲームをしていた。
……寝転がってるせいで和服が乱れて、ちょっと色っぽいじゃないか。
「なぁ、唯羽。お前、ネトゲ以外の趣味はないのか?」
「……今はないな」
「中学の時にやってたテニスは?生け花も相当な腕前らしいな」
「テニスは全国大会を制覇して飽きた。生け花は母の影響でやってただけで、私自身が興味のあるものじゃない。他に趣味らしいものはないな。ヒメから聞いたのか?」
唯羽は基本的にネトゲ以外に興味があるものがないらしい。
「そうだ。唯羽、ネトゲをやめるという選択肢はないか」
「あるはずがない。まさか……柊元雪、私にネトゲをやめさせようとか、そんなおぞましい事を考えているのではないな」
「その通りだ。俺はお前をネトゲ生活から脱却させてやる」
「……出ていけ。私の敵に用はない。本気で呪うぞ」
俺を敵とみなした唯羽は威嚇する猫のように警戒される。
「お前なぁ。自分でもネトゲ廃人がダメ人間って分かってるんだろ」
「ネトゲ廃人と呼ぶな。ダメとか決めつけるな」
唯羽も今のままじゃダメだってことは分かっているはずなんだ。
ニート、ネトゲ廃人、残念女子……誰だって言われたくないからな。
「……唯羽、俺はお前に借りがある。その借りを返すぞ」
「以前に私が助けたことか。あんなことは忘れろ。気にするな」
「いや、俺に前世をダンゴムシと言われたことだ。あれだけは許さない」
「……かわいそうに。ダンゴムシを侮辱した事を謝れ。土下座して謝罪しろ」
違うだろ、お前が俺に謝れ!
この椎名唯羽という女は一筋縄にはいきそうにない。挺三天
2014年5月15日星期四
愛にすべてを
悲しい因縁を断ち切るために。
私の前に現れたのは、もう一人の私である椿だった。
椿姫を背後から抱きつく形で身動きを封じ込める。韓国痩身1号
『は、離せ……!?』
「普通の人じゃない私ならば椿姫にも触れられる」
『消えたはずのお前が……なぜだ?』
「そう。一度は消えたはず。でも、椿としての私は再びこの世界にいる。椿姫と一緒に消えて終わりにするために。それで全部、終わらせようよ」
最悪の怨霊、椿姫を消滅させる最後の手段。
『そんなことをすればお前も……』
「だから、何?私はね、元雪を守れればそれでいい。その気持ちは唯羽と何も変わらない。それに……元雪はどんな唯羽でも愛してくれる。私という人格じゃなくても、想いを抱いてくれると信じてるから」
椿が消えれば、私の中にある人格も消えてしまう。
それでも、私達ができる唯一の方法でもある。
「椿姫。呪いは終わりだ」
私は呪われた弓矢を彼女の前に差し出す。
『それは……』
「かつて影綱を射たとされる弓矢。400年前のお前がこれに呪いをかけたのが始まりだった。それもこれで終わりだ、ここで終わらせる」
『やめろぉ!!』
怨霊の叫び。
私は思いっきり、その弓矢をへし折る。
長年の風化でいともたやすく弓矢は折れて砕け散る。
「……これでお前はもうこの世に留まる力の源を失った」
「でも、それで終わりじゃないんだよね?」
「そうだ。あとは……椿姫、お前自身を消滅させなければならない」
弓矢を折って終わりならば話が早かった。
椿姫は表情を苦痛にゆがませながら、
『……お前達は何も分かっていない。愛を分かっていない』
「愛を分かっていない?」
この期に及んで何を言う。
『人から愛されたいと思う心を、人に必要とされたいと思う心を。お前達は分かっているのか?』
生前の彼女は長い病に苦しんで、絶望の中を生きてきた。
家族にも見放され、影綱だけが心の支えだった。
影綱に愛されたい、必要とされたい。
そんな気持ちだけで生きてきたのだろう。
「分かってないのはお前だよ、椿姫」
『……なんだと?』
「私は……柊元雪を愛してよく分かった。恋は楽しい物だけじゃなくて、苦しいものだということも。時には嫉妬して、時にはぶつかりあって。それでも、愛は私にそれ以上の幸福を与えてくれる」韓国痩身一号
「椿姫の愛は一方的な愛情ばかり。だから、分らなかったんでしょ?影綱の心の奥底の悩みも。誰だって自分の大好きな人が死ぬのは悲しいよ。その怖さから逃げたくなってもしょうがないじゃない」
人は弱い。
目の前に嫌な事があれば都合が悪ければすぐに目をそらす。
影綱が椿姫から目をそむけ、紫姫に心を奪われた事は仕方のない事だった。
「……それでも椿姫は愛して欲しくて。どんなに裏切られても、悲しくても、今も彼を想い続けている」
「その愛が憎みしみに変わった今も……愛を求め続けている」
『うるさい……うるさいっ!』
椿姫が苛立ちを爆発させる。
この悲しいほどに一途な女の想いは二度と相手に届かない。
「もう、終わったんだよ、椿姫?その恋は終わってるの。報われない想い、行き場のない愛情。貴方がどれだけ影綱を想い続けても、その彼はもう貴方を愛する事はない」
椿がそっと炎に燃え盛るご神木を指さした。
赤い炎に燃えて朽ち果てていく桜の木。
「あの桜が見せた最後の記憶。彼は何て言っていた?」
『……』
「影綱は言ったじゃない。許して欲しいって……最後まで愛せなくてごめんねって。もう許してあげなよ。貴方達の恋はもう終わったんだから」
自分の恋はもう終わっているのだと、復讐などしても意味がないのだと。
椿の言葉に椿姫は往生際の悪さを見せる。
『誰が許すものか……許せるものかっ。お前らだっていずれ分かる。人を愛し、信じ続けることの愚かさをっ!』
なおも暴れようとする怨霊に椿は叫ぶ。
「この分からずやっ!自分で自分の愛情を否定するなんて」
「こんな説得で綺麗に終わるとは最初から思ってない。怨霊相手に私達の言葉が通じるはずもなかった。椿、もう問答は終わりだ。終わらせよう。椿姫と分かりあう事など、できない」
少しの可能性にかけてみたが、それも無駄だったようだ。
分かり合えればと思ったが、怨霊になっている以上、どんな言葉も届かない。
椿姫……一途な哀れな女。
この人に、もう少しだけでも他人の痛みを理解できる心があれば。
「椿姫、これが最後だ。最後にお前に言っておくよ」
この悲しみの連鎖を断ち切るために。
「私は今、恋をしている。大切な気持ちを抱いている。だけど、お前と一緒にするな」
私だって知っている、人を愛する事は難しい。御秀堂養顔痩身カプセル第2代
「私は元雪が自分を愛してくれる気持ちを信じ続けている。元雪の愛を信じてる」
『どんな愛も、いつかは裏切られてしまうだけだ。他人を信じることなど愚かだ』
「お前と一緒にするなと言ったはずだ、椿姫。私達の愛はそんな脆い絆じゃない」
お互いを愛すること、それは心が強くなければいけない。
人の想いは儚くて、どれだけ信じていても、たやすく裏切られて、壊れてしまう。
愛はもろくて、でも、かけがえのない大切なもの。
私達はそれを知っているから、後悔をするような恋はしない――。
「――“前世”が“現世”の恋の邪魔をするんじゃないっ!」
この悲しい悪夢を終わらせよう。
私の想いが椿姫の存在を消す。
『やめろ、やめ……ぐぅあああああ』
椿姫は苦しむ声をあげて光の中に消えていく。
そして、一緒に消えていくのは……。
「椿……すまない」
「そんな顔しないでよ。元は、私の役目みたいなものだから。後悔はしてないし。私は消えてもちゃんと唯羽の中に残るもん。じゃぁね、唯羽。元雪をよろしく」
椿は笑顔を絶やさずに、その光に飲み込まれてく。
最後の最後まで、笑いながら……。
消滅していくふたりの少女。
『……心の強さ、か。私にはそれがなかったのか』
最後に聞こえてきたのは椿姫の声。
『強いな……他人を信じる、その強さが私にもあれば……』
哀れなお姫様の嘆きの言葉。
愛する人を憎むことしかできず、許す事ができなかったお姫様の後悔。
そして、彼女達はこの世界から存在を消した――。
全てが終わったのだと安堵するのも、つかの間。
「……うっ」
私は意識を失いかけて、足元から崩れそうになる。御秀堂養顔痩身カプセル第3代
椿姫を倒しても、辺りは一面の火の海だ。
灰色の煙にむせながら、逃げだそうとするけども身体に力が入らない。
元々、怪我をして無理をしてきたせいだ。
熱く燃え盛る炎の中、逃れることもできない。
「こんなところで、死にたくないな」
倒れそうになったその時だった、ふっと私の身体が抱きとめられる。
「唯羽っ!?無事か」
「……元雪?」
私を抱きしめるのは元雪だった。
「そうだ、俺だ。ちっ、熱いな。さっさと逃げるぞ」
病院から抜け出してきたようだが、その姿を見て私は安心する。
彼が無事で本当によかった。
私を背負うと彼は炎に焼かれる森をぬけだす。
「元雪、昔と逆の立場になったな」
まるで10年前の逆の立場に私は思わず微苦笑した。
「ふっ。それ、微妙に違う。俺は今も昔も唯羽に助けてもらってばかりだ。唯羽を助けるだけじゃ返せない恩があるんだ。……全部、終わったんだよな?」
「あぁ、終わったよ。悲しい女の妄執、嫉妬の呪いはもう終わった」
「……結局、俺は何もしてやれなかったな」
「そんなことはないさ。私も椿も最後に勇気を出せたのは元雪のおかげだよ」
元雪への愛を信じることができたから、私達は想いの力で椿姫に打ち勝てた。
私は振り返り、燃え尽きようとするご神木の桜を見た。
「全部、燃えてしまった。影綱、紫姫、椿姫の3人の想いも消えてしまう」
「……恋月桜花は終わったんだ。すでに彼らの時代は終わっている、今は俺達の時代だ」
元雪の言葉に私も頷いて答える。
「そうだな。私達は……私達の新しい物語を作りだしているんだ」
恋月桜花と呼ばれた悲しい物語の終演。
時代は移ろうもの、これからは新しき運命が始まる。
遠くの方で消防車のサイレンの音が聞こえた。
「……少し、疲れた。眠らせてくれ」
「分かった。この悪夢を終わらせてくれて、ありがとう。唯羽」
私は彼の背にもたれながら、ゆっくりと眠りについた。
前世から続く負の連鎖、悲しい恋の物語がようやく終わったんだ――。御秀堂 養顔痩身カプセル
私の前に現れたのは、もう一人の私である椿だった。
椿姫を背後から抱きつく形で身動きを封じ込める。韓国痩身1号
『は、離せ……!?』
「普通の人じゃない私ならば椿姫にも触れられる」
『消えたはずのお前が……なぜだ?』
「そう。一度は消えたはず。でも、椿としての私は再びこの世界にいる。椿姫と一緒に消えて終わりにするために。それで全部、終わらせようよ」
最悪の怨霊、椿姫を消滅させる最後の手段。
『そんなことをすればお前も……』
「だから、何?私はね、元雪を守れればそれでいい。その気持ちは唯羽と何も変わらない。それに……元雪はどんな唯羽でも愛してくれる。私という人格じゃなくても、想いを抱いてくれると信じてるから」
椿が消えれば、私の中にある人格も消えてしまう。
それでも、私達ができる唯一の方法でもある。
「椿姫。呪いは終わりだ」
私は呪われた弓矢を彼女の前に差し出す。
『それは……』
「かつて影綱を射たとされる弓矢。400年前のお前がこれに呪いをかけたのが始まりだった。それもこれで終わりだ、ここで終わらせる」
『やめろぉ!!』
怨霊の叫び。
私は思いっきり、その弓矢をへし折る。
長年の風化でいともたやすく弓矢は折れて砕け散る。
「……これでお前はもうこの世に留まる力の源を失った」
「でも、それで終わりじゃないんだよね?」
「そうだ。あとは……椿姫、お前自身を消滅させなければならない」
弓矢を折って終わりならば話が早かった。
椿姫は表情を苦痛にゆがませながら、
『……お前達は何も分かっていない。愛を分かっていない』
「愛を分かっていない?」
この期に及んで何を言う。
『人から愛されたいと思う心を、人に必要とされたいと思う心を。お前達は分かっているのか?』
生前の彼女は長い病に苦しんで、絶望の中を生きてきた。
家族にも見放され、影綱だけが心の支えだった。
影綱に愛されたい、必要とされたい。
そんな気持ちだけで生きてきたのだろう。
「分かってないのはお前だよ、椿姫」
『……なんだと?』
「私は……柊元雪を愛してよく分かった。恋は楽しい物だけじゃなくて、苦しいものだということも。時には嫉妬して、時にはぶつかりあって。それでも、愛は私にそれ以上の幸福を与えてくれる」韓国痩身一号
「椿姫の愛は一方的な愛情ばかり。だから、分らなかったんでしょ?影綱の心の奥底の悩みも。誰だって自分の大好きな人が死ぬのは悲しいよ。その怖さから逃げたくなってもしょうがないじゃない」
人は弱い。
目の前に嫌な事があれば都合が悪ければすぐに目をそらす。
影綱が椿姫から目をそむけ、紫姫に心を奪われた事は仕方のない事だった。
「……それでも椿姫は愛して欲しくて。どんなに裏切られても、悲しくても、今も彼を想い続けている」
「その愛が憎みしみに変わった今も……愛を求め続けている」
『うるさい……うるさいっ!』
椿姫が苛立ちを爆発させる。
この悲しいほどに一途な女の想いは二度と相手に届かない。
「もう、終わったんだよ、椿姫?その恋は終わってるの。報われない想い、行き場のない愛情。貴方がどれだけ影綱を想い続けても、その彼はもう貴方を愛する事はない」
椿がそっと炎に燃え盛るご神木を指さした。
赤い炎に燃えて朽ち果てていく桜の木。
「あの桜が見せた最後の記憶。彼は何て言っていた?」
『……』
「影綱は言ったじゃない。許して欲しいって……最後まで愛せなくてごめんねって。もう許してあげなよ。貴方達の恋はもう終わったんだから」
自分の恋はもう終わっているのだと、復讐などしても意味がないのだと。
椿の言葉に椿姫は往生際の悪さを見せる。
『誰が許すものか……許せるものかっ。お前らだっていずれ分かる。人を愛し、信じ続けることの愚かさをっ!』
なおも暴れようとする怨霊に椿は叫ぶ。
「この分からずやっ!自分で自分の愛情を否定するなんて」
「こんな説得で綺麗に終わるとは最初から思ってない。怨霊相手に私達の言葉が通じるはずもなかった。椿、もう問答は終わりだ。終わらせよう。椿姫と分かりあう事など、できない」
少しの可能性にかけてみたが、それも無駄だったようだ。
分かり合えればと思ったが、怨霊になっている以上、どんな言葉も届かない。
椿姫……一途な哀れな女。
この人に、もう少しだけでも他人の痛みを理解できる心があれば。
「椿姫、これが最後だ。最後にお前に言っておくよ」
この悲しみの連鎖を断ち切るために。
「私は今、恋をしている。大切な気持ちを抱いている。だけど、お前と一緒にするな」
私だって知っている、人を愛する事は難しい。御秀堂養顔痩身カプセル第2代
「私は元雪が自分を愛してくれる気持ちを信じ続けている。元雪の愛を信じてる」
『どんな愛も、いつかは裏切られてしまうだけだ。他人を信じることなど愚かだ』
「お前と一緒にするなと言ったはずだ、椿姫。私達の愛はそんな脆い絆じゃない」
お互いを愛すること、それは心が強くなければいけない。
人の想いは儚くて、どれだけ信じていても、たやすく裏切られて、壊れてしまう。
愛はもろくて、でも、かけがえのない大切なもの。
私達はそれを知っているから、後悔をするような恋はしない――。
「――“前世”が“現世”の恋の邪魔をするんじゃないっ!」
この悲しい悪夢を終わらせよう。
私の想いが椿姫の存在を消す。
『やめろ、やめ……ぐぅあああああ』
椿姫は苦しむ声をあげて光の中に消えていく。
そして、一緒に消えていくのは……。
「椿……すまない」
「そんな顔しないでよ。元は、私の役目みたいなものだから。後悔はしてないし。私は消えてもちゃんと唯羽の中に残るもん。じゃぁね、唯羽。元雪をよろしく」
椿は笑顔を絶やさずに、その光に飲み込まれてく。
最後の最後まで、笑いながら……。
消滅していくふたりの少女。
『……心の強さ、か。私にはそれがなかったのか』
最後に聞こえてきたのは椿姫の声。
『強いな……他人を信じる、その強さが私にもあれば……』
哀れなお姫様の嘆きの言葉。
愛する人を憎むことしかできず、許す事ができなかったお姫様の後悔。
そして、彼女達はこの世界から存在を消した――。
全てが終わったのだと安堵するのも、つかの間。
「……うっ」
私は意識を失いかけて、足元から崩れそうになる。御秀堂養顔痩身カプセル第3代
椿姫を倒しても、辺りは一面の火の海だ。
灰色の煙にむせながら、逃げだそうとするけども身体に力が入らない。
元々、怪我をして無理をしてきたせいだ。
熱く燃え盛る炎の中、逃れることもできない。
「こんなところで、死にたくないな」
倒れそうになったその時だった、ふっと私の身体が抱きとめられる。
「唯羽っ!?無事か」
「……元雪?」
私を抱きしめるのは元雪だった。
「そうだ、俺だ。ちっ、熱いな。さっさと逃げるぞ」
病院から抜け出してきたようだが、その姿を見て私は安心する。
彼が無事で本当によかった。
私を背負うと彼は炎に焼かれる森をぬけだす。
「元雪、昔と逆の立場になったな」
まるで10年前の逆の立場に私は思わず微苦笑した。
「ふっ。それ、微妙に違う。俺は今も昔も唯羽に助けてもらってばかりだ。唯羽を助けるだけじゃ返せない恩があるんだ。……全部、終わったんだよな?」
「あぁ、終わったよ。悲しい女の妄執、嫉妬の呪いはもう終わった」
「……結局、俺は何もしてやれなかったな」
「そんなことはないさ。私も椿も最後に勇気を出せたのは元雪のおかげだよ」
元雪への愛を信じることができたから、私達は想いの力で椿姫に打ち勝てた。
私は振り返り、燃え尽きようとするご神木の桜を見た。
「全部、燃えてしまった。影綱、紫姫、椿姫の3人の想いも消えてしまう」
「……恋月桜花は終わったんだ。すでに彼らの時代は終わっている、今は俺達の時代だ」
元雪の言葉に私も頷いて答える。
「そうだな。私達は……私達の新しい物語を作りだしているんだ」
恋月桜花と呼ばれた悲しい物語の終演。
時代は移ろうもの、これからは新しき運命が始まる。
遠くの方で消防車のサイレンの音が聞こえた。
「……少し、疲れた。眠らせてくれ」
「分かった。この悪夢を終わらせてくれて、ありがとう。唯羽」
私は彼の背にもたれながら、ゆっくりと眠りについた。
前世から続く負の連鎖、悲しい恋の物語がようやく終わったんだ――。御秀堂 養顔痩身カプセル
2014年5月13日星期二
マタル・デウスという組織
アヴォロスの世界征服宣言に、誰もが愕然とした思いで時を止めている。だがそんな彼らをよそに美形少年は続ける。
「だから君たちには我らの傘下に入ってもらいたいんだけどどうかな?」簡約痩身美体カプセル
物言いが物凄く軽い。まるでこれから旅行に行くから一緒にどうかな? みたいなノリで言葉を発している。
だがもちろんそんな提案に乗る者がいるわけがない。
「「ふざけるなっ!」」
魔王と獣王は同時に完全否定する。
しかしその答えは予想していたのか少しも動揺など見せずアヴォロスは言う。
「うん、だったら戦争しようか」
今度もまた、返答はあっさりしたものだった。その言葉の持つ意味は、当然重いもののはずなのに、それを微塵も感じさせず言い放っている。
「戦争だと……?」
「そうだよイヴェアム、互いに譲れないものがある。そしてそれは話し合いなどで決して解決できない。だとすればどうする? …………奪うよね? 力づくで」
「ふ、ふざけるなっ! この期に及んでまだ憎しみを増やすつもりかっ!」
「だったら黙って余の支配下に置かれればいい。そうすれば、余が適材適所として君たちを使ってあげるよ?」
「それこそふざけるなだ! 貴様の配下になるくらいならば、全滅した方がマシだ!」
レオウードは怒気を込めながら声を張り上げる。
「うん、まあ、そうだね。獣は別にいらないから。結果的にペットにするか食糧にするか、それとも廃棄物に回すかしかないね」
「貴様ぁぁぁぁっ!」
しかしまだ体が回復していないので、膝を折ってしまう。
「おやおや、無理しない方が良いよ?」
レオウードの頭は完全に沸騰しているだろうが、体が言うことを聞かないようだ。
「貴様ぁぁぁ……」
「アハハ、ここで君たち全員を相手にするにはさすがに心許無いのでね。こちらもいろいろ準備もあるし、そうだなぁ…………告知はまたいずれするとしようか」
アヴォロスは両腕を広げるような格好をすると、またも楽しそうに目を光らせる。
「憶えておくといいよ。この世界は我々《マタル・デウス》が支配する」
「馬鹿な……」
レオウードの呟きはその場にいる者全員の代弁だった。日本秀身堂救急箱
「フフフ、それじゃ今日はこの辺で、顔見せしにきたとだけ思ってくれたらいいかな」
すると彼らの足元に広がっていた水溜まりから眩い光が目を射してくる。そして彼らの足から水の中へと吸い込まれていく。どうやらここから立ち去るようだ。
次々と水の中にその姿を隠していくが、数人だけはまだ沈まずに留まっている。
誰もが事故に遭ったように言葉を失ってその様子を見つめている中、アヴォロスはわざとらしく思い出したようにハッとして人差し指を立てると、
「あ、言うの忘れてた! ねえ獣王?」
「む?」
「一つ良いことを教えておいてあげるよ」
何を急に言い出したのかと思いレオウードが不審な目を向ける。
「……さっき、君の部下がここへやって来たでしょ? まあ、余が殺しちゃったけど」
「貴様ぁぁぁ……」
「まあ聞いてよ。というか聞いた方が良いと思うんだけど……」
「……何だ?」
そしてアヴォロスは思わせぶりに一つ息を吐くと、
「ここにはいないけど、余の下にはコクロゥがいるんだよね」
「な、何だとぉっ!」
てっきりレオウードが叫んだかに見えたが、声を張り上げたのはマリオネだった。彼を視界に入れたアヴォロスは少し目を見開き考える素振りをすると、
「ああ、そう言えばコクロゥはマリオネの家族を殺したんだったっけ?」
「先王よ、それは真の話か!」
今にも掴みかからんばかりの表情をしている。
「本当だよ。何ならこれから【パシオン】に行って確かめればいいと思うよ?」
「……おい、今のはどういう意味だ?」
当然レオウードは彼の言葉に疑問を感じて問い質す。
「うん、それはね、コクロゥに【パシオン】に行ってもらったからね」
「何だとぉっ!?」
今度は間違いなくレオウードだ。その顔には絶望を宿したように鬼気迫った表情をしている。V26Ⅱ即効減肥サプリ
「アハハ、だから早く帰った方が良いと思うよ? あ、それとイヴェアム?」
「……何だ?」
「テッケイルはこっちが預かってるから」
「なっ!? やはりお前がっ!」
「アハハ、じゃあね」
「待てっ!」
するりと水の中へと消えていく。振り上げた拳の行き所を失った感が皆の胸に込み上げてくる。
そしてもう一人、カミュは仇から目を離さず鋭い眼光をぶつけていた。
「絶対……倒す」
「……できるのか?」
「……する」
「……なら憶えておけ、俺の名はヒヨミだ」
「……ヒヨミ」
互いに視線を逸らさず、ヒヨミの頭が消えるまでカミュはずっと見つめていた。
「……倒すから」
拳を握った彼の決意が言葉になって聞こえてきた。
周囲に静寂が支配する中、レオウードが乱暴によろめく体を振って歩き出す。
「父上!」
第一王子であるレッグルスが、我を忘れた様相を見せているレオウードを止めるために声をかけるが、レオウードはそれを無視してズカズカと進んでいく。
そんなレオウードの前にレッグルスは立ちはだかり、彼と視線を合わせる。だがレオウードは、そこをどけと言わんばかりの迫力を見せつける。それでもレッグルスは意思を揺るがせない。
「父上、まずはご指示を下さい!」
「…………」
「それが王である、あなたの役目です!」
目を細めて少し驚いたような雰囲気を醸し出すレオウードは、次に目を閉じると大きく息を吐く。V26即効ダイエット
「……助かったぞレッグルス。危うく王として責を捨てるとこだった」
「いえ、それが今私の役目ですから」
「ガハハ、今……か。ララよ、ワシは良い息子を持っておるな」
レオウードの顔に先程の厳然たる様子が少し身を潜ませて接し易い穏和な空気を漂わせた。そして声を掛けられたララシークは、呆れたように肩を竦める。
「ええ、お大事になさって下さいよ。さっきもレッグルス様が止めなければワタシが止めてましたから」
「ガハハ! それは気を持たせたようですまんかったな!」
再び冷静に物を考えられるようになったレオウードは、一つ咳払いをすると、
「とにかく、今起きたことを確かめるためにも、早々に国へ戻らなければならん」
獣人たちもそれぞれに首を縦に振っている。
「いろんなことが起き過ぎている。本来ならこれからのことを『魔族(イビラ)』の者たちとともに話し合いたいのだが……」
そう言ってイヴェアムに顔を向けるが、彼女もまた彼を擁護するように、
「いえ、こちらも確かめるべきことがたくさんあります。もしアヴォロスの言ったことを裏付けた後、彼の企みが本当ならば、今後の対策をしっかり練る必要があります。我々同盟を結んだ者としての今後を」
「そうだな。そのためにも現状を正確に把握する必要がある。今後については落ち着いてから議会でも開き決めた方が賢いだろうな」
確かにここは一呼吸置いた方が、より良い関係作りはできるだろう。同盟のことについてもそうだが、何よりも突如現れたイレギュラーのせいで皆が戸惑っている。
互いに情報を整理するためにも、一度互いの国へ帰って落ち着きを得た方が良い。
「そうですね。では一応の収拾がついたら連絡をお願いします。こちらももしかしたらアヴォロスが何か手を出しているかもしれませんから」
そう、アヴォロスは【パシオン】に手を出したと言っていたが、【ハーオス】も彼の企みの犠牲になっているかもしれないのだ。今すぐ確かめる必要がある。
「その通りだな。もし奴が本当に戦争を起こす気なら、その戦争に負けるわけにはいかん。これから情報交換は密に行っていくべきだな」
「はい。ではお急ぎを。アヴォロスの言う通りかは分かりませんが、先程こちらに向かっていた兵士が尋常ではない様子だったことから、何かあったのは本当のようですから」
「すまない」
そう言うと踵を返したレオウードは皆に指示を与え始める。V26Ⅲ速效ダイエット
「だから君たちには我らの傘下に入ってもらいたいんだけどどうかな?」簡約痩身美体カプセル
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「「ふざけるなっ!」」
魔王と獣王は同時に完全否定する。
しかしその答えは予想していたのか少しも動揺など見せずアヴォロスは言う。
「うん、だったら戦争しようか」
今度もまた、返答はあっさりしたものだった。その言葉の持つ意味は、当然重いもののはずなのに、それを微塵も感じさせず言い放っている。
「戦争だと……?」
「そうだよイヴェアム、互いに譲れないものがある。そしてそれは話し合いなどで決して解決できない。だとすればどうする? …………奪うよね? 力づくで」
「ふ、ふざけるなっ! この期に及んでまだ憎しみを増やすつもりかっ!」
「だったら黙って余の支配下に置かれればいい。そうすれば、余が適材適所として君たちを使ってあげるよ?」
「それこそふざけるなだ! 貴様の配下になるくらいならば、全滅した方がマシだ!」
レオウードは怒気を込めながら声を張り上げる。
「うん、まあ、そうだね。獣は別にいらないから。結果的にペットにするか食糧にするか、それとも廃棄物に回すかしかないね」
「貴様ぁぁぁぁっ!」
しかしまだ体が回復していないので、膝を折ってしまう。
「おやおや、無理しない方が良いよ?」
レオウードの頭は完全に沸騰しているだろうが、体が言うことを聞かないようだ。
「貴様ぁぁぁ……」
「アハハ、ここで君たち全員を相手にするにはさすがに心許無いのでね。こちらもいろいろ準備もあるし、そうだなぁ…………告知はまたいずれするとしようか」
アヴォロスは両腕を広げるような格好をすると、またも楽しそうに目を光らせる。
「憶えておくといいよ。この世界は我々《マタル・デウス》が支配する」
「馬鹿な……」
レオウードの呟きはその場にいる者全員の代弁だった。日本秀身堂救急箱
「フフフ、それじゃ今日はこの辺で、顔見せしにきたとだけ思ってくれたらいいかな」
すると彼らの足元に広がっていた水溜まりから眩い光が目を射してくる。そして彼らの足から水の中へと吸い込まれていく。どうやらここから立ち去るようだ。
次々と水の中にその姿を隠していくが、数人だけはまだ沈まずに留まっている。
誰もが事故に遭ったように言葉を失ってその様子を見つめている中、アヴォロスはわざとらしく思い出したようにハッとして人差し指を立てると、
「あ、言うの忘れてた! ねえ獣王?」
「む?」
「一つ良いことを教えておいてあげるよ」
何を急に言い出したのかと思いレオウードが不審な目を向ける。
「……さっき、君の部下がここへやって来たでしょ? まあ、余が殺しちゃったけど」
「貴様ぁぁぁ……」
「まあ聞いてよ。というか聞いた方が良いと思うんだけど……」
「……何だ?」
そしてアヴォロスは思わせぶりに一つ息を吐くと、
「ここにはいないけど、余の下にはコクロゥがいるんだよね」
「な、何だとぉっ!」
てっきりレオウードが叫んだかに見えたが、声を張り上げたのはマリオネだった。彼を視界に入れたアヴォロスは少し目を見開き考える素振りをすると、
「ああ、そう言えばコクロゥはマリオネの家族を殺したんだったっけ?」
「先王よ、それは真の話か!」
今にも掴みかからんばかりの表情をしている。
「本当だよ。何ならこれから【パシオン】に行って確かめればいいと思うよ?」
「……おい、今のはどういう意味だ?」
当然レオウードは彼の言葉に疑問を感じて問い質す。
「うん、それはね、コクロゥに【パシオン】に行ってもらったからね」
「何だとぉっ!?」
今度は間違いなくレオウードだ。その顔には絶望を宿したように鬼気迫った表情をしている。V26Ⅱ即効減肥サプリ
「アハハ、だから早く帰った方が良いと思うよ? あ、それとイヴェアム?」
「……何だ?」
「テッケイルはこっちが預かってるから」
「なっ!? やはりお前がっ!」
「アハハ、じゃあね」
「待てっ!」
するりと水の中へと消えていく。振り上げた拳の行き所を失った感が皆の胸に込み上げてくる。
そしてもう一人、カミュは仇から目を離さず鋭い眼光をぶつけていた。
「絶対……倒す」
「……できるのか?」
「……する」
「……なら憶えておけ、俺の名はヒヨミだ」
「……ヒヨミ」
互いに視線を逸らさず、ヒヨミの頭が消えるまでカミュはずっと見つめていた。
「……倒すから」
拳を握った彼の決意が言葉になって聞こえてきた。
周囲に静寂が支配する中、レオウードが乱暴によろめく体を振って歩き出す。
「父上!」
第一王子であるレッグルスが、我を忘れた様相を見せているレオウードを止めるために声をかけるが、レオウードはそれを無視してズカズカと進んでいく。
そんなレオウードの前にレッグルスは立ちはだかり、彼と視線を合わせる。だがレオウードは、そこをどけと言わんばかりの迫力を見せつける。それでもレッグルスは意思を揺るがせない。
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「…………」
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目を細めて少し驚いたような雰囲気を醸し出すレオウードは、次に目を閉じると大きく息を吐く。V26即効ダイエット
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「いえ、それが今私の役目ですから」
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「ええ、お大事になさって下さいよ。さっきもレッグルス様が止めなければワタシが止めてましたから」
「ガハハ! それは気を持たせたようですまんかったな!」
再び冷静に物を考えられるようになったレオウードは、一つ咳払いをすると、
「とにかく、今起きたことを確かめるためにも、早々に国へ戻らなければならん」
獣人たちもそれぞれに首を縦に振っている。
「いろんなことが起き過ぎている。本来ならこれからのことを『魔族(イビラ)』の者たちとともに話し合いたいのだが……」
そう言ってイヴェアムに顔を向けるが、彼女もまた彼を擁護するように、
「いえ、こちらも確かめるべきことがたくさんあります。もしアヴォロスの言ったことを裏付けた後、彼の企みが本当ならば、今後の対策をしっかり練る必要があります。我々同盟を結んだ者としての今後を」
「そうだな。そのためにも現状を正確に把握する必要がある。今後については落ち着いてから議会でも開き決めた方が賢いだろうな」
確かにここは一呼吸置いた方が、より良い関係作りはできるだろう。同盟のことについてもそうだが、何よりも突如現れたイレギュラーのせいで皆が戸惑っている。
互いに情報を整理するためにも、一度互いの国へ帰って落ち着きを得た方が良い。
「そうですね。では一応の収拾がついたら連絡をお願いします。こちらももしかしたらアヴォロスが何か手を出しているかもしれませんから」
そう、アヴォロスは【パシオン】に手を出したと言っていたが、【ハーオス】も彼の企みの犠牲になっているかもしれないのだ。今すぐ確かめる必要がある。
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「すまない」
そう言うと踵を返したレオウードは皆に指示を与え始める。V26Ⅲ速效ダイエット
2014年5月12日星期一
アザゼル海
【アザゼル海】……魔界に隣接する西海の呼称。【魔国・ハーオス】から一番近い海であり、ここで獲られた魚介類が国で流通している。SEX DROPS
魔界に近い海ということもあり、そこに棲息している魔物も強く、その数も多い。北の海である【ベリアル海】より幾分漁業はし易い環境ではあるが、それでも生半可な覚悟で臨めば手痛い以上のしっぺ返しが待っている。
危険度ランクは間違いなくSSSの位置付けをされている。ムースンの依頼はここに棲息している魚介を獲ってきてもらいたいということだった。
その依頼を【魔国】の軍に席を置いた勇者であるしのぶと朱里は受けることになり、そこに何故か日色も付き添うことになった。
無論最初は完全に乗り気ではなかった日色だったが、まさかこれから向かう【アザゼル海】に以前食べたハピネスシャークという魔物がいるとは思わなかった。
あれはまだアノールドやミュアとともに旅していた時、人間界の街である【サージュ】というところで初めて食べた時のことを思い出す。
(あれはマジで美味かった……)
思い出すだけで口の中に大量の唾液が生まれてくる。衝撃的な出会いだったと今噛み締めていた。
その話をムースンにした時、彼女もハピネスシャークを使った料理を何度も作ったことがあるとのことだった。そしていつかその機会が訪れれば、最高のハピネスシャーク料理をご馳走するので、もし手に入れられる時が来たら力を貸してほしいと頼まれた。
日色は是非も無く二つ返事で「当然」と答えた。
本来ハピネスシャークは人間界に隣接する【グレイトブルー海】でしか獲れない。しかも深海にしかおらず、滅多に海面に浮上してこない。本当に稀にだが、産卵の時期の少しの時間、海面に姿を現すことがある。その体は美しい桃色で頭に翡翠色した角を生やしている。全身、歯も身も、その角も食すことができる完全食体と言われる生物である。
では何故人間界の海にしか棲息していないはずのハピネスシャークがこの魔界の海にいるのかというと、実は元々ハピネスシャークは【アザゼル海】に棲息していたのだ。
だが時が経つに連れ、住み易い地へとハピネスシャークは群れで大移動を行ったらしい。しかし移動を拒否しそのまま【アザゼル海】に残ったものも少なからずいたのだという。
そしてそんな残ったものたちで繁殖し、こうして産卵の時期を迎えたハピネスシャークが、海面に姿を現すのだ。
「おお~海楽しみですぞぉ!」
日色が行くということでついて来たニッキは、久しぶりに行く海が待ち遠しいのだろうか目を輝かせていた。
ニッキも行くのでミカヅキも行きたいと言っていたが、シャモエと買い物をする約束をしていたらしく、普段から日色に「約束だけは守れ」と言われている彼女は仕方無く日色との同行を諦めた。蒼蝿水
リリィンとシウバとクゼルは、三人で少し話し合いたいことがあるとのことで一緒にはこなかった。
結局ついてきたのはニッキ、カミュ、テンの三人になる。しのぶと朱里を合わせると日色も含めて合計六人だ。まあ、正確に言うと五人と一匹だが。
無論それだけではなく、シュブラーズの下にいる兵が一緒に行動している。そして極めつけは空馬車だ。
空馬車とはミカヅキと同じ種族である魔物のライドピークを利用して空を自由に移動する手段だ。
獣人界にいるミカヅキのようなライドピークは、翼が退化しており空を飛ぶことはできないが、魔界のライドピークには立派な翼が生えている。
しかも面白いことに、ライドピークそのものの体が大きな荷台がある馬車のような姿に変化しており、とてもユニークな魔物でもある。
既存の馬車を引いて空を翔けるのではなく、馬車そのものであるライドピークが空を移動するといったところだ。
今、日色たちはそんなライドピークの背に乗り空から魔界を見下ろしている。眼下には様々な光景が目に映る。
大きな山、湖、川、谷、森、多くの自然があり、ニッキだけでなくカミュやテンも楽しそうにはしゃいでいる。
日色は何度か自分で空を飛んでこの光景を目にしていたのでさほど感動は強くなかったが、初めて乗った空馬車の乗り心地は意外にも良くて安心して身を任せていた。
そうして五台の空馬車は目的地である【アザゼル海】に到着する。そこで日色の目に映ったのは妙に気合を入れ込んだ表情をしているしのぶと朱里の姿だった。
(まあ、この仕事を上手くこなせば兵士との距離も縮まるかもしれないからな、無理もないが……)
何か失敗して、こちらに害が及ばなければいいがと思い肩を竦めた。
「おおっ!? おっきいですぞぉぉぉぉ!」
「ん……でかい」
「やっぱ海はスケールが違うさ~」
ニッキ、カミュ、テンの順でそれぞれの感想を声に出している。確かにニッキたちの言う通り、目前に広がっている海、その水平線の先には何も見えず、ただただ広大な青に溜め息が漏れる。勃動力三体牛鞭
大陸である魔界も相当の規模を持つが、やはり海と比べると見劣りするのは否めない。海は生命の源。母なる海。その器はどこの世界でも大きなものだと日色は感じた。
兵士たちが海で使用するであろう網や銛のような武器を点検している。しのぶたちもその手伝いをしているようだ。
どうやらシュブラーズの部下とは意外にも意思疎通ができているようで、接し方にも不自然さは見当たらない。恐らく部下たちはシュブラーズを通してしのぶたちがどういった人物なのか聞いているのだろう。
もしくはこんな感じで何度かともに仕事をこなしてある程度は信頼関係ができているのかもしれない。恐らく後者なのだろうと日色は一人で納得する。
「さて……おいバカ弟子」
「あ、はいですぞ!」
日色は海を見て浮かれているニッキに声をかける。
「今から修行の一環としてお前に任務を与える」
「おお! それはまことですかな!?」
余程嬉しいのか興奮気味にニッキは笑顔を浮かべる。
「ああ、馬車の中でも言ったが、これからオレはある魔物を狩りにいく。そしてお前にもあるものを捕獲してもらう」
「はいですぞ! 水練なら得意中の得意ですぞ!」
「二刀流、お前には話したがコイツのお守り頼むぞ」
「ん……ヒイロの頼み。頑張る」
カミュにはここに来る前に、ニッキの補佐を頼んでおいた。まだまだ子供であるニッキは、状況判断も甘い。だから暴走したり焦ってとんでもないことをしないようにお目付け役としてカミュに頼んだのだ。
彼は『アスラ族』の長であり、多くの子供たちとも接してきており、何よりニッキとも仲が良い。だからこそ彼ならば上手くニッキをコントロールできると判断した。福源春
「黄ザル、お前はオレと一緒だ」
「おっけ~」
テンは親指を立てて了承の意を示してきた。
「それじゃ行くぞ」
「なあヒイロ」
「何だ黄ザル?」
「あの子たちは放っておいていいんか?」
テンが少し離れたところにいるしのぶたちに視線を促す。
「別にいいだろ? オレはアイツらのお守りを引き受けたわけじゃない。一緒に行くことを許可しただけだ。それにオレにはオレのやりたいことがある」
無論それはハピネスシャークを捕らえることだ。いちいち他のことに気を回していては、せっかくのチャンスを不意にしてしまう可能性もある。それはゴメンだった。
「ふぅん……なあヒイロ、俺アッチに行っていい?」
「………………好きにしろ」
どうせダメだと言ったところで頑固なテンがそう簡単に意見を変えるとは思っていない。ここで口論するよりは好きに行動させた方が時間の浪費が少なくて済む。
「はいよ、んじゃ気を付けてな~」
テンはそう言うとしのぶたちの方へ向かって行った。こうして漁獲する部隊がそれぞれ決まった。
もう一度、ニッキには油断しないように注意をして、日色は単独で海に入るために準備をし始めた。
服に『濡れず』と書いて海に潜っても濡れないように魔法を施した。幾つか必要になるであろう文字を体に設置して、『飛翔』の文字を使い空を飛び沖へと向かって行った。花痴
魔界に近い海ということもあり、そこに棲息している魔物も強く、その数も多い。北の海である【ベリアル海】より幾分漁業はし易い環境ではあるが、それでも生半可な覚悟で臨めば手痛い以上のしっぺ返しが待っている。
危険度ランクは間違いなくSSSの位置付けをされている。ムースンの依頼はここに棲息している魚介を獲ってきてもらいたいということだった。
その依頼を【魔国】の軍に席を置いた勇者であるしのぶと朱里は受けることになり、そこに何故か日色も付き添うことになった。
無論最初は完全に乗り気ではなかった日色だったが、まさかこれから向かう【アザゼル海】に以前食べたハピネスシャークという魔物がいるとは思わなかった。
あれはまだアノールドやミュアとともに旅していた時、人間界の街である【サージュ】というところで初めて食べた時のことを思い出す。
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思い出すだけで口の中に大量の唾液が生まれてくる。衝撃的な出会いだったと今噛み締めていた。
その話をムースンにした時、彼女もハピネスシャークを使った料理を何度も作ったことがあるとのことだった。そしていつかその機会が訪れれば、最高のハピネスシャーク料理をご馳走するので、もし手に入れられる時が来たら力を貸してほしいと頼まれた。
日色は是非も無く二つ返事で「当然」と答えた。
本来ハピネスシャークは人間界に隣接する【グレイトブルー海】でしか獲れない。しかも深海にしかおらず、滅多に海面に浮上してこない。本当に稀にだが、産卵の時期の少しの時間、海面に姿を現すことがある。その体は美しい桃色で頭に翡翠色した角を生やしている。全身、歯も身も、その角も食すことができる完全食体と言われる生物である。
では何故人間界の海にしか棲息していないはずのハピネスシャークがこの魔界の海にいるのかというと、実は元々ハピネスシャークは【アザゼル海】に棲息していたのだ。
だが時が経つに連れ、住み易い地へとハピネスシャークは群れで大移動を行ったらしい。しかし移動を拒否しそのまま【アザゼル海】に残ったものも少なからずいたのだという。
そしてそんな残ったものたちで繁殖し、こうして産卵の時期を迎えたハピネスシャークが、海面に姿を現すのだ。
「おお~海楽しみですぞぉ!」
日色が行くということでついて来たニッキは、久しぶりに行く海が待ち遠しいのだろうか目を輝かせていた。
ニッキも行くのでミカヅキも行きたいと言っていたが、シャモエと買い物をする約束をしていたらしく、普段から日色に「約束だけは守れ」と言われている彼女は仕方無く日色との同行を諦めた。蒼蝿水
リリィンとシウバとクゼルは、三人で少し話し合いたいことがあるとのことで一緒にはこなかった。
結局ついてきたのはニッキ、カミュ、テンの三人になる。しのぶと朱里を合わせると日色も含めて合計六人だ。まあ、正確に言うと五人と一匹だが。
無論それだけではなく、シュブラーズの下にいる兵が一緒に行動している。そして極めつけは空馬車だ。
空馬車とはミカヅキと同じ種族である魔物のライドピークを利用して空を自由に移動する手段だ。
獣人界にいるミカヅキのようなライドピークは、翼が退化しており空を飛ぶことはできないが、魔界のライドピークには立派な翼が生えている。
しかも面白いことに、ライドピークそのものの体が大きな荷台がある馬車のような姿に変化しており、とてもユニークな魔物でもある。
既存の馬車を引いて空を翔けるのではなく、馬車そのものであるライドピークが空を移動するといったところだ。
今、日色たちはそんなライドピークの背に乗り空から魔界を見下ろしている。眼下には様々な光景が目に映る。
大きな山、湖、川、谷、森、多くの自然があり、ニッキだけでなくカミュやテンも楽しそうにはしゃいでいる。
日色は何度か自分で空を飛んでこの光景を目にしていたのでさほど感動は強くなかったが、初めて乗った空馬車の乗り心地は意外にも良くて安心して身を任せていた。
そうして五台の空馬車は目的地である【アザゼル海】に到着する。そこで日色の目に映ったのは妙に気合を入れ込んだ表情をしているしのぶと朱里の姿だった。
(まあ、この仕事を上手くこなせば兵士との距離も縮まるかもしれないからな、無理もないが……)
何か失敗して、こちらに害が及ばなければいいがと思い肩を竦めた。
「おおっ!? おっきいですぞぉぉぉぉ!」
「ん……でかい」
「やっぱ海はスケールが違うさ~」
ニッキ、カミュ、テンの順でそれぞれの感想を声に出している。確かにニッキたちの言う通り、目前に広がっている海、その水平線の先には何も見えず、ただただ広大な青に溜め息が漏れる。勃動力三体牛鞭
大陸である魔界も相当の規模を持つが、やはり海と比べると見劣りするのは否めない。海は生命の源。母なる海。その器はどこの世界でも大きなものだと日色は感じた。
兵士たちが海で使用するであろう網や銛のような武器を点検している。しのぶたちもその手伝いをしているようだ。
どうやらシュブラーズの部下とは意外にも意思疎通ができているようで、接し方にも不自然さは見当たらない。恐らく部下たちはシュブラーズを通してしのぶたちがどういった人物なのか聞いているのだろう。
もしくはこんな感じで何度かともに仕事をこなしてある程度は信頼関係ができているのかもしれない。恐らく後者なのだろうと日色は一人で納得する。
「さて……おいバカ弟子」
「あ、はいですぞ!」
日色は海を見て浮かれているニッキに声をかける。
「今から修行の一環としてお前に任務を与える」
「おお! それはまことですかな!?」
余程嬉しいのか興奮気味にニッキは笑顔を浮かべる。
「ああ、馬車の中でも言ったが、これからオレはある魔物を狩りにいく。そしてお前にもあるものを捕獲してもらう」
「はいですぞ! 水練なら得意中の得意ですぞ!」
「二刀流、お前には話したがコイツのお守り頼むぞ」
「ん……ヒイロの頼み。頑張る」
カミュにはここに来る前に、ニッキの補佐を頼んでおいた。まだまだ子供であるニッキは、状況判断も甘い。だから暴走したり焦ってとんでもないことをしないようにお目付け役としてカミュに頼んだのだ。
彼は『アスラ族』の長であり、多くの子供たちとも接してきており、何よりニッキとも仲が良い。だからこそ彼ならば上手くニッキをコントロールできると判断した。福源春
「黄ザル、お前はオレと一緒だ」
「おっけ~」
テンは親指を立てて了承の意を示してきた。
「それじゃ行くぞ」
「なあヒイロ」
「何だ黄ザル?」
「あの子たちは放っておいていいんか?」
テンが少し離れたところにいるしのぶたちに視線を促す。
「別にいいだろ? オレはアイツらのお守りを引き受けたわけじゃない。一緒に行くことを許可しただけだ。それにオレにはオレのやりたいことがある」
無論それはハピネスシャークを捕らえることだ。いちいち他のことに気を回していては、せっかくのチャンスを不意にしてしまう可能性もある。それはゴメンだった。
「ふぅん……なあヒイロ、俺アッチに行っていい?」
「………………好きにしろ」
どうせダメだと言ったところで頑固なテンがそう簡単に意見を変えるとは思っていない。ここで口論するよりは好きに行動させた方が時間の浪費が少なくて済む。
「はいよ、んじゃ気を付けてな~」
テンはそう言うとしのぶたちの方へ向かって行った。こうして漁獲する部隊がそれぞれ決まった。
もう一度、ニッキには油断しないように注意をして、日色は単独で海に入るために準備をし始めた。
服に『濡れず』と書いて海に潜っても濡れないように魔法を施した。幾つか必要になるであろう文字を体に設置して、『飛翔』の文字を使い空を飛び沖へと向かって行った。花痴
2014年5月8日星期四
ライセン大迷宮と最後の試練
凶悪な装備と全身甲冑に身を固めた眼光鋭い巨体ゴーレムから、やたらと軽い挨拶をされた。何を言っているか分からないだろうが、ハジメにもわからない。頭がどうにかなる前に現実逃避しそうだった。ユエとシアも、包囲されているということも忘れてポカンと口を開けている。簡約痩身美体カプセル
そんな硬直する三人に、巨体ゴーレムは不機嫌そうな声を出した。声質は女性のものだ。
「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」
実にイラっとする話し方である。しかも、巨体ゴーレムは、燃え盛る右手と刺付き鉄球を付けた左手を肩まで待ち上げると、やたらと人間臭い動きで「やれやれだぜ」と言う様に肩を竦める仕草までした。普通にイラっとするハジメ達。道中散々見てきたウザイ文を彷彿とさせる。“ミレディ・ライセン”と名乗っていることから本人である可能性もあるが、彼女は既に死んでいるはずであるし、人間だったはずだ。
ハジメは取り敢えず、その辺りのことを探ってみる事にした。
「そいつは、悪かったな。だが、ミレディ・ライセンは人間で故人のはずだろ? まして、自我を持つゴーレム何て聞いたことないんでな……目論見通り驚いてやったんだから許せ。そして、お前が何者か説明しろ。簡潔にな」
「あれぇ~、こんな状況なのに物凄く偉そうなんですけど、こいつぅ」
全く探りになってなかった。むしろド直球だった。流石に、この反応は予想外だったのかミレディを名乗る巨体ゴーレムは若干戸惑ったような様子を見せる。が、直ぐに持ち直して、人間なら絶対にニヤニヤしているであろうと容易に想像付くような声音でハジメ達に話しかけた。
「ん~? ミレディさんは初めからゴーレムさんですよぉ~何を持って人間だなんて……」
「オスカーの手記にお前のことも少し書いてあった。きちんと人間の女として出てきてたぞ? というか阿呆な問答をする気はない。簡潔にと言っただろう。どうせ立ち塞がる気なんだろうから、やることは変わらん。お前をスクラップにして先に進む。だから、その前にガタガタ騒いでないで、吐くもん吐け」
「お、おおう。久しぶりの会話に内心、狂喜乱舞している私に何たる言い様。っていうかオスカーって言った? もしかして、オーちゃんの迷宮の攻略者?」
「ああ、オスカー・オルクスの迷宮なら攻略した。というか質問しているのはこちらだ。答える気がないなら、戦闘に入るぞ? 別にどうしても知りたい事ってわけじゃない。俺達の目的は神代魔法だけだからな」
ハジメがドンナーを巨体ゴーレムに向ける。ユエはすまし顔だが、シアの方は「うわ~、ブレないなぁ~」と感心半分呆れ半分でハジメを見ていた。
「……神代魔法ねぇ、それってやっぱり、神殺しのためかな? あのクソ野郎共を滅殺してくれるのかな? オーちゃんの迷宮攻略者なら事情は理解してるよね?」
「質問しているのはこちらだと言ったはずだ。答えて欲しけりゃ、先にこちらの質問に答えろ」
「こいつぅ~ホントに偉そうだなぁ~、まぁ、いいけどぉ~、えっと何だっけ……ああ、私の正体だったね。うぅ~ん」
「簡潔にな。オスカーみたいにダラダラした説明はいらないぞ」
「あはは、確かに、オーちゃんは話しが長かったねぇ~、理屈屋だったしねぇ~」
巨体ゴーレムは懐かしんでいるのか遠い目をするかのように天を仰いだ。本当に人間臭い動きをするゴーレムである。ユエは相変わらず無表情で巨体ゴーレムを眺め、シアは周囲のゴーレム騎士達に気が気でないのかそわそわしている。
「うん、要望通りに簡潔に言うとね。
私は、確かにミレディ・ライセンだよ
ゴーレムの不思議は全て神代魔法で解決!
もっと詳しく知りたければ見事、私を倒してみよ! って感じかな」
「結局、説明になってなねぇ……」
「ははは、そりゃ、攻略する前に情報なんて貰えるわけないじゃん? 迷宮の意味ないでしょ?」
今度は巨大なゴーレムの指でメッ! をするミレディ・ゴーレム。中身がミレディ・ライセンというのは頂けないが、それを除けば愛嬌があるように思えてきた。ユエが、「……中身だけが問題」とボソリと呟いていることからハジメと同じ感想のようだ。
そして、その中身について、結局ほとんど何もわからなかったに等しいが、ミレディ本人だというなら、残留思念などを定着させたものなのかもしれないと推測するハジメ。ハジメは、確かクラスメイトの中村恵里が降霊術という残留思念を扱う天職を持っていたっけと朧げな記憶を掘り起こす。しかし、彼女の降霊術は、こんなにはっきりと意思を持った残留思念を残せるようなものではなかったはずだ。つまり、その辺と、その故人の意思? なんかをゴーレムに定着させたのが神代魔法ということだろう。
いずれにしろ、自分が探す世界を超える魔法ではなさそうだと、ハジメは少し落胆した様子で巨体ゴーレム改めミレディ・ゴーレムに問い掛けた。
「お前の神代魔法は、残留思念に関わるものなのか? だとしたら、ここには用がないんだがなぁ」
「ん~? その様子じゃ、何か目当ての神代魔法があるのかな? ちなみに、私の神代魔法は別物だよぉ~、魂の定着の方はラーくんに手伝ってもらっただけだしぃ~」
ハジメの目当てはあくまで世界を超えて故郷に帰ること。魂だか思念だか知らないが、それを操れる神代魔法を手に入れても意味はない。そう思って質問したのだが、返ってきたミレディの答えはハジメの推測とは異なるものだった。ラーくんというのが誰かは分からないが、おそらく“解放者”の一人なのだろう。その人物が、ミレディ・ゴーレムに死んだはずの本人の意思を持たせ、ゴーレムに定着させたようだ。
「じゃあ、お前の神代魔法は何なんだ? 返答次第では、このまま帰ることになるが……」
「ん~ん~、知りたい? そんなに知りたいのかなぁ?」
再びニヤついた声音で話しかけるミレディに、イラっとしつつ返答を待つハジメ。
「知りたいならぁ~、その前に今度はこっちの質問に答えなよ」
最後の言葉だけ、いきなり声音が変わった。今までの軽薄な雰囲気がなりを潜め真剣さを帯びる。その雰囲気の変化に少し驚くハジメ達。表情には出さずにハジメが問い返す。
「なんだ?」
「目的は何? 何のために神代魔法を求める?」
嘘偽りは許さないという意思が込められた声音で、ふざけた雰囲気など微塵もなく問いかけるミレディ。もしかすると、本来の彼女はこちらの方なのかもしれない。思えば、彼女も大衆のために神に挑んだ者。自らが託した魔法で何を為す気なのか知らないわけにはいかないのだろう。オスカーが記録映像を遺言として残したのと違い、何百年もの間、意思を持った状態で迷宮の奥深くで挑戦者を待ち続けるというのは、ある意味拷問ではないだろうか。軽薄な態度はブラフで、本当の彼女は凄まじい程の忍耐と意志、そして責任感を持っている人なのかもしれない。
ユエも同じことを思ったのか、先程までとは違う眼差しでミレディ・ゴーレムを見ている。深い闇の底でたった一人という苦しみはユエもよく知っている。だからこそ、ミレディが意思を残したまま闇の底に留まったという決断に、共感以上の何かを感じたようだ。日本秀身堂救急箱
ハジメは、ミレディ・ゴーレムの眼光を真っ直ぐに見返しながら嘘偽りない言葉を返した。
「俺の目的は故郷に帰ることだ。お前等のいう狂った神とやらに無理やりこの世界に連れてこられたんでな。世界を超えて転移できる神代魔法を探している……お前等の代わりに神の討伐を目的としているわけじゃない。この世界のために命を賭けるつもりは毛頭ない」
「……」
ミレディ・ゴーレムは暫く、ジッとハジメを見つめた後、何かに納得したのか小さく頷いた。そして、ただ一言「そっか」とだけ呟いた。と、次の瞬間には、真剣な雰囲気が幻のように霧散し、軽薄な雰囲気が戻る。
「ん~、そっかそっか。なるほどねぇ~、別の世界からねぇ~。うんうん。それは大変だよねぇ~よし、ならば戦争だ! 見事、この私を打ち破って、神代魔法を手にするがいい!」
「脈絡なさすぎて意味不明なんだが……何が『ならば』何だよ。っていうか話し聞いてたか? お前の神代魔法が転移系でないなら意味ないんだけど? それとも転移系なのか?」
ミレディは、「んふふ~」と嫌らしい笑い声を上げると、「それはね……」と物凄く勿体付けた雰囲気で返答を先延ばす。その姿は、ファイナルアンサーした相手に答えを告げるみの○んたを彷彿とさせた。
いい加減、イラつきが頂点に達し、こっちから戦争を始めてやるとオルカンを取り出したハジメの機先を制するようにミレディが答えを叫ぶ。
「教えてあ~げない!」
「死ね」
ハジメが問答無用にオルカンからロケット弾をぶっぱなした。火花の尾を引く破壊の嵐が真っ直ぐにミレディ・ゴーレムへと突き進み直撃する。
ズガァアアアン!!
凄絶な爆音が空間全体を振動させながら響き渡る。もうもうとたつ爆煙。
「やりましたか!?」
「……シア、それはフラグ」
シアが先手必勝ですぅ! と喜色を浮かべ、ユエがツッコミを入れる。結果、正しいのはユエだった。煙の中から赤熱化した右手がボバッと音を立てながら現れると横凪に振るわれ煙が吹き散らされる。
煙の晴れた奥からは、両腕の前腕部の一部を砕かれながらも大して堪えた様子のないミレディ・ゴーレムが現れた。ミレディ・ゴーレムは、近くを通ったブロックを引き寄せると、それを砕きそのまま欠けた両腕の材料にして再構成する。
「ふふ、先制攻撃とはやってくれるねぇ~、さぁ、もしかしたら私の神代魔法が君のお目当てのものかもしれないよぉ~、私は強いけどぉ~、死なないように頑張ってねぇ~」
そう楽しそうに笑って、ミレディ・ゴーレムは左腕のフレイル型モーニングスターをハジメ達に向かって射出した。投げつけたのではない。予備動作なくいきなりモーニングスターが猛烈な勢いで飛び出したのだ。おそらく、ゴーレム達と同じく重力方向を調整して“落下”させたのだろう。
ハジメ達は、近くの浮遊ブロックに跳躍してモーニングスターを躱す。モーニングスターは、ハジメ達がいたブロックを木っ端微塵に破壊しそのまま宙を泳ぐように旋回しつつ、ミレディ・ゴーレムの手元に戻った。
「やるぞ! ユエ、シア。ミレディを破壊する!」
「んっ!」
「了解ですぅ!」
ハジメの掛け声と共に、七大迷宮が一つ、ライセン大迷宮最後の戦いが始った。
大剣を掲げまま待機状態だったゴーレム騎士達が、ハジメの掛け声を合図にしたかのように一斉に動き出した。通路でそうしたのと同じように、頭をハジメ達に向けて一気に突っ込んでくる。
ユエが、くるり身を翻しながらじゃらじゃらぶら下げた水筒の一つを前に突き出し横薙ぎにする。極限まで圧縮された水がウォーターカッターとなってレーザーの如く飛び出しゴーレム騎士達を横断した。
「あはは、やるねぇ~、でも総数五十体の無限に再生する騎士達と私、果たして同時に捌けるかなぁ~」
嫌味ったらしい口調で、ミレディ・ゴーレムが再度、モーニングスターを射出した。シアが大きく跳躍し、上方を移動していた三角錐のブロックに飛び乗る。ハジメは、その場を動かずにドンナーをモーニングスターに向けて連射した。
ドパァァンッ!
銃声は一発。されど放たれた弾丸は六発。早打ちにより解き放たれた閃光は狙い違わず豪速で迫るモーニングスターに直撃する。流石に大質量の金属球とは言え、レールガンの衝撃を同時に六回も受けて無影響とはいかなかった。その軌道がハジメから大きく逸れる。
同時に、上方のブロックに跳躍していたシアがミレディの頭上を取り、飛び降りながらドリュッケンを打ち下ろした。
「見え透いてるよぉ~」
そんな言葉と共に、ミレディ・ゴーレムは急激な勢いで横へ移動する。横へ“落ちた”のだろう。
「くぅ、このっ!」
目測を狂わされたシアは、歯噛みしながら手元の引き金を引きドリュッケンの打撃面を爆発させる。薬莢が排出されるのを横目に、その反動で軌道を修正。三回転しながら、遠心力もたっぷり乗せた一撃をミレディ・ゴーレムに叩き込んだ。
ズゥガガン!!
咄嗟に左腕でガードするミレディ・ゴーレム。凄まじい衝突音と共に左腕が大きくひしゃげる。しかし、ミレディ・ゴーレムはそれがどうしたと言わんばかりに、そのまま左腕を横薙ぎにした。
「きゃぁああ!!」
「シア!」
悲鳴を上げながらぶっ飛ぶシア。何とか空中でドリュッケンの引き金を引き爆発力で体勢を整えると、更に反動を利用して近くのブロックに不時着する。V26Ⅱ即効減肥サプリ
「はっ、やるじゃねぇの。おい、ユエ。お前、あいつに一体どんな特訓したんだよ?」
「……ひたすら追い込んだだけ」
「……なるほど、しぶとく生き残る術が一番磨かれたってところか」
遠目にシアがピョンピョンと浮遊ブロックを飛び移りながら戻ってくるのを確認しつつ内心感心するハジメ。そんな、ハジメとユエのブロックに、遂にユエ一人では捌ききれない程のゴーレム騎士達が殺到する。
ハジメは、“宝物庫”からガトリング砲メツェライを取り出す。そして、ユエと背中合わせになり、毎分一万二千発の死を撒き散らす化物を解き放った。
ドゥルルルルル!!
六砲身のバレルが回転しながら掃射を開始する。独特な射撃音を響かせながら、真っ直ぐに伸びる数多の閃光は、縦横無尽に空間を舐め尽くし、宙にある敵の尽くをスクラップに変えて底面へと叩き落としていった。回避または死角からの攻撃のため反対側に回り込んだものは、水のレーザーにより、やはり尽く横断されていく。
瞬く間に四十体以上のゴーレム騎士達が無残な姿を晒しながら空間の底面へと墜落した。時間が経てば、また再構築を終えて戦線に復帰するだろうが、暫く邪魔が入らなければそれでいい。そう、親玉であるミレディ・ゴーレムを破壊するまで。
「ちょっ、なにそれぇ! そんなの見たことも聞いたこともないんですけどぉ!」
ミレディ・ゴーレムの驚愕の叫びを聞き流し、ハジメは、メツェライを“宝物庫”にしまうと、再びドンナーを抜きながら、少し離れたところにいるシアにも聞こえるように声を張り上げた。
「ミレディの核は、心臓と同じ位置だ! あれを破壊するぞ!」
「んなっ! 何で、わかったのぉ!」
再度、驚愕の声をあげるミレディ。まさか、ハジメが魔力そのものを見通す魔眼をもっているとは思いもしないのだろう。ゴーレムを倒すセオリーである核の位置が判明し、ユエとシアの眼光も鋭くなる。
周囲を飛び交うゴーレム騎士も今は十体程度。三人で波状攻撃をかけて、ミレディの心臓に一撃を入れるのだ。
ハジメが、一気に跳躍し周囲の浮遊ブロックを足場にしながらミレディ・ゴーレムに接近を試みる。今のレールガンの出力では、ミレディ・ゴーレムの巨体を粉砕して核に攻撃を届かせるのは難しい。なので、ゼロ距離射撃で装甲を破壊し、手榴弾でも突っ込んでやろうと考えたのだ。
だが、そう甘くはない。
ミレディ・ゴーレムの目が一瞬光ったかと思うと、彼女の頭上の浮遊ブロックが猛烈な勢いで宙を移動するハジメへと迫った。
「!?」
「操れるのが騎士だけとは一言も言ってないよぉ~」
ミレディのニヤつく声音を無視して、ハジメは、ガシュンという音と共に義手のギミックを作動させた。
ドゴンッ!!
腹の底に響くような爆発音を響かせながら義手の甲から正面に向けて衝撃が発生する。正確には、強力な散弾が発射されたのだ。電磁加速は出来ないが、燃焼粉の圧縮率はドンナーの弾丸よりもずっと高い。それに伴って反動も強烈だ。宙にあるハジメの体は弾かれた様に軌道を変えて、飛来した浮遊ブロックをすんでの所で躱す。そして、何とか目標の浮遊ブロックに足を掛けた。
当然、ミレディ・ゴーレムは、ハジメの足場を“落とそう”とするが、いつの間にか背後から迫っていたシアが、強烈な一撃をミレディ・ゴーレムの頭部に叩き込もうと跳躍する。まずは、事あるごとに妖しげ光を放つ目を頭部ごと潰そうという腹だ。
ミレディ・ゴーレムは、シアの接近に気がついていたのか跳躍中のシアを狙ってゴーレム騎士達を突撃させた。宙にあって無防備なシア。あわや大剣に両断されるかと思われた瞬間、
「……させない」
これまたいつの間にか移動していたユエが、“破断”によりシアを襲おうとしているゴーレム騎士達を細切れにしていく。
「流石、ユエさんです!」
そんなことを叫びながら、障害がいなくなった宙を進み、シアは極限まで強化した身体能力を以て大上段の一撃を繰り出した。
「パワーでゴーレムが負けるわけないよぉ~」
ミレディ・ゴーレムは自身の言葉を証明してやるとでも言う様に、振り返りながら燃え盛る右手をシアに目掛けて真っ直ぐに振るった。V26即効ダイエット
ドォガガガン!!
シアのドリュッケンとミレディ・ゴーレムのヒートナックルが凄まじい轟音を響かせながら衝突する。発生した衝撃波が周囲を浮遊していたブロックのいくつかを放射状に吹き飛ばした。
「こぉののの!」
突破できないミレディ・ゴーレムの拳に、シアは雄叫びを上げて力を込める。しかし、ゴーレムの膂力にはやはり敵わず、振り切られた拳に吹き飛ばされた。
「きゃああ!!」
悲鳴を上げるシア。飛ばされた方向に浮遊ブロックはない。あわや、このまま墜落するかと思われたが、予想していたようにユエが横合いから飛び出しシアを抱きとめ、一瞬の“来翔”で軌道を修正しながら、眼下の浮遊ブロックに着地した。
「中々のコンビネーションだねぇ~」
余裕の声で、自分を見上げるユエとシアを見下ろすミレディ・ゴーレム。そこへ予想外に近い場所から声がかかる。
「だろ?」
「!?」
驚愕し慌てて声のした方向に視線を転じるミレディ・ゴーレム。いつの間にか懐に潜り込み、アンカーと甲冑の隙間に足を入れることで体を固定しながら、巨大な兵器:シュラーゲンを心臓部に突き付けているハジメが其処にいた。シュラーゲンから紅いスパークが迸る。
「い、いつの間ッ!?」
ドォガン!!!
ミレディの驚愕の言葉はシュラーゲンの発する轟音に遮られた。ゼロ距離で放たれた殺意の塊は、ミレディ・ゴーレムを吹き飛ばすと共に胸部の装甲を木っ端微塵に破壊した。“纏雷”が十分に使えないため、現在のシュラーゲンは、通常空間でのドンナーの最大威力と同程度だ。だが、それでも金属鎧を破壊するには十分な威力がある。ゴーレム騎士達の装甲が、威力低下中のドンナーでも容易に貫けたので、同じ材質に見えるミレディ・ゴーレムの鎧も少し分厚くなっているだけなら、シュラーゲンで十分に破壊できると踏んだのだ。
胸部から煙を吹き上げながら弾き飛ばされるミレディ・ゴーレム。ハジメも反動で後方に飛ばされた。アンカーを飛ばし、近くの浮遊ブロックに取り付けると巻き上げる勢いそのままに空中で反転して飛び乗る。そして、ミレディ・ゴーレムの様子を観察した。
ユエとシアもハジメの近くの浮遊ブロックに飛び乗ってくる。
「……いけた?」
「手応えはあったけどな……」
「これで、終わって欲しいですぅ」
ユエが手応えを聞き、シアが希望的観測を口にする。ハジメの表情は微妙だ。案の定、胸部の装甲を破壊されたままのミレディ・ゴーレムが、何事もなかったように近くの浮遊ブロックを手元に移動させながら、感心したような声音でハジメ達に話しかけてきた。
「いやぁ~大したもんだねぇ、ちょっとヒヤっとしたよぉ。分解作用がなくて、そのアーティファクトが本来の力を発揮していたら危なかったかもねぇ~、うん、この場所に苦労して迷宮作ったミレディちゃん天才!!」
自画自賛するミレディ・ゴーレム。だが、そんな彼女の言葉はハジメの耳に入っていなかった。ハジメの表情は険しい。なぜなら、破壊された胸部の装甲の奥に漆黒の装甲があり、それには傷一つ付いていなかったからだ。ハジメには、その装甲の材質に見覚えがあった。
「んぅ~、これが気になるのかなぁ~」
ミレディ・ゴーレムがハジメの視線に気がつき、ニヤつき声で漆黒の装甲を指差す。勿体ぶるような口調で「これはねぇ~」と、その正体を明かそうとして、ハジメが悪態と共に続きを呟いた。
「……アザンチウムか、くそったれ」
アザンチウム鉱石は、ハジメの装備の幾つかにも使われている世界最高硬度を誇る鉱石だ。薄くコーティングする程度でもドンナーの最大威力を耐え凌ぐ。通りで、シュラーゲンの一撃に傷一つつかないわけである。あのアザンチウム装甲を破るのは至難の技だとハジメは眉間にシワを寄せた。
「おや? 知っていたんだねぇ~、ってそりゃそうか。オーくんの迷宮の攻略者だものねぇ、生成魔法の使い手が知らないわけないよねぇ~、さぁさぁ、程よく絶望したところで、第二ラウンド行ってみようかぁ!」
ミレディは、砕いた浮遊ブロックから素材を奪い、表面装甲を再構成するとモーニングスターを射出しながら自らも猛然と突撃を開始した。
「ど、どうするんですか!? ハジメさん!」
「まだ手はある。何とかしてヤツの動きを封じるぞ!」
「……ん、了解」
火力不足というどうしようもない事情に、シアが動揺した様子でハジメに問う。ハジメには、まだ切り札が残っているようで、それを使うためにミレディ・ゴーレムの動きを封じるように指示を出した。手が残っているということに、幾分安堵の表情を見せてユエとシアが迫り来るモーニングスターを回避すべく近くの浮遊ブロックに飛び移ろうとする。しかし、
「させないよぉ~」
ミレディ・ゴーレムの気の抜けた声と共に足場にしていた浮遊ブロックが高速で回転する。いきなり、足場を回転させられバランスを崩すハジメ達。そこへモーニングスターが絶大な威力を以て激突した。ハジメ達は、木っ端微塵に砕かれた足場から放り出される。ハジメは、ジャラジャラと音を立てながら通り過ぎる鎖にしがみついた。ユエは砕かれた浮遊ブロックの破片を足場に“来翔”を使って、シアはドリュッケンの爆発の反動を利用して何とか眼下の浮遊ブロックに不時着する。
そこへ狙いすました様にミレディ・ゴーレムがフレイムナックルを突き出して突っ込んだ。
「くぅう!!」
「んっ!!」
直撃は避けたものの強烈な衝撃に、ユエとシアの口から苦悶の呻き声が漏れる。それでも、すれ違い様にユエは“破断”をミレディ・ゴーレムの腕を狙って発動し、シアはドリュッケンのギミックの一つである杭を打撃面から突出させて、それを鎧に突き立て取り付いた。
“破断”はミレディ・ゴーレムの右腕の一部を切り裂いたが切断とまでは行かず、ユエは悔しげな表情で別の浮遊ブロックに着地する。V26Ⅲ速效ダイエット
一方、ミレディ・ゴーレムの肩口に取り付いたシアは、そのまま左の肩から頭部目掛けてドリュッケンをフルスイングした。が、ミレディ・ゴーレムが急激に“落ちた”ことによりバランスを崩され宙に放り出された。
そんな硬直する三人に、巨体ゴーレムは不機嫌そうな声を出した。声質は女性のものだ。
「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」
実にイラっとする話し方である。しかも、巨体ゴーレムは、燃え盛る右手と刺付き鉄球を付けた左手を肩まで待ち上げると、やたらと人間臭い動きで「やれやれだぜ」と言う様に肩を竦める仕草までした。普通にイラっとするハジメ達。道中散々見てきたウザイ文を彷彿とさせる。“ミレディ・ライセン”と名乗っていることから本人である可能性もあるが、彼女は既に死んでいるはずであるし、人間だったはずだ。
ハジメは取り敢えず、その辺りのことを探ってみる事にした。
「そいつは、悪かったな。だが、ミレディ・ライセンは人間で故人のはずだろ? まして、自我を持つゴーレム何て聞いたことないんでな……目論見通り驚いてやったんだから許せ。そして、お前が何者か説明しろ。簡潔にな」
「あれぇ~、こんな状況なのに物凄く偉そうなんですけど、こいつぅ」
全く探りになってなかった。むしろド直球だった。流石に、この反応は予想外だったのかミレディを名乗る巨体ゴーレムは若干戸惑ったような様子を見せる。が、直ぐに持ち直して、人間なら絶対にニヤニヤしているであろうと容易に想像付くような声音でハジメ達に話しかけた。
「ん~? ミレディさんは初めからゴーレムさんですよぉ~何を持って人間だなんて……」
「オスカーの手記にお前のことも少し書いてあった。きちんと人間の女として出てきてたぞ? というか阿呆な問答をする気はない。簡潔にと言っただろう。どうせ立ち塞がる気なんだろうから、やることは変わらん。お前をスクラップにして先に進む。だから、その前にガタガタ騒いでないで、吐くもん吐け」
「お、おおう。久しぶりの会話に内心、狂喜乱舞している私に何たる言い様。っていうかオスカーって言った? もしかして、オーちゃんの迷宮の攻略者?」
「ああ、オスカー・オルクスの迷宮なら攻略した。というか質問しているのはこちらだ。答える気がないなら、戦闘に入るぞ? 別にどうしても知りたい事ってわけじゃない。俺達の目的は神代魔法だけだからな」
ハジメがドンナーを巨体ゴーレムに向ける。ユエはすまし顔だが、シアの方は「うわ~、ブレないなぁ~」と感心半分呆れ半分でハジメを見ていた。
「……神代魔法ねぇ、それってやっぱり、神殺しのためかな? あのクソ野郎共を滅殺してくれるのかな? オーちゃんの迷宮攻略者なら事情は理解してるよね?」
「質問しているのはこちらだと言ったはずだ。答えて欲しけりゃ、先にこちらの質問に答えろ」
「こいつぅ~ホントに偉そうだなぁ~、まぁ、いいけどぉ~、えっと何だっけ……ああ、私の正体だったね。うぅ~ん」
「簡潔にな。オスカーみたいにダラダラした説明はいらないぞ」
「あはは、確かに、オーちゃんは話しが長かったねぇ~、理屈屋だったしねぇ~」
巨体ゴーレムは懐かしんでいるのか遠い目をするかのように天を仰いだ。本当に人間臭い動きをするゴーレムである。ユエは相変わらず無表情で巨体ゴーレムを眺め、シアは周囲のゴーレム騎士達に気が気でないのかそわそわしている。
「うん、要望通りに簡潔に言うとね。
私は、確かにミレディ・ライセンだよ
ゴーレムの不思議は全て神代魔法で解決!
もっと詳しく知りたければ見事、私を倒してみよ! って感じかな」
「結局、説明になってなねぇ……」
「ははは、そりゃ、攻略する前に情報なんて貰えるわけないじゃん? 迷宮の意味ないでしょ?」
今度は巨大なゴーレムの指でメッ! をするミレディ・ゴーレム。中身がミレディ・ライセンというのは頂けないが、それを除けば愛嬌があるように思えてきた。ユエが、「……中身だけが問題」とボソリと呟いていることからハジメと同じ感想のようだ。
そして、その中身について、結局ほとんど何もわからなかったに等しいが、ミレディ本人だというなら、残留思念などを定着させたものなのかもしれないと推測するハジメ。ハジメは、確かクラスメイトの中村恵里が降霊術という残留思念を扱う天職を持っていたっけと朧げな記憶を掘り起こす。しかし、彼女の降霊術は、こんなにはっきりと意思を持った残留思念を残せるようなものではなかったはずだ。つまり、その辺と、その故人の意思? なんかをゴーレムに定着させたのが神代魔法ということだろう。
いずれにしろ、自分が探す世界を超える魔法ではなさそうだと、ハジメは少し落胆した様子で巨体ゴーレム改めミレディ・ゴーレムに問い掛けた。
「お前の神代魔法は、残留思念に関わるものなのか? だとしたら、ここには用がないんだがなぁ」
「ん~? その様子じゃ、何か目当ての神代魔法があるのかな? ちなみに、私の神代魔法は別物だよぉ~、魂の定着の方はラーくんに手伝ってもらっただけだしぃ~」
ハジメの目当てはあくまで世界を超えて故郷に帰ること。魂だか思念だか知らないが、それを操れる神代魔法を手に入れても意味はない。そう思って質問したのだが、返ってきたミレディの答えはハジメの推測とは異なるものだった。ラーくんというのが誰かは分からないが、おそらく“解放者”の一人なのだろう。その人物が、ミレディ・ゴーレムに死んだはずの本人の意思を持たせ、ゴーレムに定着させたようだ。
「じゃあ、お前の神代魔法は何なんだ? 返答次第では、このまま帰ることになるが……」
「ん~ん~、知りたい? そんなに知りたいのかなぁ?」
再びニヤついた声音で話しかけるミレディに、イラっとしつつ返答を待つハジメ。
「知りたいならぁ~、その前に今度はこっちの質問に答えなよ」
最後の言葉だけ、いきなり声音が変わった。今までの軽薄な雰囲気がなりを潜め真剣さを帯びる。その雰囲気の変化に少し驚くハジメ達。表情には出さずにハジメが問い返す。
「なんだ?」
「目的は何? 何のために神代魔法を求める?」
嘘偽りは許さないという意思が込められた声音で、ふざけた雰囲気など微塵もなく問いかけるミレディ。もしかすると、本来の彼女はこちらの方なのかもしれない。思えば、彼女も大衆のために神に挑んだ者。自らが託した魔法で何を為す気なのか知らないわけにはいかないのだろう。オスカーが記録映像を遺言として残したのと違い、何百年もの間、意思を持った状態で迷宮の奥深くで挑戦者を待ち続けるというのは、ある意味拷問ではないだろうか。軽薄な態度はブラフで、本当の彼女は凄まじい程の忍耐と意志、そして責任感を持っている人なのかもしれない。
ユエも同じことを思ったのか、先程までとは違う眼差しでミレディ・ゴーレムを見ている。深い闇の底でたった一人という苦しみはユエもよく知っている。だからこそ、ミレディが意思を残したまま闇の底に留まったという決断に、共感以上の何かを感じたようだ。日本秀身堂救急箱
ハジメは、ミレディ・ゴーレムの眼光を真っ直ぐに見返しながら嘘偽りない言葉を返した。
「俺の目的は故郷に帰ることだ。お前等のいう狂った神とやらに無理やりこの世界に連れてこられたんでな。世界を超えて転移できる神代魔法を探している……お前等の代わりに神の討伐を目的としているわけじゃない。この世界のために命を賭けるつもりは毛頭ない」
「……」
ミレディ・ゴーレムは暫く、ジッとハジメを見つめた後、何かに納得したのか小さく頷いた。そして、ただ一言「そっか」とだけ呟いた。と、次の瞬間には、真剣な雰囲気が幻のように霧散し、軽薄な雰囲気が戻る。
「ん~、そっかそっか。なるほどねぇ~、別の世界からねぇ~。うんうん。それは大変だよねぇ~よし、ならば戦争だ! 見事、この私を打ち破って、神代魔法を手にするがいい!」
「脈絡なさすぎて意味不明なんだが……何が『ならば』何だよ。っていうか話し聞いてたか? お前の神代魔法が転移系でないなら意味ないんだけど? それとも転移系なのか?」
ミレディは、「んふふ~」と嫌らしい笑い声を上げると、「それはね……」と物凄く勿体付けた雰囲気で返答を先延ばす。その姿は、ファイナルアンサーした相手に答えを告げるみの○んたを彷彿とさせた。
いい加減、イラつきが頂点に達し、こっちから戦争を始めてやるとオルカンを取り出したハジメの機先を制するようにミレディが答えを叫ぶ。
「教えてあ~げない!」
「死ね」
ハジメが問答無用にオルカンからロケット弾をぶっぱなした。火花の尾を引く破壊の嵐が真っ直ぐにミレディ・ゴーレムへと突き進み直撃する。
ズガァアアアン!!
凄絶な爆音が空間全体を振動させながら響き渡る。もうもうとたつ爆煙。
「やりましたか!?」
「……シア、それはフラグ」
シアが先手必勝ですぅ! と喜色を浮かべ、ユエがツッコミを入れる。結果、正しいのはユエだった。煙の中から赤熱化した右手がボバッと音を立てながら現れると横凪に振るわれ煙が吹き散らされる。
煙の晴れた奥からは、両腕の前腕部の一部を砕かれながらも大して堪えた様子のないミレディ・ゴーレムが現れた。ミレディ・ゴーレムは、近くを通ったブロックを引き寄せると、それを砕きそのまま欠けた両腕の材料にして再構成する。
「ふふ、先制攻撃とはやってくれるねぇ~、さぁ、もしかしたら私の神代魔法が君のお目当てのものかもしれないよぉ~、私は強いけどぉ~、死なないように頑張ってねぇ~」
そう楽しそうに笑って、ミレディ・ゴーレムは左腕のフレイル型モーニングスターをハジメ達に向かって射出した。投げつけたのではない。予備動作なくいきなりモーニングスターが猛烈な勢いで飛び出したのだ。おそらく、ゴーレム達と同じく重力方向を調整して“落下”させたのだろう。
ハジメ達は、近くの浮遊ブロックに跳躍してモーニングスターを躱す。モーニングスターは、ハジメ達がいたブロックを木っ端微塵に破壊しそのまま宙を泳ぐように旋回しつつ、ミレディ・ゴーレムの手元に戻った。
「やるぞ! ユエ、シア。ミレディを破壊する!」
「んっ!」
「了解ですぅ!」
ハジメの掛け声と共に、七大迷宮が一つ、ライセン大迷宮最後の戦いが始った。
大剣を掲げまま待機状態だったゴーレム騎士達が、ハジメの掛け声を合図にしたかのように一斉に動き出した。通路でそうしたのと同じように、頭をハジメ達に向けて一気に突っ込んでくる。
ユエが、くるり身を翻しながらじゃらじゃらぶら下げた水筒の一つを前に突き出し横薙ぎにする。極限まで圧縮された水がウォーターカッターとなってレーザーの如く飛び出しゴーレム騎士達を横断した。
「あはは、やるねぇ~、でも総数五十体の無限に再生する騎士達と私、果たして同時に捌けるかなぁ~」
嫌味ったらしい口調で、ミレディ・ゴーレムが再度、モーニングスターを射出した。シアが大きく跳躍し、上方を移動していた三角錐のブロックに飛び乗る。ハジメは、その場を動かずにドンナーをモーニングスターに向けて連射した。
ドパァァンッ!
銃声は一発。されど放たれた弾丸は六発。早打ちにより解き放たれた閃光は狙い違わず豪速で迫るモーニングスターに直撃する。流石に大質量の金属球とは言え、レールガンの衝撃を同時に六回も受けて無影響とはいかなかった。その軌道がハジメから大きく逸れる。
同時に、上方のブロックに跳躍していたシアがミレディの頭上を取り、飛び降りながらドリュッケンを打ち下ろした。
「見え透いてるよぉ~」
そんな言葉と共に、ミレディ・ゴーレムは急激な勢いで横へ移動する。横へ“落ちた”のだろう。
「くぅ、このっ!」
目測を狂わされたシアは、歯噛みしながら手元の引き金を引きドリュッケンの打撃面を爆発させる。薬莢が排出されるのを横目に、その反動で軌道を修正。三回転しながら、遠心力もたっぷり乗せた一撃をミレディ・ゴーレムに叩き込んだ。
ズゥガガン!!
咄嗟に左腕でガードするミレディ・ゴーレム。凄まじい衝突音と共に左腕が大きくひしゃげる。しかし、ミレディ・ゴーレムはそれがどうしたと言わんばかりに、そのまま左腕を横薙ぎにした。
「きゃぁああ!!」
「シア!」
悲鳴を上げながらぶっ飛ぶシア。何とか空中でドリュッケンの引き金を引き爆発力で体勢を整えると、更に反動を利用して近くのブロックに不時着する。V26Ⅱ即効減肥サプリ
「はっ、やるじゃねぇの。おい、ユエ。お前、あいつに一体どんな特訓したんだよ?」
「……ひたすら追い込んだだけ」
「……なるほど、しぶとく生き残る術が一番磨かれたってところか」
遠目にシアがピョンピョンと浮遊ブロックを飛び移りながら戻ってくるのを確認しつつ内心感心するハジメ。そんな、ハジメとユエのブロックに、遂にユエ一人では捌ききれない程のゴーレム騎士達が殺到する。
ハジメは、“宝物庫”からガトリング砲メツェライを取り出す。そして、ユエと背中合わせになり、毎分一万二千発の死を撒き散らす化物を解き放った。
ドゥルルルルル!!
六砲身のバレルが回転しながら掃射を開始する。独特な射撃音を響かせながら、真っ直ぐに伸びる数多の閃光は、縦横無尽に空間を舐め尽くし、宙にある敵の尽くをスクラップに変えて底面へと叩き落としていった。回避または死角からの攻撃のため反対側に回り込んだものは、水のレーザーにより、やはり尽く横断されていく。
瞬く間に四十体以上のゴーレム騎士達が無残な姿を晒しながら空間の底面へと墜落した。時間が経てば、また再構築を終えて戦線に復帰するだろうが、暫く邪魔が入らなければそれでいい。そう、親玉であるミレディ・ゴーレムを破壊するまで。
「ちょっ、なにそれぇ! そんなの見たことも聞いたこともないんですけどぉ!」
ミレディ・ゴーレムの驚愕の叫びを聞き流し、ハジメは、メツェライを“宝物庫”にしまうと、再びドンナーを抜きながら、少し離れたところにいるシアにも聞こえるように声を張り上げた。
「ミレディの核は、心臓と同じ位置だ! あれを破壊するぞ!」
「んなっ! 何で、わかったのぉ!」
再度、驚愕の声をあげるミレディ。まさか、ハジメが魔力そのものを見通す魔眼をもっているとは思いもしないのだろう。ゴーレムを倒すセオリーである核の位置が判明し、ユエとシアの眼光も鋭くなる。
周囲を飛び交うゴーレム騎士も今は十体程度。三人で波状攻撃をかけて、ミレディの心臓に一撃を入れるのだ。
ハジメが、一気に跳躍し周囲の浮遊ブロックを足場にしながらミレディ・ゴーレムに接近を試みる。今のレールガンの出力では、ミレディ・ゴーレムの巨体を粉砕して核に攻撃を届かせるのは難しい。なので、ゼロ距離射撃で装甲を破壊し、手榴弾でも突っ込んでやろうと考えたのだ。
だが、そう甘くはない。
ミレディ・ゴーレムの目が一瞬光ったかと思うと、彼女の頭上の浮遊ブロックが猛烈な勢いで宙を移動するハジメへと迫った。
「!?」
「操れるのが騎士だけとは一言も言ってないよぉ~」
ミレディのニヤつく声音を無視して、ハジメは、ガシュンという音と共に義手のギミックを作動させた。
ドゴンッ!!
腹の底に響くような爆発音を響かせながら義手の甲から正面に向けて衝撃が発生する。正確には、強力な散弾が発射されたのだ。電磁加速は出来ないが、燃焼粉の圧縮率はドンナーの弾丸よりもずっと高い。それに伴って反動も強烈だ。宙にあるハジメの体は弾かれた様に軌道を変えて、飛来した浮遊ブロックをすんでの所で躱す。そして、何とか目標の浮遊ブロックに足を掛けた。
当然、ミレディ・ゴーレムは、ハジメの足場を“落とそう”とするが、いつの間にか背後から迫っていたシアが、強烈な一撃をミレディ・ゴーレムの頭部に叩き込もうと跳躍する。まずは、事あるごとに妖しげ光を放つ目を頭部ごと潰そうという腹だ。
ミレディ・ゴーレムは、シアの接近に気がついていたのか跳躍中のシアを狙ってゴーレム騎士達を突撃させた。宙にあって無防備なシア。あわや大剣に両断されるかと思われた瞬間、
「……させない」
これまたいつの間にか移動していたユエが、“破断”によりシアを襲おうとしているゴーレム騎士達を細切れにしていく。
「流石、ユエさんです!」
そんなことを叫びながら、障害がいなくなった宙を進み、シアは極限まで強化した身体能力を以て大上段の一撃を繰り出した。
「パワーでゴーレムが負けるわけないよぉ~」
ミレディ・ゴーレムは自身の言葉を証明してやるとでも言う様に、振り返りながら燃え盛る右手をシアに目掛けて真っ直ぐに振るった。V26即効ダイエット
ドォガガガン!!
シアのドリュッケンとミレディ・ゴーレムのヒートナックルが凄まじい轟音を響かせながら衝突する。発生した衝撃波が周囲を浮遊していたブロックのいくつかを放射状に吹き飛ばした。
「こぉののの!」
突破できないミレディ・ゴーレムの拳に、シアは雄叫びを上げて力を込める。しかし、ゴーレムの膂力にはやはり敵わず、振り切られた拳に吹き飛ばされた。
「きゃああ!!」
悲鳴を上げるシア。飛ばされた方向に浮遊ブロックはない。あわや、このまま墜落するかと思われたが、予想していたようにユエが横合いから飛び出しシアを抱きとめ、一瞬の“来翔”で軌道を修正しながら、眼下の浮遊ブロックに着地した。
「中々のコンビネーションだねぇ~」
余裕の声で、自分を見上げるユエとシアを見下ろすミレディ・ゴーレム。そこへ予想外に近い場所から声がかかる。
「だろ?」
「!?」
驚愕し慌てて声のした方向に視線を転じるミレディ・ゴーレム。いつの間にか懐に潜り込み、アンカーと甲冑の隙間に足を入れることで体を固定しながら、巨大な兵器:シュラーゲンを心臓部に突き付けているハジメが其処にいた。シュラーゲンから紅いスパークが迸る。
「い、いつの間ッ!?」
ドォガン!!!
ミレディの驚愕の言葉はシュラーゲンの発する轟音に遮られた。ゼロ距離で放たれた殺意の塊は、ミレディ・ゴーレムを吹き飛ばすと共に胸部の装甲を木っ端微塵に破壊した。“纏雷”が十分に使えないため、現在のシュラーゲンは、通常空間でのドンナーの最大威力と同程度だ。だが、それでも金属鎧を破壊するには十分な威力がある。ゴーレム騎士達の装甲が、威力低下中のドンナーでも容易に貫けたので、同じ材質に見えるミレディ・ゴーレムの鎧も少し分厚くなっているだけなら、シュラーゲンで十分に破壊できると踏んだのだ。
胸部から煙を吹き上げながら弾き飛ばされるミレディ・ゴーレム。ハジメも反動で後方に飛ばされた。アンカーを飛ばし、近くの浮遊ブロックに取り付けると巻き上げる勢いそのままに空中で反転して飛び乗る。そして、ミレディ・ゴーレムの様子を観察した。
ユエとシアもハジメの近くの浮遊ブロックに飛び乗ってくる。
「……いけた?」
「手応えはあったけどな……」
「これで、終わって欲しいですぅ」
ユエが手応えを聞き、シアが希望的観測を口にする。ハジメの表情は微妙だ。案の定、胸部の装甲を破壊されたままのミレディ・ゴーレムが、何事もなかったように近くの浮遊ブロックを手元に移動させながら、感心したような声音でハジメ達に話しかけてきた。
「いやぁ~大したもんだねぇ、ちょっとヒヤっとしたよぉ。分解作用がなくて、そのアーティファクトが本来の力を発揮していたら危なかったかもねぇ~、うん、この場所に苦労して迷宮作ったミレディちゃん天才!!」
自画自賛するミレディ・ゴーレム。だが、そんな彼女の言葉はハジメの耳に入っていなかった。ハジメの表情は険しい。なぜなら、破壊された胸部の装甲の奥に漆黒の装甲があり、それには傷一つ付いていなかったからだ。ハジメには、その装甲の材質に見覚えがあった。
「んぅ~、これが気になるのかなぁ~」
ミレディ・ゴーレムがハジメの視線に気がつき、ニヤつき声で漆黒の装甲を指差す。勿体ぶるような口調で「これはねぇ~」と、その正体を明かそうとして、ハジメが悪態と共に続きを呟いた。
「……アザンチウムか、くそったれ」
アザンチウム鉱石は、ハジメの装備の幾つかにも使われている世界最高硬度を誇る鉱石だ。薄くコーティングする程度でもドンナーの最大威力を耐え凌ぐ。通りで、シュラーゲンの一撃に傷一つつかないわけである。あのアザンチウム装甲を破るのは至難の技だとハジメは眉間にシワを寄せた。
「おや? 知っていたんだねぇ~、ってそりゃそうか。オーくんの迷宮の攻略者だものねぇ、生成魔法の使い手が知らないわけないよねぇ~、さぁさぁ、程よく絶望したところで、第二ラウンド行ってみようかぁ!」
ミレディは、砕いた浮遊ブロックから素材を奪い、表面装甲を再構成するとモーニングスターを射出しながら自らも猛然と突撃を開始した。
「ど、どうするんですか!? ハジメさん!」
「まだ手はある。何とかしてヤツの動きを封じるぞ!」
「……ん、了解」
火力不足というどうしようもない事情に、シアが動揺した様子でハジメに問う。ハジメには、まだ切り札が残っているようで、それを使うためにミレディ・ゴーレムの動きを封じるように指示を出した。手が残っているということに、幾分安堵の表情を見せてユエとシアが迫り来るモーニングスターを回避すべく近くの浮遊ブロックに飛び移ろうとする。しかし、
「させないよぉ~」
ミレディ・ゴーレムの気の抜けた声と共に足場にしていた浮遊ブロックが高速で回転する。いきなり、足場を回転させられバランスを崩すハジメ達。そこへモーニングスターが絶大な威力を以て激突した。ハジメ達は、木っ端微塵に砕かれた足場から放り出される。ハジメは、ジャラジャラと音を立てながら通り過ぎる鎖にしがみついた。ユエは砕かれた浮遊ブロックの破片を足場に“来翔”を使って、シアはドリュッケンの爆発の反動を利用して何とか眼下の浮遊ブロックに不時着する。
そこへ狙いすました様にミレディ・ゴーレムがフレイムナックルを突き出して突っ込んだ。
「くぅう!!」
「んっ!!」
直撃は避けたものの強烈な衝撃に、ユエとシアの口から苦悶の呻き声が漏れる。それでも、すれ違い様にユエは“破断”をミレディ・ゴーレムの腕を狙って発動し、シアはドリュッケンのギミックの一つである杭を打撃面から突出させて、それを鎧に突き立て取り付いた。
“破断”はミレディ・ゴーレムの右腕の一部を切り裂いたが切断とまでは行かず、ユエは悔しげな表情で別の浮遊ブロックに着地する。V26Ⅲ速效ダイエット
一方、ミレディ・ゴーレムの肩口に取り付いたシアは、そのまま左の肩から頭部目掛けてドリュッケンをフルスイングした。が、ミレディ・ゴーレムが急激に“落ちた”ことによりバランスを崩され宙に放り出された。
2014年5月7日星期三
バーベキュー
竹串に刺す。
一心不乱に刺す。
ちくちくと、薄いビニール手袋をはめた右手でひたすらに大きめに切った肉や野菜を刺していく。
「あ、あのマスター……何やってるんですか? 」V26即効ダイエット
その声に店主は我に返った。
「ん?……ああ、ちょいと明日の売り物をな」
どうやら気がつかないうちにアレッタが来る時間になってたらしい。
それに気づき、店主はアレッタに向き直って、言う。
「明日、ですか?確か明日ってお休みじゃなかったですか? 」
「ああ、違う違う。明日っつっても店じゃなくてな、秋祭りで出す屋台の分だよ」
不思議そうに尋ねるアレッタに、手を軽く振りながら店主が言う。
そう、明日の日曜日は近所の神社で秋祭りがある。
店主も含めた商店街の連中は皆、その手伝いの一環として屋台を出すことになっていた。
洋食のねこやがある商店街は、飲食店が多い。
商店街にある店の半分が飲食店で、残った半分の更に半分がそれらの飲食店に食材を卸している肉屋や八百屋、魚屋などである。
近所にあるオフィス街には、社員食堂を持っている会社はほとんど無いためか、昼休みともなれば合計で1000を越える客たちが近場で美味しい料理を出すこの商店街に集まる。
それが昔から続いていた結果、こうなったらしい。
が、決して楽だというわけではない。
なにしろ商店街全体での客は毎日必ずある程度見込めるものの、場所柄、ここを利用する客の大半はリピーターである。
他の店には無い売りのひとつも示せ無くては1年もしないうちに廃れてしまう。
そのためか長年この界隈で『生き残ってきた』飲食店は、ねこやも含め評判が良い。
出す料理の種類こそバラバラだが、どこも『うちがこの商店街で一番美味い』と言う程度の腕はあるのである。
通常の営業では、出す料理の種類が違うということで『共食い』にはならない商店街の各店だが、唯一例外がある。
毎年この時期に、近所の神社で行われる秋祭りである。
近所の神社の、ささやかな祭りの出店は、毎年商店街にある店が担当している。
……1日という短い開催期間で、顔をつき合わせて屋台で料理を売るのである。
しかも客はほぼすべての屋台の売り物を見てから何を食べるか決める。
勝っても負けても何があるわけでは無いが、そこで負けると非常に悔しいと思うのが、人情というもの。
そんなわけで毎年、商店街の各店は、他の『ライバル』より売れる屋台にしようとしのぎを削る。
ギリギリ赤字にはならない程度に値段を抑えてしまえば、あとに残るのは如何に客を引き込める料理を作れるかという部分のみ。
(最近はそんな長年の勝負のお陰か、地元の神社のささやかな祭りとは思えぬ程度には客が来るようになってもいるし、
毎年タウン誌が特集を組んでいたりする)
それは商店街では一番の古株の一つであるねこやでも例外ではなく、毎年技術の限りを尽くした屋台料理を出しているのだ。
そして、今年店主が選んだ料理は……
「コイツは屋台で売る用の串焼き……まあバーベキューだな」
大きい竹串に通した肉と野菜を見せて、店主が言う。
「バーベキュー……? 」
「おう、他のバイトにも昨日試作した奴を食ってもらったが、美味いって評判良かったんだぜ?ソースも自家製だしな」
店主が言いきる。
去年は店主が高校の頃バイトしていた師匠とでも言うべき中華料理屋『笑龍』の特製肉まんにあと一歩及ばなかったが、今年は自信がある。
向こうがもうもうと上がる蒸気で来るならこちらは炭火で焼いた肉と野菜、それと別の鉄板で焼く海鮮焼きの焼ける匂いで勝負だ。
店主のやる気は充分であった。
「ま、アレッタちゃんにも賄いで出してやるから楽しみにしといてくれ。流石に朝からバーベキューだと重いから、夕方にな」V26Ⅱ即効減肥サプリ
ついでに味を見てもらおうなどと思いながら、店主が言う。
「はい!楽しみにしてます! 」
店主がこれだけ言うならば、きっと美味いのだろう。
そんな確信すら覚えながら、アレッタは力強く頷いた。
昼日中にはあちこちから訪れた客で賑やかな異世界食堂といえど、日が暮れる頃になれば大分静かになる。
異世界食堂に繋がる扉は得てして人里離れた辺鄙なところにある。
日が暮れた後に出向いてしまえば、帰りつくのはまず間違いなく月の輝く夜になる。
夜を主な活動の場所にする危険な獣やモンスター、アンデッドが出てくる夜道をわざわざ歩くくらいなら、太陽が空に輝く昼間のうちに訪れるのが普通。
いくら異世界食堂の客といえど、扉のある場所に住んでたり、扉の前で野宿上等なんてハーフリングばかりではないのである。
そして夕方。昼間と比べれば大分忙しさが緩んだ時間帯。
卓を2つつないで占拠する一団があった。
「おうおう!やっぱ酒はウィスキーが最高じゃのう!」
「おう!このフライとあわせるとたまらんわい!」
まるで水か何かのようにカパカパとドワーフの職人コンビ、ガルドとギレムがウィスキーを飲み干していく。
「へっ。わかってねえなあ。しょうちゅうこそこの店の酒の華よ」
「そうさ。同じ強い酒でもこっちのがうまいよね。やっぱり」
そう言って同じように焼酎を飲んでいるのは、ドワーフコンビの倍は背丈があるオーガの夫婦、タツジとオトラ。
「そうかなあ?やはりこの店の酒ならばこのワインが一番だと思うけど」
「そうですね。こちらの世界のワインは赤も白も美味しいと思います」
そう言って蒼白い顔をほんのりと染めてワインを飲むのは闇の不死者たる吸血鬼、ロメロとジュリエッタ。
「ええ?葡萄酒ならやっぱブランデーだと思うけど。ってかそこのドワーフ、風の噂で聞いたけど、ウィスキー作れるんでしょ?
ならブランデー造ってよ。セレスティーヌ様もお菓子作るのに必要だからって欲しがってたし、本物が作れるなら光の神殿として買い占めるからさ」
いつもどおりにパウンドケーキを堪能したあと夕刻前に引き上げて行った上司と同僚を見送り、1人だけ残ってブランデーを楽しんでいるのは、赤毛が印象的な光の神に仕える司祭、カルロッタ。
そう、彼等はそれぞれの事情により、夜中に向こうに戻っても一向に問題が無い『酒飲み』たちである。
……向こうの世界で出会ったら、互いに命がけの殺し合いになりそうな組み合わせもあったりするのだが、この店ではお互い争わないことを貫いている。
そんなわけでそれぞれ『好物』を食べ終えた彼等は卓を移動し、軽いつまみと共に酒を飲んでいた。
「おっと、ありゃあ給仕の娘っ子か。なるほど晩飯の時間か」
「……お、ありゃあ串焼きかね?……うまそうだねえ」
1本の串焼きを皿に乗せて持ってきたアレッタが、そのまま隅っこの空いた席に座るのを目ざとく見つけたタツジが呟き、オトラもそれに乗る。
異世界の住人たる店主に依れば『マカナイ』なるものは客に出すようなものではない料理という意味らしく、メニューに載っていない料理ばかりである。
毎回あの魔族の従業員が実に美味そうに食べているのを見て頼んでみたこともあるのだが『お客様に出すような料理じゃないものですみません』と断られることも多い。
「しかっし……今日のはまたいちだんと美味そうじゃのう……」
「いかにも酒とあいそうじゃなあ……」
ドワーフ2人も敏感に『美味の気配』を感じ取って唾を飲む。日本秀身堂救急箱
食べられないとなればなおさらだ。
「ふむ……海の幸に野菜か……」
「白ワインとも合いそうですね」
吸血鬼の2人も魚介類と共に飲む白ワインの味を思い出して舌なめずりをする。
「う~む、私はお肉とかの方がいいかなあ。どうも海の幸ってあんまり食べないから、良く味が分からないし」
カルロッタだけが少し反応が鈍かった。
さて、そんな視線を気にすることなく、アレッタはそれを前に唾を飲む。
(冷めないうちに食べないと……)
普通は屋台で、そのまま渡す予定だという、海の幸と野菜の串焼き。
上からホタテなる貝、トウモロコシという黄色い粒のついた野菜、クラーコ、エリンギというキノコ、そして丸まったシュライプ。
海の幸と夏から秋にかけて特に美味しくなる野菜を交互に刺して、ショーユだけで焼いたと言う。
何でももう一つの売り物である『肉』が濃い味なので、こちらはあっさりめとのことだった。
「魔の眷属を束ねし我等が神よ。私に今日を生きる糧を与えてくださったことに感謝いたします」
丁寧に祈りを捧げてから、アレッタは串を持ち上げる。
口元に近づけることで串焼きの香りが強く感じ取れる。
新鮮な海の幸と焼けたショーユが混ざり合う独特の香り。
それをまず胸いっぱいに吸い込む。
その香りだけで口に唾が沸いてくる。
こくりと喉を鳴らしてそれを飲み込むと、アレッタはそれをほおばる。
(ん!……おいしい!)
焼きたてでまだ熱い串焼きの熱気を逃がしながら、アレッタはその味を堪能する。
最初に口に飛び込んでくるのはショーユを塗られ焼かれた貝の味。
普段、衣をつけて揚げて出すことが多いそれはショーユをつけて焼いても美味だった。
噛み締めるたびに貝がほぐれ、貝の旨みをたっぷり含んだ汁がアレッタの口の中に広がって行く。
大ぶりの貝はそれだけでも充分ご馳走である。
だが串焼きはまだまだ終わりではない。
トウモロコシの甘さに、クラーコの歯ごたえ、ショーユが染み込んだキノコに、最後の締めに来るシュライプ。
海の幸と野菜を交互に味あわせるそれは、ショーユのシンプルな味付けであるが故に素材の味を存分に味わうことが出来るものであった。
アレッタは瞬く間にかなりのボリュームがある串焼きを1本平らげる。
(美味しいけど……足りない!)
その味に食欲を刺激され、アレッタは切実に思う。
もっと食べたい、と。
そんなときだった。
「ほい。肉のほうもって来たぞ。熱いから気をつけてな」
そう言いながら店主はそれをアレッタの皿の上に置く。
「いいんですか!?」
「もちろん。っていうかあれ1本じゃ足りないだろうし、元々両方味見してもらうつもりだったからな」
店主が笑いながら頷く。
「はい!ありがとうございます!」
それに答えるようにアレッタは店主が見ている前でその串焼きに手を伸ばす。
(あ……これ、ソースが美味しい!)
かぶりついた瞬間、アレッタはそのソースの美味しさを感じ取った。簡約痩身
甘くて、辛くて、酸っぱい。
3種類の味を同時に含んだ……強い味のソース。
その味が口いっぱいに広がる。
その強いソースが染み込んだ肉は……牛の肉。
丁寧に店主が下ごしらえしたことで柔らかなそれは同時に強い肉の味を持つ肉汁をたっぷり含んでいて、ソースにも負けていない。
更に、肉と肉の間に挟まれた野菜は、オラニエとダンシャクの実。
あえて充分に火を通さずに辛味と歯ごたえを残したオラニエは口の中で小気味よい音を立ててソースの味を中和し、一旦茹でてから食べやすいサイズに切った皮つきのダンシャクの実は口の中で崩れる。
それらはどちらも肉の余韻を一旦消し去って……2つ目、3つ目の肉を美味しく食べる用意を整える。
お陰で濃い味付けにも関わらず美味しく食べられて、アレッタは満足した。
食べ終るまではあっという間であった。それほどに、美味だった。
「で、どうだい?美味かったか?」
「はい!どっちも凄く美味しかったです!」
店主の問いかけにアレッタは笑顔で頷く。
心の底から同意する。
というか、この味だったら、貴重な給金の一部を使って買いたいと思えるほどの味であった。
「そうかそうか……よっしゃ。これなら明日もがっつり売れそうだな」
その言葉に店主もちょっと安堵してほっと息を吐く。
……彼等は気づかない。すぐそばで聞き耳を立てていた一団にその言葉を聴かれたことを。
「おい!店主、それ、売り物なのか!?」
「へ!?あ、まあ、そうですけど……」
唐突にやたら大きい鬼の男に聞かれ、驚きつつも店主は頷く。
その反応に何故かタツジだけでなく、卓に座っている一団全員がきらりと目を光らせた、気がした。
(あれ?なんか俺……まずったか?)
そんな嫌な予感を感じた直後。
「おう、そういうことならワシにもあの串焼きをくれ!とりあえずあの海の幸の奴を5本ほどな!」
「肉の方も5本じゃ!早めに頼むぞ!」
「俺等はとりあえず10本ずつくれ!それとしょうちゅうを瓶で追加だ!」
「じゃんじゃん持ってきとくれよ!あいつは絶対しょうちゅうに合いそうだからね!」
「では、私たちもそれぞれ1本ずつお願いするよ」
「ガレオ抜きで、お願いしますね」
「あ、じゃあ私もお肉の方お願いね。お酒はブランデーよりビールの方が合いそうな気がするから、そっちで」
卓の全員から注文を受ける。
「へ!?あ、その……分かりました」
店主はその注文に困りながらも、頷く。
元々は客に出すつもりで沢山作った料理だ。
それが異世界の住人だからといって出せないとは言えなかった。
……その後、合計で3桁に届く本数のバーベキューを平らげられ、下ごしらえ込みで作り直しに深夜までかかることになるのだが、それはまた、別の話。西班牙蒼蝿水口服液+遅延増大
一心不乱に刺す。
ちくちくと、薄いビニール手袋をはめた右手でひたすらに大きめに切った肉や野菜を刺していく。
「あ、あのマスター……何やってるんですか? 」V26即効ダイエット
その声に店主は我に返った。
「ん?……ああ、ちょいと明日の売り物をな」
どうやら気がつかないうちにアレッタが来る時間になってたらしい。
それに気づき、店主はアレッタに向き直って、言う。
「明日、ですか?確か明日ってお休みじゃなかったですか? 」
「ああ、違う違う。明日っつっても店じゃなくてな、秋祭りで出す屋台の分だよ」
不思議そうに尋ねるアレッタに、手を軽く振りながら店主が言う。
そう、明日の日曜日は近所の神社で秋祭りがある。
店主も含めた商店街の連中は皆、その手伝いの一環として屋台を出すことになっていた。
洋食のねこやがある商店街は、飲食店が多い。
商店街にある店の半分が飲食店で、残った半分の更に半分がそれらの飲食店に食材を卸している肉屋や八百屋、魚屋などである。
近所にあるオフィス街には、社員食堂を持っている会社はほとんど無いためか、昼休みともなれば合計で1000を越える客たちが近場で美味しい料理を出すこの商店街に集まる。
それが昔から続いていた結果、こうなったらしい。
が、決して楽だというわけではない。
なにしろ商店街全体での客は毎日必ずある程度見込めるものの、場所柄、ここを利用する客の大半はリピーターである。
他の店には無い売りのひとつも示せ無くては1年もしないうちに廃れてしまう。
そのためか長年この界隈で『生き残ってきた』飲食店は、ねこやも含め評判が良い。
出す料理の種類こそバラバラだが、どこも『うちがこの商店街で一番美味い』と言う程度の腕はあるのである。
通常の営業では、出す料理の種類が違うということで『共食い』にはならない商店街の各店だが、唯一例外がある。
毎年この時期に、近所の神社で行われる秋祭りである。
近所の神社の、ささやかな祭りの出店は、毎年商店街にある店が担当している。
……1日という短い開催期間で、顔をつき合わせて屋台で料理を売るのである。
しかも客はほぼすべての屋台の売り物を見てから何を食べるか決める。
勝っても負けても何があるわけでは無いが、そこで負けると非常に悔しいと思うのが、人情というもの。
そんなわけで毎年、商店街の各店は、他の『ライバル』より売れる屋台にしようとしのぎを削る。
ギリギリ赤字にはならない程度に値段を抑えてしまえば、あとに残るのは如何に客を引き込める料理を作れるかという部分のみ。
(最近はそんな長年の勝負のお陰か、地元の神社のささやかな祭りとは思えぬ程度には客が来るようになってもいるし、
毎年タウン誌が特集を組んでいたりする)
それは商店街では一番の古株の一つであるねこやでも例外ではなく、毎年技術の限りを尽くした屋台料理を出しているのだ。
そして、今年店主が選んだ料理は……
「コイツは屋台で売る用の串焼き……まあバーベキューだな」
大きい竹串に通した肉と野菜を見せて、店主が言う。
「バーベキュー……? 」
「おう、他のバイトにも昨日試作した奴を食ってもらったが、美味いって評判良かったんだぜ?ソースも自家製だしな」
店主が言いきる。
去年は店主が高校の頃バイトしていた師匠とでも言うべき中華料理屋『笑龍』の特製肉まんにあと一歩及ばなかったが、今年は自信がある。
向こうがもうもうと上がる蒸気で来るならこちらは炭火で焼いた肉と野菜、それと別の鉄板で焼く海鮮焼きの焼ける匂いで勝負だ。
店主のやる気は充分であった。
「ま、アレッタちゃんにも賄いで出してやるから楽しみにしといてくれ。流石に朝からバーベキューだと重いから、夕方にな」V26Ⅱ即効減肥サプリ
ついでに味を見てもらおうなどと思いながら、店主が言う。
「はい!楽しみにしてます! 」
店主がこれだけ言うならば、きっと美味いのだろう。
そんな確信すら覚えながら、アレッタは力強く頷いた。
昼日中にはあちこちから訪れた客で賑やかな異世界食堂といえど、日が暮れる頃になれば大分静かになる。
異世界食堂に繋がる扉は得てして人里離れた辺鄙なところにある。
日が暮れた後に出向いてしまえば、帰りつくのはまず間違いなく月の輝く夜になる。
夜を主な活動の場所にする危険な獣やモンスター、アンデッドが出てくる夜道をわざわざ歩くくらいなら、太陽が空に輝く昼間のうちに訪れるのが普通。
いくら異世界食堂の客といえど、扉のある場所に住んでたり、扉の前で野宿上等なんてハーフリングばかりではないのである。
そして夕方。昼間と比べれば大分忙しさが緩んだ時間帯。
卓を2つつないで占拠する一団があった。
「おうおう!やっぱ酒はウィスキーが最高じゃのう!」
「おう!このフライとあわせるとたまらんわい!」
まるで水か何かのようにカパカパとドワーフの職人コンビ、ガルドとギレムがウィスキーを飲み干していく。
「へっ。わかってねえなあ。しょうちゅうこそこの店の酒の華よ」
「そうさ。同じ強い酒でもこっちのがうまいよね。やっぱり」
そう言って同じように焼酎を飲んでいるのは、ドワーフコンビの倍は背丈があるオーガの夫婦、タツジとオトラ。
「そうかなあ?やはりこの店の酒ならばこのワインが一番だと思うけど」
「そうですね。こちらの世界のワインは赤も白も美味しいと思います」
そう言って蒼白い顔をほんのりと染めてワインを飲むのは闇の不死者たる吸血鬼、ロメロとジュリエッタ。
「ええ?葡萄酒ならやっぱブランデーだと思うけど。ってかそこのドワーフ、風の噂で聞いたけど、ウィスキー作れるんでしょ?
ならブランデー造ってよ。セレスティーヌ様もお菓子作るのに必要だからって欲しがってたし、本物が作れるなら光の神殿として買い占めるからさ」
いつもどおりにパウンドケーキを堪能したあと夕刻前に引き上げて行った上司と同僚を見送り、1人だけ残ってブランデーを楽しんでいるのは、赤毛が印象的な光の神に仕える司祭、カルロッタ。
そう、彼等はそれぞれの事情により、夜中に向こうに戻っても一向に問題が無い『酒飲み』たちである。
……向こうの世界で出会ったら、互いに命がけの殺し合いになりそうな組み合わせもあったりするのだが、この店ではお互い争わないことを貫いている。
そんなわけでそれぞれ『好物』を食べ終えた彼等は卓を移動し、軽いつまみと共に酒を飲んでいた。
「おっと、ありゃあ給仕の娘っ子か。なるほど晩飯の時間か」
「……お、ありゃあ串焼きかね?……うまそうだねえ」
1本の串焼きを皿に乗せて持ってきたアレッタが、そのまま隅っこの空いた席に座るのを目ざとく見つけたタツジが呟き、オトラもそれに乗る。
異世界の住人たる店主に依れば『マカナイ』なるものは客に出すようなものではない料理という意味らしく、メニューに載っていない料理ばかりである。
毎回あの魔族の従業員が実に美味そうに食べているのを見て頼んでみたこともあるのだが『お客様に出すような料理じゃないものですみません』と断られることも多い。
「しかっし……今日のはまたいちだんと美味そうじゃのう……」
「いかにも酒とあいそうじゃなあ……」
ドワーフ2人も敏感に『美味の気配』を感じ取って唾を飲む。日本秀身堂救急箱
食べられないとなればなおさらだ。
「ふむ……海の幸に野菜か……」
「白ワインとも合いそうですね」
吸血鬼の2人も魚介類と共に飲む白ワインの味を思い出して舌なめずりをする。
「う~む、私はお肉とかの方がいいかなあ。どうも海の幸ってあんまり食べないから、良く味が分からないし」
カルロッタだけが少し反応が鈍かった。
さて、そんな視線を気にすることなく、アレッタはそれを前に唾を飲む。
(冷めないうちに食べないと……)
普通は屋台で、そのまま渡す予定だという、海の幸と野菜の串焼き。
上からホタテなる貝、トウモロコシという黄色い粒のついた野菜、クラーコ、エリンギというキノコ、そして丸まったシュライプ。
海の幸と夏から秋にかけて特に美味しくなる野菜を交互に刺して、ショーユだけで焼いたと言う。
何でももう一つの売り物である『肉』が濃い味なので、こちらはあっさりめとのことだった。
「魔の眷属を束ねし我等が神よ。私に今日を生きる糧を与えてくださったことに感謝いたします」
丁寧に祈りを捧げてから、アレッタは串を持ち上げる。
口元に近づけることで串焼きの香りが強く感じ取れる。
新鮮な海の幸と焼けたショーユが混ざり合う独特の香り。
それをまず胸いっぱいに吸い込む。
その香りだけで口に唾が沸いてくる。
こくりと喉を鳴らしてそれを飲み込むと、アレッタはそれをほおばる。
(ん!……おいしい!)
焼きたてでまだ熱い串焼きの熱気を逃がしながら、アレッタはその味を堪能する。
最初に口に飛び込んでくるのはショーユを塗られ焼かれた貝の味。
普段、衣をつけて揚げて出すことが多いそれはショーユをつけて焼いても美味だった。
噛み締めるたびに貝がほぐれ、貝の旨みをたっぷり含んだ汁がアレッタの口の中に広がって行く。
大ぶりの貝はそれだけでも充分ご馳走である。
だが串焼きはまだまだ終わりではない。
トウモロコシの甘さに、クラーコの歯ごたえ、ショーユが染み込んだキノコに、最後の締めに来るシュライプ。
海の幸と野菜を交互に味あわせるそれは、ショーユのシンプルな味付けであるが故に素材の味を存分に味わうことが出来るものであった。
アレッタは瞬く間にかなりのボリュームがある串焼きを1本平らげる。
(美味しいけど……足りない!)
その味に食欲を刺激され、アレッタは切実に思う。
もっと食べたい、と。
そんなときだった。
「ほい。肉のほうもって来たぞ。熱いから気をつけてな」
そう言いながら店主はそれをアレッタの皿の上に置く。
「いいんですか!?」
「もちろん。っていうかあれ1本じゃ足りないだろうし、元々両方味見してもらうつもりだったからな」
店主が笑いながら頷く。
「はい!ありがとうございます!」
それに答えるようにアレッタは店主が見ている前でその串焼きに手を伸ばす。
(あ……これ、ソースが美味しい!)
かぶりついた瞬間、アレッタはそのソースの美味しさを感じ取った。簡約痩身
甘くて、辛くて、酸っぱい。
3種類の味を同時に含んだ……強い味のソース。
その味が口いっぱいに広がる。
その強いソースが染み込んだ肉は……牛の肉。
丁寧に店主が下ごしらえしたことで柔らかなそれは同時に強い肉の味を持つ肉汁をたっぷり含んでいて、ソースにも負けていない。
更に、肉と肉の間に挟まれた野菜は、オラニエとダンシャクの実。
あえて充分に火を通さずに辛味と歯ごたえを残したオラニエは口の中で小気味よい音を立ててソースの味を中和し、一旦茹でてから食べやすいサイズに切った皮つきのダンシャクの実は口の中で崩れる。
それらはどちらも肉の余韻を一旦消し去って……2つ目、3つ目の肉を美味しく食べる用意を整える。
お陰で濃い味付けにも関わらず美味しく食べられて、アレッタは満足した。
食べ終るまではあっという間であった。それほどに、美味だった。
「で、どうだい?美味かったか?」
「はい!どっちも凄く美味しかったです!」
店主の問いかけにアレッタは笑顔で頷く。
心の底から同意する。
というか、この味だったら、貴重な給金の一部を使って買いたいと思えるほどの味であった。
「そうかそうか……よっしゃ。これなら明日もがっつり売れそうだな」
その言葉に店主もちょっと安堵してほっと息を吐く。
……彼等は気づかない。すぐそばで聞き耳を立てていた一団にその言葉を聴かれたことを。
「おい!店主、それ、売り物なのか!?」
「へ!?あ、まあ、そうですけど……」
唐突にやたら大きい鬼の男に聞かれ、驚きつつも店主は頷く。
その反応に何故かタツジだけでなく、卓に座っている一団全員がきらりと目を光らせた、気がした。
(あれ?なんか俺……まずったか?)
そんな嫌な予感を感じた直後。
「おう、そういうことならワシにもあの串焼きをくれ!とりあえずあの海の幸の奴を5本ほどな!」
「肉の方も5本じゃ!早めに頼むぞ!」
「俺等はとりあえず10本ずつくれ!それとしょうちゅうを瓶で追加だ!」
「じゃんじゃん持ってきとくれよ!あいつは絶対しょうちゅうに合いそうだからね!」
「では、私たちもそれぞれ1本ずつお願いするよ」
「ガレオ抜きで、お願いしますね」
「あ、じゃあ私もお肉の方お願いね。お酒はブランデーよりビールの方が合いそうな気がするから、そっちで」
卓の全員から注文を受ける。
「へ!?あ、その……分かりました」
店主はその注文に困りながらも、頷く。
元々は客に出すつもりで沢山作った料理だ。
それが異世界の住人だからといって出せないとは言えなかった。
……その後、合計で3桁に届く本数のバーベキューを平らげられ、下ごしらえ込みで作り直しに深夜までかかることになるのだが、それはまた、別の話。西班牙蒼蝿水口服液+遅延増大
2014年5月4日星期日
婿入り道具の危険物チェック
無事異世界に転移を果たした数十分後。
善治郎は、スーツ姿のまま、一ヶ月前と同じゲストルームに通された。
善治郎が持ち込んだ、荷物一式は、城の兵士達が「責任を持って、後宮に運び込む」のだそうだ。三体牛鞭
魔方陣の絨毯に乗せていた物はもちろん、善治郎が背負っていたリュックサックまで丸ごとである。
あまりに意図が見え透いた対応であるが、向こうの立場に立ってみれば極当たり前の要求であることは理解できたため、善治郎は特に逆らうこともなく、兵士達に荷物一式を預けたのだった。
無論、台車に乗せた水力発電機を初め、冷蔵庫、エアコン、フロアスタンドライトなど、電化製品を一つずつ指さし「これらは壊れ物ですので、取り扱いには十分に注意して下さい」と何度も念を押すことは忘れなかったが。
「そうだよな。王宮にいきなりあれだけ、怪しげな物体大量に持ち込んだら、まずは危険物がないかチェックされるのが当たり前か」
最悪、持ち込んだ電化製品などを危険物として処理される可能性もあるにはあるが、善治郎はその辺りやある程度楽観視している。曲がりなりにもあれらの物資は、女王であるアウラの許可を得て持ち込んだ代物だ。
もし、まかり間違って持ち込んだ道具のうちどれかが危険物だと見なされたとしても、善治郎に直接弁明する機会ぐらいはくれるはずだ。
「危険物や、変な野心があるように勘違いされるような物は、意識的に排除してきたつもりだけど、まあ、異世界だからあ……」
なんだかんだいっても、不安は残るのか、善治郎は溜息をつきつつ、スーツの上を脱ぐと椅子の背もたれにかける。
ついで、ネクタイの結び目に人差し指を引っかけると、グイグイ引っ張って喉元を緩め、ワイシャツの第一ボタンも外す。
「……ふう」
これで少しは楽になった。右手でパタパタと喉元に新鮮な空気を送り込んだ善治郎は、待ち時間を持て余すように、広いベッドの上に仰向けに倒れ込むのだった。
善治郎が広いゲストルームで暇を持て余している頃、カープァ王国女王アウラ一世は、善治郎が持ち込んだ大量の『婿入り道具』を、部下達に一つずつチェックさせていた。
「全て開いて吟味しろ。ただし、開け方が分からないものは、無理をせず、印だけつけておけ。後で私の方からゼンジロウ殿に直接問いただす。危険な物、不審な物があったら、自己完結せずに全て私の所に持ってまいれ」
「はっ、了解しました!」
「承知いたしました」
白い革鎧に身を包んだ近衛兵と、南国らしい半袖ミニスカートのエプロンドレスを着た侍女達が、女王陛下の命に従い、善治郎の荷物を丁寧に開いていく。
スリードア冷蔵庫を上から順に開き、中に首を突っ込んで確認している者。エアコンの中を確認しようと、首を傾げている者。半透明の衣装ケースを開き、善治郎がしこたま買い込んだTシャツやトランクスパンツを一枚一枚丁寧に開いては、たたみ直している者。
突如王宮に持ち込まれた大量の『不審物』である。チェックを怠るわけにはいかないが、持ち込んだ相手は、女王の夫となるやんごとなきお方だ。
万が一にも品物を破損させたり、汚したりするわけにはいかない。
そのため、十数人がかりだというのに、確認作業は中々はかどらなかった。
それでも、そうしているうちに、気になる物を発見した人間が、アウラの所に報告をあげる。
「陛下、こちらの透明な容器の中身は、酒のようです。特殊な封がされている模様で、開け方は分かりませんでしたが、割れた器の中身から、酒の匂いがしています」
善治郎がアウラへの土産として持ち込んだ酒類。転移の衝撃で倒れてしまったのだろう。比較的薄い瓶に入っていた日本酒とワインが一本ずつ割れてその中身を絨毯にしみこませていた。
言われるまでもなく、その匂いから善治郎の荷物に酒が混ざっていたことを知っていたアウラは、小さく一つ頷くと、
「残っている酒は纏めて酒蔵に安置せよ。割れた酒の器はこちらに持ってまいれ。あ、持ち運びには十分気を配れ。どうやら、その器は木樽などとは比べものにならぬほど割れやすいようだ」
そう、兵士と侍女に命令する。
「はっ、承知しました」
「はい、こちらです」
兵士がそっと両手に一本ずつ酒瓶を持ち、部屋から出て行くと同時に、侍女は割れた日本酒とワインの瓶を手に取り、アウラに差し出す。男宝
わざと曇りガラスにした白い日本酒の瓶と、濃い赤紫色の透き通った赤ワインの瓶。その二つの破片を手に取ったアウラは、窓から差し込む陽光に透かせて見て、驚きの声を上げた。
「すごいな。まるで水晶を加工したかのようだ。婿殿の世界では、この様な器が一般的なのか?」
この世界全体を見渡せばどうか分からないが、少なくともここカープァ王国には、ガラスの製造技術が存在しない。
現代の地球で作られた酒瓶のたぐいは、この世界の人間にはただの器というより、一種の芸術品に映る。デザインにも凝っている、ブランデーやウィスキーの瓶は特にそうだ。
「陛下、こちらはどうやら食器のようです。グラスも皿も、木や銀ではなく、その酒瓶と同じような透明な材質か、光沢のある石の様な物で出来ています。こちらも、転移の衝撃で数枚破損しているものがありました」
善治郎が持ち込んだ食器は、日本ではごく一般的な陶器製のものであり、ついでに持ってきたワイングラスや、ウィスキーグラスは全てガラス製である。
善治郎が、わざわざこんな壊れ物を持ち込んだのは、前回食事を摂ったとき、この世界の食器が全て木製か金属製であることに気づいたからだ。
わざわざそれを指摘するほど、気になることではなかったが、陶器やガラスの食器に慣れてきた善治郎には若干の違和感があった。本人も気づいていないが、特に善治郎が違和感を覚えたのは、酒や水のグラスである。
銀は、他の金属と比べれば味移りのしない金属であるが、それでもやはり全く味がしないわけではない。
フォークやスプーンは日本でもステンレス製が一般的なため、善治郎も違和感は覚えなかったのだろうが、グラスのたぐいは違う。
言うならば同じメーカーのお茶でも、ペットボトルで飲むのと、缶で飲むのと、ガラスのコップに空けて飲むのでは、味が違うように感じるのと同種の話だ。
アウラは、無色透明のワイングラスを手に取ると、チンと指で弾く。
「これも見事だな。美術品の収集癖がある貴族ならば、これ一つでずいぶんな譲歩を引き出せそうだ」
無論これは、善治郎の財産であり、いかに妻であってもアウラに好きにする権利はない。しかし、あの物わかりが良くて、人の良い婿殿の事だ。頼めば一つくらい融通してくれるのではないだろうか。
いつの間にか、籠絡すべき貴族の顔を思い浮かべ始めたアウラは頭を振り、現状に思考を向ける。
「他にはなにか、あったか?」
「はっ、陛下。こちらをご覧下さい。これは、ひょっとして『武器』のたぐいなのではないでしょうか?」
そう言って、兵士が持ってきたのは蒼い長方形の箱に収められた金属の棒と、小さなねじくれた釘が沢山詰まった小袋、そして小さな刃が正面から向き合った形の不思議な刃物だった。
「見せてみろ。うむ……いや、武器ではないな。恐らくなにかの道具だろう。武器として使うにはあまりに非効率的すぎる」
手渡された『ドライバーセット』『ネジ釘』『パイプカッター』を見たアウラは答えた。
それらは全て、エアコンを取り付けるための道具である。他にも『ハンマードリル』や『真空ポンプ』や『真空計』など、異世界人には意味不明の道具がつらつらと並んでおり、それら一式があればエアコンの取り付けは可能である。
ただし、経験者に限る、と但し書きが付くが。
ネットで一通り調べた結果、素人が紙の上の知識だけでエアコンの取り付けに成功する可能性はかなり低いと知った善治郎であったが、そのときにはすでにエアコンは購入した後であった。
エアコンの取り付け方を説明しているインターネットのホームページを片っ端からプリントアウトして持ってきている辺り、『エアコンのある異世界生活』を諦める気はないようだが、速攻で『扇風機』と『冷凍室に入る大きさの金だらい』を購入してきたという事実を鑑みると、現実がまるで見えていないわけでもなさそうだ。
続いて別の兵士も、なにに使うのかわかない装置を持ってアウラの前に進み出る。
「陛下、これは兵器ではないのでしょうか? ご覧下さい。一見ただの箱に見えますが、中には複数の刃が設置されてあり、この横の棒を回すとこの通り、中の刃が高速で回転する仕組みになっている模様です」男根増長素
「ほう、これは興味深いな。面白いカラクリだ。しかし、凶器ではないだろう。これで一体どうやって、攻撃を加えるつもりだ?」
「敵の手を掴み、この箱の中に突っ込み棒を回す……とか?」
言ってる途中で自分でも説得力の無さに気づいたのか、言葉が尻すぼみになる兵士に、アウラは苦笑を浮かべて突っ込みを入れる。
「それでは兵器ではなく、拷問道具だ。まあ、使いようによっては危険かも知れぬが、恐らく攻撃的な意図で作られた道具ではないだろう。元の場所に戻しておけ」
「はっ」
兵器やら拷問道具やら、色々不名誉な役割を押しつけられそうになった、善治郎の『かき氷機』は、無事に元あった場所へ戻された。
その後も、大量に買いだめた石鹸やら、歯ブラシやら、蚊取り線香やら、異世界人にはさっぱり用途の分からないものがゾクゾクと発見される。
同じものを複数購入した、LEDフロアスタンドライトは、見た目だけならば、この世界にある大型の燭台に近い形をしているので、漠然と用途が想像できるようだが、蝋燭を立てる場所も、油皿に相当する部分もないため、結局はこれも謎の物体のままだ。
そうしていうるうちに、絨毯の上に会った荷物ではなく、善治郎が直接背負っていたリュックサックの中身を確認していた侍女が、口の開いたままのリュックを片手に、アウラの前にやってきた。
「へ、陛下ッ。こちらの中身は水、食料、毛布や着替えが大半でした」
侍女の報告にアウラはしばし考え後、得心がいったように頷いた。
「ああ、なるほど。何らかの非常事態に備えていたということか。そうだな、婿殿には私の召喚魔法が失敗したあかつきには、どのような結果が出るか説明していなかったからな」
召喚魔法が失敗した場合には、魔法自体が発動しない。そのため、善治郎の用心は全く無駄だったのだが、この場合失態を犯したのはどちらかと言うことアウラの方だ。
「しまったな。婿殿に余計気を遣わせてしまった。後でわびねばならぬ。……ん? どうした? まだ、何かあるのか?」
リュックを持った侍女の顔色が悪いことに気づいたアウラは、なぜか顔色を失っている侍女にそう問いかける。
侍女は、青ざめた顔のまま「は、はい」とか細い声で答えると、
「こ、こちらをご覧下さい」
といって、リュックの横のポケットから、なにやら小さな巾着袋の有名モノを二つ取り出し、アウラへと差し出す。V26Ⅳ美白美肌速効
「む、これは……!?」
無造作に、巾着袋を開き、中を見たアウラはその赤茶色の目を見開き、絶句する。
アウラが開いた二つの巾着袋。一つには、小指の先くらい大きさの、カラフルな色を封じ込めた透明な宝玉がぎっしりと入っており、もう一つにはやはりキラキラとカラフルに光る、砂粒大の真ん中に穴の開いた小さな粒が、無数に詰め込まれていた。
平たく言えば『ビー玉』と『ビーズ』である。
これも、善治郎の『ハプニング対策』の一つだ。
万が一、王宮以外の異世界に漂流してしまった場合のことを考えた善治郎は、異世界の街で換金できそうで、それでいてあまりかさばらないモノは何かと考えた結果、『ビー玉』と『ビーズ』を選択したのである。
王宮で、窓や食器に一切ガラスが使われていなかったことを思い出したため選択した代物であるが、内心善治郎は、異世界の人間を『未開地の原住民』扱いしている気がして、あまり良い気分はしていなかった。
しかし、背に腹は代えられない。ビー玉一つで一泊の宿が取れたり、ビーズ数粒で食事一食分の代金になれば御の字。それくらいに考えていた善治郎であったが、その価値観は大幅にずれていると言わざるを得ない。
目で見える気泡もほとんどなく、完全な真球をしたガラス玉のこの世界での価値は、現代日本のような『おもちゃ』でも、善治郎が想像しているような『ちょっとした通貨の変わり』でもない。
そのままズバリ、『宝玉』として扱われる。
実際、地球でもトンボ玉と呼ばれるガラス玉の一種は、その歴史的価値も付加されているとはいえ、一個百万円を超える金額で取引されるモノもそう珍しくはない。
善治郎が持ち込んだビー玉やビーズはそこまで大したものではないが、ガラスの製法自体が伝わっていないこの世界では、その価値は善治郎の想像を遙かに超えるモノとなる。
「厳重にしまって、元に戻しておけ」
「は、はいっ……!」
命令を受けた侍女は、女王の手から二つの巾着袋を受け取ると、爆発物でも扱うような慎重な手つきで、それをリュックのポケットへと戻していった。
長かった善治郎の荷物チェックも、終盤に差し掛かり、すでに自分の担当を終えて、作業中の仲間達の邪魔にならないよう壁際に引っ込んだ兵士や侍女達が目立ち始めた頃、アウラは全体に声を掛ける。
「もう、なにか報告することはないか?」
すでに大部分の品については、一通り報告を受けている。
半ばもう報告はないと決めつけていたアウラであったが、ふと衣装ケースを開いている兵士の方に視線を向けると、その男はあからさまにビクッと身体を震わせ、なにやら素早く手に持っていた物をケースの中に戻そうとする。
「待て! 貴様、今何を隠した!? 動くなっ、ゆっくりとその右手をケースから出せ!」
見咎めたアウラは、鋭い声を上げる。
(今の動きはなんだ? 婿殿の持ち物に毒か何かを忍ばせたのか!?)
厳選に厳選を重ねて、この場に集めたはずの近衛兵士の中に、裏切り者がいたのか?
アウラは厳しい、苛烈な視線で、不審な兵士を射貫く。V26Ⅲ速效ダイエット
善治郎は、スーツ姿のまま、一ヶ月前と同じゲストルームに通された。
善治郎が持ち込んだ、荷物一式は、城の兵士達が「責任を持って、後宮に運び込む」のだそうだ。三体牛鞭
魔方陣の絨毯に乗せていた物はもちろん、善治郎が背負っていたリュックサックまで丸ごとである。
あまりに意図が見え透いた対応であるが、向こうの立場に立ってみれば極当たり前の要求であることは理解できたため、善治郎は特に逆らうこともなく、兵士達に荷物一式を預けたのだった。
無論、台車に乗せた水力発電機を初め、冷蔵庫、エアコン、フロアスタンドライトなど、電化製品を一つずつ指さし「これらは壊れ物ですので、取り扱いには十分に注意して下さい」と何度も念を押すことは忘れなかったが。
「そうだよな。王宮にいきなりあれだけ、怪しげな物体大量に持ち込んだら、まずは危険物がないかチェックされるのが当たり前か」
最悪、持ち込んだ電化製品などを危険物として処理される可能性もあるにはあるが、善治郎はその辺りやある程度楽観視している。曲がりなりにもあれらの物資は、女王であるアウラの許可を得て持ち込んだ代物だ。
もし、まかり間違って持ち込んだ道具のうちどれかが危険物だと見なされたとしても、善治郎に直接弁明する機会ぐらいはくれるはずだ。
「危険物や、変な野心があるように勘違いされるような物は、意識的に排除してきたつもりだけど、まあ、異世界だからあ……」
なんだかんだいっても、不安は残るのか、善治郎は溜息をつきつつ、スーツの上を脱ぐと椅子の背もたれにかける。
ついで、ネクタイの結び目に人差し指を引っかけると、グイグイ引っ張って喉元を緩め、ワイシャツの第一ボタンも外す。
「……ふう」
これで少しは楽になった。右手でパタパタと喉元に新鮮な空気を送り込んだ善治郎は、待ち時間を持て余すように、広いベッドの上に仰向けに倒れ込むのだった。
善治郎が広いゲストルームで暇を持て余している頃、カープァ王国女王アウラ一世は、善治郎が持ち込んだ大量の『婿入り道具』を、部下達に一つずつチェックさせていた。
「全て開いて吟味しろ。ただし、開け方が分からないものは、無理をせず、印だけつけておけ。後で私の方からゼンジロウ殿に直接問いただす。危険な物、不審な物があったら、自己完結せずに全て私の所に持ってまいれ」
「はっ、了解しました!」
「承知いたしました」
白い革鎧に身を包んだ近衛兵と、南国らしい半袖ミニスカートのエプロンドレスを着た侍女達が、女王陛下の命に従い、善治郎の荷物を丁寧に開いていく。
スリードア冷蔵庫を上から順に開き、中に首を突っ込んで確認している者。エアコンの中を確認しようと、首を傾げている者。半透明の衣装ケースを開き、善治郎がしこたま買い込んだTシャツやトランクスパンツを一枚一枚丁寧に開いては、たたみ直している者。
突如王宮に持ち込まれた大量の『不審物』である。チェックを怠るわけにはいかないが、持ち込んだ相手は、女王の夫となるやんごとなきお方だ。
万が一にも品物を破損させたり、汚したりするわけにはいかない。
そのため、十数人がかりだというのに、確認作業は中々はかどらなかった。
それでも、そうしているうちに、気になる物を発見した人間が、アウラの所に報告をあげる。
「陛下、こちらの透明な容器の中身は、酒のようです。特殊な封がされている模様で、開け方は分かりませんでしたが、割れた器の中身から、酒の匂いがしています」
善治郎がアウラへの土産として持ち込んだ酒類。転移の衝撃で倒れてしまったのだろう。比較的薄い瓶に入っていた日本酒とワインが一本ずつ割れてその中身を絨毯にしみこませていた。
言われるまでもなく、その匂いから善治郎の荷物に酒が混ざっていたことを知っていたアウラは、小さく一つ頷くと、
「残っている酒は纏めて酒蔵に安置せよ。割れた酒の器はこちらに持ってまいれ。あ、持ち運びには十分気を配れ。どうやら、その器は木樽などとは比べものにならぬほど割れやすいようだ」
そう、兵士と侍女に命令する。
「はっ、承知しました」
「はい、こちらです」
兵士がそっと両手に一本ずつ酒瓶を持ち、部屋から出て行くと同時に、侍女は割れた日本酒とワインの瓶を手に取り、アウラに差し出す。男宝
わざと曇りガラスにした白い日本酒の瓶と、濃い赤紫色の透き通った赤ワインの瓶。その二つの破片を手に取ったアウラは、窓から差し込む陽光に透かせて見て、驚きの声を上げた。
「すごいな。まるで水晶を加工したかのようだ。婿殿の世界では、この様な器が一般的なのか?」
この世界全体を見渡せばどうか分からないが、少なくともここカープァ王国には、ガラスの製造技術が存在しない。
現代の地球で作られた酒瓶のたぐいは、この世界の人間にはただの器というより、一種の芸術品に映る。デザインにも凝っている、ブランデーやウィスキーの瓶は特にそうだ。
「陛下、こちらはどうやら食器のようです。グラスも皿も、木や銀ではなく、その酒瓶と同じような透明な材質か、光沢のある石の様な物で出来ています。こちらも、転移の衝撃で数枚破損しているものがありました」
善治郎が持ち込んだ食器は、日本ではごく一般的な陶器製のものであり、ついでに持ってきたワイングラスや、ウィスキーグラスは全てガラス製である。
善治郎が、わざわざこんな壊れ物を持ち込んだのは、前回食事を摂ったとき、この世界の食器が全て木製か金属製であることに気づいたからだ。
わざわざそれを指摘するほど、気になることではなかったが、陶器やガラスの食器に慣れてきた善治郎には若干の違和感があった。本人も気づいていないが、特に善治郎が違和感を覚えたのは、酒や水のグラスである。
銀は、他の金属と比べれば味移りのしない金属であるが、それでもやはり全く味がしないわけではない。
フォークやスプーンは日本でもステンレス製が一般的なため、善治郎も違和感は覚えなかったのだろうが、グラスのたぐいは違う。
言うならば同じメーカーのお茶でも、ペットボトルで飲むのと、缶で飲むのと、ガラスのコップに空けて飲むのでは、味が違うように感じるのと同種の話だ。
アウラは、無色透明のワイングラスを手に取ると、チンと指で弾く。
「これも見事だな。美術品の収集癖がある貴族ならば、これ一つでずいぶんな譲歩を引き出せそうだ」
無論これは、善治郎の財産であり、いかに妻であってもアウラに好きにする権利はない。しかし、あの物わかりが良くて、人の良い婿殿の事だ。頼めば一つくらい融通してくれるのではないだろうか。
いつの間にか、籠絡すべき貴族の顔を思い浮かべ始めたアウラは頭を振り、現状に思考を向ける。
「他にはなにか、あったか?」
「はっ、陛下。こちらをご覧下さい。これは、ひょっとして『武器』のたぐいなのではないでしょうか?」
そう言って、兵士が持ってきたのは蒼い長方形の箱に収められた金属の棒と、小さなねじくれた釘が沢山詰まった小袋、そして小さな刃が正面から向き合った形の不思議な刃物だった。
「見せてみろ。うむ……いや、武器ではないな。恐らくなにかの道具だろう。武器として使うにはあまりに非効率的すぎる」
手渡された『ドライバーセット』『ネジ釘』『パイプカッター』を見たアウラは答えた。
それらは全て、エアコンを取り付けるための道具である。他にも『ハンマードリル』や『真空ポンプ』や『真空計』など、異世界人には意味不明の道具がつらつらと並んでおり、それら一式があればエアコンの取り付けは可能である。
ただし、経験者に限る、と但し書きが付くが。
ネットで一通り調べた結果、素人が紙の上の知識だけでエアコンの取り付けに成功する可能性はかなり低いと知った善治郎であったが、そのときにはすでにエアコンは購入した後であった。
エアコンの取り付け方を説明しているインターネットのホームページを片っ端からプリントアウトして持ってきている辺り、『エアコンのある異世界生活』を諦める気はないようだが、速攻で『扇風機』と『冷凍室に入る大きさの金だらい』を購入してきたという事実を鑑みると、現実がまるで見えていないわけでもなさそうだ。
続いて別の兵士も、なにに使うのかわかない装置を持ってアウラの前に進み出る。
「陛下、これは兵器ではないのでしょうか? ご覧下さい。一見ただの箱に見えますが、中には複数の刃が設置されてあり、この横の棒を回すとこの通り、中の刃が高速で回転する仕組みになっている模様です」男根増長素
「ほう、これは興味深いな。面白いカラクリだ。しかし、凶器ではないだろう。これで一体どうやって、攻撃を加えるつもりだ?」
「敵の手を掴み、この箱の中に突っ込み棒を回す……とか?」
言ってる途中で自分でも説得力の無さに気づいたのか、言葉が尻すぼみになる兵士に、アウラは苦笑を浮かべて突っ込みを入れる。
「それでは兵器ではなく、拷問道具だ。まあ、使いようによっては危険かも知れぬが、恐らく攻撃的な意図で作られた道具ではないだろう。元の場所に戻しておけ」
「はっ」
兵器やら拷問道具やら、色々不名誉な役割を押しつけられそうになった、善治郎の『かき氷機』は、無事に元あった場所へ戻された。
その後も、大量に買いだめた石鹸やら、歯ブラシやら、蚊取り線香やら、異世界人にはさっぱり用途の分からないものがゾクゾクと発見される。
同じものを複数購入した、LEDフロアスタンドライトは、見た目だけならば、この世界にある大型の燭台に近い形をしているので、漠然と用途が想像できるようだが、蝋燭を立てる場所も、油皿に相当する部分もないため、結局はこれも謎の物体のままだ。
そうしていうるうちに、絨毯の上に会った荷物ではなく、善治郎が直接背負っていたリュックサックの中身を確認していた侍女が、口の開いたままのリュックを片手に、アウラの前にやってきた。
「へ、陛下ッ。こちらの中身は水、食料、毛布や着替えが大半でした」
侍女の報告にアウラはしばし考え後、得心がいったように頷いた。
「ああ、なるほど。何らかの非常事態に備えていたということか。そうだな、婿殿には私の召喚魔法が失敗したあかつきには、どのような結果が出るか説明していなかったからな」
召喚魔法が失敗した場合には、魔法自体が発動しない。そのため、善治郎の用心は全く無駄だったのだが、この場合失態を犯したのはどちらかと言うことアウラの方だ。
「しまったな。婿殿に余計気を遣わせてしまった。後でわびねばならぬ。……ん? どうした? まだ、何かあるのか?」
リュックを持った侍女の顔色が悪いことに気づいたアウラは、なぜか顔色を失っている侍女にそう問いかける。
侍女は、青ざめた顔のまま「は、はい」とか細い声で答えると、
「こ、こちらをご覧下さい」
といって、リュックの横のポケットから、なにやら小さな巾着袋の有名モノを二つ取り出し、アウラへと差し出す。V26Ⅳ美白美肌速効
「む、これは……!?」
無造作に、巾着袋を開き、中を見たアウラはその赤茶色の目を見開き、絶句する。
アウラが開いた二つの巾着袋。一つには、小指の先くらい大きさの、カラフルな色を封じ込めた透明な宝玉がぎっしりと入っており、もう一つにはやはりキラキラとカラフルに光る、砂粒大の真ん中に穴の開いた小さな粒が、無数に詰め込まれていた。
平たく言えば『ビー玉』と『ビーズ』である。
これも、善治郎の『ハプニング対策』の一つだ。
万が一、王宮以外の異世界に漂流してしまった場合のことを考えた善治郎は、異世界の街で換金できそうで、それでいてあまりかさばらないモノは何かと考えた結果、『ビー玉』と『ビーズ』を選択したのである。
王宮で、窓や食器に一切ガラスが使われていなかったことを思い出したため選択した代物であるが、内心善治郎は、異世界の人間を『未開地の原住民』扱いしている気がして、あまり良い気分はしていなかった。
しかし、背に腹は代えられない。ビー玉一つで一泊の宿が取れたり、ビーズ数粒で食事一食分の代金になれば御の字。それくらいに考えていた善治郎であったが、その価値観は大幅にずれていると言わざるを得ない。
目で見える気泡もほとんどなく、完全な真球をしたガラス玉のこの世界での価値は、現代日本のような『おもちゃ』でも、善治郎が想像しているような『ちょっとした通貨の変わり』でもない。
そのままズバリ、『宝玉』として扱われる。
実際、地球でもトンボ玉と呼ばれるガラス玉の一種は、その歴史的価値も付加されているとはいえ、一個百万円を超える金額で取引されるモノもそう珍しくはない。
善治郎が持ち込んだビー玉やビーズはそこまで大したものではないが、ガラスの製法自体が伝わっていないこの世界では、その価値は善治郎の想像を遙かに超えるモノとなる。
「厳重にしまって、元に戻しておけ」
「は、はいっ……!」
命令を受けた侍女は、女王の手から二つの巾着袋を受け取ると、爆発物でも扱うような慎重な手つきで、それをリュックのポケットへと戻していった。
長かった善治郎の荷物チェックも、終盤に差し掛かり、すでに自分の担当を終えて、作業中の仲間達の邪魔にならないよう壁際に引っ込んだ兵士や侍女達が目立ち始めた頃、アウラは全体に声を掛ける。
「もう、なにか報告することはないか?」
すでに大部分の品については、一通り報告を受けている。
半ばもう報告はないと決めつけていたアウラであったが、ふと衣装ケースを開いている兵士の方に視線を向けると、その男はあからさまにビクッと身体を震わせ、なにやら素早く手に持っていた物をケースの中に戻そうとする。
「待て! 貴様、今何を隠した!? 動くなっ、ゆっくりとその右手をケースから出せ!」
見咎めたアウラは、鋭い声を上げる。
(今の動きはなんだ? 婿殿の持ち物に毒か何かを忍ばせたのか!?)
厳選に厳選を重ねて、この場に集めたはずの近衛兵士の中に、裏切り者がいたのか?
アウラは厳しい、苛烈な視線で、不審な兵士を射貫く。V26Ⅲ速效ダイエット
2014年5月1日星期四
奴隷の成果
食事を終えた俺達は店の外に出て、草原に出る。
道中、ラフタリアは機嫌が良いようで鼻歌を歌っていた。
が、草原に出るや、怯えた目をして震えだす。
「怯えるな、絶対に魔物からは守ってやるから」花痴
俺の言葉にやはりラフタリアは首を傾げる。
「ほら、俺は雑魚にかまれている位じゃ痛くも痒くも無いんだ」
マントの下に隠していたバルーンを数匹見せるとラフタリアはビクっと驚く。
「痛くない、の?」
「全然」
「そう……」
「行くぞ」
「うん……コホ……」
咳が気になるが、まあ大丈夫だろう。
草原で薬草を摘みながら、森の方へ向う。
お、出てきた出てきた。
レッドバルーンが3匹、森の茂みから飛んでくる。
俺はラフタリアが噛まれない様注意しながらレッドバルーンを食いつかせる。
「ほら、さっきやったようにナイフで刺すんだ」
「……うん!」
幾分かやる気を出したラフタリアは勢い良く、レッドバルーンを後ろから突き刺した。
バアン! バアン! バアン!
この時の戦闘でラフタリアのLvが2に上昇した。
レッドスモールシールドの条件が解放されました。
レッドスモールシールド
能力未解放……装備ボーナス、防御力4
即座に盾を変化させる。
するとラフタリアは目を丸くさせて盾を見ていた。
「ご主人様は……何なのですか?」
俺が盾の勇者だと知らないのか。まあ、亜人で奴隷だしな。
「勇者だよ。盾のな」
「勇者ってあの伝説の?」
「知っているのか?」
ラフタリアはコクリと頷く。
「そうだ、俺は召喚された勇者。他に三人居る中で……一番弱いけどな!」
俺は自分の手を爪が食い込む程握り、半ば八つ当たりの様な態度を取った。
あいつ等の顔が頭に浮かんできて殺意しか湧かない。
ラフタリアが怯えた目を見せるので、これ以上は話さなかった。
「とりあえず、今日はこの森で魔物を退治するのが仕事だ。俺が押さえるからお前は刺せ」
「うん……」
多少馴れてきたのか、ラフタリアは素直に頷いた。
そうして、森の中を探索しながら出会う敵出会う敵を俺が矢面に立ち、ラフタリアに倒させる戦闘スタイルで進んでいった。
途中、バルーン以外の敵と初めて遭遇。
ルーマッシュ。
白い、動くキノコだった。何か目つきが鋭くて、大きさは人の頭くらい。
試しに殴ってみたけど、レッドバルーンと同じ手ごたえ。
これもラフタリアに倒させた。
他に色違いのブルーマッシュなる敵とグリーンマッシュが居た。
マッシュシールドの条件が解放されました。
ブルーマッシュシールドの条件が解放されました。
グリーンマッシュシールドの条件が解放されました。福源春
ステータスボーナスでは無く、どれも技能系のボーナスのようだ。
調合か……薬を卸す時に役立ちそうなスキルだな。
この日の内にラフタリアのLvが3、俺は5に上がる。
夕方、草原を歩きつつ、野宿する川辺に歩いていった。
「コホ……」
ラフタリアは文句を言わずに俺に着いて来る。
まあ、しばらくはまた金稼ぎに精を出さないとダメだろう。
川辺に到着した俺は、袋からタオルを取り出してラフタリアに渡し、薪を組み火を付ける。
「とりあえず行水してこい。凍えたら火で体を温めろよ」
「……うん」
ラフタリアは服を脱ぎ、川に入って行水を始めた。
俺はその間に釣りを始めて、晩飯の準備を始める。
その間にもラフタリアにはちゃんと目を向けておく。
何だかんだでこの辺りはバルーンが沸く、注意しておくに越したことは無い。
俺は今日の収穫物に目を向ける。
草原産の薬草、結構な量。
草原では生えていなかった薬草、結構な量。
バルーン風船、それなり。
各種マッシュ、それなり。
解放した盾、4種。
うん。明らかに効率が違う。
奴隷を購入して正解だったな。
そうだ。調合とやらに挑戦してみるか。
簡易レシピを呼び出す。
其処には俺の持っている薬草で作れる範囲の組み合わせが載っていた。
機材は……川辺にある板みたいな岩と小石で擦り合わせばどうにかなるだろう。乳鉢で作れるレシピに挑戦しよう。
コツがあるのだろうけど、簡易レシピには載ってない。
ゴリゴリゴリ……。
薬草を売っている店で店主が調合していた組み合わせを見よう見真似でやってみる。
ヒール丸薬が出来ました!
ヒール丸薬 品質 悪い→やや悪い 傷の治療を早める丸薬、傷口に塗ることで効果を発揮する。
俺の目の前にそんなアイコンが浮かぶ。
よし、成功だ。
盾が反応しているけど、今はまだ吸わせない。
一応、知らない組み合わせにも挑戦する。
時々失敗して真っ黒なゴミになるが、意外と面白いな。
パチパチパチ……。
火が弾ける音が聞こえる。
見ると行水を終えたラフタリアが焚き火で温まっていた。
「温まったか?」
「うん。コホ……」
どうも風邪っぽいな。奴隷商も病持ちとか言っていた。
そういえば……作った薬の中に風邪薬があったな。
常備薬 品質 やや良い。 軽度の風邪になら効果がある薬。
「ほら、これを飲め」
軽度って所が気になるが、無いよりマシだ。勃動力三体牛鞭
「……苦いから、嫌……ぐ……」
愚かにもワガママを言おうとしてラフタリアは胸に手を当てて苦しむ。
「ほら」
「は、はい」
震えながらラフタリアは俺が渡した薬を思いっきり飲み込んだ。
「はぁ……はぁ……」
「よしよし、良く飲んだな」
頭を撫でてやるとやはりラフタリアは不思議な表情で俺をぼんやりと見つめる。
あ、タヌキの耳はふかふかだ。
尻尾の方に目を移すと何をするのか察したのか、頬を染め、触らせないとばかりに尻尾を抱き締めて拒絶された。
「ほら、晩御飯だ」
俺は焼きあがった魚をラフタリアに渡し、調合作業に戻る。
こういう、微妙な作業は昔から好きなんだ。
日が完全に落ち、焚き火の明かりで調合を続ける。
ふむ……色々と作れるようで面白いな。
魚を食べ終えたラフタリアはウツラウツラと眠そうに火を凝視している。
「寝てもいいぞ」
俺の指示にラフタリアは首を何度も振る。
あれか? 寝たくないと駄々を捏ねる子供みたいな……て、子供か。
放っておいても勝手に寝るだろう。
そういえば、常備薬が少しは効果があったのか? 先ほどから咳が出ていない。
一頻り調合に挑戦し、あらかた出来る薬を調べた。
内、粗悪品になってしまった物は盾に吸わせて変化させる。
プチメディシンシールドの条件が解放されました。
プチポイズンシールドの条件が解放されました。
プチメディシンシールド
未解放……装備ボーナス、薬効果上昇
プチポイズンシールド
未解放……装備ボーナス、毒耐性(小)
どっちもリーフシールドとマッシュシールドから繋がる盾だ。薬効果上昇は良く分からない効果だな。
俺自身が薬を使って効果があるのか、俺が作った薬の効果が上昇するのか。
まあ、良い。
今日は収穫が多くて助かったのは間違いないのだから。
「いや……助けて……」
ラフタニアが変な声を上げた。
見ると眠っているラフタリアがうなされている。
「いやぁあああああああああああああああああああああ!」
キーンと耳が遠くなるのを感じた。
やばい、声に釣られてバルーンが来るかもしれない。
急いでラフタリアの元へ行き、口を塞ぐ。蒼蝿水
それでも漏れる声が大きくて、奴隷商が問題ありと言っていた意味を悟る。
確かにこれは大変だ。
「落ち着け、落ち着くんだ」
俺は夜泣きするラフタリアを抱え上げて、あやす。
「いやぁ…………さん。……さん」
親を呼んでいるのだろうか、ラフタリアはずっと涙を流して手を前に出して助けを求める。
「大丈夫……大丈夫だから」
頭を撫で、どうにかあやし続ける。
「泣くな。強くなるんだ」
「うう……」
泣き続けるラフタリアを抱き締める。
「ガア!」
そこに声を聞き届けたバルーンが現れた。
「ふ……」
まったく、こんな時に。
俺はラフタリアを抱き抱えながら、バルーンに向って走るのだった。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!」
チュン……チュン!
「朝か」
大変な夜だった。
群で来たバルーンを割り終わった頃、ラフタリアの夜泣きは小さくなったのだけど。少しでも離れると、大声で泣くのだ。
するとまたバルーンが沸く。
それでろくすっぽ眠ることも出来なかった。
「ん……」
「おきたか?」
「ひぃ!?」
俺に抱き抱えられていたのに驚いてラフタリアは大きく目を見開く。
「はぁ……疲れた」
城門が開くまでまだ少し時間がある。今なら仮眠くらい取れるだろう。
今日、するのは昨日作った薬の買取額と、摘んだ薬草の代金の差だ。
薬にして売るよりも薬草の代金の方が高いなら作る必要が無い。SEX DROPS
道中、ラフタリアは機嫌が良いようで鼻歌を歌っていた。
が、草原に出るや、怯えた目をして震えだす。
「怯えるな、絶対に魔物からは守ってやるから」花痴
俺の言葉にやはりラフタリアは首を傾げる。
「ほら、俺は雑魚にかまれている位じゃ痛くも痒くも無いんだ」
マントの下に隠していたバルーンを数匹見せるとラフタリアはビクっと驚く。
「痛くない、の?」
「全然」
「そう……」
「行くぞ」
「うん……コホ……」
咳が気になるが、まあ大丈夫だろう。
草原で薬草を摘みながら、森の方へ向う。
お、出てきた出てきた。
レッドバルーンが3匹、森の茂みから飛んでくる。
俺はラフタリアが噛まれない様注意しながらレッドバルーンを食いつかせる。
「ほら、さっきやったようにナイフで刺すんだ」
「……うん!」
幾分かやる気を出したラフタリアは勢い良く、レッドバルーンを後ろから突き刺した。
バアン! バアン! バアン!
この時の戦闘でラフタリアのLvが2に上昇した。
レッドスモールシールドの条件が解放されました。
レッドスモールシールド
能力未解放……装備ボーナス、防御力4
即座に盾を変化させる。
するとラフタリアは目を丸くさせて盾を見ていた。
「ご主人様は……何なのですか?」
俺が盾の勇者だと知らないのか。まあ、亜人で奴隷だしな。
「勇者だよ。盾のな」
「勇者ってあの伝説の?」
「知っているのか?」
ラフタリアはコクリと頷く。
「そうだ、俺は召喚された勇者。他に三人居る中で……一番弱いけどな!」
俺は自分の手を爪が食い込む程握り、半ば八つ当たりの様な態度を取った。
あいつ等の顔が頭に浮かんできて殺意しか湧かない。
ラフタリアが怯えた目を見せるので、これ以上は話さなかった。
「とりあえず、今日はこの森で魔物を退治するのが仕事だ。俺が押さえるからお前は刺せ」
「うん……」
多少馴れてきたのか、ラフタリアは素直に頷いた。
そうして、森の中を探索しながら出会う敵出会う敵を俺が矢面に立ち、ラフタリアに倒させる戦闘スタイルで進んでいった。
途中、バルーン以外の敵と初めて遭遇。
ルーマッシュ。
白い、動くキノコだった。何か目つきが鋭くて、大きさは人の頭くらい。
試しに殴ってみたけど、レッドバルーンと同じ手ごたえ。
これもラフタリアに倒させた。
他に色違いのブルーマッシュなる敵とグリーンマッシュが居た。
マッシュシールドの条件が解放されました。
ブルーマッシュシールドの条件が解放されました。
グリーンマッシュシールドの条件が解放されました。福源春
ステータスボーナスでは無く、どれも技能系のボーナスのようだ。
調合か……薬を卸す時に役立ちそうなスキルだな。
この日の内にラフタリアのLvが3、俺は5に上がる。
夕方、草原を歩きつつ、野宿する川辺に歩いていった。
「コホ……」
ラフタリアは文句を言わずに俺に着いて来る。
まあ、しばらくはまた金稼ぎに精を出さないとダメだろう。
川辺に到着した俺は、袋からタオルを取り出してラフタリアに渡し、薪を組み火を付ける。
「とりあえず行水してこい。凍えたら火で体を温めろよ」
「……うん」
ラフタリアは服を脱ぎ、川に入って行水を始めた。
俺はその間に釣りを始めて、晩飯の準備を始める。
その間にもラフタリアにはちゃんと目を向けておく。
何だかんだでこの辺りはバルーンが沸く、注意しておくに越したことは無い。
俺は今日の収穫物に目を向ける。
草原産の薬草、結構な量。
草原では生えていなかった薬草、結構な量。
バルーン風船、それなり。
各種マッシュ、それなり。
解放した盾、4種。
うん。明らかに効率が違う。
奴隷を購入して正解だったな。
そうだ。調合とやらに挑戦してみるか。
簡易レシピを呼び出す。
其処には俺の持っている薬草で作れる範囲の組み合わせが載っていた。
機材は……川辺にある板みたいな岩と小石で擦り合わせばどうにかなるだろう。乳鉢で作れるレシピに挑戦しよう。
コツがあるのだろうけど、簡易レシピには載ってない。
ゴリゴリゴリ……。
薬草を売っている店で店主が調合していた組み合わせを見よう見真似でやってみる。
ヒール丸薬が出来ました!
ヒール丸薬 品質 悪い→やや悪い 傷の治療を早める丸薬、傷口に塗ることで効果を発揮する。
俺の目の前にそんなアイコンが浮かぶ。
よし、成功だ。
盾が反応しているけど、今はまだ吸わせない。
一応、知らない組み合わせにも挑戦する。
時々失敗して真っ黒なゴミになるが、意外と面白いな。
パチパチパチ……。
火が弾ける音が聞こえる。
見ると行水を終えたラフタリアが焚き火で温まっていた。
「温まったか?」
「うん。コホ……」
どうも風邪っぽいな。奴隷商も病持ちとか言っていた。
そういえば……作った薬の中に風邪薬があったな。
常備薬 品質 やや良い。 軽度の風邪になら効果がある薬。
「ほら、これを飲め」
軽度って所が気になるが、無いよりマシだ。勃動力三体牛鞭
「……苦いから、嫌……ぐ……」
愚かにもワガママを言おうとしてラフタリアは胸に手を当てて苦しむ。
「ほら」
「は、はい」
震えながらラフタリアは俺が渡した薬を思いっきり飲み込んだ。
「はぁ……はぁ……」
「よしよし、良く飲んだな」
頭を撫でてやるとやはりラフタリアは不思議な表情で俺をぼんやりと見つめる。
あ、タヌキの耳はふかふかだ。
尻尾の方に目を移すと何をするのか察したのか、頬を染め、触らせないとばかりに尻尾を抱き締めて拒絶された。
「ほら、晩御飯だ」
俺は焼きあがった魚をラフタリアに渡し、調合作業に戻る。
こういう、微妙な作業は昔から好きなんだ。
日が完全に落ち、焚き火の明かりで調合を続ける。
ふむ……色々と作れるようで面白いな。
魚を食べ終えたラフタリアはウツラウツラと眠そうに火を凝視している。
「寝てもいいぞ」
俺の指示にラフタリアは首を何度も振る。
あれか? 寝たくないと駄々を捏ねる子供みたいな……て、子供か。
放っておいても勝手に寝るだろう。
そういえば、常備薬が少しは効果があったのか? 先ほどから咳が出ていない。
一頻り調合に挑戦し、あらかた出来る薬を調べた。
内、粗悪品になってしまった物は盾に吸わせて変化させる。
プチメディシンシールドの条件が解放されました。
プチポイズンシールドの条件が解放されました。
プチメディシンシールド
未解放……装備ボーナス、薬効果上昇
プチポイズンシールド
未解放……装備ボーナス、毒耐性(小)
どっちもリーフシールドとマッシュシールドから繋がる盾だ。薬効果上昇は良く分からない効果だな。
俺自身が薬を使って効果があるのか、俺が作った薬の効果が上昇するのか。
まあ、良い。
今日は収穫が多くて助かったのは間違いないのだから。
「いや……助けて……」
ラフタニアが変な声を上げた。
見ると眠っているラフタリアがうなされている。
「いやぁあああああああああああああああああああああ!」
キーンと耳が遠くなるのを感じた。
やばい、声に釣られてバルーンが来るかもしれない。
急いでラフタリアの元へ行き、口を塞ぐ。蒼蝿水
それでも漏れる声が大きくて、奴隷商が問題ありと言っていた意味を悟る。
確かにこれは大変だ。
「落ち着け、落ち着くんだ」
俺は夜泣きするラフタリアを抱え上げて、あやす。
「いやぁ…………さん。……さん」
親を呼んでいるのだろうか、ラフタリアはずっと涙を流して手を前に出して助けを求める。
「大丈夫……大丈夫だから」
頭を撫で、どうにかあやし続ける。
「泣くな。強くなるんだ」
「うう……」
泣き続けるラフタリアを抱き締める。
「ガア!」
そこに声を聞き届けたバルーンが現れた。
「ふ……」
まったく、こんな時に。
俺はラフタリアを抱き抱えながら、バルーンに向って走るのだった。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!」
チュン……チュン!
「朝か」
大変な夜だった。
群で来たバルーンを割り終わった頃、ラフタリアの夜泣きは小さくなったのだけど。少しでも離れると、大声で泣くのだ。
するとまたバルーンが沸く。
それでろくすっぽ眠ることも出来なかった。
「ん……」
「おきたか?」
「ひぃ!?」
俺に抱き抱えられていたのに驚いてラフタリアは大きく目を見開く。
「はぁ……疲れた」
城門が開くまでまだ少し時間がある。今なら仮眠くらい取れるだろう。
今日、するのは昨日作った薬の買取額と、摘んだ薬草の代金の差だ。
薬にして売るよりも薬草の代金の方が高いなら作る必要が無い。SEX DROPS
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